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みなさんはオピオイド鎮痛薬をご存じですか?腰痛に対する痛み止めとして多く用いられるのが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や、アセトアミノフェンなどです。しかし、これらの薬でも痛みが治まらない場合、「オピオイド鎮痛薬」が処方されることがあります。
今回はオピオイド鎮痛薬について解説します。

オピオイドとは

オピオイドは、本来、アヘンに関連する物質のことを意味します。アヘンと聞くとぎょっとするかもしれませんが、痛みに関わりの深いオピオイド受容体に作用して、痛みを抑える効果があります。強力な鎮痛作用があるため、麻酔や、術後の痛み止め、がんの痛みの緩和によく用いられます。

また、がん以外の慢性痛(非がん性慢性痛)にも用いられます。慢性痛とは、「国際疼痛学会が治療に要すると期待される時間の枠を超えて持続する痛み、あるいは進行性の非がん性疼痛に基づく痛みで一般的には3ヶ月以上持続する痛み」と定義されています。

しかし、慢性痛に対していきなり処方されるわけではありません。アセトアミノフェンやNSAIDsなどの鎮痛剤では効果が見られなかった場合に、オピオイド鎮痛薬の使用が検討されます。

オピオイド鎮痛薬と一般的な鎮痛剤の違い

NSAIDs

一般的な鎮痛剤はNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と呼ばれ、炎症を抑えて鎮痛する役割をはたします。例えばロキソニンやイブプロフェンなどがこれにあたります。これらは、炎症を引き起こす体内物質であるプロスタグランジンという物質を抑えることで炎症を抑制します。また、プロスタグランジンは痛みの感覚にもかかわるため、同時に鎮痛効果も得られます。

アセトアミノフェン

アセトアミノフェンも、NSAIDsと同様にプロスタグランジンを抑制します。しかし、NSAIDsと比べるとその作用は非常に弱いため、抗炎症作用はほとんどありません。一方で、痛みを抑える効果はあります。詳細な作用機序はわかっていませんが、脳の一部に作用して痛みを感じにくくさせると考えられます。

オピオイド鎮痛薬

神経系へ作用し痛みを抑制します。オピオイド受容体は脳、脊髄、末梢神経に存在するため、これらすべてに作用すると考えられています。このように神経系にはたらいて痛みの伝達を抑制し、痛みを感じにくくさせます。

オピオイド鎮痛薬の適応

すべての非がん性慢性痛に使用できるわけではありません。日本ペインクリニック学会は、使用の条件を以下のように定めています。

痛みの原因がはっきりしている

オピオイド以外に有効な痛みの緩和手段がない

治療の目的が理解できている

薬のアドヒアランスが良好

(アドヒアランスとは、処方された薬を、患者さんがどのくらい指示を守って服用できるか、を指します。)

物質あるいはアルコール依存の既往がない

心因性痛、精神心理的な問題・疾患が否定されている

これらを満たす場合のみ、オピオイド使用を考慮することができます。

オピオイドの副作

嘔気

嘔気はオピオイドの内服開始時期に発生しやすく、1-2週間で耐性が作られるとされています。機序としては、延髄にある化学受容体のドパミンD2に起因しています。化学療法や放射線治療中の方、腎機能障害や高齢者の方には嘔気は出現しやすい副作用とされています。

対策

嘔気の対策としてまずは制吐剤が用いられます。耐性が作られる1-2週間を目途に内服していきます。
嘔気がおこる原因にも、化学受容体への刺激、食事やストレスなど様々で、機序に合わせ制吐剤も種類があるのでしっかりと処方医と相談する必要があります。また、嘔気は1、2週間でおさまってくるということを認識することで不安の軽減にもつながります。

便秘

オピオイド服用時に最も多く出現する副作用が便秘です。機序として腸の動きを抑制・緊張させてしまい便の通過を遅らせます。大腸では水分が過度に吸収され便が硬く排便困難につながります。

便秘に関しては耐性が付きにくくオピオイド使用中は継続しておこります。便秘が長期的に続くと嘔気やイレウスといった新たな症状が出現するリスクもあります。

対策

対策としては下剤の使用が用いられます。目的として、腸の動きの促進と、水分の保持を行い排便を促します。オピオイドの種類を変えることでも便秘が改善されることもあるため、ご自身でも排便状況を把握し処方医と相談してみてください。

また、一般的な便秘の対策としておなかを温めることや、腸の動きを促すための適度な運動なども効果的です。

眠気

オピオイドの副作用として眠気は比較的出現率が低いです。内服から3、4日で耐性が付くとされています。内服を始めた時期や、内服量を増やしたときなどに発症しやすいといわれています。

機序として痛みを感じる中枢神経系を抑制するため眠気が生じます。眠気は日常生活に使用がない程度とされていますが、痛みにより休息が十分にはかれていなかった方は痛みからの解放で眠気が強く感じることもあります。

対策

眠気が強く生じた場合には、オピオイドの内服量を減量します。また、カフェインも有効とされており、コーヒーやお茶などを飲んでいただき緩和することも可能です。高齢者の場合では、眠気が強く出現することもあり、転倒しさらに圧迫骨折などの二次的障害がおこらないよう注意が必要です。

まとめ

オピオイドは鎮痛作用が高く期待できる分、一般的な鎮痛剤と比較し副作用出現率も高くなっています。よって、使用する際には、指示された通りに服用し、痛みの改善の程度と副作用の評価をしっかりしてもらうようにしてくださいね。

【参考文献】
非がん性慢性[疼]痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン

オピオイド鎮痛薬(医療用麻薬製剤) – 解説(効能効果・副作用・薬理作用など) | MEDLEY(メドレー)

・日本ペインクリニック学会 (jspc.gr.jp)

・永井義浩、天谷文昌 「慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬の正しい使い方」医学と薬学77(1):23-30,2020.

・吉沢一巳ら 「慢性疼痛治療におけるオピオイド鎮痛薬の適正使用」臨床整形外科46巻4号、pp317-325(2011年04月)

著者情報

岡田 ひかり
岡田 ひかり

保有資格

看護師、保健師

経歴

看護の大学を卒業後、都内大学病院の外科病棟で急性期の看護を学ぶ。

その後、福祉施設で通所介護や在宅支援へ向けた看護業務実施。

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