現在日本では、厚生労働省の調査によると約2800万人が腰痛だと感じており、その8割は原因不明とされています。腰痛は長引くことで日常生活や仕事などの日々の活動に支障をきたしたり、精神面にも影響を及ぼすことが考えられます。そのため、腰痛を避けるための体の使い方や腰痛を軽減できる方法を日常生活に取り入れることはとても大切です。
今回は、特に腰痛を起こしやすい動作である、重いものを持ち上げる時の腰痛の三つの原因と腰痛を避けるための三つの動作のコツをお伝えしていきます。
目次
重いものを持ち上げる時に起こしやすい腰痛の三つの原因について
腰骨へのストレスが大きい。
人が真っすぐに立っている時、背骨は全体的に縦に長いS字カーブを描いています。頭骨の下から、首骨は前に胸骨は後に、そして腰骨はもう一度前に彎曲して骨盤とつながり、重力に適応するように体を支えながら絶妙なバランスを保っています。
それでは、このような背骨の特徴を踏まえて考えてみましょう。重いものを持ち上げる時、背骨に対してどんなことがおきているでしょうか?きっと体の前で重い荷物を抱えるので、腰骨のあたりは前に引っ張られたり、上からも体や荷物の重さによる圧を受けているのではないでしょうか。
そのため、もし持ち上げようとしているものが重いと感じているなら、特に注意深くその動作を行うことが必要です。なぜなら、瞬間的な強い力や勢いに任せて持ち上げようとすることで腰を痛める可能性があるからです。
例えば、腰骨や背骨を急激に大きく反らせて持ち上げようとしたり、または、腰や背中を丸くして体の重心を少し後ろに下げながらバランスをとろうとするかもしれません。どちらの場合も、背骨を真っすぐに伸ばした状態で重いものを持ち上げるのではなく、背骨を反らせたり丸める方法となるので、腰骨や背骨に強いストレスを与えながら、その動作を可能にしようとしています。
こういった腰骨への強いストレスを与えるような動作がたびたび繰り返されると、腰骨の関節や上下の腰骨の間にある衝撃緩和材としての椎間板、筋肉や靭帯などの腰まわりの組織を傷めることで腰痛がおこってくるでしょう。
おなかを支える力が弱い。
おなかのまわりをコルセットのように支えている腹筋群は、腹圧を高めて内臓を支え、姿勢を安定させるための非常に重要な筋肉です。これらの筋力が低下してくると、おなかのまわりから体の中心部に向かって腹圧をかけることが難しくなるため、立っている時におなかがぽっこりと前に出てきます。
このように腹圧をかけることが難しく、おなかがぽっこりと前に出ている場合、腰への負担がとても大きくなります。そしてさらに、体の前で重いものを持ち上げようとするのですから、まずは体が前に倒れないように、背中側の腰背筋や脊柱起立筋群を過剰に使って体を引き上げながら、重いものを持ち上げようとすることが予測されます。
この時、腰背部筋や脊柱起立筋群を過剰に働かせることで、それらの筋肉が硬くなって柔軟性が低下しますし、いずれは筋組織や靭帯を損傷し腰痛を引き起こしてしまうでしょう。またその硬くなった腰背筋群の間を通る神経も圧迫されて、腰の痛みだけではなく、足のしびれが生じることもあります。
腰痛体操として体幹の筋力トレーニングを行い腰痛予防を図りましょう。
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姿勢が崩れて重心の位置が安定していない。
人が真っすぐに立っている時、おへそから握りこぶし一つ分下あたりに重心があります。
その重心の位置を安定させて姿勢を整えておくことが、重いものを持ち上げる前の準備段階として非常に重要です。
例えば、重心の位置が前にぐらつくと、重心を後ろに戻すために腰骨や背骨全体を大きく反らせる反応が生じたり、また重心の位置が後ろになると、腰や背骨を丸くしながら上半身を前に移動させようするかもしれません。いずれにしても、腰骨へのストレスが増大し、腰痛がおこる可能性が高まるのです。
これらのことを踏まえると、腰痛を避けるためには、重心を安定させて姿勢を整えることが大切だとわかります。
腰痛を避けるための三つの動作のコツ
それでは、重いものを持ちあげる時に腰痛を避けて効率的に動くための三つのコツをお伝えします。
真っすぐに立ち、次の動作につなげるための準備姿勢を作る。
まず、腰に負担をかけにくくするための姿勢を整えていきます。両足を腰幅に開いて真っすぐに立ち、骨盤を正面に向けておへそをおなかの奥へと引き込みます。そのしっかりとした土台の上に、背骨を真っすぐに伸ばして胸を開きましょう。重心が安定しているかどうかを注意深く観察し、その状態を維持します。
このように何かを始める時、姿勢を整え、おなかに力を入れて構えるということが非常に重要です。なぜなら、特に重いものを持ち上げる時、腰に負担をかけることが予測できるからです。
体のバランスを保ちながら重心を移動させる。
次に足幅を広くとって立ちましょう。そこから両鼠径部を後ろに引きながら、両股関節、膝関節をゆっくりと曲げて重心を下げていきます。この時、背骨を真っすぐに伸ばしたまま、おなかに力を入れて体幹を前に倒していきます。前後のバランスをとりながら重心を下げてしゃがみ、両手で重い荷物をできるだけ体の近くで持つようにします。
体の近くで物を持つようにするのは、体の重心の位置に近いほうが姿勢が安定しやすく、腰や背中の筋肉への負担が少なくて済むからです。
下半身やおなかの力を使って持ち上げる。
さあ、いよいよ持ち上げます。この時、大切にしたいことは、両足裏で床をしっかりと踏み、下半身とおなかの力を使って持ち上げるということです。
重いものを体の近くで持つことができたら、おなかに力を入れながら両足裏で床を踏みます、この時、重心を少し前に移動させてお尻を軽く持ち上げましょう。そこから、下半身やおなかの力を使って、背骨を長く伸ばしたまま、体幹を引き上げ、重いものも持ち上げていきます。
慌てずゆっくりと行うことが大切です。なぜなら、急いで持ち上げようとすると、腰骨を反らせたり腰背部の筋肉を過剰に使うことが生じやすいからです。腰痛を起こさないためにも、注意深くご自身の体の状態を見守りながら行いましょう。
まとめ
今回皆様に、重いものを持ち上げる時におこりやすい腰痛の三つの原因と腰痛を避けるための三つの動作のコツをお伝えしました。
皆様いかがだったでしょうか?
私たちの日常生活において、重いものを持ち上げる動作は、腰痛を起こしやすい動作の一つです。しかしながら、その動作のコツをつかみ、注意深く行うことで腰を守ることができます。ぜひ、今回お伝えした腰痛を避けるための方法をいつも思い出し、実践してみてください。
参考:日本整形外科学会