サッカーをしている方で、腰痛の悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
サッカーは、ボールを蹴り出す動作の際に腰を強く捻ることが多く、どうしても腰への負担は避けられません。そのため、慢性的な腰痛に悩む選手も少なくないのです。
しかし、正しい対処法を学べば、その腰痛は治せるかもしれません。正しいストレッチや、体幹トレーニングを取り入れることで、腰の痛みが緩和されることも多いのです。
今回の記事では、サッカー腰痛を予防・緩和するための、正しいストレッチとトレーニングについて解説しています。また、サッカー選手に多い疾患である、腰椎分離症についても触れています。
腰に不安を抱えながらサッカーをしている方は、ぜひご一読いただけると参考になると思います。
目次
サッカー選手のための腰痛の治し方
サッカーの練習中に、腰の痛みを経験したことのある方も多いと思います。「はじめての腰痛」「慢性的な痛みではなく、急激に起こった腰痛」であれば、ほとんどの場合は筋肉の炎症が原因です。
しかし、慢性的に腰痛が続く場合や、腰痛が日に日に悪くなる場合は、後述する「腰椎分離症」など病的な腰痛の可能性があります。近年では、小さい頃からスポーツにうち込む子供も多く、こうした病的腰痛が中高生などの若年層でも発症しやすいことが問題になっています。
少しでも「おかしいな」「いつもの腰痛と違うな」と思ったときは、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
ここでは、自宅やトレーニング前後でもおこなえる、腰痛の対処法についてお伝えしたいと思います。腰痛になってからの治療も大切ですが、それ以上に、慢性的な腰痛に移行しないような予防策のほうが何倍も大切です。腰部の筋肉を強化したり、ストレッチによって柔軟性を向上させることで、「故障しにくい腰」をつくることが可能なのです。
サッカー選手の腰痛ストレッチ
腰痛持ちの選手の多くは、腰部と下肢の筋肉の柔軟性が低下しています。正しいストレッチで筋肉の緊張を緩めてあげるだけで、腰の痛みが緩和される例も少なくありません。
ここでは、腰痛と関連性の大きい筋肉である、大殿筋・大腿四頭筋・ハムストリングス(大腿屈筋群)のストレッチを1つずつ解説したいと思います。いずれのストレッチも、意識して呼吸をしながらおこなうことがポイントです。
大殿筋のストレッチ
・床の上に仰向けで寝たら、両膝を曲げて床から挙上します。
・次に、右大腿の上に左足首をのせ、左膝を外側に開きます。両足の間に左腕をくぐらせ、両手で膝を持ちながら、膝と胸を近づけてください。
・この状態を数十秒キープしたら、片側は終了です。もう片方も同様におこないましょう。
大腿四頭筋のストレッチ
・立った状態で、両足を肩幅に開きます。
・次に、膝を曲げて、左足の甲を左手で持ちます。
・左足の踵を左臀部にくっつけて、30秒ほどキープしましょう。これで片側は終了です。
ハムストリングスのストレッチ
・ 立った状態で左足を前に出し、両足を一直線上になるよう広げます。
・左足の膝が曲がらないように、上体をまっすぐに倒しましょう。このとき、両手でスネを持ち、ハムストリングスが伸展しているのを感じながらストレッチをします。
・この体勢を20秒ほどキープしたら、片側は終了です。
腰痛には筋力強化も効果的
体幹の筋力を強化することも、腰痛の改善には効果的です。
サッカー選手の場合、大腿四頭筋がよく発達している一方で、その拮抗筋である大殿筋とハムストリングスの発達が不十分な場合が多いとされます。この下肢のアンバランスが、腰痛を引き起こすことも少なくありません。
日頃のトレーニングで、腹筋・背筋だけでなく、大殿筋とハムストリングスの筋力も強化しておくことで、腰痛になりにくい体をつくることができます。また、普段から意識してインナーマッスルを強化しておくことで、ボールの競り合いに負けない体幹も手に入れることができます。
腰痛の予防にもなりつつ、サッカーのレベル向上にも役立つので、意識して普段のトレーニングに取り入れてみて下さい。
👉サッカーによる腰痛になる原因と対策方法【適切なトレーニングを行えば必ず治ります】 |
腰痛あるけど練習しなきゃ…。そんな時はコルセット・テーピングを活用!
腰痛を感じたときは、サッカーの練習を休むことが基本的なスタンスです。しかし実際のところ、大事な試合の前など、おちおち休んでいられない事情も多いと思います。
腰痛を抱えながらサッカーをする際は、コルセットやテーピングを使うことで、腰の痛みをかなり軽減できます。加えて、痛みへの不安の軽減にもつながるため、腰だけでなく精神的な安定をもたらす効果も期待できます。
サッカー中のコルセットの効果
コルセットを腰周囲に巻くことで、腰部の筋肉の安定化を図れます。加えて、腹部に適度な圧力が加わることで、腹腔内圧が上昇し腰椎への負担も軽減できるのです。また、保温機能も備えているため、特に冬場は筋肉の緊張を緩和する効果もあります。
コルセットの正しい装着方法は、お使いの製品によって異なるので、説明書を見ながら正しい装着を心がけましょう。
運動中はテーピングも有効
腰部の筋肉の固定にはテーピングも効果的です。ただ、テーピングは正しい巻き方をしないと効果が薄れてしまうため、ここでは正しいテーピングの巻き方の一例をご紹介します。
・まず、立った状態で両手を前方に出し、腰が丸まらないような前かがみ姿勢を取ります。両手は台の上などに乗せるといい良いでしょう。
・次に、伸縮性のあるテープを、腰痛部位を挟むように、縦に2本平行にはります。
・そして、腰痛部位の少し下を通るように、斜めに1本目のテープを貼ります。2本目のテープは、1本目のテープと背骨で交差するように貼れば完成です。クロスさせるテープは、テープを伸展させて、キツめに貼るとより効果的です。
サッカー選手に腰痛はつきもの
サッカー選手の腰痛の頻度
ここからは、サッカーと腰痛の関係についてのお話になります。サッカーと腰痛は切っても切れない関係にあり、多くのプレイヤーが腰の悩みを抱えているのが現状です。
特に近年においては、若年層でも腰痛を抱えるプレイヤーが多いことが問題になっています。サッカーをする中高生の約3割が腰痛の経験がある、というアンケート結果もあるほどです。
腰痛の原因
サッカーというスポーツでは、ボールを蹴り出す動作を反復しておこなわれます。筋力が未発達な若年層の場合、この蹴り出す動作が腰へ負担をかけ、腰痛の引き金になりやすいのです。
理由としては、下半身の筋力が不十分だと、体幹を前屈させながら股関節を屈曲させて、ボールを蹴り出す必要があります。この動作が腰への多大な負担になり、ひいては腰椎分離症の原因となるのです。
サッカーの練習中に初めて感じる腰痛であれば、そのほとんどは筋肉の炎症によるものです。この段階であれば、安静やストレッチなどで改善することが多いですが、腰に負担野のかかるシュート動作を繰り返すことで、次第に骨まで疲労が蓄積し、腰椎分離症にいたるのです。
腰椎分離症
腰椎分離症は、スポーツ選手に起こりやすい脊椎の病気です。スポーツ選手の場合、一般人比べて4-5倍起こりやすいとされています。
症状は腰痛が多いですが、痛みを感じない選手も中にはいます。腰が重い感じがする、運動後も張る感じが続くなど、運動に支障がない場合は、無理をして練習を続けてしまいがちです。
骨にヒビが入るだけの初期段階であれば、安静やコルセット装着により完治することも多いです。しかし、症状が軽いからと言って運動を続けると、脊椎が完全に割れ、分離症へ進行してしまいます。
可能であれば、ヒビが入っただけの初期段階で発見し、早期に治療介入することが望ましいです。そのためにも、1週間以上腰痛が続く場合や、腰痛が日に日に増悪する場合など、病的な腰痛が疑われる場合は、早めの医療機関受診をおすすめします。
まとめ
サッカー選手の腰痛は予防が大切。続く場合は早めの受診を!
今回の記事では、サッカー選手と腰痛の関係について解説しました。スポーツ、特にサッカーに腰痛は付きものですが、ストレッチや体幹トレーニングを日常のメニューに取り入れることで、腰痛を予防することは十分に可能です。
また、腰痛が長く続く場合は、何か他の疾患による腰痛の可能性もあります。特にサッカー選手の場合は、腰椎分離症の発症率が高いため要注意です。腰の痛みが気になるようなら、早めの医療機関の受診が大切です。
みなさんが少しでも長くサッカーを楽しめることを心からお祈りしています。
参考文献
「腰椎分離症 100%を超える復帰 成長期腰椎分離症(疲労骨折)の保存療法における治療成績と問題点」
兼子 秀人(村上整形外科クリニック), 村上 元庸
日本整形外科スポーツ医学会雑誌 (1340-8577)39巻3号 Page263-268(2019.07)
「当院における成長期サッカー選手の腰椎分離症の治療経験」
大沼 寧(徳洲会山形徳洲会病院 整形外科)
日本臨床スポーツ医学会誌 (1346-4159)27巻4号 Page S318(2019.11)
参考:山形徳洲会病院