「身体を後ろに反らせると腰が痛む。」
こんな経験したことがある人は多いのではないでしょうか?
腰を反らすことで出る腰痛、その原因として「椎間関節腰痛」の可能性が考えられます。
また、長時間立っている時や、立位での作業中に腰痛が出てくる人も、もしかしたら同じ原因かもしれません。
今回は、日常生活に支障をきたす可能性もある「椎間関節腰痛」、その原因と改善方法を解説します。
目次
椎間関節腰痛って何?
椎間関節とは?
人間の背中には小さな骨が連なってできた柱状の「脊柱」と呼ばれる部位があります。(図1-a)
脊柱は頚椎、胸椎、腰椎の3パートに分かれており、それぞれ7個、12個、5個の椎骨と呼ばれる骨が積み重なって構成されています。(図1-b)
椎骨と椎骨の間には左右1つずつ関節があり、この関節を「椎間関節」と呼びます。(図.2)
人間はこの椎間関節がそれぞれ少しずつ動くことで身体を反らしたり、曲げたり、ねじったりできます。
椎間関節腰痛とは?
椎間関節腰痛とは、腰椎にある椎間関節が痛むことにより生じる腰痛のことです。
椎間関節を痛める原因の1つとして「腰が過度に反る」ことが挙げられます。
腰が過度に反ると腰椎も過度に反ってしまい、椎間関節にストレスがかかることが分かっています。(図3)
そのため、このストレスが何回も反復して起こったり、一度に強いストレスがかかったりすると椎間関節を痛め、腰痛を引き起こします。
椎間関節腰痛の症状
最も多い症状は腰痛ですが、時には腰痛だけでなく、殿部や大腿にまで痛みやしびれ感がでることがあります。
それ以外の症状として多いのが、
・腰を反らした時に痛みが出る
・長時間立ったり、歩いていたりすると腰痛が出てくる
・同じ姿勢の保持で悪化して、姿勢を変えると軽減する
・起床時に痛いことが多く、動いているうちに痛みが軽減する
このような症状が見られる場合は、椎間関節腰痛の可能性が考えられます。
どのような人が椎間関節腰痛になるのか?
では、椎間関節腰痛はどのような人がなるのでしょうか?
なりやすい人には、いくつか特徴があることが多いです。
この特徴があると椎間関節腰痛に必ずなるわけではありませんが、リスクは高くなると考えられます。
椎間関節腰痛は「腰椎が過度に反ることにより椎間関節を痛めて生じる」と説明しました。
ということは、日常生活で腰を反る回数が多い人や大きく腰を反る動きをする人などは、やはり椎間関節を痛めるリスクが高くなると考えられます。
また、立ち姿勢が長時間続いても椎間関節にストレスがかかります。
そのため、椎間関節腰痛になりやすい人の特徴として、
・立ち姿勢で腰が強く反っている、いわゆる反り腰である
・長時間立って作業することが多い
・重たいものを持って運ぶことが多い
・うつ伏せで本を読んだり、テレビを見たりすることが多い
・立って腰を反らせると腰に違和感が出る
このような特徴に当てはまる人で腰痛がある人は、椎間関節腰痛の可能性が考えられます。
椎間関節腰痛になる原因とは?
椎間関節腰痛になりやすい人は腰が反りやすい身体の特徴がある場合が多いです。
特徴としては大きく3点あります。
・腹筋が弱い
・股関節の動きが硬い
・腰椎が反った状態で硬まる
なぜ原因になるのか、それぞれ説明します。
腹筋が弱い
椎間関節腰痛を予防するには椎間関節にかかるストレスを減らす、つまり腰を過度に反らさないことが大切です。
腰が過度に反りそうな時に、それを止めてくれる筋肉があります。
それがお腹の筋力、つまり「腹筋」です。
腰が反りそうになった時、腹筋が働くことにより過度に反ることを防いでくれます。
この働きにより椎間関節にかかるストレスが減少し、椎間関節腰痛を予防できます。
逆に腹筋が弱いと、この働きが不十分になるため、腰が過度に反り椎間関節腰痛の原因になります。
股関節の動きが硬い
股関節の動きが硬いことも原因となります。
原因となる理由として1984年にMacnabらが発表した「hip spine syndrome」という考え方があります。1)
hipは股関節、spineは脊柱、ここでは腰椎を表しています。
この考え方は、股関節、腰椎、どちらかに問題があると、もう一方に負担がかかり痛みの原因になるという考え方です。
ここでいう問題とは、「動きの硬さ」が挙げられます。
身体を反らす時に必要な柔軟性は、脊柱と股関節どちらも反る動きが必要になります。(図4左)
もし、股関節が反る動きが硬くなったらどうなるでしょうか?
股関節の反る動きを、腰椎が代わりに行う必要が出てきます。
腰椎が股関節の分まで反るため、腰椎は過度に反ってしまいます。(図4右)
そのため、腰椎の椎間関節にストレスがかかり椎間関節腰痛の原因となります。
腰椎が反った状態で硬まる
椎間関節腰痛の人は腰椎が反った姿勢で日常生活している場合が多く、腰椎が反った状態で硬まりがちです。
反って硬まると、腰椎を丸めれず、椎間関節にストレスがかかりやすい状態になります。
また、日常生活でも腰椎を丸める動きが使えないため、反る動きばかりを使いがちです。
これも椎間関節にストレスをかけるため、椎間関節腰痛の原因になります。
椎間関節腰痛改善のための運動療法
椎間関節腰痛の原因として、
・腹筋が弱い
・股関節の動きが硬い
・腰椎が反った状態で硬まる
3点を挙げました。
これらが椎間関節腰痛を引き起こす原因であるならば、この原因を改善できれば改善や予防に繋がるはずです。
そのため、必要なこととして、
・腹筋をつける
・股関節の柔軟性を高める
・腰椎の柔軟性を高める
この3点が大切になります。
それぞれの運動療法をご紹介します。
腹筋の筋力トレーニング
腹筋には腰が反りすぎるのを止め、椎間関節のストレスを減らす役割があります。
つまり、腹筋の筋力を高めることが椎間関節腰痛の改善や予防になります。
今回は、そのための運動療法として「Sit up」をご紹介します。
Sit up
1. 仰向けになり両膝を立てます。両手はお尻の横におきます。
2. みぞおちを折り曲げるようにして、肩が浮くところまで上体を起こします。この時、両手は下方に向けて伸ばしていきます。
3. 5秒保持してから戻します。
4. 15回を3セット行います。
股関節の柔軟性を高めるストレッチ
椎間関節のストレス軽減に必要な股関節の動きとして「脚を後ろに反らせる動き」があります。(図5)
今回、この股関節の動きの柔軟性を出すストレッチをご紹介します。
股関節を反らすストレッチ
1. 片膝を立て、反対側の脚はなるべく後ろに伸ばします。
2. 身体を少し前傾させながら、体重を前脚にかけます。
3. 後脚の股関節の付け根が伸びるのを感じます。
4. 20〜30秒保持を3セット行います。
腰椎の柔軟性を高める
腰椎が反った状態で硬まると椎間関節にストレスをかけるため、腰椎を丸める動きの柔軟性が大切です。
今回は、腰椎を丸める柔軟性を出すためのストレッチをご紹介します。
両膝抱え
1. 仰向けになります。
2. 両膝を抱え、胸に両膝をつけます。
3. 10秒を10セット行います。
以上が椎間関節腰痛の原因と改善するための運動療法を解説します。
2016年の鈴木らの報告によると、腰痛の原因となるものは椎間関節や筋肉、椎間板ヘルニアなど数多くあります。
そのなかでも椎間関節腰痛の割合は最も多く、この腰痛に悩まされている人も多いと考えられます。2)
本記事を読んで、「もしかしたら私の腰痛は椎間関節腰痛かも」と少しでも思った方がいたら、ぜひ今回ご紹介した運動療法を実践してみてください。
椎間関節腰痛で悩んでいる方が、自分の腰痛の種類を正しく知り、日常生活の痛み、悩みが少しでも改善してくれたらと心から願っています。
【参考文献】
1) 曾田勝広、Hip Spine syndrome(第4報)〜立位での骨盤傾斜の測定法〜:整形外科と災害外科53(4):2004,867〜873
2) Suzuki H,et al,Diagnosis and Characters of Non-Specific Low Back Pain in Japan:The Yamaguchi low Back Pain Study.PLosS One 2016;11
【参考】腰痛診療ガイドライン2019