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妊娠中に起こるマイナートラブルのうち、多くの妊婦が悩むものの一つが「腰痛」です。約半数以上の妊婦が腰痛を経験するという報告があります。(※1.2)

なぜ妊娠中は腰痛が起こりやすいのでしょうか?
その原因には、お腹が重くなり身体への負担が増えることと、妊娠中特有のホルモン分泌が関係しています。

今回は、妊娠中に起こる「腰痛」の原因と対策法についてお伝えしていきます。

妊娠中はなぜ腰痛が起こりやすいのか?

妊娠中、女性の体の中では様々な変化が起こります。この変化が妊娠中の腰痛に影響しているため、一般的な腰痛とは原因が異なります。

妊娠中の腰痛の原因は大きく分けて2つです。1つは、妊娠中特有のホルモン分泌の影響で骨盤の靭帯や関節がゆるむこと、もう一つはお腹が大きく重くなることで腰に負担がかかるということです。詳しく解説していきます。

妊娠中特有のホルモン、リラキシンが分泌されているから

妊娠中はお産の準備や、妊娠を維持するためにホルモン(エストロゲン、プロゲステロン、リラキシンなど)が分泌されます。
このうち「リラキシン」は妊娠初期から分泌されはじめ、靭帯や骨盤周囲の関節をゆるめる作用があります。

このリラキシンはお産にはかかせないもので、リラキシンの作用により、狭い産道から赤ちゃんが出てくることが可能になるのですが、一方で靭帯や関節をゆるめる作用により骨盤を不安定にしてしまいます。このことが原因で、腰に痛みを引き起こします。

お腹が大きく、重くなることによる負担

お腹の中の赤ちゃんは成長するにつれてどんどん重くなり、胎児や胎盤などを含めて最終的には10kg程度になります。この重さで腰が反ったり、重心が前方に移ることによって背中の筋肉に負担がかかることが腰痛の原因です。また、お腹が大きくなることで背中とお腹の筋肉が伸び、筋肉の膜が張った状態になることも腰痛発生に影響しています。

このように、筋肉に大きな負担が継続的にかかることにより発生する腰痛を「筋・筋膜性腰痛」と言います。筋・筋膜性腰痛は一般の方の腰痛としてメジャーで、「ぎっくり腰」はこの筋・筋膜性腰痛であることが多いです。

妊婦の腰痛 予防・対策方法

妊娠中は、妊娠経過が進みお腹が重くなればなるほど腰の負担は大きくなっていくため、予防が重要になってきます。腰の負担を軽減することが腰痛予防の基本です。
 ここでは妊婦の腰痛予防・対策法を紹介します。

腰への負担を軽減する

妊娠中はお腹が大きく重くなるため、非妊娠時に何の問題もなく行えていた動作でも妊娠中は腰に負担を与える可能性があります。筋・筋膜性腰痛は腰への大きな負担が続くことで発生するため、なるべく腰に負担をかけないよう生活することが重要となります。以下のことに気を付けましょう。

腰に負担のかかる動作は避ける

長時間同じ姿勢を続けることはできるだけ避けましょう。立ち仕事や、デスクワークなど同じ姿勢が続いてしまう場合は、時々ストレッチをするなど工夫しましょう。

重い物はできるだけ持たないようにし、階段の上り下りや立ったり座ったりする際は、手すりなどを利用し足や腰のみに負担がかかってしまわないように注意します。

妊娠中は横たわった姿勢でも、腰に負担がかかります。寝る時は、やわらかすぎる布団の使用は避け、硬めの布団を使用しましょう。

できるだけ横向きの姿勢で、膝の間にクッションを挟んだりお腹の下に折り畳んだタオルを敷くなど、楽な姿勢をとるようにして下さい。妊娠中期以降は、シムス位をとると体に負担が少なくリラックスできますよ。

正しい姿勢を保つよう気をつける

お腹が大きくなり前へ突き出てくると、それを支えるために腰・背中が反ってしまいがちになります。
この姿勢は背中・腰まわりの筋肉を緊張させるので、腰痛の原因となります。正しい姿勢を心がけて生活し、腰への負担を軽減しましょう。

▼正しい姿勢

両足を肩幅程度に軽く開き、胸を張らないように気をつけて顎を引きます。骨盤を真っ直ぐに立てるイメージで、背筋を伸ばすと、反り腰にならず良い姿勢になります。

骨盤ベルトの使用

妊娠中は腰回りの靭帯や関節がゆるみ、腰痛を引き起こします。腰回りの骨盤ベルトや、腹帯で不安定になった腰回りを支え、サポートすることで腰痛を予防できる可能性があります。

昔は「さらし」が主流でしたが、現在はマジックテープタイプの腹帯や骨盤ベルトが主流です。
骨盤ベルトには、後ろから前へ支えるもの(恥骨をサポートするもの)と、前から後ろへ支えるもの(仙腸関節をサポートするもの)とがあります。ご自身にどのタイプのものが適しているいるのか迷う時は、妊婦検診のときなどに助産師や医師に相談しましょう。

適度な運動・ストレッチを行う

妊婦の腰痛予防・対策として、適度な運動は有効であるということは論文でも報告されています。(※3)
適度な運動は腰痛予防だけでなく、肩こりや便秘などのマイナートラブルにも有効な上、出産のための体力維持・向上や体重増加を抑える効果も期待できます。あくまでも無理のない範囲で行うことが重要です。

マタニティピクスや、マタニティスイミングなど、多種多様な妊婦向けエクササイズがありますが、体調や妊娠経過によっては禁忌の場合もあります。インターネット上の情報などを鵜呑みにせず、必ず主治医の許可を得て行うようにしましょう。

腰痛で辛いときは…

無理に動かずに、楽な姿勢で休息をとるようにしましょう。
お風呂で温まってからストレッチをしたり、マタニティ対応のマッサージをうけると楽になるかもしれません。

腰痛がひどいからといって、自己判断で市販の湿布薬を使用するのはやめましょう。市販の鎮痛薬の中には、妊娠中使用する際には注意が必要なものや、使用を避けるべきものも存在します。腰痛がひどい場合には、必ず医師に相談し、必要であれば鎮痛薬を処方してもらうようにしましょう。

まとめ

妊娠中は、浮腫や胃食道逆流、疲れやすくなるなど様々なマイナートラブルが起こります。腰痛もそのなかの一つ。「痛み」は日常生活に大きな影響を与えます。人生で幾度とない幸せな「マタニティ期間」を、できるだけ快適に、楽しく過ごすことができるように腰に負担をかけすぎないよう注意していきましょう。

引用文献

1)久野木順一:妊娠と腰痛,からだの科学,206,65-69, 19 9 9.

2) 神内拡行,内山由布子:妊婦・祷婦の腰痛症と理学療法,理学療法, 21(6),801-808,20

3) Liddle.2015
Liddle. SD,. Pennick. V:. Interventions. for. preventing. and. treating. low-back. and. pelvic. pain. during. pregnancy..Cochrane.Database.Syst.Rev,.2015;9:.CD001139…doi.:10.1002/14651858..CD001139.pub4.

参考文献

病気が見えるvol.9 婦人科・乳腺外科, 132p,

著者情報

腰痛メディア編集部
腰痛メディア編集部

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