目次
しびれの主な原因
日頃何気なく使っている、手や足の神経はどこからつながっているでしょうか。
脳からの司令を伝達しているもの、それは「神経」です。
神経は簡単に言うと電気コードのようなもので、電気通してものを動かしているのです。
脳みそがコンセント、プラグから出ている配線が神経、その先にあるもの(家電など)が手足、目や舌、耳、口などに当たります。
そのため、配線がきちんとしていないと家電も動かないように、手足も動かない、もしくはしびれや疼痛などの不具合が出てきてしまうのです。
断線してしまうと全く電気が通らないため、電源がつかず動きませんよね。
手足も一緒で神経が圧迫や炎症、損傷などがあり痛んでいるとしびれや痛みなどが出てきてしまいます。
どこの神経の異常なのかにもよってしびれの原因は変わってきます。
また、血流の障害や遺伝的な障害、ビタミンの欠乏、抗がん剤の副作用、脳梗塞による感覚神経麻痺などによってもしびれが出てきます。
しびれの原因を全て説明してしまうと医学書一冊分になるため、今回は「腰痛」が原因でおこるしびれについてご説明していきます。
腰の構造
脊柱を作る一部の腰の骨を「腰椎」と呼びます。
腰椎は全部で5個連なって形成されており、腰椎同士の間には椎間板というクッション材のようなものがあります。
直立すると前の方に曲がっているところ〔肋骨から下あたり〕にあります。
この腰椎は体重を支える役割を担っているため、圧迫骨折を起こしやすい場所でもあります。
腰椎の真ん中に開いている空洞の中には神経が通っています。
その神経を椎間板が圧迫したり(椎間板ヘルニア)、骨折して神経に触れたり(圧迫骨折など)、脊柱管狭窄症になると、しびれとして出てくる場合があります。
椎間板ヘルニアとは?
脊椎は上から頸椎、胸椎、腰椎に分かれており、それぞれ7、12、5個の小さい骨が重なって構成しています。それぞれの骨の間には椎間板という軟骨が存在しており、クッションの役割を果たしています。
ときにその椎間板の中にある、ゲル状の組織の髄核というものが突出することがあります。このような髄核の突出を椎間板ヘルニアといいます。この椎間板が背骨に突出しているのが腰痛、手足のしびれの原因となる腰椎ヘルニアです。首の骨に生じた場合は頸椎ヘルニア、腰の骨に生じた場合には腰椎ヘルニアと呼ばれ、どこの部位でも見られますが1番多いのは腰椎ヘルニアです。
椎間板突出の原因の1つに加齢による機能低下があります。骨と骨の間にある椎間板は一定の圧力を受けており、老化が最も早い組織です。そのため、劣化して脆くなると、外膜が破裂して髄核が突出してしまうことがあります。他にはスポーツによる外傷なども原因の1つです。
症状は、激しい腰痛や下肢痛です。突出した椎間板の一部が近くの神経を圧迫し、しびれなどの症状も引き起こします。症状が進行すると、下肢の脱力やつまずきやすいなどの運動障害が出てきます。ヘルニアが飛び出した場所によっても症状は異なり、脊髄が圧迫されているのか、神経根が圧迫されているのか、また部位は首なのか腰なのかによって見分けることが大切です。
椎間板ヘルニアの診断や治療
まずは医師による問診から始まります。症状が出始めた時期、痛みが誘引される要素、合併症などを聞きます。つぎに痛みの部位、時間帯、性状を聞き痛みの評価をします。しびれや力の強さなどの神経学的所見も詳しく調べることも大事です。
検査としてはレントゲン検査も行われますが、確定診断はMRI検査で行われます。MRI検査は磁力を利用して体内を調べ、神経や筋肉などの軟部組織を明らかにするため、ヘルニアの診断には欠かせません。
このときに重要なのは画像上の椎間板が突出しているかどうかではなく、患者さんの症状と部位が一致しているかどうかです。たとえばヘルニアが右側に出ていたとして、右側でなく左側に痛みや痺れを生じていたら、病的意味はなく他の原因を探らなければなりません。しかしながら腰痛の場合、特に非特異的な腰痛の場合では頸椎ヘルニアでも姿勢の悪化や運動不足などにより、腰痛症状が出現することがあるので注意が必要です。
治療としては大きく分けて保存的治療と手術治療があります。通常はまず保存的治療を3カ月ほど試みて、腰痛などの症状が改善しなければ手術を考慮します。
保存的治療としては、頸部の固定、鎮痛薬、神経根ブロック注射などを行い、痛みの緩和を目指します。保存的治療は、神経の圧迫を直接改善するものではなく、どちらかというと腰痛などの症状に対しての治療になります。軽症の場合はこれだけで改善することも少なくありません。
保存的治療で症状が改善しない場合に手術が行われます。この場合、脊椎の専門医により疾患の経過とMRIなどの画像をもとに行うため、症状が改善しないからと言って病院へ行くのをやめてしまうのではなくて、必ず通院を続けましょう。
脊柱管狭窄症とは?
背骨の中には、脳からつながる神経である脊髄が通るトンネルがあり、これを脊柱管と呼びます。長い間体を支えていると、背骨が変形して脊柱管が狭くなります。この脊柱管が狭くなることを脊柱管狭窄症といい、もっとも多いのが腰部の脊柱管が狭くなる腰部脊柱管狭窄症です。
加齢による骨や靭帯の変性が原因で起こることが多く、椎間板ヘルニアよりも50代以降の高齢者に多く見られます。脊柱管が狭くなると、そこを走る神経が圧迫され、腰痛や坐骨神経痛と呼ばれる下肢の神経痛やしびれ、麻痺が起こります。
時には、両下肢のピリピリとした感覚に加えて、鼠径部のほてりや排尿後の尿を出し切れない感覚、便秘などの膀胱や直腸の症状が現れることもあります。典型的な症状としては「間欠性跛行」です。
安静にしているときには、ほとんど症状はありませんが、長時間歩いていると症状が出現し、下肢のしびれとともに腰痛が出現します。ところがしばらく休み、前屈みになったり、腰掛けたりするとたちまち腰痛やしびれが軽減するというのが特徴なので押さえておいてくださいね。
脊柱管狭窄症の診断と治療
単純なレントゲン検査でもある程度の見当はつきますが、より詳細な診断にはMRIやCTによる検査が必要です。MRIでは神経や椎間板などの軟らかく水分を含んだ組織を詳しく見ることができ、CTでは骨の突出による狭窄を確認することができます。
脊柱管狭窄症は、画像検査の結果と症状が一致しないことが多いため、診断には注意が必要です。また、下肢の動脈が詰まって血行が悪くなっている場合にも同様の症状が出ることがあるので、正確な原因を突き止める必要があります。
治療としては椎間板ヘルニアと同様、薬物治療と手術にわかれます。まずは保存的治療を行い、症状が改善せず痛みで歩けないなど、日常生活に支障を来すようであれば手術を検討することもあります。また、排尿障害や排便困難などの症状が急激に進行した際には、緊急で手術を行うこともあります。
腰痛なぜ起こるのか?
腰痛の原因はさまざまです。
説明したとおり、圧迫骨折や椎間板ヘルニアなどよく聞く疾患やがんによる疼痛、腰椎ではなく筋肉の炎症(急性腰痛症いわゆるぎっくり腰)などがあります。
また、疾患以外にも日頃の生活で腰を曲げる農作業などを行っており、円背(猫背)がひどいと神経を圧迫して疼痛などが出てくる場合があります。
いずれにしろ、無理をして急に動いたり予想を上回る外部からの圧力が加わったりすると、骨が変形するなどが起こっています。
そうすることで腰痛が出現し、血流障害や神経感覚の障害などの支障が出てくるのです。
腰痛が起きたときの対処方法
腰痛と手足のしびれがあるときには、必ず受診しましょう。
原因がわからないままストレッチなどを行っても悪化する危険性があるため、気をつけてください。
急性期(痛くなり始めたころから痛みがピークのころ)では無理に動かないのが一番です。無理に動いて痛い思いをし、神経を傷つけてしっては元も子もありません。
しかしながら、「腰が痛いため、ずっと安静にしている」という時代は終わりました。
それは寝ているあいだに筋力量はどんどん落ちていってしまうからです。
筋肉量が落ちると言うことは、体を支えている筋肉(腹筋や背筋などの大きい筋肉)が減少していっているということです。
なるべくなら少しずつ無理のない範囲でいいので、動いたり座ったりする方が後々よい傾向にあります。
急性期の場合は必ず主治医へどの程度休めば良いのか、いつから動いても良いのかなど確認してみてください。
また普段から良い姿勢(猫背にならないように)をこころがけるや重い物を持ち上げるときの注意点(腰を曲げずにしゃがんで物を撮らない)などを知っておくと予防することができるかもしれません。
しびれがある場合の注意点
腰痛がひどくなり、手足がしびれてきた場合はどうすればいいのか。
正座をして足がしびれたことは誰しもが経験した覚えがあるものでしょう。
これも椎体の圧迫によるものと原理は一緒で、正座することにより、末梢神経を圧迫することによりしびれが起こっています。また血流の障害もおこることにより、末梢の感覚神経の機能が悪くなり、電気信号が上手く伝わらず、しびれとして体に出てきます。
感覚神経が麻痺(機能が悪くなる)してしまうと何が起こるか。
それは熱い、冷たいなどを含めた「痛覚」に問題が起きてしまいます。
そうすることにより、やけどや凍傷、怪我、床ずれなどがいつの間にかできてしまい、大変なことになってしまうのです。
また、手のしびれでは「物を落としてしまう」「起用な動作ができない」など日常生活に支障をきたしてしまいます。
足のしびれでは「歩きにくい」「足が上がりにくい」など転倒につながることもあり、高齢者などでは転倒の原因にもなってしまうのです。
しびれをやわらげる方法
しびれなどの異常な感覚に対してはもちろん、薬で対処する方法もあります。
その場合には一度整形外科や神経内科などに受診する必要があります。
市販薬を使用するという事も考えられますが、きちんと鎮痛剤などを見て決めないと末梢神経疼痛に作用しない物や一時的な緩和にしかならず、何度も繰り返してしまうこともあり、結局お金と時間をかけてしまうだけになるので注意しましょう。
自宅で簡単にできる方法があります。
それは「冷やす」「温める」「マッサージ」です。
ここでも少し注意が必要です。
急性期(痛みが出てきた直後から数日)は「冷やす」ようにしましょう。
急性期の場合、筋肉に炎症が起きていることが多いため冷やしてあげることにより炎症を抑えることができます。
冷湿布や水に濡らしたタオルで冷やしてあげてください。(氷水は凍傷の危険性があるためおすすめはしません)
反対に急性期ではない慢性期(痛みが出てきて一時してから)は「温める」ようにしましょう。
今度は急性期とは逆に、痛みが出る=身構えてあまり動かさなくなりますし、ずっと筋肉は張っている状態になります。
筋肉がカチコチのままだと、血流が悪くなりしびれや痛みが出てきている可能性もあります。
そのため温湿布やお風呂、濡れたタオルをレンジで温めるなどして、腰を温めてあげることにより、血管を広げて血流を良くし、筋肉の動きをよくしていきます。
また固まった筋肉をほぐすことからマッサージも有効です。
温めた後に軽く指で揉む、または末梢(指先の側)から体の中央にかけて擦るようにします。
それでも軽減しない場合には最寄りの整形外科や神経内科の受診をおすすめします。
まとめ
しびれの原因は脳の障害、脊柱の障害、末梢神経の障害などさまざまな原因によって起こってきます。実際には医師も原因を見つけるためにはレントゲンやCTを撮影したり、生活のことをいろいろ聞いたりした結果判断されます。
今回は腰痛に焦点を絞って腰痛の対処方法としびれの対処方法を紹介いたしました。
上記の方法が全てではありませんし、まずは原因を特定することで飛躍的に症状が改善する場合があります。
人間にとって腰は「体片」に「要」と書くぐらいですから、生活していく上でも特に大切な場所となってきます。
日々の生活の中で腰痛があるがために辛い経験をされた方も多いと思います。
腰痛は正しい治療方法で治療をすれば改善することが多いです。
まずは一度、原因をしっかりと解明し、正しい治療を受けることが腰痛を改善する近道です。
通販や市販薬が悪いわけではありませんが、自身で判断するのには限界があり、時間と費用がかさむこともあります。
是非一度、自動問診の「腰痛ドクターアプリ」を使用してみてください!
きっと自身では思わなかった原因が見つかり、生活習慣の改善に役立つと思います!
腰痛をしっかり治療し、みなさんの生活の質が向上することを願っています。
参考文献
系統看護学講座 専門基礎分野 人体の構造と機能(1) 解剖生理学:医学書院,2009
系統看護学講座 専門分野Ⅱ 成人看護学7、10 :医学書院,2009
https://www.itoortho.jp/spine/
医療法人 全医会 あいちせぼね病院 頸椎椎間板ヘルニアとは
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/lumbar_spinal_stenosis.html
公益社団法人 日本整形外科学会 腰部脊柱管狭窄症