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腰痛はさまざまな要因で起こると言われていますが、原因が分かっていない腰痛も多いです。一般的に腰痛と聞けば、筋骨格系(筋肉・骨など)の痛みと考える人が多いのではないでしょうか。筋骨格系からの腰痛であれば、整形外科を受診し治療を行えばほとんどは改善します。

しかし、腰痛の原因の中には筋骨格系以外にも内臓の病気から起こるものも多く存在します。その中でも命を脅かすかもしれない怖い腰背部痛の出現する病気について紹介していきたいと思います。

怖い腰背部痛ってどんな病気?

怖い腰背部痛はいくつか存在しますが、特に「急に痛みが現れて、身の置き所がない冷や汗をかくほど痛み」が続く場合には、緊急性の高い『命を脅かす怖い腰背部痛』が隠れている可能性があります。
実際の病気についてご紹介します。

大動脈解離

1番怖いといわれているのが大動脈解離です。大動脈解離とは、大動脈(人間の体の中で一番太い血管)の壁が裂ける病気です。冬場になると、急激な血圧の変動などの原因で発症します。大動脈解離は、突然胸や背中・腰に刺し込むような痛みが現れます。

胸部の大動脈であれば背部痛、腹部の大動脈であれば腰痛が出現します。とにかく激痛で冷や汗を流しながら、背中を丸めた状態で腰部や腹部に手を当て、苦悶様の表情をしている場合が多くみられます。

大動脈解離は2種類に分類され、スタンフォードA型とスタンフォードB型解離に分かれます。特に怖いのがA型解離で心臓に近い血管が裂けるため、命の危険に繋がる病気です。

腹部大動脈瘤

腹部大動脈瘤とは、大動脈の壁の一部に瘤(こぶ)が出来てしまう病気です。主に無症状のため、健診の際に痩せ型の人でおなかが脈打っているなどといい偶然発見されます。

普段は無症状で悪さをすることが少ないのですが、急激な血圧の上昇により瘤が急に大きくなり破裂してしまうことがあります。破裂すると腹部や腰に突然刺し込むような痛みが起こります。

こちらも大動脈解離と同じように冷や汗を流しながら、腰腹部に手を当て苦悶の表情で受診する場合が多くみられます。完全に破裂してしまうと、命の危険に繋がるため、すぐに病院で手術を行う必要があります。

化膿性脊椎炎

化膿性脊椎炎とは、細菌などが血液やリンパの流れにより脊椎に運ばれ感染する病気です。

発熱とともに、腰痛が出現し徐々に痛みがひどくなり起き上がることすらままならない状態になります。脊椎の神経を圧迫することで、手足のしびれや排尿障害(尿が出にくいなど)が現れます。神経症状が出現している場合、手術が必要になる可能性も出てきます。

ただし、慢性化している場合には、発熱もあまり出ず、軽い腰痛程度のため発見されにくい病気です。ただの腰痛だろうとそのままにしておくと、菌が全身にまわり敗血症になりうるため、腰痛が続く場合には検査をおすすめします。

急性膵炎

急性膵炎とは、胆石などの胆管の病気や飲酒により膵臓に炎症が起こります。

特に脂っこいものが好きな人やお酒を毎日飲むといった人に多く、最近ではよく耳にする病気の1つです。

左の腰背部に突然、突き刺すような痛みが出現します。仰向けで寝ると痛みが強くなり、膝を抱えた姿勢になると和らぐのが特徴です。

急性膵炎も怖い病気ですが、さらに重症化することがあります。重症急性膵炎になると膵臓や周囲の脂肪組織に出血や壊死を起こし、全身に広がり敗血症になります。早急に治療を行わないと命に関わってきます。

腎梗塞

腰の痛みは意外にも、腎臓の病気なことが多いです。腎臓は、腰のすぐ上くらいに位置しているため、腎臓に病気があると筋骨格系の腰痛と勘違いする場合が多々あります。

よく知られているのが、尿路結石や腎盂腎炎です。腎盂腎炎は発熱を伴うことが多いですが、どちらも急な腰痛が症状として現れます。救急搬送される腰痛の原因としては尿路結石と腎盂腎炎はかなり多いです。

そんな腎臓の病気の中でも特に怖いのが、腎梗塞です。腎梗塞というと聞きなれませんが、心筋梗塞と同じように血栓が詰まる場所が腎臓です。腎臓梗塞が起こると、突然激しい腰痛が現れ、発熱・血尿などの症状も出現します。さらに腎梗塞が進むと、急性腎不全という状態になり腎臓が壊死してしまうのです。

そうなる前に、カテーテル治療や手術などの治療が必要になります。

痛みの程度と対処方法を知る

痛みの程度

筋骨格系の腰背部痛の場合、起き上がる時や姿勢を変える時に痛みが出やすく、安静にしていると改善することが多いのが特徴です。しかし怖い腰背部痛の場合、痛みは突然発症するものが多く、大概の痛みは身の置き所がない程の痛みや冷や汗が止まらないといった状態になります。

よく鎮痛剤を飲む方がいますが、ほとんどの場合は効果がなく痛みは持続します。

時々痛みが治まることがありますが、切迫した状態は続いていることがほとんどです。

対処方法

突然発症の刺し込むような腰背部の痛みが出た場合には、すぐに救急車を呼び病院に行くことをお勧めします。動けるからといって自分で病院に行こうとせずに救急車を呼んでください。その数分~数十分はとても大切な時間です。その数分~数十分で命が助かるかが決まるといっても過言ではないのです。

たかが腰痛と思っている方もまだまだ多いですが、高齢になればなるほど内臓疾患が潜んでおり、重症化してからしか気が付かないことも多いため、早期に受診することが大切です。

もし身近の方で「冷や汗を流し、腰背部痛で苦痛な表情」をしていたらすぐに救急車を呼んで対応してください。

腰痛が起こることによる問題点

たとえ病気じゃなかったとしても、腰痛を甘くみてはいけません。慢性的に腰痛が続くと、こんなことが起こります。

痛みでストレスが溜まる

痛みは急性・慢性を問わずに常にストレスを与える要因であります。
また、体を動かすことを避けるようになるため、筋力や体力の低下や、いつもはできていた家事や趣味が行えなくなることで日々にメリハリがなくそのサイクルがさらにストレスを生み、食欲低下や不眠にも繋がりかねません。

痛みの種類や程度は人それぞれであるため、痛みを数字で評価するNRSなどを活用しながら、腰痛の具合を評価していく必要があります。痛みを我慢せず、適切なタイミングで鎮痛剤を服用できているかなどもみていく必要があります。

転倒のリスク

腰痛が原因で二次的障害が生じてしまう可能性があります。特に高齢者の場合は腰痛で思うように動けず、転倒し骨折してしまう可能性もあるので注意が必要です。

脊柱管狭窄症などでは足にしびれが生じる場合があります。歩行状態をしっかりと観察しふらつきはないか、履物をしっかりと履けているかなど転倒リスクを下げる取り組みが必要です。

普段通りの日常生活が送れない

自分で自分のケアを行うことをセルフケアといいます。腰痛があり着替えやトイレが困難になる場合にはセルフケア不足ということができます。日常生活においてどの程度セルフケアが行うことができ、どこに介入が必要な状態なのか見極めることが重要です。

適切なタイミングで手助けをすることで自尊心を尊重しつつ、スムーズに生活が送れる支援をする必要があります。

そのために、どの動作で痛みが強くなるのか、その人の生活習慣を理解することも重要になってきます。

廃用症候群

廃用症候群とは、病気やけがによって長時間安静を保っていたことにより、身体や精神状態に悪影響を及ぼすことを指します。
つまり、腰痛があることで動く気力ややる気が低下してしまう状態です。これは特に高齢者に著明に表れます。

長い時間寝たきりでいると、全身の筋力の低下や、循環が滞り血栓症のリスクも出てきます。
廃用症候群を予防するためには、適度に気分転換を図ることや、ベッド上でもできる運動を行うよう促すなど、他者の介入の力が必要になってきます。

まとめ

命を脅かす怖い病気ばかり紹介してきましたが、腰背部痛と甘く見ていると実は怖い病気が隠れているかもしれません。たかが腰痛、されど腰痛です。

普段私たちが思っている腰痛は筋肉や骨が原因で起こっているものが多く、緊急性は乏しいです。しかし、腰痛は内臓疾患からも引き起こるということを忘れないでください。

もし、安静にしていても腰痛が続く場合には、一度受診してみましょう。おかしいなと思った時に受診することで、早期発見に繋がります。

<参考文献>
・病気がみえる 循環器 medic media
・病気がみえる 腎・泌尿器 medic media
・根拠がわかる疾患別看護過程 南江堂
・当直医マニュアル 医歯薬出版

著者情報

腰痛メディア編集部
腰痛メディア編集部

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