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心因性腰痛とは?
心因性腰痛とは、ストレスや抑うつ状態、心の問題が影響し、「腰痛」という症状が出現している状態です。患者さんによっては、腰痛症状に着目してしまうので、そもそもの原因である心因的要因にフォーカスされず、原因の究明や治療に難航することがしばしばあります。
心因性腰痛の特徴とは?
腰痛を主訴として整形外科を受診したところ、はっきりとした原因がわからない、症状と所見が一致せず、なぜこのような症状が起きているのかわからないといった腰痛症状が特徴的です。実は慢性腰痛の80%が心因性腰痛といわれているほど。
検査を進めるうえで、とくに中高年以降は加齢性変化として骨に異常が見受けられ、椎間板や背骨に変性があることはありますが、患者さんの訴えと相違があることが多いのです。
実際には、心因性要因のみで腰痛を訴えるケースは少なく、画像診断上、腰椎の加齢性変化が見られる場合もありますが、実際に「こんなに強い症状になるかな?」「変性している位置と痛みを訴えてる位置がずれているな」といった状態になることがあります。
心因性腰痛の治療法とは
心因性腰痛が疑われる場合、最初に選択される治療法は「薬物療法」です。まずは痛みをとることを念頭にして治療を開始します。実際に症状が重くない人は「病院から出されている内服薬を飲んでいる」という安心感も相まって、腰痛が軽くなったり消失したりします。
これは「自分は重症ではない」という気持ちの安定が得られたことが大きな要素であるともいえるでしょう。おもに使用する薬は非ステロイド性消炎鎮痛(NSAIDs)です。あわせて湿布薬なども使用されます。
それらを内服しても、改善が見られない場合は、精神的、心理的要因を改善するために抗うつ薬効果もある「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)」が使用されることもあります。
これらの薬は抗うつ薬として使用されてきましたが、脊髄の中枢神経の痛みを抑える働きを強める効果に着目され、近年慢性腰痛の心因性による症状に対しての治療薬として着目・使用されるようになりました。
神経系に作用して鎮痛作用を示す薬剤
腰痛治療の最初の選択肢でもある「NSAIDs」。これらは局所的な痛みの物質産生を抑制する薬です。対して前述した「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害(SNRI)」などに代表される薬は神経痛に対して効果のある薬剤です。
「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)」に代表される薬剤は「サインバルタ®」で、神経障害性疼痛緩和薬の代表は「リリカ®、タリージェ®」です。
薬剤の作用を確認し、自分自身の腰痛症状と向き合ってみるのも心因性腰痛改善への近道となるかもしれません。
心因性腰痛の治し方、自分の症状や日常生活に着目してみる
慢性腰痛の多くは、心因性要因にて出現や増悪しているというのはご理解いただけたかとおもいます。主治医が処方する内服薬に着目していると、心因性要因が絡んでいる可能性も否定できない場合もあるでしょう。
主治医は、症状そのものへの着目もそうですが、心因性腰痛の有無を鑑別するために内服薬を処方しているケースも。そういった診察結果があるようならば、実際に自分自身の心理的な要因を模索してみるのも良いかもしれません。
腰痛を悪化させる心理的要因
自覚はなくとも、自分自身にストレスがかかっている状態や、ストレスを抱え込みやすい人は慢性腰痛につながりやすいことが考えられます。
・人間関係や日常生活において、ストレスが多い
・仕事や人生の責務において不満がある
・心配性である、心配事でよく眠れない
・悩みを相談できる相手がいない
・腰痛が改善する気がしない
・主治医や周囲の人に、今の症状やつらさを理解してもらえていない気がする
上記のような要因が思い当たる方は要注意!心理的な要因が腰痛症状を出現させていたり、増悪させたりしていることが考えられます。
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医療現場で使用される心理的要因の関与を判定する方法
さまざまな検査所見や症状の訴え、内服治療における反応の仕方などにより、心因性の要因を予測していることもあります。医師によってはこの精神医学的関与が疑われる場合に「BS-POP」と呼ばれる患者さんの精神面を評価するための問診表を取り入れていることもあります。
これは、医療従事者側から見た患者さんの状態や所見、患者さん自身に記入してもらい、診療の補助として参照する問診表として活用していることがあります。
ストレスで腰痛になる?その判断基準は?横浜|中区|整体 | お悩み解決ブログ | 【雑誌にも多数掲載】横浜中区にある整体院の健康情報ブログ (seikotsu-ichiban.com) (画像参照サイト)
医療従事者も同じような評価表を用いて診察の参考としています。これらの評価表を用い、その結果によっては心理的側面も視野に入れた治療を開始していくのです。
整形外科での治療だけではなく、心療内科での治療を視野に入れたほうが良い場合もあります
整形外科にてさまざまな検査や治療をおこなっても症状が改善しない場合や、したとしても日常生活に支障をきたしている場合など、強い腰痛症状やそれにともなう随伴症状が残存する場合、心療内科での診察を視野に入れたほうが良いこともあります。
薬物療法と並行して心理療法やカウンセリングなどを開始する必要もあるでしょう。ストレスによる慢性腰痛を感じている方は、その原因となっているストレスの処理をうまくできないケースが多いのです。カウンセリングや診療を通し、ストレスの要因を見つけるのも重要です。
また、原因となっているストレス要因を遠ざけ、生活環境を変えてみるのも一つの方法です。自分自身で気分転換活動を図るのもよいでしょう。親しい友人や知人に悩みやつらさを打ち明け、理解してもらうことで症状が落ち着く場合も多々あります。
自分自身がどこでストレスを感じているのか、何が要因でストレス解消ができていないのかということを把握することで、案外スムーズに腰痛改善につながるかもしれません。
まとめ
腰痛=整形外科とおもう方は少なくないでしょう。しかしストレス社会である現代、そのストレスが腰痛の要因となっているケースが実に多いのも困りものです。整形外科を受診してみて、心因性腰痛が考えられる場合、整形外科以外の治療やカウンセリング、自分自身でのストレス解消法を模索してみるとよいかもしれませんね。
参照資料
腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版 (jcqhc.or.jp)