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顔を洗う動作中に起こる腰痛とは

ぎっくり腰などの急性腰痛は、顔を洗う動作中に起こることも意外と多いということをご存じですか。
朝起きて、まだ眠い状態で顔を洗う動作をしているときに、腰へ激痛を感じたという話は意外と多いものです。

顔を洗う動作をしているときに起こる腰痛について、解説していきます。

なぜ顔を洗う動作で腰痛が起こるのか

なぜ顔を洗う動作で腰痛が起きてしまうのでしょうか。
その理由から見ていきましょう。

顔を洗う動作をしているときは腰への負担が1.5倍!

顔を洗う動作は、多くの場合、腰を曲げています。
前かがみの姿勢は、立っている姿勢に比べると、1.5倍の重さが腰にかかると言われています。

人間の上半身の重さは、体重の60%です。
50kgの人の場合、上半身の重さは30kgとなります。

通常は30kgの重さを腰で支えているのですが、顔を洗う動作を行うときには前かがみになっているため、その1.5倍の45kgの重さが腰にかかるわけです。腰の負担が増えれば増えるほど、ぎっくり腰などの急性腰痛を引き起こしやすくなります。

また、普段から腰痛がある人の場合には、顔を洗う動作をしているときに、さらに腰痛が悪化してしまったというようなケースもありますので注意が必要です。

体が硬くなっている

例えば寒い冬の朝、顔を洗うことを想像してみてください。寒くて体が冷えていたり、さっきまで寝ていたので体が硬くなっているかもしれません。そんな状態のまま、上半身を前にかがませて顔を洗うのです。背中全体の筋肉が硬いまま顔を洗うので、特に腰まわりへの負担が大きくなることが予想されます。

また体が冷えていると神経が過敏になることから、全身の筋肉を緊張させやすく、体を硬くしてしまうことが予想されます。そういった状態のまま、頭や体幹を洗面台に近づけて、顔を洗う動作を行うのですから、重い頭や上半身、両腕の活動を支え続けなければならない腰への負担は計り知れないのです。

目を閉じている

顔を洗っているときは、目に水が入らないようにするため、まぶたを閉じていることが多いのではないのでしょうか?人は、姿勢を保っていたり、活動している時、全ての感覚器からの情報を得ていますが、特に視覚の情報に頼っているということがわかっています。

そのため、目を閉じたままで行うことの多い、顔を洗う動作は、体が緊張して腰まわりの筋肉も硬くなっていることが予想できます。また顔を洗った後、急に目を開いて、前傾している頭や体幹を起こそうとする時にも、力を入れ続けたために硬くなり、柔軟性が低下している腰まわりの筋肉に負担がかかって、腰の痛みを感じることがあるかもしれません。

中腰になっている

立位での体の重心の位置は、おへそから手のひら一つ分下あたりにあります。
中腰の姿勢は、その立位から、頭や上半身を前に倒し、その前に倒した体の重さを腰や下半身で支えている状態となっています。

実は、この中腰姿勢は、先程お伝えしたように、体幹が前に倒れている姿勢なので、下半身に対して上半身の重心が前方に移動し、重心の位置を安定させ続けることが難しく、腰に負担をかける姿勢の一つといえます。

そのため、もし中腰姿勢の時に、おなかを支えるための腹筋と背筋力が十分にあり、下半身に対して上半身の重心が前方に移動した姿勢を保持することが可能ならば、腰痛となるリスクも軽減できることでしょう。

しかしながら、この腹筋が弱い場合は違ってきます、腹筋と背筋を効かせることが困難な場合には、上半身が前方に倒れることで、腰に負担がかかってしまいます。そのため、腰骨を強く反らせてしまったり、重いおなかを支えるために腰背部筋の過剰な活動が続くことで、筋の疲労が起こって腰痛を起こしてしまうかもしれないのです。

つまり、顔を洗う動作において、腰痛を避けるためには、いかに腰に負担をかけない中腰姿勢をとることができるかということが非常に重要です。

それでは、次に、顔を洗う動作における腰痛を避けるための方法や中腰姿勢の取り方をご紹介します。

顔を洗う動作で起こりうる腰痛とは

顔を洗う動作

顔を洗う動作で起こりうる腰痛は、ぎっくり腰と腰椎椎間板ヘルニアが代表的なものです。

ぎっくり腰(腰椎捻挫)の症状と治療法

ぎっくり腰と呼ばれている病気は、正式には、「腰痛捻挫」や「急性腰痛症」という診断名になります。

足首の捻挫と同じように、腰の骨の関節である「椎間関節の捻挫」が原因です。
症状としては、「ある動作をした時に急激な強い腰の痛み」を感じてから激しい腰痛のため動けなくなる、といったことが多いでしょう。

顔を洗う動作や玄関で靴をはくときというような前かがみになる姿勢をとったときや、くしゃみや咳をしたときにも起こりやすいと言われています。
腰椎椎間板ヘルニアや圧迫骨折と区別するために、X線検査を行うことが多いですが、激痛のわりにはX線検査などでは異常がありません。

治療としては、足首の捻挫と同じように、まずは安静にすること、筋肉や靭帯の損傷が考えられるため、消炎鎮痛剤の内服や湿布薬の貼付などを行います。
対症療法のみで90%の人が6週間程度で回復します。

腰椎椎間板ヘルニアの症状と治療法

くしゃみや咳をすることで起こりうる腰痛の原因として、「腰椎椎間板ヘルニア」もあります。くしゃみや咳ほどではないと思われがちですが、顔を洗う動作中にも起こることがあるので注意が必要です。

腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板に亀裂が入り、その中に閉じ込められていた髄核といわれる内容物が外側に飛び出してしまい、背骨(脊椎)に沿って走っている神経(脊髄)を圧迫してしまいます。神経が圧迫されるため、その神経がつかさどっている場所に痛みや痺れ、麻痺などの症状が起こるわけです。

主な症状は、腰痛と足の痛みです。
足には、痛み以外にしびれ、感覚障害、筋力低下などの症状が現れます。
踵歩き、または、つま先歩きができなくなるのも特徴です。

治療としては、安静と消炎鎮痛剤の投与が行われます。
酷いときは、ステロイド剤を注射することもあります。
多くの場合は2~3週間で痛みが改善しますが、慢性化したり、再び痛みが出現したりすることもあります。

腰痛や足の痛みが続いたり、何回も再発を繰り返してしまったりする場合には、手術が必要になることもあります。
仕事が制限される、または日常生活にまで支障が出ているケースは手術を検討することが多いです。

腰痛を予防する顔を洗う動作とは

腰痛を発生させない、悪化させないための顔を洗う動作のポイントについて解説します。

硬くなっている腰や背中の筋肉を緩める

布団やマットの上で、仰向けの姿勢をとります。両膝を曲げた状態で両足を持ち上げて両手で足を抱えましょう。両手で両足を抱えたまま息を吸って、次に息を吐きながら太ももを胸に近づけます。そのまま呼吸を繰り返し、体をゆらゆらと優しく揺らします。

両足を胸に寄せてくることで、おなかを刺激し内臓を温めたり、硬くなっている背中や腰まわりの筋肉を緩めて、背骨の動きも引き出していきます。

顔を洗う動作のときに膝を曲げる

顔を洗う動作のときに、前かがみの姿勢になることが腰痛を引き起こす、悪化させる要因とされています。
つまり、前かがみの姿勢をとらなければよいのです。
方法はさまざまあると思いますが、腰を曲げるのではなく、膝を曲げて顔を洗うようにするとよいでしょう。

顔を洗う動作のときに低めの椅子に座る

膝を曲げると足が疲れてしまい、膝が痛くて曲げるのがつらいという場合には、椅子を準備して、高めの椅子に座った状態で顔を洗うと腰を大きく前かがみに曲げなくとも顔を洗うことができます。
また、椅子に座ることで姿勢が安定するため、腰へかかる負担も減らすことができます。

椅子に座る場合は、低めの椅子に座ることがポイントです。
高い椅子に座って顔を洗う動作をすると、立って行うよりも大きな角度で前かがみになる恐れがあります。

椅子に座って胸のあたりに洗面台の淵がくるくらいがちょうどよいでしょう。
どうしても少しは前かがみになってしまいますが、立って行うよりは少ない角度で対応できると思います。

実際に椅子をおいてみて、顔を洗う動作をシミュレーションしてみるとよいでしょう。立って行うよりも少ない角度になるように椅子の高さを調整します。

縮んでいる体を広げて腰を伸ばす。

仰向けの姿勢をとります。次に両手を肩の高さに広げて床に置き、両足は腰幅に開いて両膝を立てます。息を吸って、次に息を吐きながら、両膝を右側に倒して顔を左側に向けましょう。この時、両膝は無理に床に近づけようとせず、体側が気持ちよく伸びていると感じる位置を探してください。

この姿勢を保ったまま、深い呼吸を繰り返していきます。反対側も行ってみてください。

縮んでいた体側や、腰まわりの筋肉が伸びていきます。また個々の背骨の動きも引き出し、顔を洗う動作を安全に行うための準備をするのです。

顔を洗う動作のときに激しい振動を与えない

顔を洗う動作をするとき、激しく顔を擦るように顔を洗う人もいらっしゃるのではないでしょうか。
顔を擦るようにして顔を洗う場合、激しく行うと振動が起こります。
前かがみの姿勢で衝撃を与えることがぎっくり腰などの急性腰痛を引き起こす可能性を高めるので非常に危険です。

顔を洗う動作をするときには、ゆっくりと衝撃を与えないように丁寧に洗いましょう。そうすることで、不安定な姿勢の場面でさらなる衝撃を与えてしまうことを防ぐことができます。顔を洗う動作のときには、どうしても多少なりとも前かがみにならざるを得ません。

前かがみになると通常の1.5倍の重さが背骨にかかっているのだということを忘れずに、さらなる負荷を増やすような動作を避けることが大切です。

顔を洗う動作のときに絶対にくしゃみや咳をしない

顔を洗う動作のときに、振動を与えることは危険であると説明しました。
くしゃみや咳などの強い振動を与える動作を前かがみの姿勢で行うのはぎっくり腰などの急性腰痛を引き起こす可能性を著しく高めてしまうため、非常に危険です。

顔を洗う動作をしているときにくしゃみや咳が出そうになったら、一度体を起こして、洗面台に両手をついて前かがみにならないようにしてくしゃみや咳をしましょう。

くしゃみや咳が出るタイミングで膝を曲げるのも衝撃を吸収するために有効です。
顔を洗う動作の最中にくしゃみや咳が出ることは少ないかもしれませんが、万が一のときのために覚えておくとよいでしょう。

顔を洗う動作は腰痛を引き起こしやすいため注意が必要

日常の何気ない動作の一つである「顔を洗う動作」ですが、ぎっくり腰などの強い腰痛を引き起こす原因となってしまう動作なのです。特に、朝起き抜けに力が抜けている状態では、さらに腰痛を引き起こす可能性が高くなるでしょう。

日常のちょっとした工夫で、苦しい腰痛を予防することができるのです。腰痛がある人もさらに腰痛を悪化させている要因がこのような日常の何気ない動作が原因になっているということもあります。

膝を曲げるなどして腰を曲げて前かがみの姿勢になることをなるべく少なくすることで、姿勢による腰痛を予防できます。

参考文献
川上俊文、図解 腰痛学級 第5版、医学書院、2011

視覚機能がバランス能力に及ぼす影響について|J-STAGE
中腰になると腰が痛い!原因は背骨の硬さ!|未病リハビリセンターハレル野芥店

著者情報

腰痛メディア編集部
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