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7月1日は『こころの日』です。

「こころの日」は1988年7月1日の精神保健法の施行日にちなんで、1998年より7月1日を「こころの日」としました。こころの健康の大切さを考える週間として、一般社団法人日本精神科看護協会では、7月1日前後1週間にあわせて講演やイベントを行っています。

ぜひみなさんもこの記事を読んで、自分のこころの健康について振り返ってみてください。

ストレスとは

ストレスとストレッサー

ストレスという言葉は、もとは物理学で使われていた、物体の外からかかる力による物質のひずみのことを意味していました。

カナダの生理学者であるハンス・セリエ博士が1936年にストレス学説を発表したことにより、医学の世界でもこの言葉が使われ始めました。

今では頻回に使われているストレスですが、医学的には外部からの様々な刺激に対する体やこころの反応のことを意味しています。ストレス反応を生じさせる外部からの刺激(ストレスの原因)のことをストレッサーと呼び、ストレッサーによって自分の体やこころに負担がかかり、ゆがみが生じた結果、様々な体の不調が生じてしまいます。

良いストレスと悪いストレスがある

ストレス自体を悪いものと思われている方が多くいますが、実はストレスには良いストレスと悪いストレスがあります。

良いストレスは、仕事や勉強、人間関係や社会生活において自分を奮い立たせてくれる、やる気につながる外部からの刺激です。

悪いストレスは、不安や疲労など、こころとからだが苦しくなり、やる気をなくすことにつながる外部からの刺激です。悪いストレスを減らすことこそこころの健康には大切なことなのです。

ストレスの原因

ストレス社会といわれる現代で、こころの病にかかる人が増えています。主なストレッサー(ストレスの原因)を紹介します。あてはまる数が多いほどストレスの原因が多い状態です。

□引っ越しなど生活環境が大きく変わった
□入学や入社、転職などで人間関係に大きな変化があった
□出産や育児など、身体的な変化があった
□失業や収入の減少など経済的に厳しい状況になった
□家事や残業などで疲労が重なっている
□休日も家事や育児に追われ休息がとれない
□職場や家族間の人間関係で悩むことが多い

ストレスを受けやすい性格についても紹介します。
責任感が強く、何事にもきっちりやらないと気が済まない、うまくいかないと自分を責めてしまうことが多い人は要注意です。
がんばりすぎないこと、しっかり休息をとることなど、こころと体のバランスをとるようにしてみてください。

ストレスの原因

ストレスが引き起こす腰痛について

日本人の4人に1人が自覚しているといわれている腰痛。7年ぶりに改訂された『腰痛診療ガイドライン2019』(監修・日本整形外科学会、日本腰痛学会)では、「腰痛の治療成績と遷延化には、心理社会的因子が強く関連する」と指摘されています。

病院で検査をしても約8割の人は痛みの原因が特定できない非特異的腰痛に該当します。腰の痛みが3カ月以上続く慢性腰痛には、精神的なストレスが深くかかわっていることが近年わかってきました。著者も痛みが良くなったり悪くなったりと長年腰痛に悩まされてきました。
腰が痛い女性

ストレスと腰痛の関係

イライラしたり、緊張やストレスの状態が続くと、交感神経が優位になり血管が収縮して血流が悪くなります。長時間血流が滞ってしまうと痛みへとつながります。

交感神経と副交感神経

そして、こころの状態と痛みは密接に関係しており、痛みをコントロールするドーパミンシステムという脳のメカニズムがあります。
普段は、痛みの信号が脳に伝わると、脳からドーパミンが放出されます。その結果、痛みの信号を脳に伝える経路が遮断され、痛みが緩和されたり、感じにくくなります。
しかし、ストレスを長時間感じていると脳内物質のバランスが崩れてしまい、脳内のドーパミンが放出されにくくなります。すると痛みがおさえられなくなり、わずかな痛みでも強く感じるようになります。そして、腰痛の痛みによってさらにドーパミンの分泌が少なくなり、痛みが慢性化するといった悪循環につながります。
ドーパミンシステム
腰痛だけでなく、頭痛や肩こりなどもこのようなメカニズムで症状が起こるといわれています。

ストレスと痛みの関連を評価

病院では慢性腰痛の患者さんの精神的要因をチェックする方法として、BS-POPという簡易問診票を用いてストレスと痛みの関連を評価することが行われています。

医師が患者さんを見てチェックするものと患者さん自身が記入するものがあり、二つの点数を合わせて、総合的に診断します。

ストレスが起こす体の不調について

ストレス反応が加わり続け、慢性化していくと、うつ病などの精神疾患だけでなく、身体面での疾患に至ることがあります。

ストレスと関連していると考えられている代表的な疾患を少し紹介します。

・気管支喘息、過換気症候群
・本態性高血圧症、狭心症、心筋梗塞
・胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎などの内蔵疾患
・肥満症、糖尿病
・筋収縮性頭痛
・慢性蕁麻疹、円形脱毛症
・慢性関節リウマチ、腰痛症
・メニエール病
・自律神経失調症

これらの疾患の原因がすべてストレスによるものではありません。しかし、病気になる過程においてストレスが関係しているかどうかという点は、病気の治療において重要です。

こころのピンチを示すサインを見逃さないで

ストレスとストレッサー

こころのピンチを示すサインは分かりやすい形で体に現れます。自分にあてはまるサインに気づいてあげましょう。

□最近起きるのがつらい。
□寝つきが悪い。いつも眠い。
□頭が痛い。おなかが痛い。
□食欲がなくなる。暴飲暴食になる。
□気力がなく何をするのもおっくうに感じる
□仕事や勉強に集中できない。
□心配事や考えが堂々めぐりする
□夕方より朝方の方が気分や体調が悪い
□お酒を飲む量が増えた。たばこを吸う回数が増えた。

こころのピンチを示すサインが…どこに相談したらいいの?

もやもや
こころのピンチを示すサインが出ているときに、ひとりで悩まず専門家に相談してください。早期に対策を行うと早く回復します。
困ったときに相談できるところを紹介します。

まちのクリニックや病院にいってみよう

かかりつけ医に相談するのが一番です。もしかかりつけ医がない場合は、内科や婦人科などでも相談できます。

保健所や先進保健福祉センターに相談してみよう

どこに相談していいかわからないときにはまずは相談してみましょう。

近くにいる専門医に相談してみよう

学校の保健室の先生やスクールカウンセラー、会社の健康管理の担当者など近くに専門医がいる場合は、専門医に相談してみましょう。

こころのピンチが深刻なとき

精神科のある病院にすぐにご相談ください

あなたもストレスチェックをしてみよう

厚生労働省が施行している5分でできる職場のストレスチェックがあります。仕事でストレスを抱えている方はぜひチェックしてみてください。

5分でできる職場のストレスチェック|こころの耳|厚生労働省

ストレスチェックは自分のこころの状態について気づく大切な機会です。ストレスチェックで得た結果は、こころの健康を良くするのにつながる資料となります。自分のこころの状態を把握したうえで、セルフケア(ストレスへの対処)に生かすことが大切なポイントです。

いますぐできるセルフケア

夜更かしせず朝起きて日光を浴びる

朝に光を浴びると体内のリズムがリセットされ、良い睡眠がとれるようになっていきます
日光浴

寝る前のリラックス方法を見つけよう

寝つきが悪い方は、寝る前にアロマを焚いてみたり、リラックスできる音楽を聴いてみたりと自分なりのリラックスの方法を試してみてください
アロマオイル

気持ちを自由に書き出してみる

素直な気持ちを紙に書き出すだけで大丈夫。よかったことうれしかったことなどのプラスの気持ちも書き出すことが大切なポイントです。
手紙

ちいさなご褒美タイムをつくる

せわしない毎日で好きなことや楽しいことを忘れがち。好きな音楽を聴く、美味しいものを楽しむなどこころが喜ぶご褒美タイムをつくろう。
ティータイム

適度な運動をしよう

米国の疫学研究では、1947人を5年間調査した結果、身体活動量が少ない人は多い人に比べてうつが起こりやすいことが報告されています。一駅分歩くなどまずは軽めのウォーキングから始めてみてください。難しい場合は、ストレッチなどで体を動かすことを継続することが大切なポイントです。
ウォーキング

もし家族や友人など大切な人のこころのピンチに気づいたら

あなたの周りの大切な人にサインがでていたら、「最近、元気ないよね…?」「最近、疲れている?」などいつもと違う様子に気づいていることを言葉に出して伝えてみよう。

もし相手が話してくれたらゆっくり話を聴いてあげましょう。アドバイスをする必要はありません。ただ聴くだけで大丈夫です。相手が聴いてもらえたと感じるようにうなずきながらゆっくり話を聴くことが大切なポイントです。

こころの病気は家族や職場の仲間など周囲の人が病気のことを理解し、暖かくサポートしてくれることが重要な鍵になります。

こころのピンチ

まとめ

目に見える体の病気にだれもが注目しがちですが、こころの不調で起こる病気は数多くあります。こころの中は直接目には見えないけれど、生活の中で見えてくるいつもと違う体の様子があります。このこころのサインを見逃さず、正しい対処と早期治療を行うことがとても大切です。

自分のこころの状態を知ることはストレスと向き合う第一歩です。この記事を読んで、ストレスと上手に付き合っていくためのセルフケアにつながることを願っています。

参考:
厚生労働省「国民生活基礎調査(平成29年)」
日本整形外科学会、日本腰痛学会「腰痛診療ガイドライン2019」
・「日本心身医学会教育研修委員会編1991心身医学の新しい診療指針,心身医学」

著者情報

庄司 しおり
庄司 しおり

保有資格

看護師

経歴

大学病院にて看護師として勤務。

成田先生の運動療法に出会い、7年間悩まされていた腰痛がみるみる改善。今では自分で腰痛をセルフコントロールできる状態になりました。

同じく腰痛に悩む多くの人々に少しでも役に立てるよう情報発信していきます。

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