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毎日の生活で必ず行う「歩く」という行為。厚生労働省では日本の成人の一日平均歩数は6,000~7,000歩と報告しています1)。
もし、あなたが歩行中に腰痛を感じている場合、実に6,000回以上の腰部への負担が、毎日行われている計算になります。

「歩いている時にだけ、腰が痛くなる」
「腰痛でがに股になりやすい」
「腰痛で長い距離を歩けない」

歩行中の腰痛はもしかしたら、あなたの「歩き方」に原因があるかもしれません。

この記事では、歩行と腰痛の深い関係について解説し、あなたの体の「チェックポイント」と、腰痛軽減効果が科学的に証明された、「ウォーキング方法」についてご紹介します。

歩行と腰痛の深い関係。腰痛は「2足歩行」のための大きな代償であった!

一生涯のうち、80%の人が腰痛を経験すると言われています。なぜ、人類にとって腰痛はそれほど大きな共通した悩みなのでしょうか?

人類は進化の過程で、4足歩行から、2足歩行へと進化し、手が自由に使えるようになりました。この進化は、人間社会の発展と自然社会における地位の確立に大きな貢献を果たしました。しかし同時に、2足歩行の獲得は腰痛との戦いの始まりでもあったのです。

背骨(脊椎)の構造を考えてみます。「胸椎」には肋骨がつき、「仙椎」は骨盤に位置することにより骨の構造上安定していると言えます。しかし、その間に位置する「腰椎」だけは付属する骨がなく、一本の柱のみで体を支える不安定な場所です。

この不安定さを、体幹の筋肉・じん帯や軟骨により安定させているのですが、体幹筋の弱化、軟骨やじん帯の損傷が、左右非対称な姿勢となり、さらに、日常生活の歩くことによる腰部への繰り返しの負担が、歩行と腰痛との深い関係を築き上げているのです。

間違った歩き方によるリスク

転倒しやすくなる

間違った歩き方というのは、前傾姿勢や内股、狭い歩幅、すり足となるため、さまざまな要因が重なることで転倒を引き起こします。転倒というと、高齢の方が多いイメージもありますが、飲んでいる薬の種類や組み合わせ、他の病気との兼ね合いにより、転倒リスクは誰しもあります。

転倒すれば、脳出血や転倒など手術を要したり、歩行すらままならず、当たり前の日常生活を送れなくなったりし、QOL(生活の質)が大きく低下してしまいかねません。最悪の場合、命を落とすこともあるため、十分に注意が必要です。

新たな病気発症の引き金に

間違った歩き方をすると、歩く原動力かつ上半身を支えるための半月板をすり減らしたり、潰したりする原因となり、変形性膝関節症を引き起こす可能性があります。

他にも、背骨の変形や椎間板への圧迫、脊柱管の狭窄が起こり、椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症なども引き起こされるでしょう。これらの病気になれば、人工関節置換術や内視鏡下手術(固定術)などが必要となり、術後も長期的なリハビリを要するでしょう。また、腰へ過度な負担がかかることで、

見た目が悪い印象へ

間違った歩き方というのは、客観的に見ると「カッコいい」「綺麗」とは言えません。身体全体のバランスが悪いため、相手に悪い印象を与えてしまいかねません。モデルの方などは自分自身をより良く、綺麗に見せるために、まず初めに歩き方を見直す方が多くいます。

歩き方を変えると正しい姿勢となるため、自信と持っているように感じられ、頼もしい印象を受けます。印象がぐっと変われば、素敵な男性・女性として注目を浴びる機会も増え、交友関係などを広げることもできるでしょう。

間違った歩き方をすると腰痛の症状悪化のみならず、私たちにさまざまなリスクを引き起こすことが分かります。しかし、早い段階で正しい歩き方を知り、実践することでリスクを回避できるでしょう。健康を維持するためにも、正しい歩き方を見ていきましょう。

腰痛がある方の歩き方の特徴

Roachら2)は、慢性腰痛患者を対象として体の柔軟性について調査を行いました。その結果、健常者に比べ、腰痛患者では、特に「股関節」の“捻り”(回旋)の動きと、“後ろへ伸ばす動き”(伸展)の柔軟性が低下していたことを明らかにしました。また、Marshallら3)は、腰痛患者では、でん部の筋力と、股関節を回旋させる筋力の低下が著明であったことを報告しています。
こうした、股関節回りの柔軟性と筋力の低下を伴った腰痛患者の動き方はさらに、歩行で特徴的になると報告されています。

Atefehら4)は、慢性腰痛患者40名を対象として、3次元の動作解析カメラを用いて歩いている際の脚部の動きの測定を行いました。その結果、慢性腰痛患者の歩き方は、健常者に比べ、股関節の“回旋”の動きが特に悪く、歩行時は常に脚部を外に広げる状態で歩行していたとの結果を報告しています。
人体の構造上、腰椎と脚部を連結する、「股関節」の働きは、歩行の重要な要です。
つまり「股関節機能」の障害は、脊椎にとっても深刻な問題になると考えられます。

自宅で出来る歩き方のセルフチェック

回旋運動で左右の柔軟性をチェック!

胸の前で両腕を交差させ、足を肩幅に広げた状態で真っすぐ立ちます。そのまま足の位置は変えずに、上体を右へ捻り、後ろを向いていきます。一度正中へ戻したら、今度は左方向へも行います。
この時の左右への振り向き易さを比較してみましょう。

右へ振り向き易く、左へ振り向きにくい場合、あなたの体は右側へ捻じりやすい体になっています。この体の特徴がある方は、左足を前に出しやすく、右足を後ろに蹴りやすい可能性が高くなります。
このチェックポイントを踏まえて歩行時の歩幅の左右差を比べてみましょう。

片脚立ちで左右のバランスをチェック!

立ったまま足を肩幅に開き、両手は腰にあてます。そのまま目を閉じ、右足のももが床と水平になるように持ち上げ、左片脚立ちの姿勢をとります。そのまま何秒保持が行えるか、またふらつきの程度はどれくらいあるのかをチェックします。

年齢にもよりますが40代以下の場合では片足立ちの状態で45秒間維持できるのが基準です。それ以内にバランスを崩して地に足がついてしまう方は、体幹をしっかりと活用できていない可能性が高いです。

続いて、右片脚立ちをとり、左右でバランスのとりやすさを比較してみましょう。支えている足で、よりふらつきが多くみられた方の足は、体を支えるのが苦手となっている可能性を示します。不安定な足は、歩行中も支えることが苦手であり、反対側の足の振り出し幅が小さくなっている可能性があります。実際に歩いて、チェックしてみましょう。

まっすぐ歩けるかの確認をしてみよう

自宅でフローリング(畳のラインでも可)の線を見ずに、線に沿って歩けるか試してみてください。もし、左右どちらかにズレてしまうようであれば「均等に筋肉を使えていない」「片側の腰に負担をかけるように歩いてしまっている」証拠です。

線を見ながらまっすぐ歩く感覚を体感し、意識づけることで少しずつ腰への負担が少なくなっていくでしょう。歩き方の癖は長年かけて培ったものです。なかなか直ぐに改善、というのは難しいかもしれません。根気よくがんばりましょう。

歩き方を改善するには

自分足の形に最適なクツを選択する

自分の足の形をじっくり観察したことはありますか?特に女性の方はクツをデザインで選んでしまいがちです。しかし、足の形によって最適なクツが存在します。自分の足に合わないクツを履いてしまうことは歩き方の崩れ、最終的には腰痛につながる可能性があります。大きく分けて足の形は3パターンに分かれます。自分がどれに属するのかセルフチェックしてみましょう。

① エジプト型

第1趾が一番長い脚の形です。第5趾が痛くなる場合があります。靴のサイズは1サイズ上を選択し、つま先の丸いラウンドトゥやスクエアトゥのクツの形を購入するのが良さそうです。

② ギリシャ型

第2趾が一番長い脚の形です。つま先は細くとがったものや、ハイヒールなども履いても負担が一番少ない脚の形です。クツのサイズは足長通りで問題ありません。

③ スクエア型

第1趾~第3趾が同程度の長さで一番長い脚の形です。足幅がかなり広くなるタイプの足の形です。スクエアトゥのクツや幅広のクツを選択しましょう。足長よりも2サイズ大きめのクツを購入するのが最適です。

偏った肩に荷物をかけて歩かないようにする

荷物を左右どちらかの肩にかけていると、知らず知らずのうちに荷物をかけている側の半側をかばうように歩く姿勢をとってしまいます。自然な歩き方のバランスが崩れてしまい、腰痛につながる可能性があります。リュックサックの導入や、肩掛けバッグは左右交互に持つことを意識するだけで、歩き方の姿勢が改善されるでしょう。

歩行矯正グッズを使用してみる

歩き方を修正するのが目的である「歩行矯正グッズ」が市販されています。
靴下のように装着するタイプのものや、テーピングのように巻き付けるものなど様々な形状で販売されています。自身が使いやすいと感じる形状のものを選択してみましょう。比較的安価で、ドラッグストアやインターネットなどで購入可能です。手軽に歩行矯正を始めてみたいという方にはオススメのグッズです。

腰痛の改善策

歩き方が原因の腰痛でも薬を使用してよいのか

歩き方が起因となる腰痛だとしても、「疼痛」が発生している以上は我慢せず、鎮痛薬を使用しましょう。疼痛を我慢してしまうと、歩く姿勢はどんどん悪くなり腰痛が悪化してしましますので注意が必要です。

リハビリテーションやヨガに通う

「歩き方」「歩くための姿勢」を治すのは、客観的な観察力や、癖を指摘してくれる指導者が必要です。鏡を見ながら練習するのも有効ですが、プロの指導を受けることで効率よく歩き方の修正ができるかもしれません。ウーキングレッスンや、歩行矯正教室などをご自身の住んでいる周辺で開催されていないかリサーチしてみてください。腰痛改善をウリにしている教室も存在し、腰に負担のかからないレッスンが期待できます。パーソナルレッスンや、少人数教室、オンライン受講などもありますので参加ハードルは低くなりますね。

集中したウォーキングをしてみる

「正しい姿勢での歩き方」を意識してウォーキングしてみてください。15分程度の集中したウォーキングを1日数回、思いついたときに実践してみてください。(15分以上集中して歩行すると疲労が勝る可能性があります)長期的な矯正になりますが、いずれ癖がついて腰痛の改善、予防につながるかもしれません。

医療機関を受診する

腰痛の原因は何十種類も存在しています。腰痛が続くときには自己判断せず、医師の診察をうけましょう。日常生活や歩き方の改善で軽快する腰痛もあれば、医療機関で治療しなければ軽快しない腰痛があるのも事実です。

腰痛軽減効果が科学的に証明された「ウォーキング方法」

腰痛に対するウォーキング効果について、Suh Jらは興味深い研究結果を報告しています5)。
この研究では、慢性腰痛患者を対象に、柔軟体操を行った群、体幹トレーニングを行った群、ウォーキングを行った群、ウォーキングと体幹トレーニングを行った群で、どの運動が一番腰痛に効果的であったかを検証しました。

その結果、痛み軽減効果はすべての群で確認されました。驚きであったのは、体幹の安定性と体幹筋の持久力の改善が確認されたのはウォーキング群とウォーキングと体幹トレーニングを行った群のみであったとのことでした。

つまり、正しいウォーキングは腰痛軽減効果に加えて、体幹筋の安定性・持久性の改善にまで効果をもたらすことが確認されたのです。

それでは、この論文を参考にした「ウォーキング方法」についてのポイントを3つご紹介します。
最初に、先ほどのチェック項目で確認された左右の非対称性を整えながら、歩幅、手の振りを意識し、左右で均整の取れたウォーキングを心がけましょう。

2つ目に、ウォーキング中は“腹式呼吸”を常に意識しましょう。やり方は椅子に座った姿勢で、手をおなかと胸に置き、深呼吸をしましょう。胸に置いた手が呼吸に伴って動いている場合は“胸式呼吸”、おなかに置いた手が、呼吸に伴って動いている場合は“腹式呼吸”です。繰り返し行って、まずは止まった姿勢で腹式呼吸を練習し、慣れてきたらウォーキング中にもこの腹式呼吸で運動を実施しましょう。

3つ目は歩く速さです。ゆっくりとのんびりあるくよりも、早く歩くことでより体幹筋が使用されることが報告されています。さらに、可能な方は坂道の傾斜を利用しましょう。傾斜が強くなるほど、脊椎上部の体幹がより強く働くことが報告されています6)。

運動はまずは5分から始め、30分程度のウォーキングを行えるようになることを目標にしましょう。

【結論】

腰痛と歩行の深い関係についてご紹介しました。
歩行時の腰痛の原因は、腰だけでなく、股関節にもその可能性があります。
ご自身の体の柔軟性とバランスの左右差をまずはチェックし、左右対称性な姿勢を心がけた歩行を行ってみましょう。さらに、腹式呼吸を用いながら、早歩きで行うウォーキングエクササイズは腰痛の軽減だけでなく、体幹筋のトレーニング効果を持ち合わせている可能性を示しています。

ウォーキングは、一人でお金をかけずに始められる気軽な運動です。腰痛でお悩みの方は、ぜひ時間を作って短時間からでも運動を始めてみましょう!

しかし、腰痛の原因は人によりさまざまです。あなたの腰痛のより正確な診断と、それにふさわしい対処方法、運動方法を知りたいとお考えの方は、自動問診アプリ「腰痛ドクターアプリ」をご利用ください。

引用・参考文献
1. 厚生労働省健康局健康課.身体活動・運動を通じた健康増進のための厚生労働省の取組み.2018.
2. Roach S, San Juan J, Suprak D, et al. Passive hip range of motion is reduced in active subjects with chronic low back pain compared to controls. Int J Sports Phys Ther. 2015 Aug;10(4):572.
3. Marshall P, Patel H, Callaghan JP. Gluteus medius strength, endurance, and co-activation in the development of low back pain during prolonged standing. Hum Mov Sci. 2011 Feb;30(1):63-73.
4. Rahimi A, Arab A, Nourbakhsh M, et al. Lower limb kinematics in individuals with chronic low back pain during walking. J Electromyogr Kinesiol. 2020 ;51:102404.
5. Suh J, Kim H, Jung G,et al. The effect of lumbar stabilization and walking exercises on chronic low back pain: A randomized controlled trial. Medicine (Baltimore). 2019;98(26):e16173.
6. Lee H, Shim J, Lee S,et al. Facilitating effects of fast and slope walking on paraspinal muscles. Ann Rehabil Med. 2014;38(4):514-22.

著者情報

腰痛メディア編集部
腰痛メディア編集部

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