橋本病とは甲状腺において、本来は異物を排除する役割の免疫が、自分自身の正常な細胞・組織に過剰に反応し、攻撃を起こす疾患の一種です。
橋本病には、こんな症状があります。
・強い疲労感がある
・手足がむくむ
・寒気がする
・倦怠感がある
これらの当てはまる女性は橋本病かもしれません。中には、内分泌ホルモンの乱れによって腰痛や頭痛、不眠などを起こすこともあります。
橋本病は男性1に対して女性は20以上と言われているくらい、圧倒的に女性に多く、30代~40代で起こりやすいです。成人女性の10人に1人というくらい身近な病気です。
ここでは、そんな橋本病について詳しく解説します。
目次
橋本病によくある症状
冒頭部分で紹介したものも含めて、以下のような症状が起こることがあります。
・喉の前の部分が腫れる
・寒気
・むくみ
・体重増加
・全身の倦怠感
・疲労感
・肌の乾燥
・腰痛
・無気力
・生理不順
・便秘 など
当てはまる症状が多くなるほど、橋本病である可能性があります。
この症状の中でも特徴的なのは、のどが腫れるという症状。上の症状に加えて、のどの腫れを感じるのなら、橋本病の可能性が高くなります。
橋本病を治療する方法
橋本病の治療方法は症状によって異なります。
橋本病というと、甲状腺機能低下を起こす病気だと認識しているかもしれませんが、全ての人が甲状腺機能低下症になる訳ではありません。
炎症が軽度の場合は甲状腺機能は正常な状態です。
甲状腺の状態が正常であれば、そもそも自覚症状もほとんどなく、基本的には治療をする必要もありません。日常生活を送る上での制限もありません。
ただし、妊娠中のように特殊な場合は甲状腺の機能が正常でも、内服治療を行うことがあります。
甲状腺機能低下症なら内服治療
甲状腺ホルモンが足りない状態、要するに甲状腺機能低下症になっている場合、内服治療が必要となります。
薬(チラーヂンS®、レボチロキシンナトリウム錠「サンド」®)を内服することによって、甲状腺ホルモンを正常に戻します。
病気の根本的な治療を行っている訳ではありません。足りない甲状腺ホルモンを補充しているだけですので、長期的に内服する必要があります。
とはいえ、薬の効果が順調に表れた場合は、甲状腺機能低下による症状がなくなり、日常生活が可能になります。
甲状腺肥大がひどいなら取り除く場合も
甲状腺の腫れが大きく、のどの圧迫感によって飲み込むのが難しくなった、前かがみになれないなど、日常生活を送る上で支障が現れた場合、甲状腺腫の除去を検討する必要ことになります。
橋本病は一生付き合っていく病気
橋本病は完治することはありません。一生付き合っていく病気です。というと、不安を感じるかもしれません。
ですが、上でも説明したように、甲状腺ホルモンに異常がなければ問題なく生活を送れますし、何らかの症状が出ていたとしても、投薬することによって症状なく生活している人もいます。
橋本病の人の中でも、7割~8割は健康な人とほとんど変わらない生活を送っているそうです。
定期的に診察を受けるように心掛けたり、症状が悪化したときには投薬治療が必要になることもありますが、悲観し過ぎないでください。
橋本病が起こる原因
橋本病になる原因は、簡単に説明すると自己免疫の異常です。
人間の体内には、細菌・ウイルスなどに異物を排除する自己免疫というものがあります。その自己免疫が、自分の臓器や細胞を異物だと誤認識してしまい、攻撃するようになります。
異物を攻撃する働きのあるものを抗体と言い、抗体が甲状腺を攻撃することによって、慢性的に炎症を起こして腫れたり、甲状腺機能異常を起こしたりします。
それが橋本病です。
なぜ自己免疫の異常が起こるのかに関しては、まだ明らかになっていません。
ちなみに、自己免疫疾患はバセドウ病や膠原病、関節リウマチなどの病気の原因になります。
橋本病の診断をするには
橋本病の診断方法は主に2つあります。
血液検査を受ける
血液検査では、甲状腺に対する抗体の有無、甲状腺ホルモンの濃度を確認します。
甲状腺に対する抗体がある場合は自己免疫異常があると考えられます。
それと同時に、甲状腺ホルモンの濃度をチェックをします。自己免疫異常があったとしても、ホルモン濃度は正常の場合もありますので、治療が必要かどうかの判断を行います。
超音波検査をする
超音波検査では、甲状腺が腫れているかどうかを確認します。
橋本病は甲状腺が腫れてしまうことがあります。
高齢の人は腫れていても、触診で分からない場合があります。より確実に確認するために、橋本病だと診断された場合は念のため超音波検査を受けておきましょう。
橋本病によって起こる腰痛
橋本病は内分泌ホルモンが乱れることがあります。
その内分泌ホルモンの乱れによって、全身の代謝が低下してしまい、その結果体が冷え腰痛を引き起こすことがあるのです。
手足の冷えと腰痛の関係を解説|冷えからくる腰痛や腰の病気が原因の足冷えを紹介
もし、冷えによって腰痛が起こった場合は、湯船に入って体全体を温める習慣をつけたり、気温の低い場所にいる時は厚着をするなど、冷えないように工夫しましょう。
日常生活で注意すべきこと
橋本病だと診断されても、甲状腺機能に問題がなければ日常生活で気を付けることは特にありません。
とはいえ、甲状腺ホルモンが低下してしまったり、のどに腫れを感じる場合は以下のようなことに気を付けてください。
ヨウ素の摂取を控える
橋本病の人はヨウ素を取り過ぎないように注意した方が良いです。
ヨウ素は甲状腺ホルモンを作るのに必要なものです。というと、甲状腺機能低下症になった場合は、たくさん摂取した方が良いんじゃないかと思うかもしれません。
ですが、ヨウ素を摂り過ぎてしまうと、甲状腺ホルモンが作られなくなってしまいます。
ヨウ素が多く含まれている食べ物を毎日食べるのはやめてください。
【ヨウ素が多く含まれている食べ物】
・昆布
・ひじき
・わかめ
・あおのり など
海藻類に多く含まれているので、好きな人は食べ過ぎに気を付けてください。
また、だし入りの調味料にも含まれているので注意してください。
うがい薬は使わない方が良い
イソジンのうがい薬にはヨウ素が含まれています。橋本病の人はイソジンのうがい薬を使わない方が良いです。
そもそも、うがい薬を使わない方が風邪の予防効果があるという実験結果もあります。
禁煙、あるいは喫煙量を減らす
橋本病の人が喫煙すると、甲状腺機能低下症に進行するリスクを高めてしまいます。
理想は禁煙することですが、それが難しい場合は少しでも喫煙量を減らす努力を行ってください。
定期的に診察を受ける
橋本病は日常生活を送る上で特に問題がないケースもあります。
それでも、気付かない間に変化が起こっている場合があるので、定期的に診察を受けてください。
また、内服治療を行っている場合でも、甲状腺ホルモンが一時的に変化してしまうことがあります。半年に1回は通院しましょう。
橋本病によくある質問
バセドウ病とは何が違うの?
自己免疫疾患、甲状腺機能に異常が現れるといった部分で共通している橋本病とバセドウ病。
根本的な部分は同じというだけあって、橋本病がバセドウ病に、あるいはバセドウ病が橋本病になることもあります。
また、現れる症状に共通している部分もあります。
【共通している症状】
・首元が腫れる
・疲れやすくなる など
現れる症状として違うものは以下のものがあります。
橋本病 | バセドウ病 |
---|---|
無気力 | イライラ |
冷え性 | 暑がり |
体重増加 | 体重減少 |
眠気 | 不眠 |
便秘 | 下痢 |
顔のむくみ | 目が突き出る |
月経過多 | 無月経 |
ほっとくとどうなるの?
橋本病をほっておくと、甲状腺機能の低下が起こる場合があります。
加えて、心臓・心臓を包む膜(心嚢)に水が溜まることによって、むくみや息切れ、心不全などが起こる場合も。
甲状腺だけでなく、他の臓器の自己免疫疾患と合併するリスクもあるので、日常生活を送る上で全く問題がなかったとしても、油断し過ぎないように注意してください。
橋本病はどうやって気付く?
橋本病は甲状腺が正常であれば、特に問題なく生活できるため、自分が橋本病であると気が付きにくい場合があります。
では、気付いた人は何をきっかけに自分が橋本病であることを知ったのでしょう。一般的には以下のパターンがあります。
・健診や人間ドッグで指摘された
・橋本病の症状に当てはまるところがあった
・首が腫れていることが気になった など
まとめ
橋本病は成人女性の10人に1人と、身近な病気ではありますが、甲状腺機能低下症になってしまうのはその中の4人~5人に1人だと言われています。
多くの場合は甲状腺ホルモンは正常な状態で、日常生活を送る上でも困ることはありません。
とはいえ、症状が重くなると体調を崩したり、のどが腫れて辛くなってしまうことがあるので、普段から気を付けるようにすると共に、定期的に診察を受けるようにしましょう。
【参考サイト】