運動不足や食べ過ぎなどによって、体重が増えてしまうことはよくあります。また腰痛は今や日本人の国民病なので、ある日から腰が痛むようになることも珍しくありません。しかし、その腰痛や体重増加は、何らかの重大な病気のサインである可能性もあります。確率の高い話ではありませんが、「急に体重が増えた」「最近妙に腰が痛む」など、普通でない症状があるなら気をつけるべきです。
今回は急な体重増加や腰痛で考えられる病気を色々と紹介します。どんな病気も早期発見・早期治療を行うに越したことはないため、心配な症状がある場合は早めに医療機関を受診しましょう。
目次
体重増加と腰痛の関係を解説
体重増加と腰痛の関係は、体重が増えることで腰痛が生じるという構図で語られることが一般的です。以下では体重増加が腰痛を引き起こすことについて、解説します。
体重増加は肥満と浮腫(むくみ)の2パターン
体重増加は、食べ過ぎや運動不足などによって体脂肪が増えて太る「肥満」と、塩分の摂りすぎや月経周期などの影響でふくらはぎなどに水分が溜まってしまう「浮腫(むくみ)」に分類できます。肥満は腰痛だけでなく、様々な疾患の原因となるので、早急な改善が必要です。
むくみに関しては、一定期間経てば自然と解消される一時的なものなら、特に心配はありません。例えば、飲み会の翌日や生理前後のむくみは、誰しもが経験する症状です。しかし、むくみが慢性的である場合は、何らかの疾患が潜んでいる可能性もあるので、医療機関を受診しましょう。ちなみにむくんでいると思われる部分を強く押して、そこが指の形にへこむようなら浮腫がある証拠です。
重力や重心バランスの変化が骨や筋肉に負担をかける
肥満にせよ、むくみにせよ、体重が増えると腰にかかる負担が増大します。背骨のクッション材である椎間板の消耗が大きくなり、腰回りの筋肉や骨盤などへの圧力も強くなるので、腰痛を発症する確率は高まります。
またお腹や腰のあたりに脂肪がついて、重心のバランスが変わってしまうのも良くありません。例えば、お腹が大きく出ると、体は転ばないように反り腰気味になって重心を支えます。反り腰になると腰や背中を酷使するため、椎間関節性腰痛などになってしまうことが多いです。
急な体重増加と腰痛で考えられる重大な病気
ここからは急な体重増加や腰痛が起きた場合に、考えられる重大な病気を紹介していきます。
腰痛と関係が深い腎臓の病気
大腰筋や腰方形筋などの腰の筋肉は、腎臓の真裏にあることから、腰痛と腎臓の病気には密接な関係があります。具体的な病気ではなく、少し腎臓の調子が悪い程度でも、腰の筋肉が緊張して痛みが走ることも珍しくありません。
体重増加を引き起こす腎臓の病気としては、「腎不全」が挙げられます。腎不全は他の腎臓の病気などによって起こりますが、そこに腰痛の原因があることも考えられます。例えば、「腎結石」や「尿路結石」、「腎盂腎炎」などは、強い腰痛を伴うことのある病気です。また「ネフローゼ症候群」など、むくみの原因となる腎臓の病気もあります。
浮腫の症状が出る心臓・肝臓・甲状腺の病気
心臓や甲状腺、肝臓など、体の循環に関わる器官に問題があると、むくみが生じやすいです。むくみがあると体重増加が起こり、それによって腰痛が生じることも考えられます。ちなみにむくみの症状が出る心臓の疾患としては、「心不全」などが挙げられます。
また甲状腺は体温の調節に関わる器官です。そのため、「甲状腺機能低下症」や「下垂体機能低下症」で、甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの分泌が低下すると、冷え性になる場合があります。冷え性による血行不良は、腰痛の主要な原因です。
さらに「肝硬変」などの肝疾患が重症化すると、感染症を引き起こし、それによって腰痛が生じることもあります。実際に肝硬変が「化膿性脊椎炎」や「腸腰筋膿腫」を合併したケースが報告されています。
筋力低下や骨粗鬆症が出ることもあるクッシング症候群
「クッシング症候群(クッシング病など)」は、コルチゾールという副腎皮質ステロイドホルモンの分泌異常によって起こる病気です。主な症状は満月様顔貌や軽い眼球の突出、体重増加につながる中心性肥満などですが、筋力の低下や脊椎の骨粗鬆症、腰痛を引き起こすこともあります。女性に多い病気で、下垂体に腺腫ができることが主な原因です。
睡眠障害やうつ病が原因となることも
睡眠不足は食べ過ぎにつながると言われており、「睡眠障害」で満足に眠れないと、急激な体重増加を引き起こすことがあります。よく眠れないと体の疲れが十分に取れないため、腰痛が生じる可能性も低くありません。
また「うつ病」では、腰痛や肩こりなどの身体症状も出ますが、抗うつ剤をはじめとする様々な原因によって、体重増加を伴うこともあります。なお、心理的ストレスによる自律神経の乱れによる自律神経失調症でも腰痛は起こると考えられていることから、うつ病を発症していなくても、抑うつ気分のときは腰痛になりやすいと言えるでしょう。
腰の病気によって体重増加が起こる可能性も
「腰椎椎間板ヘルニア」や「腰部脊柱管狭窄症」、「腰椎すべり症」、「関節リウマチ」など、腰痛が生じる病気は色々ありますが、強い痛みがあると動くのが億劫になり、運動不足に陥ることも多いです。運動量が低下して代謝が落ちると、必然的に体重増加を招いてしまいます。
こうした現象は、一般的な慢性腰痛でも起こり得ますが、運動不足は筋力低下や血行不良につながり、腰の痛みを増長させる可能性があります。そのため、少々痛くても無理のない範囲で動くべきです。実際に近年の報告では腰痛の際は「寝ている」よりは「適度に動く」ことが推奨されています。また動けないほど痛みのであれば、専門的な治療が必要な状態だと言えるので、早急に整形外科などにかかりましょう。
女性は子宮筋腫や更年期も考えられる
女性の場合、「子宮筋腫」によって体重増加と腰痛が起きている可能性もあります。筋腫の重みによって体重が増加し、坐骨神経や直腸などが圧迫されることから腰痛が生じているケースです。月経にまつわる異常や貧血、下腹部痛なども見られるなら、婦人科を受診しましょう。
また女性は「更年期の不調」の一環として、体重増加や腰痛が生じることも珍しくありません。加齢による代謝や筋力の低下、腰椎の変形など、様々な原因が考えられますが、症状の改善には適度な運動がおすすめです。
急な体重増加・腰痛への対処法
体重増加と腰痛にお悩みの方は、以下の方法をお試しください。
急に体重が増えた・腰が強く痛むという場合は病院へ
「食べてないのに体重が増える」「急激な体重増加と腰痛が同時に起こった」などの症状は、重大な病気の前兆である可能性も考えられます。病気の種類によっては、放っておくと重篤な事態に発展することもあるので、心配な症状がある場合は早めに医療機関を受診しましょう。特に激しい痛みがあったり、発熱や倦怠感などの他の症状が見られたりする場合は、すぐに病院で見てもらってください。
適度な運動で肥満やむくみを解消することも重要
体重増加は腰痛の原因になります。また腰の痛みで動きが制限されれば、さらなる体重増加を招くこともあります。よって、体重増加と腰痛の負のスパイラルに陥らないためにも、適度な運動で太りにくく、腰痛になりにくい体を作ることは大切です。運動習慣がない人は、毎日10分のウォーキングからでも良いので、無理の無い範囲でダイエットを始めてみましょう。
太りにくい生活習慣を心がけつつ、心配な場合は病院へ
急な体重増加や腰痛で心配な場合は、早めに医療機関を受診するのがおすすめです。重大な病気が潜んでいる可能性もあるので、放っておくのは避けましょう。また適度な運動をはじめとする健康な生活習慣を心がけ、太りにくい体・腰痛になりにくい体を作っていくことも大切です。ウォーキングやストレッチなどの軽い運動なら今日からでも始められるので、早速実践してみましょう。
▼参考URL
Doctors File, 体重増加の原因と考えられる病気一覧
日本消化器病学会, アルコール性肝硬変の経過中に化膿性脊椎炎と腸腰筋膿瘍を
合併した 1 例
恩賜財団済生会, 体重増加
品川美容外科, 体重の増加が腰痛の原因に!
美活百科, 急に太った時は要注意!体重増加はむくみのせいかも
Women’sHealth, その体重増加は病気のサイン? 急に体重が増えたときにチェックしたい5項目
EPARK, 子宮筋腫になると太る?急におなかが出たら危険なサイン?病院に行く目安も
難病情報センター, クッシング病(下垂体性ACTH分泌亢進症)(指定難病75)
日臨外医会誌, 非定型的なCushing症候群の1例