介護事業所にお勤めの方、こんなお悩みありませんか。
「利用者様が腰痛でつらそうにしている。どうしたらいいのか分からない」
「腰痛に悩んでいる方が多いから、腰痛に効く体操やストレッチはないのかな。」
高齢者の腰痛に悩んでいる方って多いですよね。あまりにつらそうにしていると、「大丈夫かな」と心配になりますよね。何か手助けはしたいけど、どうしたらいいか分からない方と思う方も多いでしょう。
そこで本項では、柔道整復師として介護に携わって5年の筆者が、実例をもとにした高齢者の腰痛となる原因やリハビリメニューをご紹介します。
利用者様の腰痛をなんとかしたい方、必見ですよ!
目次
「急に腰が痛い」その原因とは
A様、90代女性
要介護2
性格は、穏やかでマイペース
着替えや排せつ動作はできるが、非常にゆっくり
歩くことはできるが、歩行器が必要
A様は、自宅で転倒して背骨を圧迫骨折しました。
圧迫骨折とは、背骨の「椎体」と呼ばれる部分がつぶれる骨折のことで、高齢者に多く発生します。
自宅で転んだA様は、そのまま入院となりました。退院後は、「自宅で面倒をみることが難しい」と感じた息子様の要望により、有料老人ホームへ入所することになりました。
温厚な人柄のA様は、すぐに周りとなじんで、楽しく過ごしているようでした。
半年後、A様の身にあることが起こりました。
その日、訓練室で事務作業をしていた私のもとに、介護職員からある報告がありました。
「Aさんが大変です。起こすと凄く痛がるので、様子を見に来て欲しいんです」
すぐにA様の部屋に駆け付けると、ベッド上に横たわり、顔をしかめて苦しんでいるA様の姿がありました。
A様の腰痛の原因とは
まず私は、A様が転倒したのではないかと疑いました。しかし、A様は「ずっと寝ていて、起きようとしたら腰が痛かった」と話してくれました。
介護職員の話でも、「自分で動いた形跡もない。」と、ずっとベッドで寝ていたようです。
念のため、お尻や太ももにアザや擦り傷がないか見ましたが、ありませんでした。
次に腰痛の原因として「圧迫骨折」を疑った私は、A様の腰に手を当てて叩いてみました。
「ドンッ!」
「いたっ!」とA様は顔しかめて、悶絶。
この様子をみた私は「多分、圧迫骨折しているな」と骨折を疑いました。
しかし、A様は尻餅をついた形跡がありません。圧迫骨折は通常、尻餅をつくなどして、外部からの衝撃を受けた場合に発生します。
A様の場合、動いた形跡もないので、原因は謎に包まれました。
しかし、A様の痛がり方をみると、背骨を圧迫骨折している可能性が捨てきれませんでした。
この日は祝日だったので、病院は休み。仕方ないので、日を改めて受診することにしました。
腰椎の原因は圧迫骨折
翌日、往診医の病院を受診しました。結果はやはり腰の骨を骨折「腰椎の圧迫骨折」でした。
圧迫骨折の原因は、骨粗しょう症です。骨がかなり脆くなっていて、どの骨がいつ骨折してもおかしくない状況でした。おそらくA様は、ベッドから体を起こした際に、圧迫骨折が発症したのでしょう。
「たったそれだけで?」と思う方もいるでしょうが、骨のもろい高齢者は、ちょっとした動作が原因で骨折を招く危険性もあります。
さらに圧迫骨折は多発すると、背中が丸くなる「円背」という姿勢になり、転倒するリスクが高まります。そして転倒を繰り返し、重度な怪我を負ったり頭をぶつけたりして、命を失う危険性があるのです。
圧迫骨折のリハビリ
圧迫骨折の再発を予防すべく、2つのことに取り組みました。
1つは医療との連携です。1週間に1度、骨密度を上げる注射をして、丈夫な骨を作っていきました。骨が丈夫になることで、圧迫骨折の再発が防げるからです。
2つ目は、腰回りや体幹の筋力をつけることです。
A様の普段の生活は、食事の時間以外は寝ていることが多く引きこもりがちでした。背中も少し丸くなっていて体を支える筋肉が弱っており、自分の体をしっかりと支えられていませんでした。
そこで、体幹部の筋力や柔軟性アップを目的としたリハビリを計画しました。
1週間後、A様の腰痛はかなり治まったので、3種類のリハビリメニューを開始しました。
1.ヒップアップ体操
2.体ネジネジ体操
3.ウォーキング
ヒップアップ体操 目的(体幹と臀部の筋力アップ)
1.仰向けになる
2.腰を上げる
3.そのままの姿勢で10秒キープ。これを3セット繰り返します。
体ネジネジ体操 目的(体幹のストレッチ)
1.背もたれから距離を離して、椅子に腰掛けます。
2.片手を上げて、体を手と同じ方向に捻ります。
3.そのまま3秒キープします。これを3セット繰り返し、反対も同じように行います。
ウォーキング 目的(体力アップ)
体力をアップさせることで、活動量を上げることが目的でした。なぜなら、骨は、刺激を与えないとドンドン弱くなってしまうからです。
A様は、引きこもりがちで、全身の筋力低下が著名でいた。また、臥床時間が長いため、骨脆くなりやすい生活でした。
そこで全身運動である「ウォーキング」をすることで、体力の弱ったA様でも、少しずつ改善していけるメニューに取り組みました。
リハビリ後のA様
1カ月後、A様の腰痛は改善し、腰の痛みもなく元気になりました。
リハビリで筋力や体力もついたので、今では体操やレクリエーションなどにも参加し、以前よりも活動的になりました。
息子様も元気になったA様をみて「母の顔が明るくて安心した。これからも元気で長生きをしてもらいたいので、宜しくお願いします。」と喜んで頂けました。
圧迫骨折のリハビリポイント
圧迫骨折のリハビリは3つのことに注意して取り組みました。
1. 痛みが激しかったので、痛みが治まるのを待ってからリハビリを開始した
2. 体幹と臀部の筋力アップに取り組んだ
3. ウォーキングをして、体力アップを目指した
圧迫骨折の受傷後は、激しい痛みに襲われるケースもあります。まずは安静にして痛みが治まってから、リハビリを開始しましょう。
特に相手は、高齢者なので無理は禁物です。無理な運動は、頭痛、めまい、吐き気など、体調不良の原因にもなります。
圧迫骨折の痛みは、通常1~2週間程度で収まるケースがほとんどです。しかし、それ以上の時間が経過しても痛みが改善されない場合は、専門家に相談するにしましょう。
「まわりに相談できる専門家がいない」という方は、こちらの「腰痛ドクターアプリ」がおすすめです。登録して質問に答えるだけで、腰痛に効果的なリハビリメニューを提案してくれます。
まとめ
圧迫骨折は、高齢者に多く見られる骨折です。
特に今回のA様のように、引きこもりがちな方だと骨や筋力も弱りやすく、圧迫骨折を発症しやすくなります。
骨折を発症してすぐは、強い痛みを感じることもあります。まずは、安静にして痛みが治まるのを待ちます。痛みが治まったら、本項で紹介したリハビリメニューに取り組んでみましょう。
ただし、リハビリに取り組む際は、専門家の指導のもとで取り組むようにしましょう。まわりに相談できる専門家がいない方は「腰痛ドクターアプリ」を活用するのがおすすめです。
本項で紹介したリハビリメニューで、多くの利用者様が救われるきっかけとなれば幸いです。