側弯症は、本来垂直方向にまっすぐであるはずの背骨が、左右に歪んでしまう状態のことを指します。思春期の女児に多く発症し、無症状であることも普通ですが、重度の場合は腰痛や下肢のしびれなどを伴うことがあります。そんな側弯症である女性には、将来的な妊娠・出産に不安を抱えている方も多いはずです。
そこで今回は腰痛も引き起こすことも側弯症と、妊娠・出産の関係について解説します。自然分娩や無痛分娩の可能性、側弯症を抱えた妊婦さんがやってはいけないことなども紹介するので、参考にしてください。
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目次
側弯症の女性でも普通に妊娠・出産ができる
側弯症であっても、基本的には側弯症のない女性と変わらず、妊娠・出産が可能です。実際、側弯症の女性が自然分娩で何人もお子さんを出産するケースは普通にあります。
側弯症によって出産が困難になるという研究結果はない
側弯症が、流産や早産、その他の出産に関するトラブルの原因となるという報告はなされていません。そのため、基本的に側弯症は妊娠・出産に影響しないと考えて良いでしょう。ただし、側弯症はまだはっきりと解明が進んでいない病気です。側弯症の8〜9割に関しては、原因すらわかっていません。
よって今後、妊娠や出産と側弯症とを結びつける何らかの研究結果が出てくる可能性はあります。将来的な妊娠・出産を考えている側弯症の女性は、その都度最新の情報を収集するのがおすすめです。
自然分娩は可能だが帝王切開の割合が普通よりも大きい?
側弯症を持っていても、普通に自然分娩ができるケースも珍しくありません。しかし、側弯症の妊婦の半数程度は帝王切開を要するという情報もあります。病院で行われる帝王切開の割合は普通25%程度なので、その情報に基づけば、側弯症であると帝王切開の確率がやや高まると考えられます。
ただし、帝王切開と側弯症との相関を打ち消すようなデータもまたあり、はっきりとしたことは言えません。側弯症のない女性でも、帝王切開はそう珍しいことではないため、「帝王切開の可能性もある」と心づもりをしておきましょう。
たいていの場合は無痛分娩もできる
無痛分娩は、側弯症があっても可能です。ただし、背骨の湾曲やねじれがひどい場合は、難しいこともあります。重度の側弯症に対しては、無痛分娩を断っているところも少なくありません。無痛分娩では、脊椎内部の硬膜外にカテーテルを挿入して麻酔をしますが、側弯の程度によっては、カテーテルをまっすぐ入れられないからです。
また側弯症の治療で、手術(固定術)をしている場合、脊椎に金具が埋め込まれている箇所には硬膜外麻酔ができません。金具の付近に麻酔をすると感染症のリスクがあるからです。その場合、金具を避けて麻酔をすることになりますが、良い場所に麻酔ができないと、十分に痛みが取れないことがあります。なお、これは椎間板ヘルニアの手術をした場合も同様です。
子供が側弯症になる可能性はある
思春期特発性側弯症や先天的側弯症は、遺伝的な要因で発症・進行することがあると言われているため、側弯症の女性からは同じく側弯症の子供が生まれる可能性があります。実際、側弯症の母親から生まれた姉妹が、両方とも側弯症になったという事例も聞かれます。「産道が側弯によって歪んでいるから、赤ちゃんの背骨も曲がってしまう」との主張もありますが、それに関しては、真相は定かではありません。
側弯症が遺伝する可能性があることは確かであるため、側弯症の方は医師の診察を受けるなどして、お子さんの背骨が曲がっていないかを確認するのがおすすめです。
妊娠によって背骨の湾曲がひどくなるのはレアケース
妊娠の影響で背骨の湾曲が進行するのは、一般的なケースではありません。妊娠によって湾曲が進行したという報告もあるものの、妊娠は湾曲の角度を増大させないと結論づける研究結果もまたあります。
ちなみに側弯症の症状は、湾曲の程度と相関があり、小さいカーブ(30度未満)であれば、症状が出ないことも多いです。一方で50度以上など、背骨のカーブが大きくなると、腰痛をはじめとする様々な症状が出てきます。よって妊娠・出産を経験してから、腰痛などがひどくなった場合は、一度医療機関で背骨を調べるのもおすすめです。重度の側弯症では下肢の痺れや内臓の障害などが出ることもあるため、注意しておきましょう。
骨粗鬆症のリスクが高まるかについては不明
側弯症であるかないかに関わらず、妊婦さんは骨粗鬆症にならないための対策をしっかり行いましょう。妊娠中や授乳期間中は、胎児にカルシウムを取られるため、若くても骨粗鬆症になる恐れがあるからです。よってカルシウムやビタミンD、タンパク質などを十分に摂取したり、適度な運動をしたりといった対策を講じてください。
ちなみに側弯症と骨粗鬆症を結びつける強い証拠はないものの、側弯症が骨量減少に影響を与えるかどうかの議論には、まだ結論が出ていません。そのため、側弯症の妊婦さんは、より意識的に骨粗鬆症への備えを行うべきです。
側弯症の妊婦さんがやってはいけないこと
側弯症の妊婦さんは、脊椎に過度な負担がかかる運動や日常動作は避けてください。ハードなエクササイズや重いものの持ち上げなどは危険です。また湾曲の程度にもよりますが、ランニングもやめておいた方が安全だと言えます。
あとは飲酒や喫煙を控えるなど、他の妊婦さんと同じです。バランスの良い食生活や適度な運動などをこころがけ、元気なお子さんを産む準備をしていきましょう。
産後の腰痛は筋トレやストレッチで改善しよう!
産後の腰痛に苦しむ女性は多いです。理由は色々と考えられますが、主に腹筋をはじめとする筋肉の緩みや筋力の低下、赤ちゃんの世話をすることによる疲労などが挙げられます。よって、産後の腰痛を改善・予防するには、筋トレやストレッチなどの腰痛体操や骨盤体操が有効です。
また一部には側弯症の患者は産後に腰痛が出やすいとの情報もあるため、特に側弯症の方には、積極的に筋トレやストレッチを行い、腰痛ケアをすることをおすすめします。
なお、適度な運動は骨粗鬆症予防にも繋がります。運動をすると骨を作る骨芽細胞が刺激され、骨の代謝がよくなるので、産後の骨粗鬆症を防ぐ意味でも、頑張って体を動かすべきです。方法が分からない方は、整形外科を受診して運動療法を学びましょう。
「腰痛ドクターアプリ」の運動療法を活用するのがおすすめ!
どんな筋トレやストレッチをしたら良いのかわからない方は、「腰痛ドクターアプリ」を使ってみてください。これはスマホで腰痛の状態や危険度を診断してもらえるオンラインサービスですが、それぞれの腰痛を改善するための運動療法(動画)も提供されます。
腰の状態を知った上で、自分に最適な筋トレやストレッチを教えてもらえるので、産後の腰痛を解消したい方はぜひ試してみましょう。
側弯症による妊娠・出産への影響はあまり心配ない
側弯症によって妊娠や出産に影響が出ることはあまりないので、安心してください。程度や治療の状況によって、硬膜外麻酔が打てない(無痛分娩ができない)ことがあるくらいで、側弯症の方でも健康な赤ちゃんを産むことは十分に可能です。
ただし、側弯症には遺伝的な影響があると考えられているため、お子さんの背骨の状態には注意しておきましょう。また産後の腰痛を改善したい方は「腰痛ドクターアプリ」をお試しください。
参考URL
Scoliosis Research Society, 「側弯症がある小児が成人に成長した後の状態について」, <https://www.srs.org/japanese/patient_and_family/FAQs/growing_up_with_scoliosis.htm>, 2021/03/10
ヘルス・イン・ユア・バンド(2013), 「脊椎側弯症の方のための健康的な妊娠・出産完全ガイド」, <https://scoliolife.com/wp-content/uploads/2016/04/Pregnancy-JP.pdf>, 2021/03/10
慈恵病院による無痛分娩について, 「無痛分娩に関するQ&A」, <http://jikei-hp.or.jp/painless/faq/>, 2021/03/10
〜step by step〜[側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ, 「(追記あり)特発性側弯症手術患者と出産について」, <https://blog.goo.ne.jp/august03/e/e4e1ff6f623e483cbc4022aea65666ce>, 2021/03/10
東京マザーズクリニック(2020), 「院長と麻酔科医の無痛分娩あれこれ」, <https://mothers-clinic.jp/anesthetist/2020/07/270729.html>, 2021/03/10
日本側彎症学会, 「側弯症とは(知っておきたい側弯症)」, <https://www.sokuwan.jp/patient/disease/heredity.html>, 2021/03/10
Toco.KIKAKU, 「兵庫県の個人医院勤務助産師、伊藤雅江さんのコラム “骨盤ケア・まるまる育児”で、脊柱側弯症の娘からお手本のような孫」, <https://tocokikaku.com/column/column.php?CLM_NO=184>, 2021/03/10