ランニングの際に腰痛が発生するという方は非常に多く、またランニングによって腰痛が起こる原因は『フォーム』による直接的なものや、シューズの選択ミスによる姿勢の崩れなど非常に多岐にわたります。
しかし、このような原因に対して直接的なトレーニングやストレッチを行ったとしても慢性的な腰痛となりなかなか改善しない方も多いようです。
そもそもこういった方の中にはランニングに対して『十分な疲労回復』が根本的にできていないケースがみられます。
今回はそのような方に向けて『ランニングの際のウォームアップ、クールダウンの基本』と『基本的な疲労回復の知識』について解説していきます。
目次
ランニングの際に腰痛になる原因
本題に入る前にまずは代表的なランニング時、またはランニング後に腰痛が発生する原因としては以下のようなことが考えられます。
フォームの不良
ランニングの際に腰痛を起こす原因で多いのがランニングフォームの崩れによるものです。ランニングは繰り返し地面の衝撃を体に伝えるものでスムーズな荷重の伝達ができないとダメージが蓄積してきます。
ランニングの際腰部の筋肉は本来体を安定させるために重要な役割を果たします。また足を出す際の軸にもなる部分ですので負担がかかります。
そのため全身の筋肉をうまく使えず腰部のコントロールだけに頼った姿勢では腰痛を引き起こす可能性があり、実際に腰痛はランニングの際に出やすい症状の上位になります。
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オーバーワーク
上記で挙げたような疲労と筋肉へのダメージの蓄積があるにも関わらず、十分なメンテナンスを行わないことにより腰にとっては習慣的なランニングがオーバーワークとなります。
このような状態になると痛みが改善しにくいいわゆる「慢性腰痛」の状態を引き起こしますので注意が必要です。
日常生活での不良姿勢、仕事の影響
ランニング時にとどまらず、普段の日常生活から腰に対してストレスのかかる仕事や習慣によって悪化や慢性化につながります。
重いものを持つような仕事だけではなく、一日中座っているようなオフィスワークも腰に対して大きなストレスがかかる原因です。
適度な休憩をとるなどランニングをしていないときはできるだけ腰を休めるような生活習慣を整えましょう。
腰痛予防のためにウォーミングアップの方法
具体的なウォーミングアップには以下のようなものが推奨されます。ウォーミングアップには
1 血行を高め、体温を上昇させる
2 けがを予防する
3 パフォーマンスを高める
といった効果があります。特に腰痛が発生する場合は筋肉の柔軟性をしっかりと高めてからランニングに挑むことが重要です。
具体的な方法論としては
・軽いジョギングで筋肉への血流量や筋肉の温度を高める
・ふくらはぎや股関節のストレッチを重点的に行う
・スプリント(ダッシュ)を何本か行い関節を動かす準備をしておく
という方法が一般的ですので必ず行いましょう。
腰痛予防のためのクールダウンの方法
トレーニング後の疲労回復効果を高めるために、以下のようなクールダウンを必ず行いましょう。また水分をしっかりととることも忘れずに行ってください。
・ストレッチ
・ジョギング、ウォーキング
・姿勢をリセットするドリル(軽いトレーニング)
・アイシング
このような内容のクールダウンを行うことが一般的です。
有効な疲労回復(非ランニング時の意識)
ランニングの際に毎回腰痛が出るという方はフォームの問題以外にそもそも良質な疲労回復ができていないという問題点もあります。
ランニングを習慣的に行う場合、十分に前回のランニングの疲労を回復していないと知らず知らずにオーバーワークの連鎖に陥ってしまいます。
このような状態はランニングの際に出現する腰痛を慢性化させる原因にもなりますので自宅などでの疲労回復をしっかりと行っていく必要があります。
ゆっくりとお風呂に入る
効果的な筋肉の回復を促すためにまず取り入れたいのがゆっくりとお風呂に入ることです。
筋肉や全身を温めてあげることで血流がアップし筋疲労の回復を早めます。
またゆっくりお風呂に入った後の筋肉は柔軟性が高まっており、この後に説明する筋肉のケアを行う時間には最適といえます。
良質な入浴は良質な入浴を行うためにも有効な方法ですがあまりにも高温のお湯や長風呂過ぎるのも逆効果ですので以下の注意点はしっかりと意識する必要があります。
【疲労回復のための入浴:注意点】
筋肉のケア
ランニングの際に腰痛が出現する方は特にランニング前後だけでなく疲労回復時にもストレッチなどの筋肉のケアを欠かさないようにしましょう。
前述したようにランニング時のフォームの不良は腰だけでなく股関節やふくらはぎの硬さが影響していますので
・腰
・背中
・太もも(表、裏)
・ふくらはぎ
・足の裏
このような部分のケアは必要です。ふくらはぎ以外の部分はご自身の手でほぐすことは難しいかと思いますので市販の筋膜リリースなどの、フォームローラーなどを使ってマッサージをしましょう。
筋肉が凝り固まっている部分はローラーを当てると痛いことが多いため無理をせずはじめはゆっくりと行いましょう。
トレーニング直後の食事
ランニング後の食事や疲労回復時の普段の食事は筋肉痛の回復を早めるなど非常に重要な因子になります。目的別にしっかりと疲労回復したい方は以下のような栄養素と食品を摂取することをおすすめします。
タンパク質
タンパク質は筋肉を修復するために使用される栄養素で、そもそも筋肉を作る材料となる必須栄養素の一つです。つまりパフォーマンスの高い筋肉を作るためと疲労回復のための材料となります。下記のような食材が該当します。
【ランニング後におすすめの食材】
・プロテイン
・お肉
・ヨーグルトや豆乳
・ちくわやサラダチキンなど
炭水化物
炭水化物は筋肉を動かすエネルギー源である『グリコーゲン』と深く関連します。特にランニングの場合はグリコーゲンの消費が大きいため不足しがちです。
過度な糖質制限ダイエットなどと組み合わせるとエネルギーが補給されませんので注意しましょう。
上記でご説明したたんぱく質を一緒に摂るために鮭などの具の多いおにぎりをランニング後に摂取してもいいですね。
【ランニング後におすすめの食材】
・ごはんやパン、麺類
・バナナ
アミノ酸(BCAA)
アミノ酸はタンパク質が分解されたものですが、吸収に時間がかかるためアミノ酸をそのまま摂取することで早く吸収することができます。
エネルギー代謝と疲労回復を助ける役割を持っておりアミノ酸の中でも『BCAA(分岐鎖アミノ酸)』は必須アミノ酸のバリン、ロイシン、イソロイシンの総称でサプリメントなどによって効率よく摂取することがおすすめです。
良質な睡眠
良質な休息を行うために最も重要なのが「良質な睡眠」です。
効果的な睡眠をとるためには以下のようなことを意識して生活をすることが重要となります。
【良質な睡眠をとるために意識したいこと】
・ゆっくりと入浴して体を温めておく
・就寝時間前に食事を摂らない(理想は3時間以上)
・室内の照明は暗く、スマホは見ない
・10時~12時には布団に入り、6~8時間の睡眠をとる
このようなポイントを意識して睡眠をとる習慣がつけば効果的な疲労回復を行うことができます。
軽い運動
トレーニングの後は基本的に休息することが重要で、トレーニングになれないうちはたまった筋肉の疲れをとるために軽いジョギングやウォーキングを取り入れることで効率的に疲労が改善することがわかっています。このようなケアを「アクティブリカバリー」と呼び、以下のような方法論で行うことがおすすめされています。
もちろん、このような運動を行った後に筋肉痛が悪化するようなことがあれば過負荷となりますのでご自身にあった運動量で調整するためにウォーキングあたりから行っていくことをおすすめします。
まとめ
いかがだったでしょうか。腰痛の根本は原因の部分でも述べたように『フォーム(姿勢)』によるものがほとんどといえますが、それらを予防、改善するためには普段のウォームアップやクールダウンはもちろん、『走ってないときに行う疲労回復』が重要になります。
今回ご紹介した内容は大会に出場する『本格派』から『ダイエット目的』の軽いランニングに至るまで共通する内容です。
今回の内容を参考になかなかランニングの際の腰痛が改善しないという方は質の高い疲労回復と予防方法を実践してください!
【参考文献】
腰痛診療ガイドライン2019
グリコHP:https://cp.glico.jp/powerpro/citric-acid/entry91/
東京ガス:運動とお風呂のいい関係
https://www.toshiken.com/bath/series/pdf/vol5/yokuiku05_all.pdf