検索サイトでも「腰痛」の年間検索だけで3300000回検索されています。いまは健康で歩行や重いものを運んだりすることに不安もないけど、腰痛で活動の幅が狭まりそのまま寝たきりになるかも・・・と思うと不安になりますよね。
普段から腰のストレッチとか毎日ケアすれば解決するのかもしれませんが、「リモートワークで疲れているし、面倒でとてもそんな余裕はないよ」という方が多いかもしれません。
そこで、普段の生活スタイルを見直して改善できることからしていきましょう。実は日々の体重管理や運動、アルコールやタバコなどの嗜好品も腰痛に関連しているのはご存じでしょうか。
目次
腰痛とは? 頻度と腰痛の原因
腰痛ときくと「ぎっくり腰」を思い浮かべませんか? ぎっくり腰は急性腰痛の俗称で、一般的には突然腰部に生じる強烈な痛みを指します。腰痛の程度は発症後4週間程度で改善することも多いですが、約60%の患者は1年後も腰痛を訴えているという報告もあります。
国民生活基礎調査によれば、腰痛は患者の訴える症状として1 位、通院率は高血圧に次いで2 位という状況が10 年以上も続いており、腰痛患者は約2800 万人ともいわれています。
腰痛を医学的に経過や病態からわけてみましょう。
経過からの分類
時間経過から分類すると、腰痛の発症から4週間未満を急性腰痛、4週間以上3カ月未満を亜急性腰痛、3カ月以上を慢性腰痛と一般的に定義されています。
病態による分類
病態別では特異的腰痛と非特異的腰痛に分類されます。
特異的腰痛とは、診察や画像診断などで原因が特定できる腰痛のことです。
脊椎の腫瘍・感染・骨折、脊柱以外の内科的疾患(血管、消化器、腎・泌尿器、婦人科など)もそうですが、よくテレビや医療現場で聞くのは「椎間板ヘルニア」や「腰部脊柱管狭窄症」などの腰部に起因する神経症状を有する神経性腰痛などですね。
非特異的腰痛は、脊柱を構成する椎間板(背骨のクッションで加齢で弱ります)、椎間関節、筋肉や筋膜、じん帯などのいずれかの障害の可能性はあっても、画像検査で障害部位がはっきりせず、早急に治療が必要ではない腰痛ともいえます。
腰痛の約85%が原因不明で特異的な身体所見に乏しい非特異的腰痛であることが考えられ、最近では心理的ストレスも多く関与しているともいわれています。
運動方向による分類
他にも運動方向による分類もあります。腰痛が悪化する運動方向により前屈(屈曲)型と後屈(伸展)型に分類されます。障害部位は、前屈型であれば椎間板、後屈型では椎間関節と考えられています。
腰痛と生活スタイル
腰痛は非特異的腰痛が多くを占め、テレビや雑誌に載っているような治療やケアがすべてにうまくいくとは限りません。
腰痛をなくすような、あるいはならないためのすべての腰痛に通用する生活スタイルというのはあるのでしょうか。
リモートワークも普及し、ストレスでアルコールやタバコの量が増えたり、体重が増加したりするという話はよく聞きます。
実は日々の体重管理、タバコ、アルコール、ウオーキングやスイミングなどの日常的な運動と腰痛との関係についていくつか報告があります。
腰痛と体重管理について
太っていると腰痛になりやすいという漠然としたイメージはあるかもしれません。
体重管理について、「Associations of Body Mass Index and Body Height With Low Back Pain in 829,791 Adolescents」というタイトルの論文があります。
1998 年以降に軍人採用試験を受けた男女 829,791 人すべてを対象とし、BMI(体重(kg)÷身長(m)2として算出)と身長が腰痛の病態と関連しているか調べたものです。腰痛の有病率は、椎間板ヘルニアや骨折など客観的所見のある男女ともに0.2%、客観的所見のない男性では5.2%、女性では2.7%でした。
結論から言えば、BMI値の高さは、男性、女性ともに腰痛と有意に関連していました。
(男性で肥満の場合、有意差をもって1.163倍、女性で肥満の場合も有意差をもって1.211倍)。また身長の高さも男女ともに腰痛のリスクの増加と関連していました。身長の低い群と比較して、身長の高いほうが腰痛のリスクが男性で1.438倍、女性で1.224倍でした。
特異的腰痛、非特異的腰痛にかかわらず、腰痛は身長と同様に過体重および肥満と関連していたということになります。
肥満がある方は標準体重(BMI 18.5 〜 25.0)の維持で腰痛の予防をめざしましょう
腰痛とタバコについて
生活スタイルの中でタバコはどうでしょうか。分煙も進んでいますが、リモートワークのストレスでタバコの量が増えたという患者さんも多いです。
「The association between smoking and low back pain: a meta-analysis」というタバコと腰痛の関連性を検討したメタアナリシス研究があります。2009年2月までの海外論文データベースから抽出した40件(27件の横断研究と13件のコホート研究)によるメタアナリシスです。
結論からいうと、喫煙者は非喫煙者に比べ腰痛との関連性があり、その傾向は若年者に強いことが示されました。(現在も喫煙している人は非喫煙者に比べて過去1ヵ月間の腰痛、過去12ヵ月間の腰痛の訴えがともにに約1.3倍増加)さらに、元喫煙者で禁煙した人も非喫煙者に比べて腰痛の有病率が高いことが示されました。
論文自体が少ないので、もちろん喫煙が腰痛に必ず悪影響を与えると断ずることはできませんが、少なくとも腰痛になりやすい人は喫煙者が多いため、今からでも禁煙するのがいいかもしれません。
アルコールと腰痛
リモートワークで自宅での飲酒量が増えている方も多いですよね。
「Is alcohol intake associated with low back pain? A systematic review of observational studies.」 アルコール摂取は腰痛と関連しているか? と疑問を投げかけるような論文タイトルですが、観察研究のメタアナリシスになります。
各種の海外の論文で検索を行い、アルコール摂取量と腰痛との関連を調査した研究を集め、ランダム効果モデルを使用して、定量的な結果とその推定値を抽出したものです。
9件の研究(2件のケースコントロールと7件のレトロスペクティブコホート)からの結果は、アルコール消費量がわずかに腰痛(1.13倍)と関連していることを示していました。
リモートワークで体重増加、ストレスによるタバコとアルコール増加というのは腰痛の悪化に結びつきそうです。
運動と腰痛
運動すべきか否かということに関しても、報告された研究は限られていますが、運動をしない群と運動する群を比較した研究では,運動をしない群で腰痛のリスクが増加したという研究もあります。「Risk factors for chronic low back pain in a sample of suburban Sri Lankan adult males.」スリランカ人の男性の腰痛患者の比較対象試験です。
166例(腰痛患者)と196例(腰痛なし)を対象に症例対照研究を実施しています。年齢層は18~85歳で、症例の平均年齢は47.8歳に対し対照群の平均年齢は42.6歳でした。運動不足は(オッズ比 OR=16.4)と腰痛に関連していました。
他にもいくつか示しますと、姿勢の悪さ(OR=107.4)、腰痛の家族歴(OR=42.3)、日常的なアルコール(OR=2.4)、動物性タンパク質不足(OR=4.6)などが腰痛の有意な危険因子であることが示されました。
運動に関して海外の比較試験からは、腰痛における疼痛や機能改善に対して、ヨガ、ウオーキングなどの運動、集学的リハビリテーションなどは関連があり、適度な運動を取り入れた健康的な生活習慣が推奨されます。
体重に関しては,標準(BMI 18.5 〜 25.0)より低体重あるいは肥満のいずれでも腰痛発症のリスクと弱い関連が認められます。
まとめ
腰痛は原因がはっきりしない非特異的疼痛が多いですが、健康的な体重の管理が腰痛の予防には好ましいこと、喫煙と飲酒、運動不足は、腰痛発症のリスクや有病率との関連があります。腰痛の予防には健康的な生活習慣と穏やかでストレスが少ない生活が大事なため、見直せるところから始めてみましょう。