腰痛は今や国民の約2800万人が悩んでいる症状であり「国民病」と呼べます。年齢、性別問わず発症し原因としてはさまざまな要因が挙げられますが、今回は腰痛の症状、またそれに対して市販されているどなたでも購入できる医薬品での治療法について解説します。
目次
腰痛とは
腰痛とは正式な疾患の名前ではなく、腰付近の痛みや張り、違和感の総称のことです。人類の進化により2足歩行になったことで腰への負担は大きくなり、高齢者だけではなく若い世代でも腰痛で悩んでいる方はたくさんいらっしゃいます。
病院で診察を受け、原因が明らかになる腰痛を「特異的腰痛」と言い、原因が不明の腰痛を「非特異的腰痛」と言います。驚くべきことに原因がわかる特異的腰痛の割合は約15%程度でしかありません。
姿勢の悪化や筋肉への過度の負担、骨の老朽化、ストレスなどさまざまな原因がありますが、腰痛は根本的な治療が難しく症状を抑えるのみ(対症療法)にとどまってしまいます。
腰痛に有効な市販薬の種類
腰痛の治療に有効な市販薬を薬効別に紹介していきます。
消炎鎮痛薬
腰痛治療薬として代表的なのが消炎鎮痛薬、いわゆる「痛み止め」です。現在市場には多くの種類の痛み止めが流通しており、購入する際にどの成分がいいのか選ぶのが難しいと思います。書く成分ごとに特徴をまとめましたので参考にしてみてください。
ロキソプロフェン
ex)ロキソニンS、バファリンEX、エキセドリンLOX、ロキソニンSテープ、ロキソニンSゲル
最近ではよくテレビCMでも放映されていて、ロキソニンに関しては馴染みがあると思います。市販の痛み止めの中では疼痛効果が強く、即効性があるため痛みに早く効きます(最短15分程度)。薬のタイプも錠剤、貼り薬、塗り薬とバリエーションが多く、自身に合ったものを選ぶことができます。
飲み薬に関して、このロキソプロフェンという成分は胃に負担をかけてしまう可能性があるため、空腹時での服用は極力避ける必要があります。胃が弱いという自覚のある方は、胃粘膜保護成分の配合されているロキソニンSプラス、ロキソニンSプレミアムといった関連医薬品を使用することをオススメします。貼り薬や塗り薬ではそういったことは起こりにくいので安心して使用してください。
場所を選ばずに使用したい方や常に携帯しておきたい方は錠剤、効果を持続させたい方は貼り薬、お肌が敏感な方は塗り薬、のように使い分けることが出来るのもこの成分の特徴です。
イブプロフェン
ex)イブA、バファリンプレミアム、エルペイン
イブプロフェンはロキソプロフェンと類似の成分です。ロキソプロフェンとの違いは、イブプロフェン子宮に対してよく働きかけるためが生理痛に対して効果が高いという点です。特にエルペインという商品は、イブプロフェンの他に痙攣を和らげる薬も配合されているため、生理痛が強くて腰痛が出てしまっている方には適しています。イブプロフェンは錠剤のみの販売です。
アセトアミノフェン
ex)タイレノールA、バファリンルナ
鎮痛薬の中ではかなり古くから使用されている成分です。ロキソプロフェンほどの鎮痛効果はないものの、胃への負担が少なく、また安全性も高いため妊娠中の方やお子様にも使うことができます。この成分に関しても錠剤のみの販売です。
ジクロフェナク
ex)ボルタレンEXテープ、ボルタレンEXローション、ボルタレンEXゲル、フェイタス、フェイタスローション
貼り薬や塗り薬のみ販売されている成分です。強い鎮痛、抗炎症効果があるので効果は高いですが、その強さゆえ胃への負担がかかる可能性があります。痛みが強い場合にオススメの医薬品です。
インドメタシン
ex)バンテリンパップ、バンテリンゲル、バンテリン液、サロンパスEX
ジクロフェナクほどではありませんが強い鎮痛、抗炎症効果が見込めます。貼り薬や塗り薬とバリエーションがあるので、症状の強さや部位によって使い分けることができます。
ェルビナク
ex)オムニードフェルビナク、パテックスフェルビナクローション
上記2つ同様鎮痛、抗炎症効果を持った成分です。貼り薬、塗り薬があり好みによって使い分けることが可能です。
貼り薬や塗り薬を使う際の匂いが気になる方もいらっしゃるかと思います。ツーンとくるような匂いが苦手という方は、箱に記載されている成分表の中に「l-メントール」という表記がないものを選んでください。
ビタミン
ビタミンB1、B6、B12、E
ex)アリナミン
これらのビタミンには神経の修復、血行促進、筋肉の回復などの効果があり、継続的に飲み続けることによって痛み止めでは補えない部分の痛みに効果があります。痛み止めは、痛みがある時や痛みが強い時に使用する薬ですが、ビタミン剤は即効性に欠けるため日々服用して症状改善に繋げるイメージです。
筋弛緩薬
メトカルバモール
ex)ドキシン
神経の反射を抑えて筋肉の緊張やコリをほぐしていく働きがあります。
クロルゾキサゾン
ex)コリホグス
筋肉を緊張させている神経に対して作用し、硬くなった筋肉をほぐしてくれる働きがあります。
筋弛緩薬を服用すると、個人差はありますが「眠気」が出る場合があるので車の運転などには十分注意するようにしてください。
腰痛に使われる鎮痛薬
腰痛が起きた時に痛みを抑える鎮痛剤についても紹介します。薬には病院で医師の診断を受けて処方してもらう医療用医薬品から薬局やドラッグストアで購入できる市販薬まで様々な種類が存在しています。自分にあった治療薬を見つけることで腰痛で低下した生活の質を取り戻す可能性も高くなります。
ほとんどが非ステロイド性抗炎症薬
腰痛で使用される鎮痛薬は市販薬では非ステロイド性抗炎症薬と呼ばれる医薬品が使われることが多いです。非ステロイド性抗炎症薬は、痛みや発熱などの原因となる炎症反応を起こすプロスタグランジンという体内物質の生成を阻害することで鎮痛効果を発揮します。非ステロイド性抗炎症薬は、高い鎮痛効果があるため内服薬だけでなく湿布や塗り薬、スプレーなどの様々な商品が存在しています。
医療用医薬品なら選択肢が増える
市販薬以外にも医師の診断を受けて処方してもらうことで入手できる医療用医薬品というものがあります。医療用医薬品は高い効果が期待できる反面、副作用のリスクも市販薬に比べると高いことが多いです。しかし、医師や薬剤師の指示通りに服用することでリスクを最大限減らすこともできます。
腰痛で使われる医薬品には非ステロイド性抗炎症薬以外にもサインバルタと呼ばれる抗うつ薬やリリカという神経痛に強い鎮痛効果を発揮する医療用医薬品が存在しています。市販の鎮痛薬に思うような効果を感じない場合には医療機関へ受診してもいいでしょう。
非ステロイド性抗炎症薬には耐性はない
非ステロイド性抗炎症薬などの鎮痛薬を使い続けていくと効果が低下すると感じる方もいるのではないでしょうか。
非ステロイド性抗炎症薬には耐性が生じないとされています。耐性とは以前と同量の医薬品を使用しても効果が得られない減少のことをいいますが、非ステロイド性抗炎症薬を何回使っても鎮痛効果が低下することはありません。
そのため、鎮痛剤を使っても腰痛が治らない場合には症状が悪化している可能性があるため医療機関へ受診した方がいいでしょう。
受診した方がいい場合もある
腰痛は誰しもが発症する可能性があり、市販薬を使って症状を和らげる機会が出てくるかもしれません。
最近では医療用医薬品と同じ成分の市販薬も増えてきており、病院を受診しなくても薬局やドラッグストアで誰にでも購入できるため非常に便利になっています。
しかし序盤でも説明した通り、腰痛の80%以上は原因が特定できないことがわかっています。軽い腰痛だと思っていても実は想像していなかった原因が隠されている可能性もあるので、下記を受診の目安として参考にしてみてください。
・強い痛みが急に出てきた
・強い足のしびれがあって力が入らず歩くのすら難しい
・痛いところが腫れて熱を持っている
・安静にしても改善しない
・市販薬を使っても全然よくならない(目安は1カ月)
市販薬は不特定多数の方が無条件で購入できるので、医療用医薬品に比べると成分的には優しめになっています。市販薬で様子をみていたが改善せず受診し、薬をもらって飲みはじめたところ改善がみられたケースもたくさんあります。なかなかよくならない場合は我慢せずに1度受診してみるのも良いかと思います。
鎮痛薬乱用頭痛になる可能性もある!
非ステロイド性抗炎症薬は常用を続けていると鎮痛薬乱用頭痛を起こすことが知られています。頭痛で鎮痛薬を常用しているとさらに頭痛が起きてしまい薬の効果がなくなったと感じる場合もありますが、耐性はないので鎮痛薬乱用頭痛の可能性があります。腰痛で鎮痛薬を使用してから頭痛も起きる場合には鎮痛薬乱用頭痛を疑ってください。
鎮痛薬乱用頭痛の症状は?
鎮痛薬乱用頭痛の名前が示すとおり、頭痛を主な症状としています。鎮痛薬乱用頭痛の方が鎮痛薬を中止すると頭痛がひどくなり、吐き気や発汗、不眠、震え、不安感、頻脈などの症状があらわれることがあります。
月に15日以上鎮痛薬を飲んでいる方は注意
鎮痛薬乱用頭痛の診断基準には「月に15日以上鎮痛薬を飲んでいる」というものがあります。市販されている鎮痛薬では無水カフェインが入っているものがあります。無水カフェインが配合されている鎮痛薬の場合には「月に10日以上」が診断基準になるので鎮痛薬の常用には注意が必要です。
無水カフェインの入っているものは特に注意
無水カフェインは、脳などの中枢神経を興奮させる作用だけでなく、他の鎮痛薬の鎮痛効果を補助する作用もあります。無水カフェインは、依存性を招きやすい物質でもあるため無水カフェインが配合されている鎮痛薬を使う場合には短期間の使用に留めた方がいいでしょう。
鎮痛薬乱用頭痛かもしれないと思ったら?
医師の診断で処方してもらった鎮痛薬を、医師や薬剤師の指示通りの量を決められた時だけ服用している場合には鎮痛薬乱用を起こすリスクはかなり少ないと言えます。
しかし、腰痛で市販の鎮痛薬を毎日使用しているけど頭痛も起きるという方は鎮痛薬頭痛の可能性があります。鎮痛薬乱用頭痛の対処法を紹介します。
鎮痛薬の使用をやめる
鎮痛薬乱用頭痛の疑いがある場合にはしばらく鎮痛薬の使用をやめてみましょう。
鎮痛薬頭痛は、鎮痛薬の中止を2週間ほど継続することで症状が落ち着くとされていますいてきます。しかし、鎮痛薬乱用頭痛は、鎮痛薬を再び使用すればるば症状が落ち着くのでなかなか止めることが難しく、腰痛も辛いものなので常用を止めることが難しいのが問題です。
長期連用は避ける
市販の鎮痛薬は長期間使用しないようにしましょう。薬物乱用頭痛の診断基準に「月に15日以上鎮痛薬を服用している」とあるので2週間連続して使用しない方がいいでしょう。
市販薬は、基本的に長期間使用するように開発されていません。一時的に症状を抑えて安静にして腰痛を抑えるくらいの目的で使用したほういいでしょう。
医療機関へ受診する
鎮痛薬乱用頭痛になると痛みに耐えて鎮痛薬の使用を抑える必要があります。しかし、日常的に痛みが継続すると日常生活に大きな影響が起きるので鎮痛薬の使用を中止することは困難と言えます。また、腰痛や頭痛が継続したり、症状が悪化する場合には重大な疾患である可能性もあるので不安に感じる場合には医療機関へ受診した方がいいでしょう。
鎮痛薬のそのほかの副作用は?
非ステロイド性抗炎症薬に代表される鎮痛薬には鎮痛薬乱用頭痛以外にも気をつけるべき副作用が存在します。そのため、鎮痛薬を使用して体調が変化する場合には使用を中止した方でいいでしょう。
胃腸障害
非ステロイド性抗炎症薬は、痛みや熱の原因となる体内物質のプロスタグランジンの生成を阻害することで解熱鎮痛効果を発揮します。しかし、プロスタグランジンは胃の粘液の分泌を促進させる効果もあるため非ステロイド性抗炎症薬を使用することで胃の粘液が減少して荒れてしまうことがあります。そのため、市販薬では胃を保護する成分が配合されていることがあります。
アスピリン喘息
非ステロイド性抗炎症薬を使用することでアスピリン喘息を起こすことがあります。喘息を持っている方は鎮痛薬を使う前にかかりつけの医師に相談した方がいいでしょう。
光線過敏症
一部の非ステロイド性抗炎症薬では、光線過敏症と呼ばれる副作用を起こすことが知られています。特に、非ステロイド性抗炎症薬が配合されている湿布を貼った部位に日光が当たることでかぶれたり、赤くなるなどの炎症を起こします。湿布を使う場合にはできるだけ光に当たらないように工夫する必要があります。
最後に
今回は腰痛をテーマに治療できる市販薬について解説しました。腰痛に効く市販薬には飲み薬や貼り薬、塗り薬のさまざまなタイプがあります。それぞれの成分やタイプの特徴、注意点について把握し自身に適した方法で腰痛を対処していただければと思います。
薬を使うのはたくさんある腰痛の対処法の1つであり、必ずしも正しいとは限りません。運動やストレッチなどさまざまな方法がありますので、いろいろな方法を試して最適な方法を見つけてください。今回の内容が参考になれば幸いです。
参考文献
一般社団法人日本頭痛学会 頭痛について知る
https://www.jhsnet.net/ippan_zutu_kaisetu_05.html
LOXONIN.S 薬物乱用頭痛
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_loxonin-s/understand/headache/type04.html
沖縄県薬剤師会 おくすりQ&A
http://www.okiyaku.or.jp/0_QA/kiso/kiso11.html