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腰のブロック注射は単なる痛み止めではありません。治療戦略に効果的に組み込むことで、腰痛の根本的な解決にも繋がります。

今回の記事では、「腰のブロック注射の基本のキ」といえる内容になっています。痛みの悪循環を断ち切るメカニズムから、副作用、具体的なブロック注射にいたるまでを分かりやすく解説しています。腰痛にお悩みの方、ブロック注射を受けてみたい方は是非お付き合いください。

腰のブロック注射ってなに?

「腰のブロック注射」は、腰痛の原因と考えられる神経周囲や関節部位などに局所麻酔薬を注射する治療のことです。局所麻酔薬が痛みの原因に直接作用するため、高い鎮痛効果を期待できます。通常、腰痛に対してブロック注射が単独でおこなわれることは少なく、薬物治療・理学療法・ストレッチなど、腰痛治療の一環として他の保存的治療と組み合わせて施術される場合が多いのです。

ブロック注射の最大のメリットは、「痛みの局所に即効性」の治療ができることです。例えば薬物療法の場合、内服した鎮痛薬は消化管で吸収され血流に乗って全身に運ばれます。もちろん腰痛にも効果がありますが、腰以外の部位にも薬効が広がってしまうデメリットがあります。

代表的な鎮痛薬の「ロキソプロフェン(通称ロキソニン)」であれば、腰痛を緩和するだけでなく、腎臓にも作用して腎機能障害を引き起こす可能性が危惧されるのです。

一方、ブロック注射で注入された局所麻酔薬は、ほとんどがその注入部位に留まります。疼痛部位以外への作用を最小限にして、高い鎮痛効果を期待できるので合併症がある方でも安全に施術を受けられるのです。また、手術治療と違い、ほとんどのブロック注射は日帰りで受けられる点も魅力です。

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腰のブロック注射は「痛みの悪循環」を断ち切る!

ブロック注射での鎮痛は単なる対症療法でなく、「痛みの悪循環を断ち切る効果」が期待できます。

ヒトは痛みを感じると、その部位の筋肉は緊張するとともに、血管が収縮して酸素と栄養が不足します。その結果、痛みを惹起する伝達物質が発生して更なる痛みを引き起こすのです。増悪した痛みは、また血管を収縮させ、筋肉を緊張させることで同じ現象を繰り返します。これが『痛みの悪循環』の正体です。

ブロック注射は、局所麻酔薬がこの悪循環を断ち切る効果があります。ブロック注射で少しでも痛みが改善すれば、リハビリや運動を励行することで筋肉の緊張がほぐれます。緊張がほぐれれば、血流も改善して痛み物質の発生も減少し、結果痛みが緩和されるのです。同時に、運動は筋力のアップにもつながるため腰部の安定化も図れるのです。

痛みの発生源を特定する

ブロック注射をすることによって、痛みが発生している場所をピンポイントに特定できるのも、ブロック注射のメリットです。

どこで痛みが発生しているのかを特定することによって、具体的な対策を立てやすく、根本的な治療方針を決定できます。

腰のブロック注射に危険性はないの?

経験のある施術者がおこなえば、ブロック注射は比較的安全性の高い治療法です。しかし、身体に針を刺すことは事実なので、「穿刺部位からの出血」は避けられません。そのため、心筋梗塞や脳梗塞の既往があり、「抗血小板薬・抗凝固薬」を内服している方は要注意です。また、局所麻酔薬による中毒やアレルギーが起こる可能性もありえます。

具体的な腰のブロック注射の種類

ここでは、腰痛に対して実施されるブロック注射の代表例として「トリガーポイントブロック」「硬膜外ブロック」「椎間関節ブロック」の3種類をご紹介します。腰痛に対して有効なブロック注射は複数ありますが、どのブロック注射が最も効果的かは確立されていません。ブロック注射の選択は、腰痛の原因部位や痛みの程度、施術者の経験などによって選択されることが多いのです。

硬膜外ブロック

脊髄の外側には「硬膜外腔」と呼ばれるスペースがあり、ここに局所麻酔薬を注入する治療法が硬膜外ブロックです。局所麻酔薬は脊髄から出た神経を直接ブロックするので、高い鎮痛効果がえられます。

硬膜外ブロックにもいくつかの種類があり、腰痛には「仙骨硬膜外ブロック」や「腰椎硬膜外ブロック」が適用されます。いずれも穿刺部位が違うだけで、共通点も多い治療法です。

危険性としては、神経損傷のリスクがあります。脊髄の近傍に針を進めるため、常に神経を傷つけるリスクと隣り合わせなのです。また、穿刺部位から感染すると「硬膜外膿瘍」を形成することが稀ですがあります。放置すると下半身に後遺症が残ってしまうため、長期の抗生剤や時には手術が必要なこともあります。

椎間関節ブロック

「椎間関節」とは、背骨と背骨が連結して形成される関節部分のことで、ここに局所麻酔薬を注入する治療が「椎間関節ブロック」です。腰を伸ばした時に腰痛が強くなる場合、椎間関節性の腰痛の可能性があるため、椎間関節ブロックが適応されます。

トリガーポイントブロック

トリガーポイントブロックでは、神経ではなく筋肉をターゲットに局所麻酔を注入する特徴があります。腰痛の場合、脊柱起立筋が原因のことが多く、ここに薬を注入するのです。他のブロック治療が神経の周囲に針を刺すのに対し、トリガーポイントブロックは筋肉に針を刺すため、神経損傷などは起こりにくいメリットがあります。比較的安全性の高いブロック注射と言えるでしょう。

まとめ

腰のブロック注射の最大のメリットとは、「痛みの悪循環を断ち切れる」ことです。ブロック注射で痛みが緩和できている間に、理学療法やリハビリ運動に注力することで腰痛の改善が期待できます。それから、痛みが起こっている場所を特定できるのもメリットの一つです。

腰痛に対する治療は「多角的なアプローチ」が大切です。ブロック注射・薬物療法・リハビリ・理学療法などを組み合わせることで、より高い治療効果が期待できるのです。

そのなかでもブロック注射の果たす役割は大きく、腰痛にお悩みの皆さんの救世主になるかもしれません。ブロック注射の専門は、主に整形外科やペインクリニックの医師が担当しているので、気になる方は医療機関の受診を検討してはいかがですか。

【参考文献】
荻原 哲「急性腰痛の治療」総合リハビリテーション 36巻3号

著者情報

広下若葉
広下若葉

保持資格

医師国家資格・麻酔科標榜医

経歴

2015年:医師国家資格 取得

2017年:初期臨床研修プログラム 修了

2020年:麻酔科標榜医 取得

    麻酔科専門研修プログラム 修了

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