側弯症は軽度であまり進行しない場合、気付かず過ごしている方が多いです。
なかなか治らない腰痛は、その側弯症があるからかもしれません。
子供の頃、進行性の側弯症で治療したが、まだ少し側弯が残っている方もいます。
今回は、側弯症と腰痛の関連性や側弯症について、側弯を改善させる運動療法を紹介していきます。
目次
側弯症とは?
背骨は前後からみると、基本的に真っ直ぐです。側弯症とは、後ろからみて背骨が右か左のどちらかに曲がっている状態のことをいいます。側弯症には、大きく2つに区別されています。
機能的側弯症
機能的側弯症とは背骨のねじれや背骨自体の変形、形状の異常がなく、ただ背骨が曲がった状態のことをいいます。この側弯症の場合は、原因になっているものを改善すれば、側弯はなくなるか軽減します。原因になっているものから、更に2つ分けられます。
疼痛性(とうつうせい)側弯
疼痛、いわゆる痛みにより側弯が起こっている状態です。特に腰痛で発生することが多く、主に「腰椎椎間板ヘルニア」で起こります。
腰椎椎間板ヘルニアとは、背骨と背骨の間にある椎間板(ついかんばん)が、何らかの原因で脱出し腰の神経を圧迫するものです。脊髄神経の真ん中を圧迫して、両足がシビレることがありますが、多くは片側の神経を圧迫して片足に症状が発生します。
よって、背骨を神経が圧迫されている側に曲げると、腰痛とともに足にシビレが起こります。その症状を防ごうと、圧迫されていない側に背骨を曲げて疼痛性側弯になるのです。
つまり、腰椎椎間板ヘルニアなどの腰痛が発生している原因を解決すれば、この側弯症は改善するのです。
代償性(だいしょうせい)側弯
足の長さが左右で違っていたり、骨盤が傾いていたりしているので、代わりに背骨を曲げて身体を真っ直ぐにしようとしている状態です。例えば、左に身体が傾いている場合、自分で右側に背骨を曲げて身体を真っ直ぐにしようとします。
足の長さが違う主な原因は「股関節の変形」によるものです。もともと股関節が悪く、加齢や体重により骨が変形し、関節の隙間が狭くなることで足の長さの違いが出てきます。軽度から中等度の場合、そこまで大幅に違いが出るわけではありませんが、症状が進行すると見た目で分かる程になってきます。
何も骨盤に異常がないにも関わらず、骨盤が傾いている主な原因は「ヒザの曲がり」です。ヒザは真っ直ぐ伸びている状態が正常ですが、軟骨がすり減り関節が変形する「変形性膝関節症」などの病気により、ヒザは伸びなくなってきて曲がってしまうのです。
股関節の変形が酷い場合は手術により人工関節にし、ヒザが曲がっている場合は運動療法や手術により、原因を解決すれば側弯症は改善されます。
構築性側弯症
構築性側弯症とは、レントゲンにて自分で矯正できない背骨の曲がりがあり、背骨自体の変形やねじれが出ている状態をいいます。立った状態で背中を観察すると、曲がっている側(凸側)に肋骨の出っ張りや肩甲骨の出っ張りがみられ、ウエストラインが非対称的になります。構築性側弯症も原因により、4つに分類されます。
特発性側弯症
全ての側弯症の中で最も多く、全体の約8割を占めています。一般的に側弯症と呼ばれているのも、この「特発性側弯症」です。特発性のため原因は不明で、学校の検診時や親がお風呂などで気付くことがほとんどです。発生する年齢により乳幼児側弯症(3歳未満)、学童期側弯症(3~10歳まで)、思春期側弯症(11歳以上)とあります。
中でも思春期側弯症が最も多く、女子の割合が半数以上を占めています。早期に発見されたほど進行しやすいので、注意が必要です。多くは骨の成長が終了すれば進行も停止しますが、成人になっても少し進行することがあり、特に妊娠によって再び悪化する恐れもあります。
他にも、構築性側弯症には「症候性側弯症・間葉性側弯症・変形腰椎側弯症」などもありますが、あまり発生頻度が少なく、聞きなれない病気によるものですので割愛します。
側弯症と腰痛の関係性は?
側弯症と腰痛は、密接な関係があります。体幹の中心である背骨が曲がってしまうと、さまざまな腰痛に繋がります。例えば、左側に曲がっている場合、左側の腰の筋肉や背骨は常に引っ張られているような状態になり、とてもストレスが掛かってしまいます。
反対に右側は筋肉が短縮してしまっているため、うまく働かず血流が悪くなってしまいます。また、右側の背骨は常に圧迫され、骨の変形や神経の圧迫を助長させるのです。
このように、側弯症になると両側の腰周辺の組織が障害され、腰痛が発生するのです。
うものです。これは、一部の病気でしか現れず、腰が原因の病気では脊柱管狭窄症しか現れません。
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運動療法をすれば側弯を改善できる!?
側弯症の中でも、特発性側弯症は運動療法により改善できる可能性があります。側弯症が少しでも改善すれば、腰痛が軽減するかもしれません。特発性側弯症は3~18歳ぐらいまでに発生するため、まだ身体が出来上がっていない時期です。この時期は骨が動きやすいため、運動療法を行うことで側弯を矯正できる場合があります。
子供が側弯症かもしれないと感じたら、すぐに医療機関を受診してください。レントゲン検査などを行い、どの側弯症か、どの程度なのか判断されます。その検査結果により治療方法が決められます。比較的軽度で、手術もせずに装具と運動療法で治療するのであれば、筋トレやストレッチなどの運動療法を行ってみましょう。
また、成人になり仕事の健康診断などで「軽度の側弯症」といわれる場合があります。その場合、背骨が曲がっていることで左右どちらかの腰に負担が掛かり、腰痛を抱えている方が多いです。このような方でも、運動療法により側弯症が軽減する可能性があります。これから紹介する方法を行い、背骨を矯正してくれる筋肉を鍛えましょう。
サイドシフト法
最初に、運動療法は身体全体を使って行いますので、全身鏡の前ですることをおすすめします。
①まず、鏡の前に足を揃えて直立姿勢で立ちます。腰に手を当てて行うとやりやすいかもしれません。
②その状態から両肩は床と水平に保ちつつ、背骨が曲がっていない側(凹側)に体幹をシフトしていきます。この時、足や骨盤は真っ直ぐにしておき、体幹だけ水平移動してください。
③いけるところまでいけたら、その状態で10~20秒程キープしましょう。
この動作を10~20回程行ってください。いきなり20回するのではなく、慣れてくるまで徐々にキープ時間や回数を増やしていってください。
ペルビックヒッチ法
サイドシフト法と同様に鏡を使い、キープ時間や回数は段階を踏んで増やしていきましょう。
①鏡の前に足を揃えて直立姿勢で立ちます。腰に手を当てて行うとやりやすいかもしれません。
②直立姿勢から、曲がっている側(凸側)の骨盤を上げていきます。骨盤を上げるとは、ヒザを伸ばしたまま背伸びをするイメージで、踵を上げることをいいます。この時、頭と両肩はしっかりと固定させて動かないように注意してください。
③骨盤を上げた状態のまま、10~20秒程キープしてください。
まとめ
特発性側弯症は、側弯が軽度であれば運動療法に改善することができます。しかし、いつ進行するか分かりませんので、必ず主治医と相談し、レントゲン検査を行いながら運動療法に取り組んでください。成人されている方は、進行することはありませんので、どんどんやってみてください。なかなか治らない腰痛を根本から治療していきましょう。
最後に、腰痛体操などの運動療法はすぐに結果が出るわけではありません。コツコツ継続して行う必要がありますので、根気強く頑張りましょう。
<参考文献>
「標準整形外科学 第10版」 国分正一・鳥巣岳彦 医学書院
「プラクティカルマニュアル 脊椎疾患保存療法」 原田征行・酒匂崇 金原出版株式会社
<参考>日本整形外科学会