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腰部脊柱管狭窄症は、腰痛や下肢痛のほかにしびれが出現します。症状が重篤な場合は、すぐに手術が必要な例もありますが、その7割近くは保存療法で症状の改善が見られます。何となく腰痛があったり、下肢の痛みやしびれがあるものの、少し安静にしていたら治まったり、市販の痛み止めで腰痛や痛みなどの症状が治まるので、自分でのらりくらりと対処しながら経過してしまうこともあります。もちろん、その対処で症状が改善できれば良いのですが、まれに症状が進行し、手術が必要になってしまうことも。

できるだけ早く受診して適切な治療を行い、早期改善や悪化の防止につなげたいですよね。今回は腰部脊柱管狭窄症の保存療法、「薬物療法」についてまとめました。

腰部脊柱管狭窄症の病態

腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)は、先天性の狭窄を除き、その多くが加齢に伴う退行性変化を基盤として発生します。しかし、脊柱管が狭窄していたとしても、必ずしも腰痛や下肢痛、しびれなどの症状を呈するわけではありません。たとえばですが、画像診断上脊柱管狭窄が確認されたとしても、神経や神経根に対しての圧迫が生じていなければ、腰痛などの随伴症状は発生しないのです。

実際に、高齢者のMRI撮影を行った場合、狭窄や圧迫所見は多数見られますが、実際の有訴者は10~20%程度とも言われています。

腰部脊柱管狭窄症の自然経過

腰部脊柱管狭窄症では、実は自然経過で軽快する例も多々あるのです。NASS(北米脊椎学会のガイドラインでも、狭窄症の程度が中等度までの患者さんは、その1/3~1/2では自然経過で良好な予後が期待できるとされています。一方で中等度から重症の患者さんは保存療法よりも手術療法が有効とされています。

重症化のサインは安静時に腰痛や下肢のしびれ、膀胱直腸障害、筋力低下がみられるかがチェックポイントとなっています。

脊柱管の狭窄が見られていても、必ず症状が発現するわけではありません。また、症状が出現したとしても、前かがみの姿勢になると腰部の脊柱管狭窄は緩和されるので、症状は一時的に招待します。狭窄症が原因であっても、腰痛やしびれを逃すために、知らず知らずのうちに回避行動をとり、そのうちに徐々に症状が改善してくるケースもあるのです。

腰部脊柱管狭窄症の長期経過

「腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2011」では、症状が軽度~中等度の場合は、治療法の第一選択が保存療法となっています。長期の保存療法についても以下のように述べています。「軽度から中等度の腰部脊柱管狭窄症患者で、最初に薬物療法やそのほかの保存療法を受け、2~10年の経過観察をした患者のうち、およそ20~40%は最終的に手術が必要となるが、手術をしなくとも50~70%の患者さんは腰痛や下肢痛などの症状は軽減する」とされています。自然経過を選択するケースは、馬尾症状がないことや変性すべりや側弯がない症例としています。

腰部脊柱管狭窄症の薬物療法

腰部脊柱管狭窄症治療で使用される薬物療法(内服薬)は、患者さんの症状により異なります。主に使用される代表的な薬剤についてまとめました。

リマプロスト(オパルモン®、プロレナール®)

プロスタグランジンE1誘導体製剤です。強力な血管拡張作用にともない、血流増加を促します。また、血小板凝集抑制作用もあり、血液の流れを良くします。血行を促進することで、脊柱管狭窄が起きている部位の血流を改善させ、腰痛や下肢のしびれの改善をします。その有効率は80%ともいわれており、腰部脊柱管狭窄症の薬物療法では、第一選択となる治療薬です。

NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬の総称)

腰痛や下肢痛の強い神経根性の腰部脊柱管狭窄症の場合には、急性の炎症症状が発生していると考え、NSAIDsを使用します。長期連用や空腹時の内服などにより、消化器系の潰瘍など、胃腸障害を生ずることがあるので、炎症が強い急性期に使用することが望ましいです。

プレガバリン(リリカ®)

神経障害性の疼痛に使用される第一選択薬です。炎症性所見が乏しい症例では特に効果が得られやすいとされています。初期の段階では、副作用である眠気やふらつきを生ずることもありますが、内服を継続すると徐々に消失するとされています。また、反対に長期連用で浮腫や体重増加の副作用が見られることがあります。これも有効率は80%以上といわれています。

アセトアミノフェン

抗炎症作用はありませんが、鎮痛薬としては比較的安全性の高い薬で、副作用も多くはありません。長期服用により肝障害を誘発することがありますので、腰痛や下肢痛の強い急性期に使用します。

トラマドール(トラムセット®)

弱オピオイド製剤で、慢性疼痛や難治性疼痛に有効とされています。最初うちは、副作用として嘔気嘔吐が生ずることがありますが、これは数日でほとんど消失します。この間は制吐剤を一緒に内服するとよいでしょう。主な副作用は便秘や嘔気、めまい、口喝などです。症状に応じ、副作用を抑える内服薬を併用するとよいでしょう。

デュロキセチン(サインバルタ®)

セロトニン・ノルアドレナリン再吸収阻害薬でもともとはうつ病の治療薬として用いられてきましたが、腰痛をやわらげる効果にも着目され、近年腰痛治療薬として、保険適用となりました。その薬理作用は「線維筋痛症にともなう疼痛治療薬」とされています。とくに心因性腰痛が絡んでいる場合には有効です。ほかの腰痛に対する鎮痛薬が聞かなくても。この薬が劇的に効果を発揮し、腰痛が改善されるケースも多々あります。

まとめ

腰部脊柱管狭窄症は加齢性変化から症状が出現します、腰椎そのものの骨変性などが改善することはありません。しかし、それらが軟部組織や神経に干渉し、炎症が起きることから発生する、腰痛や下肢のしびれに対しては、早期対処することで、痛みをコントロールすることができます。
また、体幹の筋力トレーニングやストレッチ、腰痛体操などが推奨されており、不安な方はできるだけ早い段階で整形外科を受診し、医師に相談しましょう。

参考:腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン改訂第 2 版

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腰痛メディア編集部
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