「転倒したあと激痛で動けない」
「日数がたっているのに腰痛が良くならない」そんな症状はありませんか?
転倒しただけ、腰の痛みが続くだけと思っていたら、実は病気だったという方は少なくありません。
この記事では、転倒後の腰痛に隠された病気について解説していきます。
目次
転倒したときに尻もちをついたり、腰をぶつけたりしていませんか?
転倒したときに、尻もちをついたり、腰や背中を地面や硬いものにぶつけたりした記憶はないでしょうか?
転倒したあとに、直接ぶつけた部分が痛くなる状態を「打撲」といい、ほとんどが内出血を伴います。
しかし、ぶつけた部分以外にも、強い背中の痛みや腰痛を感じる場合や痛みが続く場合には、いくつかの病気が隠されている可能性があります。
これらの病気は打撲や他の腰痛とは違い、シップや痛み止め、日数の経過などの対症療法では改善することがありません。
整形外科などの専門の医師の診察と、適切な治療が痛みの消失と完治には必須となります。
痛みにより動くことができない期間が長くなると、日常生活動作が充分に行えなくなり、最悪の場合寝たきりになってしまう病気の可能性が高いのです。
転倒時に発症しやすい病気3選
では転倒したあとには、どういった病気になりやすいのでしょうか。
ここでは3つの病気にしぼって解説していきます。
急性腰痛症
急性腰痛症は一般的には「ぎっくり腰」としてよく知られています。
重いものを持つ時や、急な動作で起きると思われていますが、転倒の際の無理な姿勢で、腰の関節や椎間板・筋肉に大きな負担がかかると発症することもあります。
脊柱管狭窄症
背骨にある、神経やじん帯・骨などが通る「脊柱管(せきちゅうかん)」とよばれる部分が、変形や圧迫のために神経が圧迫され痛みが生じる病気です。
転倒し腰を強く打ったために、この病気になる患者さんも少なくありません。
痛みだけではなく、しびれや足が冷たく感じる、感覚が鈍くなるなどの神経症状も合併するのが特徴です。
腰椎圧迫骨折
転倒したことで、腰の骨の「腰椎」に負担がかかり、つぶれるように骨が折れてしまう病気です。
腰椎圧迫骨折を発症する患者さんの9割が高齢者だといわれています。
高齢者では、転倒したあとに40-50%という高い確率で、腰椎圧迫骨折を発症するといわれています。
骨粗しょう症になりやすい女性のほうが、骨がもろくなっているので、腰椎圧迫骨折を引き起こしやすく、寝たきりの一因にもなっています。
この病気の場合は、転倒直後から身動きの取れないほどの激痛を伴い、シップや痛み止めなどの対症療法では症状が改善しにくいのが特徴です。
気になる病気の診断と治療方法
急性腰痛症、脊柱管狭窄症、腰椎圧迫骨折はどのように診断・治療をしていくのでしょうか?
一つずつ解説していきます。
急性腰痛症
一般的には、レントゲン検査を実施しますが、異常所見がみられないことがほとんどです。
そのため、痛み止めやシップなどの対症療法をしながら、無理をしないで安静にしていることが早期治癒には重要です。
ほとんどの患者さんは数日から数週間で、徐々に症状が改善し自然によくなります。
しかし、3-4日間安静にしていても良くならない場合や痛みが悪化する場合もあります。そのような患者さんは、MRIなどで改めてよく調べると、脊柱管狭窄症・腰椎圧迫骨折などの、他の病気が腰痛の原因となっているも少なくありません。
特に高齢の方、骨折した経験がある方は、整形外科などの専門医をはやめに受診することをおすすめしています。
脊柱管狭窄症
原因検索のため、MRI検査を実施します。
神経の圧迫や炎症の有無、椎間板や骨の変形など、腰痛を引き起こす原因を検索します。
神経の圧迫がある場合はブロック注射を行い、腰椎ベルトを使用し、脊柱管狭窄症悪化予防の運動をして、症状が酷くなるのを防ぎます。
椎間板や骨の変形が原因で腰痛が改善しない場合は、外科的に椎間板や骨の形を変えて、圧迫を改善する治療を行います。
必要な入院期間は1-2週間と長めの期間になります。
腰椎圧迫骨折
原因検索のため、レントゲンやMRIを実施します。
腰痛がある部分の腰の骨がつぶれているように、レントゲンやMRIで表示されます。
痛みや痺れなどの症状がある場合には痛み止めとコルセットを使用し、症状が軽くなるのをまちます。
コルセットは、ぎっくり腰で使うような柔らかいものではなく、患者さんの体型に合わせて型どりをした腰椎圧迫骨折患者さん専用のものを作成します。
最近では、高齢者の場合では、短期間の安静が寝たきりにつながりますので、経皮的椎体形成術といわれる手術を行うケースも増えてきました。
転倒によりつぶれた腰の骨に骨セメントを注入し、骨を硬くさせることで、骨のつぶれや変形を改善させます。処置自体は1時間程度、2泊3日の短期入院で可能です。
処置後24時間程度で、腰痛が良くなることがほとんどのため、経皮的椎体形成術を行う病院が増えています。
転倒後の腰痛は寝たきりのリスクが高くなる
転倒したあとに痛みを伴うケースでは、数日から数週間の安静を余儀なくされます。
痛み止めを適切に使用する、適切な診断・治療を受けることでその期間は短くすることが可能ですが、それでも転倒直後の数日間は安静が必要です。
若い年齢の人は比較的短期間で問題なく社会復帰できますが、高齢の場合はそうはいきません。
腰椎圧迫骨折の場合を例にあげると経皮的椎体形成術を実施しない、保存的加療の場合には完治まで1~3か月かかります。
治療・痛みのコントロール・リハビリが適切に行われない場合では、痛みにより動くことができなくなり、活動時間が少なくなり、筋力が低下し寝たきりになりやすくなります。
一度筋力が低下してしまうと、バランスを崩しやすくなり、結果として転倒しやすくなります。
再転倒による腰椎圧迫骨折や、そのほかの部分を骨折してしまう高齢者も少なくありません。
高齢者の場合は、腰が痛いだけだと様子をみていたら徐々に痛みが強くなり、身動きが取れなくなってしまって、救急車で病院にくる患者さんもいらっしゃいます。
転倒した直後は痛みが少なくても、腰椎圧迫骨折や脊柱管狭窄症・急性腰痛症の可能性は十分に考えられます。
転倒したあとに腰痛があるときには、早めの受診を心がけたいですね。
腰を強打した時の対処法
腰を強打して痛みが続く場合、早めに受診するのが理想ですが、自分でできる対処法もあります。
コルセットを使用して腰を安静に保つ方法です。腰を冷やさないようにしつつ、負担を軽くするように心掛けてください。
ただし、コルセットを装着し続けると腰の筋肉が落ちてしまうので、ある程度痛みが和らいだら装着する期間を短くしていきましょう。
まとめ
転倒後の腰痛が続く場合には、自己判断で様子をみないようにすることが重要です。
整形外科などの専門医の診断・治療を早期に受けることが、症状改善・寝たきりの予防につながります。
治療自体は侵襲も少なく、症状が早期に改善するため、転倒したあとに痛みがある場合ははやめの受診することをおすすめします。