「側弯症」と聞くと子供の頃になる病気というイメージをお持ちの方が多いでしょうが、実は成人してから発症する側弯症にもさまざまな種類があります。
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背骨が曲がる病気の総称「成人脊柱変形症」
脊柱(背骨)は、正常の場合は緩やかなS字にカーブしています。本来は正面から見ると真っ直ぐなのですが、左右に曲がったものを側弯症、後ろに曲がったもの(姿勢が前側に倒れるようなもの)を後弯症と呼びます。小児期に発症する側弯症のほとんどは原因がわかっていませんが、成人についても、はっきりと原因がわかっているものは少ないようです。
成人脊柱変形症は、「背中曲がり」「腰曲がり」などとも呼ばれます。
<小児期の特発性側弯症の悪化>
変形側弯症(背骨が左右に曲がったもの)
変形後弯症(背骨が後ろに曲がったもの)
変形後側弯症(側弯と後弯が合併したもの)
骨粗鬆症で椎体骨折した後の後弯変形
小児期の特発性側弯症の悪化
子供の頃に発症する特発性(原因がわからない)側弯症は、骨の成長が落ち着くと症状の進行も落ち着くことがほとんどです。女子は15歳、男子は17歳で「骨端線」という骨の成長に関わる部位が閉鎖し、身長が伸びなくなると言われています。身長の伸びが終わると同時に、側弯の進行もおさまるということです。
しかし、側弯の程度が強い(曲がりの角度が大きい)方では、成長が止まった後でもゆっくりと側弯が進行し続けることがあります。
小児期に側弯症を指摘された方は、自分の側弯の程度などを定期的な受診でしっかりと確認することが大切です。自己判断で通院をやめてしまわないようにしてください。特に、小児期に手術を勧められた方は曲がりが強いということですから、医師が通院した方がいいと判断しているうちは通院を続けておきましょう。
大人の「脊柱変形」の原因
大人の「背中曲がり」「腰曲がり」の原因のほとんどは、加齢で、60歳以上では約半数に「曲がり」を認めるとも言われます。40〜50代以降になると、椎骨1つ1つの間でクッションの働きをする「椎間板」が弱くなり、潰れたり、ずれたりしてしまいます。これにより、背骨を正しい形に維持できなくなり、「背中曲がり」「腰曲がり」になるというのが、原因の1つとして考えられている説です。
椎間板には、血流がありません。そのため、栄養が届きにくく、老化が早いと言われている部位なのです。食習慣や生活習慣では、椎間板の老化を抑えることができません。大人の側弯は、誰も、何も悪くないことがほとんどだということです。
女性の方がなりやすいのはホルモンの影響
外を歩いていて、腰が大きく曲がったご老人を見かけたことはありますか?そのほとんどが女性だったのではないでしょうか。実際に、「脊柱変形」は、女性の方が比率の高い病気です。
閉経後に曲がってくる患者さんが多いこと、骨粗鬆症が女性のホルモンの減少と関連することなどが、女性の方がなりやすい理由として考えられています。
「脊柱変形」の症状
放っておけば、どんどん背中や腰の曲がりが強くなってしまいます。曲がりが強くなると、見た目がよくないだけでなく、腰痛や背中の痛み、酷い場合には痺れや麻痺などに進行していきます。強い腰痛や麻痺があると、日常生活もままならなくなってしまうでしょう。出来るだけ早く、正しい対処をすることが大切です。また、後湾変形がある方は逆流性食道炎を発症しやすいこと、肺が圧迫されやすいことなども指摘されています。体の前方に体重がかかっているため転びやすく、そこから骨折、寝たきりへと進んでしまうリスクもあります。
「曲がり」は治療できるのか?
自己流でなんとかしようとせず、きちんと専門の医師と相談することが大切です。また、整体やマッサージなどでは、曲がりを「治す」ことはできません。
コルセットで曲がりの進行を抑える
これは小児期の側弯症と同じ対応ですが、曲がりの進行を抑えるためにコルセットを着用することがあります。ドラッグストアなどで購入できる通常の腰痛用コルセットと異なり、もっと広い範囲を覆う、固い素材のもので、個人個人の体のサイズや曲がりに合わせて作成します。
曲がりを「理想の形に戻す」効果はありませんが、体を支える助けにもなるため、痛みの軽減にも役立つかもしれません。
リハビリで筋力をつける
腰痛は背骨の曲がりのない方でもよく生じる悩みですが、曲がりのある患者さんは、より痛みが強くなりやすいと言われています。脊柱変形の痛みには2種類あると言われており、1つは椎間板などの背骨そのものが原因の痛み、もう1つは背骨の周りが原因の痛みです。
背骨の周りが原因の痛みというのは、曲がった背骨を支えるために力が入りっぱなしだったり、筋肉が突っ張ったりしているせいで生じた「筋肉痛」の可能性があります。リハビリによって、曲がり自体を治療できるわけではありませんが、筋肉をほぐしたり筋力をつけたりすることが腰痛改善に効果的な場合があるのです。
しかし、見様見真似で無理な動かし方をすると、かえって痛みが悪化してしまうかもしれません。リハビリ専門のスタッフからきちんと指導を受けましょう。ストレッチや腰痛体操と併用しながら、身体機能を高めていきましょう。
先ほど、整体やマッサージなどで曲がりは治せないと言いましたが、筋肉をほぐしたり温めたりすることで痛みが軽減する可能性はあります。主治医に相談した上でご自身の納得いく方法を選ばれるのが良いでしょう。
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痛み止めを使用する
腰痛や痺れなどを伴う場合には、しっかりと痛みをとることも大切です。痛みをとることで、リハビリを行えるようになったり、前向きな気持ちを取り戻せるようになったりするでしょう。
痛みが強い場合には、市販の痛み止めでは効果が弱いかもしれません。しっかりと病院で相談し、痛みの強さに合ったお薬を使用しましょう。
手術をする
痛み止めやリハビリでも痛みを抑えられないような場合、医師から手術を勧められることがあります。小児期の側弯症でも程度によっては手術を行いますが、大人の場合は小児よりも大掛かりな手術となることが多いです。そのため、誰でも気軽に受けた方が良い、というものではないようです。手術の必要があるのか、手術をする場合は自分にどんなリスクがあるのか、しっかりと納得して治療を受けましょう。
脊柱変形症は対処できる病気
脊柱変形症は背骨の病気なので、怖い・動けなくなる病気等と思っている方もいるかと思います。「腰曲がり」「背中曲がり」は多くのご高齢の方に起きる一般的な症状で、正しく対処していけば、歩いたり、旅行をしたりと今まで通りの日常生活を送ることができるものです。
腰痛や痺れに対しては、今では効果的な薬がたくさん出ています。ひとりで我慢せず、医師などの専門家のアドバイスを受けながら、自分らしい毎日を送っていきましょう。
参照
脊柱変形とは|脊椎手術.com
側弯症に対する正しい理解と治療のために|日本側弯症学会
成人脊髄変形
術直後からのリハビリテーションは成人脊髄変形手術成績をより改善する