スポーツ中や日常生活の中で、転倒することってありますよね。
基本的には、転倒すれば手や足をケガすることが多いですが、尻餅を衝いたり腰から地面に落ちたりすれば腰痛が発生する可能性があります。
今回は、転倒による腰痛について詳しく解説します。
目次
腰痛が発生しやすい転倒の仕方は?
転倒した時、普通は手や足を痛めやすいですが、転倒の仕方によって腰痛が発生しやすい場合があります。ここでは、腰痛が発生しやすい転倒について紹介していきます。
尻餅を衝いた
若い方には少ないですが、高齢者の方はよく尻餅を衝きやすいです。原因はイスに座っていてバランスを崩した時に尻餅を衝いたり、お風呂で足を滑らせて尻餅を衝いたりします。高齢になると、若い方と比べてバランス能力が低下してきます。重心も不安定なので、ちょっとしたバランスの乱れでも転倒してしまいます。たまに「何もないところで転倒した」と聞くことがありますが、それはちょっとしたバランスの乱れからの転倒なのです。
まれに若い方でも尻餅を衝くことがあります。それはプールサイドです。お風呂の中でも足は滑りやすいですが、若い方であれば、何とか転倒しないようにバランスを保つことができます。もし転倒したとしても、手か足を壁や床に衝くぐらいで、尻餅を衝くことは少ないです。
腰から落ちた
自転車から降りようとした時や走行中に転倒したり、脚立に乗っている時にバランスを崩して転倒したりすると、腰から落ちることがあります。そのような転倒の場合、腰を強打しますので、必ず腰痛が発生するでしょう。腰から落ちるということは、手や足が衝けないぐらい無防備な状態ですので、腰には大きな力が加わります。よって、骨折などの大ケガを負うことがあります他にも、構築性側弯症には「症候性側弯症・間葉性側弯症・変形腰椎側弯症」などもありますが、あまり発生頻度が少なく、聞きなれない病気によるものですので割愛します。
コンタクトスポーツ
コンタクトスポーツ、いわゆるサッカーやラグビー、柔道など相手選手と身体がぶつかるようなスポーツは転倒による腰痛が発生しやすいです。自分で注意していても、急に相手選手がぶつかってきたり妨害されたりすると、対応できませんのでケガをしてしまいます。
サッカーの場合は、ボールを持っている時にスライディングされて転倒したり、コーナーキックなどで空中の競り合いの際に飛ばされて転倒したりします。
ラグビーは、どんなことでも起こり得ます。転倒して当たり前のスポーツですので、腰痛だけでなく、色んな場所のケガが多いです。
柔道は、やはり投げられた時です。状況によっては受け身がうまく取れなくて、腰を強打したり腰を捻ったりすることがあります。
腰を捻った
転倒した時に手や足を衝いてケガをしたが、実は腰を捻って痛めていることもあります。バランスを崩して転倒しそうになったら、無理な体勢でも身体を捻って手や足を衝こうとします。その時に腰に負担が掛かり腰痛を起こすのです。
転倒により疑われる腰痛について
では、転倒してしまったら具体的にどんな腰痛になるのでしょうか?転倒により疑われる腰痛を紹介していきます。
筋・筋膜性腰痛
筋・筋膜性腰痛とは、筋肉による腰痛のことを指します。転倒した時、腰の筋肉に無理な力は働くことによって腰痛が発生します。一番起こりやすい転倒の仕方は、腰を捻った時です。しかし、尻餅を衝いた時や腰から落ちた時も、筋・筋膜性腰痛になることがあります。なぜなら、転倒した時に腰を守ろうと、無意識に腰の筋肉が力を入れるためです。
お尻や足にシビレはなく、ピンポイントで痛いところがない場合は、筋・筋膜性腰痛が疑われます。
腰椎椎間板ヘルニア
背骨と背骨の間には、椎間板(ついかんばん)というクッションがありますが、それが急激な外力により脱出し、神経を圧迫することを「腰椎椎間板ヘルニア」といいます。急激な外力とは、腰を捻った時やコンタクトスポーツで相手選手と接触した時のことを指します。
また、腰椎椎間板ヘルニアの場合は腰痛だけでなく、腰の部分で神経を圧迫するため、坐骨神経痛のような症状が現れるのが特徴的です。転倒して腰痛が発生した時、お尻から太もも、ふくらはぎや足の先までシビレや痛みがないか確認しておきましょう。もし、腰以外でシビレや痛みがあった場合は、腰椎椎間板ヘルニアが十分に疑われますので、早めに医療機関に受診してください。
補足として、腰椎椎間板ヘルニアは「骨」のケガではなく、背骨と背骨の間にある「椎間板(軟骨組織)」の異常によるケガです。ですので、レントゲンでは確定診断はできません。必ず軟骨や靭帯などの全ての組織が分かる「MRI」が撮影できる医療機関に受診しましょう。
胸腰椎椎体圧迫骨折(きょうようついついたいあっぱくこっせつ)
背骨は首の骨(頚椎)・胸の骨(胸椎)・腰の骨(腰椎)と分けられていて、その中でも胸椎と腰椎の境目の所で「椎体圧迫骨折」を起こしやすいです。椎体とは背骨の中心部分のことをいい、尻餅を衝くと背骨に衝撃が加わり潰れてしまうのです。基本的に尻餅を衝いたぐらいの外力では、椎体圧迫骨折にはなりません。しかし、高齢になり骨がスカスカになってしまう「骨粗鬆症」を患っている場合は、ほんの少しの外力でも骨折を起こしてしまうのです。
こんなことが原因で錐体圧迫骨折が起こる可能性があります。
・重たいものを持ち上げる
・勢いよく椅子に座る
・落ちているものを腰を曲げて拾う
・くしゃみをする
・洗面台で前屈みになる(うがいや洗顔など)
この椎体圧迫骨折は、上で挙げた原因だけでなく、特に原因もなく発生する場合もあります。最近では「いつの間にか骨折」と呼ばれていて、CMでいわれて話題になりました。なぜこんなことが起こるのかというと、日常生活で自分でも気付かないぐらいの衝撃が背骨に加わっていて、腰痛があるから試しにレントゲンを撮ってみたら見つかるためです。
腰痛だけでなく、足にしびれるような感覚がある場合は念のため診察を受けに行った方が良いです。
それから、錐体圧迫骨折で錐体がつぶれてしまうと、その上下の椎体がつぶれやすくなってしまいます。そのため、また圧迫骨折を引き起こしてしまう可能性もありますので、以下のことに注意して行動してください。
・重たいものは極力無理して持たない
・定期的な受診に行く
・カルシウムを取るだけでなく、太陽の陽に当たってビタミンDを活性化させる
・適度に運動をして体幹の筋肉が落ちないようにする
仙骨骨折
骨盤の後ろの部分に、逆三角形の骨がありますが、それを仙骨といいます。仙骨は他の骨盤の骨に守られているため、骨折することは少ないです。しかし、仙骨の部分だけを強打した場合は、骨折することがあるのです。強打するケースは、プールサイドでの転倒です。プールサイドで足を滑らせて尻餅を衝いたら、当たり所により全体重が仙骨に掛かってしまいますので、骨折が起こります。
腰椎肋骨突起骨折
腰の骨(腰椎)には肋骨突起という、肋骨の名残のような骨の突起があります。腰から落ちたり、相手選手とぶつかったりすると、肋骨突起に当たってしまい骨折する場合があります。特に痩せ型の方は、脂肪が少ない分、当たりやすいため骨折しやすいです。
尾骨骨折
転倒して尻餅を衝いた時、衝いた床や地面に段差などがあった場合、尾骨骨折が発生します。平らなところでも発生することもあります。尾骨とは、いわゆる尾骶骨(びていこつ)のことで、仙骨に尻尾のように付いている骨です。転倒して、あまり痛くなかったが、自転車に乗る時に痛かったりトイレをする時に痛かったりする場合は、尾骨骨折がある可能性があります。
転倒を予防する
環境を整備する
一般的に、以下の場所が転倒しやすいと言われています。
・リビング(特にフローリング)
・玄関(段差がある場合)
・階段(思うように足が上がらない)
・寝室(ベッドから立ちあがろうとして)
・廊下(暗くて足元が見えない)
・浴室(床が濡れている)
一番多いのはリビング。
ものもたくさんありますし、こけてしまうと頭を打つなど大変なことになってしまいます。
また、高齢の方は手すりがついておらず、伝い歩きだと体を支えるものが不安定な場合もあります。
転倒してしまう原因を取り除き、安心して生活できるように環境を整えましょう。
普段から運動する
普段から運動していないとフラフラしてしまう可能性があります。
運動をしていて筋力が維持できていれば、転倒したときでも圧迫骨折などに至らないこともあります。
まとめ
転倒すれば、どんな形であれケガをしていることが多いです。転倒してすぐは緊張状態のため、痛みを感じにくく、その時は大丈夫でも後から痛み出すことも多々あります。腰痛があれば、上記のようなケガをしている可能性がありますので、早めに医療機関を受診してください。
<参考文献>
「標準整形外科学 第10版」 国分正一・鳥巣岳彦 医学書院
柔道整復学・理論編改訂第6版 公益社団法人全国柔道整復学校協会 南江堂