椎間板ヘルニアになってしまったら、どんな治療がなされるのか、薬で治るのか、気になりますよね。
椎間板ヘルニアになっても必ずしも手術が必要なわけではなく、まずは薬での治療が行われます。
どんな薬が処方されるのか、また処方がなくても薬局で買える市販薬はあるのかをまとめました。
目次
椎間板ヘルニアは薬で治る?
椎間板ヘルニアでは、主に薬での治療が行われます。とはいっても、椎間板ヘルニアを根本から治す薬があるわけではありません。痛み止めの薬を投与し、痛みをコントロールしながら、症状の経過を見ることになります。
椎間板ヘルニアは、腰椎の間にある椎間板の髄核がはみ出し、神経を圧迫することで起こります。緊急性が高い場合は手術でこの飛び出した髄核を切ってしまうのですが、そうしなくても、時間がたてば髄核が自然に吸収され、痛みがなくなっていくことが多いのです。
1ヵ月あまり経っても症状が改善されない場合や、排泄障害が見られる場合など、特に事情があれば緊急手術が必要になりますが、そうでなければ、すぐに手術をすすめられることは少ないといえます。
多くの場合には、飲み薬が処方されます。飲み薬で症状の改善が見られない場合は、座薬の投与や痛み止めの注射をすることもあります。
椎間板ヘルニアに処方される薬
椎間板ヘルニアで処方される薬には、大きくわけて、非ステロイド系消炎鎮痛薬・アセトアミノフェン・オピオイド系鎮痛薬・プレガバリンの4種類があります。
非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)
非ステロイド性消炎鎮痛薬は、炎症や痛みをおさえる薬の中で、ステロイド以外のものをいいます。椎間板ヘルニアでは、「ロキソニン」や「ボルタレン」が処方されます。
非ステロイド系消炎鎮痛薬では、副作用として、胃腸や腎機能の障害が起こるおそれがあります。このため、胃腸薬が一緒に処方されるのが一般的です。
アセトアミノフェン
アセトアミノフェンは、解熱・鎮痛作用を持つ薬です。非ステロイド系消炎鎮痛薬を長く飲んでも効果が見られない場合、アセトアミノフェンに切り替えられることがあります。椎間板ヘルニアでは、「カロナール」が処方されます。
カロナールの副作用として、腹痛や下痢が起こることがあります。また、アセトアミノフェンを高用量摂取した場合、重篤な肝機能障害を生じるリスクが指摘されています。他の疾患でアセトアミノフェンを含む薬を飲んでいる場合には、過剰な量にならないよう、あらかじめ医師と相談しておきましょう。
オピオイド系鎮痛薬
オピオイド系鎮痛薬は、脳や脊髄に作用して痛みをおさえる薬です。痛みが強く、非ステロイド系消炎鎮痛薬やアセトアミノフェンを投与しても症状がおさまらない場合に、処方されることがあります。椎間板ヘルニアでは「トラマドール」、さらにトラマドールとアセトアミノフェンを配合した「トラムセット」などが処方されます。貼り薬である「ノルスパンテープ」が処方されることもあります。
トラマドールやトラムセットを服用すると、眠気やめまい、吐き気などの副作用が出ることがあります。強い副作用が生じると意識を消失しかねません。実際に意識をなくして事故を起こしたケースもあります。服用中は車の運転は避けてください。
プレガバリン
プレガバリンは、神経性の疼痛に作用する薬です。椎間板ヘルニアの痛みは筋肉などの炎症によって起こるのではなく、神経が圧迫されて起こります。ですから痛みの原因を考えると、椎間板ヘルニアと相性のいい薬であると考えられます。椎間板ヘルニアでは、「リリカ」がよく処方されます。
リリカの特徴は、一定の期間「飲み続ける」薬であることです。一錠飲めばすぐに効くわけではなく、痛みがうすれてきたと感じられるまで、1~2週間ほどかかると考えておいてください。効き方によっては、その間、少しずつ増量して様子をみることもあります。とはいえ自己判断では増量せず、必ず医師の指示に従ってください。
リリカの副作用として、特に飲み始めや増量したとき、眠気やふらつきを感じることがあります。服用中、車の運転はできるだけ避け、道路や階段での転倒にも気をつけましょう。
椎間板ヘルニアの市販薬
椎間板ヘルニアになったとき、服用できる市販の鎮痛薬はあるのでしょうか。
この記事でご紹介している4種類の痛み止めのうち、オピオイド系鎮痛薬、およびプレガバリンは、基本的に日本では市販されていません。しかし、非ステロイド系消炎鎮痛薬やアセトアミノフェンには市販薬があり、薬局でも購入できます。
非ステロイド系消炎鎮痛薬のうち、ロキソニンは錠剤で市販されており、幅広い痛み止めの症状に使われています。頭痛や生理痛をおさえるため、購入したことのある方も多いのではないでしょうか。ボルタレンは錠剤としては市販薬がありません。「ボルタレンテープ」や「ボルタレンジェル」の形で販売されています。
アセトアミノフェンでは、椎間板ヘルニアに処方されるカロナールと同じ成分の薬が、「タイレノール」という販売名で市販されています。
椎間板ヘルニアかもしれないと思っても、仕事が忙しく、病院に行く時間がない場合、手軽に買える市販薬があるのは便利ですよね。しかし椎間板ヘルニアの痛み止め薬は、作用が強く、重篤な副作用を引き起こす可能性のあるものです。長期にわたり自己判断で飲み続けたり、複数の薬を飲み合わせたりするのは危険です。椎間板ヘルニアの症状があるときは市販薬だけで我慢しようとせず、できるだけ早く医師の治療を受けてください。
椎間板ヘルニアの炎症が治まるまでの期間
椎間板ヘルニアの強い腰痛は、腰椎の間から飛び出した髄核や、髄核に圧迫された神経根が炎症を起こすことが一因です。急激な強い痛みがある時期(急性期)には、特に安静が必要です。
この炎症が治まるまでの期間は、おおよそ3ヵ月間が目安であると言われています。とはいえ、絶対安静の期間は3日程度で、動けるようなら、それ以降は寝たきりでいなくて構いません。痛みそのものは1ヵ月程度でやわらいでくることが多く、症状の経過を見て手術するかどうかを判断します。ちなみに痛み止めの飲み薬は、この期間中、飲み続けなければいけないわけではありません。副作用の危険もありますので、医師と相談しつつ、痛みの軽減に伴って減らしていきましょう。
椎間板ヘルニアの症状がすべて消失するまでには、3ヶ月以上の時間がかかることもあります。足の神経麻痺や筋力低下など、神経症状が生じている場合には、元の状態に戻るまで、特に時間がかかります。排泄障害が起こると、元の状態に回復できなくなってしまう危険さえあります。排泄障害が起こった場合には、48時間以内に手術が必要であると言われています。排尿・排便がしにくいと感じたら一刻を争います。症状を見落としたり、我慢したりすることのないようにしてください。
神経麻痺や筋力低下の症状は、手術で飛び出した髄核を取り除いてしまっても、すぐに消えるわけではありません。じっくりリハビリをして、筋力を戻していきましょう。
まとめ
椎間板ヘルニアでは、髄核や神経根の炎症が治まるまで、主に鎮痛薬で治療を行います。
椎間板ヘルニアそのものを治す薬ではなく、あくまで痛みをおさえ、日常生活を支障なく送れるようにするための薬です。
この記事では、椎間板ヘルニアの治療に使われる4種類の痛み止めを、副作用とあわせてご紹介してきました。
椎間板ヘルニアの鎮痛薬は、医師の処方が必要なものだけでなく、薬局で手軽に買える市販薬もあります。
もっとも、痛み止めはいずれも作用が強く、重篤な副作用を引き起こす可能性があるものです。手軽に買えるからといって自己判断で飲み続けたり、たくさん飲んでしまったりするのは禁物です。
椎間板ヘルニアが疑われる場合は、できるだけ早く医師の治療を受けてください。
◆参考著書
出沢明,Q&Aでよくわかる腰痛の日帰り治療 椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症の最先端医療,現代書林,2020年03月