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スポーツ選手の腰痛症は多い
スポーツをすると身体の様々な部位に故障が起こる可能性はあります。なかでも腰痛は選手生命にかかわる非常な深刻な症状です。今回は腰痛とバスケットボールに焦点を当てて、記事にしていきたいと思います。
バスケットボールは足腰を使う競技
バスケットボールはドリブルして、シュートして、と前腕や上半身を多く使っているので突き指などの前腕の微細な外傷がよく聞かれます。
しかし実際には腰痛で悩む選手も少なくありません。その理由としてはバスケットボールならではの動きやステップ、相手チームとの接触、コート内の往復などの下半身を酷使する場面が多いです。そのため、実は下肢に対する負荷が非常に強い競技でもあります。
腰痛の原因はバスケットボールの動きにあった!
ストップ・アンド・ゴー
オフェンスとディフェンスの切り替えが早いバスケットボールでは全力で走っては静止する、「ストップ・アンド・ゴー」が基本の動きになります。停止からの全速力も、全速力からの停止も、ともに下肢と腰部に強い負担をかけてしまいます。
ターンとひねり
バスケットボールではドリブルしながら、相手をかわすためにターンしたり急な方向転換をしたりする場面が多々あります。なかでも後方でのプレイを確認するために、上半身だけを振り返らせる「ひねり」の動きは突発的な急性期腰痛を誘発させる可能性がある危険な動作のひとつです。
ジャンプ
シュートやパスカット、ジャンプボール、リバウンドなど様々な場面でジャンプする機会の多いバスケットボールですが、ジャンプすることは腰に自身の体重以上の負担が強くかかります。特に着地の時に腰痛が悪化することが多いので、違和感がある際にはすみやかに対応するようにしましょう。
フェイント
相手に進行方向を欺いたり、シュートポジションからパスを繰り出したりするようなフェイント動作は相手を欺くためにセットポジションに入急な動作停止です。自分の意識下で行っていますが実は腰部への負荷は非常に大きいです。
ディフェンスが原因の腰痛
ディフェンス中の姿勢は腰を落として様々な動きに瞬発的に対応できるように構えています。この姿勢が腰に負担をかけることにつながっています。この時の姿勢が悪い(背が丸まっている)と腰痛出現の要因になります。特に高身長の方は姿勢が悪いディフェンスになりがちなので注意しましょう。自分では気が付かないことが多いので腰痛がある場合には他者に姿勢を指摘してもらうのが良いです。
伸展型・回旋型腰痛が多い
先述したようなバスケットボール特有の動作を繰り返すことで、シュートで体を伸ばしたときやディフェンス姿勢から起き上がったときに腰痛を感じる伸展性腰痛や、ドリブルターンや急な方向転換などで腰痛を引き起こす回旋型腰痛が非常に多い症状です。このような動きで腰痛が起こる場合にはバスケットボール起因の腰痛を疑いましょう。
バスケットボールが起因の腰痛でよくある疾患名は
バスケットボール起因の腰痛では、腰椎脊椎管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、腰椎分離症などの疾患が潜んでいることがあります。どれも腰痛を主訴に治療が必要な疾患なので長期間の腰痛がある場合には放置せず、悪化する前の対応がキーとなります。
腰痛の対策方法を紹介します
まずは安静
腰痛が出現しているときに、無理してプレイを続けることは厳禁です。腰痛を感じたら安静に過ごすのが基本です。ここで「安静にしていれば疼痛は消失するのか」「安静時も腰痛が続くのか」という点を評価します。この評価は診断にも非常に重要なものです。
姿勢の改善を試みるようにする
特に腰に負担のかかるディフェンス時の姿勢を矯正できるようにトレーニングしましょう。他者に指摘してもらう方法や、ミラーの前で正しい姿勢を癖付けるなどの方法が有効的です。姿勢の改善は腰痛の根本的な解決策のひとつです。積極的に姿勢矯正に取り組んでください。
テーピングやサポーターの方法
テーピングやサポーターで支持することは腰痛軽減につながる可能性があります。市販のものや整形外科・スポーツ整形外科で購入できるものがあるので導入してみましょう。身体に合わないものやサイズの違うものなどは逆効果になってしまう可能性もあるので注意が必要です。
受診や薬剤の使用
自分での対応が厳しくなってきた際には受診して治療に励むことも大切です。長期化する腰痛は手技療法や手術療法などの治療が必要な可能性もあります。また、画像検査で明らかな異常がなければ対症療法として鎮痛薬を使用することで、腰痛を緩和しながらバスケットボールを楽しむことができます。比較的副作用の少ない(眠気や胃痛の出現がない)良質な鎮痛薬もありますので医師に相談してみてください。
日常にできる腰痛予防とは?
腰痛がまだ出現していない方や、腰痛が今は治まっている方などは予防に徹底する必要があります。ここで、簡単にできる腰痛予防や対策を紹介します。
アイシングを徹底する
筋肉を使用した後には筋肉痛や筋肉・神経の炎症を予防するためにも練習後や、試合後にはアイシングをしっかり行いましょう。また腰痛がすでに出現してしまっている場合にも、身体の冷却は、神経伝達の速度を鈍らせることで腰痛を緩和できます。急性の腰痛の場合には特にこのアイシング・冷却が有効的となります。
ストレッチやマッサージを行う
腰痛に対するストレッチやマッサージなどは非常に多くの方法があります。腰痛予防として行う場合には、バスケットボールで体を動かす前に筋肉や組織を温める目的で行います。しっかりと腰部を柔軟にしておくことで急性腰痛の予防になります。
理学療法や整体、スポーツ整形外科などに通う
アスリートやプロのバスケットボール選手などは予防の段階で理学療法や整形外科、アスリートやスポーツ外傷に特化したスポーツ整形外科で理学療法や手技療法などを施行されている方もいます。一度腰痛を発症してしまったら繰り返し、慢性化することはまれではないので、徹底した予防を実施するのが確実ですね。
体幹や下肢のトレーニングを行う
腰痛の予防策として腹筋や背筋などの体幹の筋肉をバランスよく鍛えることが腰痛予防に効果的です。また下肢(大腿・脹脛)の筋力アップも接触プレイで腰部への負担を軽減するために有効であるとされています。
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無理をせずに楽しむようにしましょう
スポーツは健康維持に有効的でその効果も立証されています。部活動やサークルなどでレギュラー選手になろうと無理な練習を繰り返すことは腰痛をはじめとする、身体の故障につながります。伸び悩みやレギュラー争いなどの場面もあると思いますが楽しんでプレイできることが第一優先です。
まとめ
腰痛が原因で選手生命を絶たれることは、珍しい事例ではありません。現在腰痛が出現している方は、何かしらの対策をすみやかに行うのが得策でしょう。悪化するとバスケットボールができなくなるだけではなく、日常生活への影響も予想されます。
ストレッチや体幹トレーニングなどで日頃から体のケアを行いましょう。この記事を読んで腰痛治療に前向きになれていれば幸いです。
参考文献
著 加藤 光寶『運動器 成人看護学』[系統看護学講座 ]出版社 医学書院, 発行年 2014
著 坂井建雄 / 岡田隆夫『解剖整理学』[系統看護学講座 ]医学書院, 発行年2014
著 武田宣子『リハビリテーション看護』[統計看護学]出版社 医学書院, 発行年 2015
URL:https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/1911-1_2d_0001.pdf(厚生労働省 腰痛対策)
URL: https://www.jslsd.jp/(日本腰痛学会)
URL: https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/lumbago.html(公益財団法人 日本整形外科学会)
URL: http://www.japanbasketball.jp/(公益財団法人 日本バスケットボール協会)
URL: https://www.rinspo.jp/(日本臨床スポーツ医学会)