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基本動作でもある「立つ」「座る」。安静にした状態であれば、なんとなく自分自身の腰痛の逃し方を本能的に察知して回避していることもあるでしょう。しかし、日常生活で無意識に腰に負担がかかる動作をしていることも多いはず。無意識だからこそ、自覚できないことが多く、知らず知らずのうちに腰痛悪化につながっていることもあります。「私、腰痛持ちだから」とあきらめず、これから紹介する具体例を参照に、改善してみるのも手ですよ!

家事で腰痛を防ぐコツ

姿勢を意識する

前かがみに注意

前かがみの姿勢になると、椎間板に普段の1.5~1.85倍も負荷がかかります。日々の腰への負担が積み重なり、消耗品とも言われる椎間板がすり減り、神経を圧迫して痛みがでます。猫背の前かがみの姿勢は避け、視線の高さを平行にキープできるような工夫が必要です。よく使うものは目線の高さの位置にしまうとよいですね。

顎がでる姿勢に注意

顎を突き出したりあげたりして、首をすくめる姿勢では、丸まる背中や腰には負担が集中します。猫背に気づいたら、顎を引き気味にし、肩甲骨を寄せて落とすイメージで、前に出た肩をなるべく引いた姿勢に戻すよう心がけてみましょう。

立ちっぱなしに注意

姿勢を保つ筋肉は、30分程度しか持ちません。2015年に医学誌『Human Factors』では、1日5時間立ちっぱなしになると、腰痛や筋骨格障害のリスクが高まるとしています。

立ったままの作業が必要なときは、両足を肩幅に開き、前後にずらして立つことで重心が安定し腰の負担を減らせます。前かがみになる場合は、背中や腰から体を曲げず、股関節から曲げるように意識しましょう。また、適度に腰を揺らしたり、伸びや前屈を取り入れたりと体をこまめに動かすことで、凝った筋肉の循環をよくすることもおすすめです。

座りっぱなしに注意

立つより椅子に腰掛ける方が腰への負担は少ないと思われがちですが、実は、立位より椅子に座る方が腰にかかる負担は高いとわかっています。直立の姿勢で腰椎にかかる負荷を100としたとき、椅子に座った場合は140、椅子に座って前かがみになると180と数値が跳ね上がります。安楽椅子やリクライニングチェアだと50に減るため、家事で椅子を利用する時は丸椅子などは避けるべきでしょう。

持ち方を意識する

物を持ち上げるときは一方向に背筋を使うため、筋肉に大きな負担がかかるとともに、椎間板内圧も上昇します。ひねりや振動も加わると、腰痛発生のリスクが高まるので要注意です。
膝を曲げてできるだけ物に近づき、上体をまっすぐにしてゆっくりと持ち上げます。膝を伸ばしたまま遠くのものを持ち上げないようにしましょう。

瞬発的に動かない

体を動かす際には、自分の意志で動かすことのできる随意筋が使われます。体を反射的に動かすと、脳から筋肉への動けという司令が間に合わないまま、腰の筋肉が働きます。不意にかかった腰への負担が腰痛の原因にもなり得るのです。急激な動きは避け、動作と動作の間は一拍置くように心がけるとよいでしょう。

日常生活動作「家事」

日々の家事も対応をおろそかにしていると、徐々に腰痛は悪化します。家の中でのことなので軽視しがちですが、腰痛予防のための対策を取り入れ家事を行うことで、腰痛悪化防止につながります。

炊事

できるだけ長時間立ち続けるのは控えましょう。小さな腰掛け用の椅子などを用意しておくと、炊事の合間の休憩や、座りながら行えるものは座りながら行います。立ち時間が長くなりそうなときは、合間に片足ずつ足台に足をのせて、体重が一ヶ所にかかるのを分散します。また、立つ場合にも、座る場合員も脊椎の自然な弯曲が維持できるよう、前かがみになりすぎない、背中をそらさないなどを心がけます。

適切なキッチンの高さは「身長÷2+5cm」といわれています。高すぎる場合には足元に足台を使用し、自分の目線を上げます。逆に低すぎる人は、まな板など、脚付きのものを使用するか、ふきんなどで底上げして調理します。

アイロンがけ

できればテーブルの上にアイロン台を乗せアイロンをかけます。床にアイロン台を置いてアイロンをかけると、どうしても前かがみの姿勢になります。テーブルの上にアイロン台を置いて、正しい立ち位置でアイロンをかけるか、椅子に腰掛けるとよいでしょう。立ち姿勢で長時間になる場合は、足台を使用して交互に足を乗せ換え、腰への一点集中荷重を分散します。

風呂掃除

浴槽洗いや床洗いも前かがみになりがちなので、柄の長い掃除用具を用意します。浴槽内に潜り込むことなく洗えるものがよいでしょう。立ち膝になり、前かがみになりすぎず、胸を張りすぎず、姿勢を正して行います。浴槽や壁に手を添えながらやると、体重が分散され腰痛が楽になります。

洗濯

できればドラム式のほうが立ち膝をして洗濯ものを投げ入れ、取り出しができるので便利です。直立型の場合は、簡単に取り出せるように、洗濯ネットにまとめて入れるなどの工夫をします。物干し竿は目線より高い位置に置かず、背中を反らないようにかけられる高さにします。洗濯物かごも椅子などに置いて手元の高さにすると、前かがみになって取り出さなくてもよくなります。

掃除機かけ

掃除機かけも前かがみになりがちな家事です。掃除機の持ち手を身長に合わせ調節し、前かがみにならなくてもよい長さに調節します。自走式のほうが押すときに力が不要で、腰への負担を軽減できます。コンセントの抜き差しも要注意です。かがんで抜くと、腰へ負担がかかり、一気に腰痛が増強します。必ず腰を下ろすか、その場で正座して腰に負担がかからないように抜き差しします。

床拭き

雑巾を使用しての床拭きは、長時間四つんばいになる姿勢なので、腰に負担がかかります。フロアモップなどを使用し、腰に負担がかからないよう立ちながら行います。一気に家全体をやるとなると、腰への負荷がかかりやすくなります。モップ掛けも多少力はこもるので、数日に分けて行うのがよいでしょう。

庭仕事

とくに草むしりは長時間前かがみになる必要があるので、腰に負担がかかります。できれば低い椅子に座りながら行うほうがよいでしょう。それでも負担が大きい家事のひとつのため、数日に分けて行うようにしましょう。草刈りであれば「立ち鎌」や草刈り機などを用いて行うのも方法のひとつです。ただし、重すぎるものはそれも腰への負担となります。実際に機会を見て、自分が取り扱える重さかどうかを判断しましょう。

買い物

買い物もたくさん買うと重量がかかり、腰への負担が増大する原因となります。買い物中はショッピングカートを利用し、負担がかからないように歩きます。買い物後は、できればキャリーカーなどを使用し、重たいものを持たなくてもいいようにしますが、もし手持ちになるならば、左右に均等に重みがかかるように両手に同じ重になるように荷物を分けて持つか、リュックタイプを使用します。最近では宅配サービスなども充実しているため、それらを利用するのもよいでしょう。

腰痛悪化予防のために

急性期の腰痛がある場合には、腰痛用のベルトやコルセットを使用するのもひとつです。急性期が過ぎれば、コルセットを着用することでの筋力低下のほうが懸念されますので、痛みが残存していても動けるようになればコルセットやベルトの使用継続を検討しましょう。筋力が落ちることで、より腰痛が発生しやすくなり、症状が悪化することがあります。

まとめ

いかがでしたか?自宅のなかで行われる仕事のため、意外と意識が向きにくいのが「家事」です。日常生活のふとした動作が腰痛増強につながります。家事は毎日行われるものなので、腰痛対策を積極的に取り入れ、腰痛の発生や悪化の防止につなげていきたいですね。今回の記事が参考になれば幸いです。

【参考文献】
腰痛治療「0分」革命! 主婦と生活社
腰の痛み、手足のしびれ背骨が関わる病気の診断・治療ガイド NHK出版
腰の痛みがみるみるよくなる100のコツ決定版 主婦の友社

著者情報

腰痛メディア編集部
腰痛メディア編集部

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