「デスクワークを続けていると腰が痛くなってくる。」
「台所作業をずっとしていると腰が痛くなる。」
「立ち作業を長時間続けていると腰痛がでる。」
仕事や家事をしていて似たような経験がある方もいるのではないでしょうか?
腰痛が出たとしても仕事や家事はやらざる負えない、この状況は本当につらいですよね。
目次
腰痛の原因は一体何なのか?
答えの1つとして「同じ姿勢を続けている」ことが考えられます。
長時間座っていたり立っていたりすることが、腰痛の原因になっている可能性があるということです。1)
今回は、長時間座っていたり、立ったりしていることが腰痛の原因になる理由、また、そのような腰痛に対する対処法をご説明します。
座りっぱなしが腰痛を作る?
座位が腰に与える悪影響
長時間座っていると腰痛が出てくる原因、それは椎間板に負担がかかることが理由の1つとして考えられます。
腰には腰椎と呼ばれる骨が5つあり、腰椎1つ1つの間に椎間板と呼ばれるジェル状のクッションのようなものがあります。
座る姿勢は椎間板に負担がかかるといわれています。
また、椎間板には痛みを感じるセンサーが存在します。座っていて椎間板に負担がかかると、このセンサーが反応して腰痛を感じるようになるのです。
椎間板への負担は、立ち姿勢よりも座り姿勢の方が大きいことがわかります。
このことからも座る姿勢により椎間板に負担がかかり、腰痛がでてくる可能性があるのです。
長時間の座り姿勢が腰痛を作る
「座り姿勢は椎間板に負担をかけて腰痛を感じさせる」とご説明しました。
しかし、実際には全く座らない生活スタイルの人はいません。
では、同じ座るという姿勢でも、痛みが出る人と出ない人がいるのはなぜか?
その違いは「長時間座っている」ことに答えがあります。
座る時間が長ければ長いほど椎間板に負担がたまり、限界を超えると腰痛を感じやすくなります。
どのくらいの時間座ると痛みが出てくるかは、個人差や環境により違うため、ハッキリと数字を伝えることはできません。
しかし、共通している点は、「なるべく座位時間を減らす、連続して座る時間を少なくする」ことが腰痛予防や改善には大切です。
立ちっぱなしが腰痛を作る?
長時間の立ち姿勢が腰痛の原因になる可能性があるとお伝えしました。
同じように長時間立っていることも腰痛の原因になる可能性があります。
長時間の立ち姿勢で腰痛が出る理由として「腰の筋肉に負担がかかる」ことが考えられます。
腰には「起立筋」と呼ばれる筋肉が存在します。起立筋は姿勢保持筋と呼ばれ、姿勢を保持するために働いてくれる筋肉です。
立ち姿勢を保つために、立っている間、常に頑張ってくれています。
長時間の立ち姿勢が腰痛を作る
立ち姿勢の時間が長いほど、起立筋は疲れてきます。
疲れがたまってくると、起立筋自体に痛みや重だるさを感じるように。
この痛みや重だるさを腰痛と感じているのです。
例えると、肘を曲げて重たいものを持っていると上腕の筋肉がつらくなってきますよね?似たようなことが起立筋でも起こっています。
そのため、長い時間立っていると出てくる腰痛はこの起立筋が原因である可能性があります。
座りっぱなし、立ちっぱなしによる腰痛を改善するための対策
ポイントとしては「同じ姿勢を避けること」。
これが最大のポイントです。
このポイントを含め、長時間の座り、立ち姿勢による腰痛を軽減・改善するための対策を、それぞれ2つご紹介します。
座りっぱなしの腰痛対策
長時間座っている時間を減らす
連続して座っていると椎間板に負担がたまってきて、腰痛の原因になることも。
そのため、こまめに「立つ」ことを意識します。
研究からも30分から1時間に1度立つだけでも腰痛が減るという結果が出ています。2)
連続して座ることが多い方は「30分〜1時間おきに立つ」ことを心掛けてみてください。
また、仕事や状況によっては立つことができない人もいると思います。その場合は座ったままでもいいので腰を伸ばす運動、いわゆる「伸び」をすることで対策になります。
腰への負担を軽減する座り方をする
椅子に座るときは、腰と膝がなるべく垂直になるように意識しましょう。また、足の裏全体が床に付いている上体が理想です。
もし、椅子が高かったり低かったりして、腰と膝が垂直にならない場合は、椅子の高さが自身の身体に合っていない可能性があります。可能ならば、自分の身体に合う椅子に変えましょう。
背筋を伸ばして椅子に深く腰掛けることもポイントです。姿勢が悪いと、猫背になったり前傾姿勢になったりするので、ときどき姿勢を見直すことをおすすめします。
セルフケアをする
長時間の座り姿勢が続くと、腰が丸まった状態で固まったり、腰を丸まったりする動作のクセができてしまいます。こうなると腰が丸くなりやすく、腰に余計に負担をかけてしまう。
そのため、セルフケアにより腰の動きが硬くなることを防ぎ、負担がたまらないようにすることが大切です。
その日の負担はその日のうちにリセットし、負担を持ち越さないようにしましょう。
具体的には、以下2つの腰を反らす運動を行います。
腰を反らす
1. うつ伏せになる
2. 両手で床を押して腰を反らす
3. 10秒10セット行う
腰反らしエクササイズ
1. 四つ這いになる
2. 腰を反らす
3. 腰を元に戻す
4. 10回を3セット行う
立ちっぱなしの腰痛対策
腰に負担のかかる立ち方をする
あごを引いて背筋を伸ばしてまっすぐに立ちましょう。このとき、肩に力を入れないのがポイントです。また、お尻がゆるみがちな人は、意識してお尻に力を入れて立つようにしましょう。地面と垂直になるようにまっすぐ立つことを意識すると、あごやお尻が出ることを防げます。
長時間立っている時間を減らす
長時間座っている場合と同じように、連続して立っている時間を減らすよう心掛けます。
座っている時と同じように「30分〜1時間おきに座ったり、前屈したりして腰を曲げるような姿勢をとる」ことが大切です。
セルフケアをする
長時間立っていて腰痛が出てくる場合、腰が反って起立筋が緊張している状態になっていることが多いです。
そのため、腰を丸めるストレッチを行い、起立筋の緊張をゆるめることが大切です。
起立筋が緊張したまま、次の日も立つことを続けていると、次第に起立筋はガチガチになり、腰痛が出やすい状態になってしまいます。
起立筋の緊張をゆるめるケアをすることが腰痛の軽減・改善の対策につながります。
今回2つの運動をご紹介します。
両膝抱え
1. 仰向けになる
2. 両膝を抱え、胸に両膝をつける
3. 10秒10セット行う
祈りのポーズ
1. 四つ這いになる
2. お尻を後ろに引いていき、お尻をカカトにつける
3. その姿勢のままリラックスする
4. 20秒3セット行う
以上が、長時間座っている、立っていると腰痛が出てくる場合の対策になります。
日常生活で取り入れられる腰痛改善方法
重い物は膝を曲げてから持ち上げる
荷物や人の身体など、重量物を持ち上げたり運んだりする場合も腰に負担がかからないようにしましょう。ポイントは、中腰で持ち上げようとするのではなく、膝をしっかり曲げてから腰を落とし、持ち上げたり運んだりするものをなるべく自身の身体に近づけることです。
睡眠時にかかる腰への負担を軽くする
まず、寝具についてです。寝るときに使う敷き布団やマットレスは自身の身体に合ったものを選びましょう。寝たときに腰が沈んだり浮いたりするのは、寝具として身体に合っていません。
次に寝るときの姿勢です。うつぶせ寝は腰に負担がかかるのでなるべく避けましょう。横向きで寝る時には、膝を曲げて寝るといいです。腰痛で寝にくい場合は、横向きで背中から腰にかけて少し丸めて寝るといいでしょう。
ゆっくり起き上がる
急に起き上がるのだけは避けましょう。腰に負担がかからないように、ゆっくりと起き上がることを日頃から意識します。
まとめ
「30分〜1時間おきになんてできない」という人は多いと思います。
そのような場合は、やれる範囲で大丈夫です。やれる範囲で同じ姿勢をなるべく避けてみてください。全くやらないよりも腰にかかる負担は減らせます。
腰に負担がたまってくると腰痛は起こりやすくなります。
そのため「負担を少しでも減らす」「負担を溜め込まないようにする」
上記2点を意識することが腰痛の改善には大切になります。
そのための方法として今回、いくつかご紹介させていただきました。
もし、あなたが長時間の座り姿勢や立ち姿勢で起こる腰痛で悩んでいるのであれば、今回の記事でご紹介した運動を試してみてください。
本記事が少しでも皆様の腰痛改善のお役に立てるように。皆様の腰痛に最適な運動が見つかり、改善することを心から願っています。
※腰痛のタイプはさまざまです。必ずしも今回説明した原因で腰痛が出ているとは限らず、別の原因で腰痛が出ている可能性も考えられます。
ご紹介したケアをすることで痛みが強くなる場合は、ケアをいったん中断し、専門家に状態を確認してもらうことを推奨します。
参考文献
1) 栗原章:職業性腰痛の現状と展望,日本腰痛会誌 8(1).2002,10-11
2) Nachemson,A.L.:The lumber spine an orthopaedic challenge,Spine,1(1),59-71(1976).
3) Thorp AA, Kingwell BA, Owen N, Dunstan DW. Breaking up workplace sitting time with intermittent standing bouts improves fatigue and musculoskeletal discomfort in overweight/obese office workers. Occup Environ Med. 2014 Nov;71(11):765-71.