陣痛の際には腰痛がつきものとされており、お産をされた経験者の約半数以上は陣痛時の腰痛を経験しています。そもそもなぜ陣痛の際に腰痛が出現するのか、メカニズムは多く述べられており決定的な要因がわからないのも事実です。そのためどのように対応したほうがいいのかわからないケースも多々あり苦しんでいる妊婦さんをケアできないなんてことも多いのが実際です。
今回、陣痛時に生じる腰痛の要因と腰痛に対するケアの方法をご紹介していきます。この記事を参考に腰痛と陣痛の関係を知りましょう。
目次
なぜ腰が痛くなるのか
なぜ腰痛が生じるのか?
この要因は多岐に渡るとされていますが、今回は2つの要因に対してご紹介してきます。
姿勢の影響
腰痛の原因の一つとして、姿勢の影響があります。最も腰痛の原因の一つとして言われている姿勢の影響ですが、一般の方とは異なり妊婦さんは胎児が成長していくにつれてお腹が前の方に出てくるのが一般の方と大きく異なる点です。
本来背骨はS字状に弯曲しており、頸椎では前方に突出し胸椎は後方に突出、腰椎は前方に突出しているのが解剖格的な骨の並びです。お腹が前方に突出してくることで、腰椎がより前方に突出してしまい背骨の骨や骨との間にある椎間板、骨と骨をつなぐ関節や靭帯、筋肉に負担をかけてしまい腰痛が発生するとされています。
また腰椎の下には仙骨といい骨盤の骨である寛骨という骨と連結して仙腸関節という関節を形成しています。この仙腸関節は動かない関節(不動関節)とされていますが、腰椎がより前方に突出することで仙腸関節に“ズレ”のストレスが生じるために痛みが生じるともされています。
そのため妊婦さんの声として、「妊娠初期よりもお産が近づいてくるようになってからの方が、腰痛が増強した」「腰痛が一番強い時期は妊娠後期で、出産間近の陣痛がくる頃には腰痛が最高潮だった。」との声も聞かれるほどです。
そのため妊娠中には腰痛が切っても切り離せない関係にあると考えます。
しかし、なぜ腰痛が増強するピークが陣痛時なのでしょうか。出産してしまえば姿勢の影響から逃れられ、力学的な考えでは負担が減るはずなので腰痛が軽減するはずです。陣痛時の腰痛には姿勢だけでは解決できない要因があります。
それはホルモン系の関係です。次の章ではホルモンと腰痛について説明してきます。
ホルモン系の影響
陣痛の際には、脳の下垂体という場所からオキシトシンと言われるホルモンが多く放出されます。オキシトシンは出産の際には必須のホルモンとされており、分娩を促進する効果があります。そのため出産予定日を過ぎても陣痛や子宮口の開大が見られない場合は、陣痛促進剤(分娩促進剤)という薬を体外から体内へ入れ出産を促していきます。
その促進剤こそがオキシトシンで、他にも陣痛を早めるとされるホルモンは存在しますが、投薬の関係上投薬量を調整しやすいためオキシトシンが選択され、注射や点滴をしていきます。
そのオキシトシンが陣痛の生じた際には多く放出されるため、妊婦の体はお産に備えることとなります。出産の際は胎児の頭部が子宮口から出てくるため、体はお産の準備をしなければなりません。
その準備とは股関節周囲の関節が緩みお産をしやすくする体の反応が生じます。関節が緩んだ結果、緩みによる腰痛や緩みが故の“関節のズレ”が生じ、腰痛が発生するものと考えられています。
ホルモンが放出されることで、股関節や骨盤が緩みお産しやすくなるメリットがある反面、緩みが生じた影響で周囲の靭帯や関節の支持性が低下することや体が歪みやすくなるといったデメリットもあり腰痛につながっています。
そのため、陣痛時の腰痛は切っても切り離せない関係ともいえます。
上記を考慮すると、腰痛が発生したことが陣痛のきっかけとして捉えてもいいのでしょうか。実は、陣痛時の腰痛である場合とそうでない腰痛が存在するためイコールとは言い切れません。次の章では陣痛による腰痛であるケースとそうでないケースの鑑別方法をご紹介していきます。
陣痛との見分け方方法
先ほどの章で、陣痛時の腰痛はお産の兆候である可能性があると紹介しましたが、必ずしも腰痛=陣痛ではありません。しかしどのように見分けたらいいのかわからないケースが多いので、ポイントをご紹介いたします。こちらのポイントは必ずしも絶対ではないので参考までにしてください。
痛みの位置が異なっている
ポイント1は痛みの位置です。腰痛がある場所がどこなのかを正確に把握してください。その痛みが生じている部位が一定している場合は陣痛による腰痛の可能性が低いです。
一方、腰痛の部位が徐々に下がってきている、腰痛というよりお尻のほうまで痛みがある場合は、陣痛による腰痛の可能性が高くなります。
これは、出産の準備に備え胎児が下に下がってきておりそれに伴い、腰痛の部位が徐々に下に下がってくるケースがあります。余談ですが、私の妻は腰痛から始まり仙骨周りの痛み、出産間近には尾骨といいお尻の先端の骨の方に痛みが生じていました。私自身のケースのように、痛みの部位が徐々に下に下がってくるようですと、陣痛による腰痛の可能性が示唆されます。
腰痛のタイミング
ポイント2は腰痛の生じるタイミングです。慢性腰痛になった方はご理解いただけるかと思うのですが、慢性腰痛のようなケースでは疼痛は動作による腰痛の出現と持続的な腰痛が主体です。妊娠初期や中期の腰痛も同様で、持続した姿勢や前屈み・立った状態が長く続くことで腰痛を訴えるのが特徴で、これらの腰痛は姿勢の変化による力学的な負担が腰痛の原因であることが多いです。
一方、陣痛による腰痛の場合腰痛が出現するタイミングが規則的で痛みが徐々に強くなってくることが特徴です。そのため腰痛が来るタイミングも経過とともに妊婦側が理解するため腰痛に備えるケースも多く見られます。
立っていられないほどの痛み
ポイント3は立っていられないほどの痛みが生じることです。
体がお産に備え、緩み出し規則的な徐々に強くなるような腰痛が生じてくるため、妊婦は立っていられないほどの痛みを経験します。特にこのような腰痛が生じた最初の方は痛みが生じる間隔が長いため、準備できますがお産が近づくにつれて痛みを感じる間隔が短くなります。そのため腰痛による影響と腰痛に耐える疲労感で立っていられないほどの腰痛を経験します。
そんな、兆候があった際にどんなケアをしてあげられるでしょうか。痛みがあるのをそっと見守っているのも良いでしょう、しかし共にお産を頑張るからには腰痛に対するケアの方法を知っておくべきだと考えます。
最後に陣痛による腰痛のケア方法をパートナー側の目線でご紹介していきます。
腰痛時の緩和ケア(陣痛だった場合のケア編)
ケアの方法1.腰部を手で叩打・摩る
ケア1は腰部を手で叩打するまたは摩ることです。叩打はタイミングよく叩くと良いです。強さに関して、やや強い程度の強さで叩くと良いです。弱すぎても、効果がないためある程度の強さで叩いてください。
ケアの方法2.温める
ケアの方法2つめは温めることです。
温めには心を落ち着かせる・筋肉の緊張を和らげる効果があるため、痛みがある場合には効果的です。
ケアの方法3.テニスボールで押す
ケアの方法3つ目はテニスボールで痛みのある部分を押す方法です。産婦人科であると一般的に置いてあることが多く、陣痛の際に用いる手段としては有名で効果的なものです。押し方は、尾骨から腰骨の方にかけて押すと、陣痛時の腰痛が緩和されます。