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腰痛と聞くと、整形外科の疾患が思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。しかし、腰痛の原因はさまざまで、脊柱に異常がなくても生じることがあります。
また、腰痛だけではなく腹痛や吐き気などを伴う場合には、何かしらの病気が隠れている可能性もあります。
今回は、腰痛が出現する疾患について解説します。当てはまる項目があるかチェックしてみましょう。

脊椎の疾患

まずは、整形外科領域で考えられる脊椎の疾患についてです。脊椎の中には神経で一番重要な脊髄が通っているため、腰痛の他に、神経を圧迫されることによるしびれや麻痺などの神経症状がみられます。
脊椎疾患による症状は、内臓疾患の症状とも重なる部分があります。我慢したり自己判断したりせず、受診して鑑別することが大切です。

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎とは腰の部分を構成している椎骨で、その骨と骨の間にはクッションの役割をする椎間板があります。
椎間板の中には髄核というゼリー状の組織があり、何らかの原因によって外に飛び出すと神経が圧迫され、腰痛の他に足の痛みやしびれが出現します。これが腰椎椎間板ヘルニアです。前かがみになると痛みが増強するのが特徴的です。

腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症は、脊髄の神経の通り道である脊柱管が狭窄することで神経が圧迫された状態です。腰痛や足の痛み・しびれが出現します。
また、歩行と休息を繰り返す間欠性跛行がみられるのが特徴です。椎間板ヘルニアとは逆で前かがみになると痛みが軽くなって後ろに反らすと痛みが強くなります。

脊髄腫瘍

脊髄腫瘍は、腫瘍が発生する部位によって分類されます。硬膜の外にできるもの、硬膜の内側で硬膜と脊髄の間にできるもの、脊髄の中にできるものの3つがあります。
腫瘍が神経を圧迫することで、しびれや感覚障害などが生じます。多くは初めて脊髄に腫瘍ができるものではなくて、転移によるものなので他の体の部位にも腫瘍がないか確かめる必要があります。

その他

他に原因として考えられるのは、腰椎変性すべり症や側弯症などです。
腰椎変性すべり症は、先ほど挙げた腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症とともに、主に加齢によって生じます。
側弯症は原因不明なものや生まれつきのもの、他の病気によって起こるものがあります。

腰痛が症状として出現する疾患

次に、整形外科以外で腰痛が症状として現れる疾患をみていきましょう。
消化器科や循環器科、泌尿器科、婦人科などの疾患が原因で腰痛が起こることもありますが、具体的にどのような疾患が考えられるのでしょうか。

消化器疾患

消化器疾患

消化器系の疾患には、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、膵炎、胆嚢炎などがあります。原因となる箇所やその程度にもよりますが、これらの疾患では腹痛や吐き気・嘔吐などの症状が主に現れます。
実際に問題が起きている場所と痛みを感じる部位が一致しないことがあり、時に腰痛を感じることもあります。
また、過敏性腸症候群では広範な症状がみられることがあり、下痢や腹痛などの典型的な症状だけでなく腰痛を訴える場合もあります。

循環器疾患

急性心筋梗塞では、胸だけでなく背中にも締めつけられるような痛みが出ることがあります。また、お腹を流れる大きな動脈の壁が裂けてしまう腹部大動脈解離では、胸や背中、腰に激しい痛みが現れるのが特徴です。今まで感じたことのないような激痛が走ります。痛みの部位が最初は上の方でも徐々に下に移動してくることもあります。
腹部大動脈解離は命にかかわる危険があるので、激しい腰痛がみられた場合はすぐに受診しましょう。そして心筋梗塞や大動脈解離で共通している症状として吐き気や冷や汗があります。糖尿病を患っている方では痛みが健常な人よりも出づらいことがあるので吐き気などの随伴症状が見られたらすぐに病院にかかるようにしましょう。

泌尿器科疾患

泌尿器科の疾患の中にも、腰痛が起こりやすいものがあります。膀胱炎や尿路結石、腎盂腎炎などが挙げられます。
これらの疾患は腰痛がみられることがありますが、それ以外にもさまざまな症状が出現します。
尿路結石や膀胱炎では排尿時の痛みや血尿、腎盂腎炎では発熱や悪寒が生じます。特に腰を痛めた記憶がなく、安静にしていても腰に鈍痛がある場合や、腰のあたりをたた叩くと響くような場合は、腎臓に問題がある可能性があります。
腰痛以外にも上記のような症状がみられたら、我慢せずに病院を受診するようにしましょう。

婦人科疾患

女性の方で激しい腰痛がある場合には、婦人科系の疾患も疑われます。卵巣がねじれてしまう卵巣捻転や、子宮内膜ではないところに着床する子宮外妊娠など、早急に受診を必要とする疾患が隠れている可能性があります。
卵巣捻転では下腹部の激しい痛みや腰痛が出現し、痛みによって吐き気を催したり嘔吐することもあります。
子宮外妊娠では卵管妊娠がもっとも頻度が高く、胎児の発育に伴い卵管が破裂し、大量出血の可能性があるため、早急に受診して処置を行う必要があります。

その他

その他として、帯状疱疹でも腰痛がみられることがあります。帯状疱疹は神経に沿って帯状に赤い斑点ができますが、腰のあたりにできることもあります。
皮膚症状が出る前からピリピリとした痛みを感じるので、腰が痛くて整形外科を受診したらそのあと赤い斑点や水疱が現れた…というケースもあるのです。

おかしいなと思ったら

激しい腰痛は、早急に受診した方がいい疾患が隠れていることもあります。
腹痛や吐き気・嘔吐など、腰痛以外の症状がみられることも多く、このような症状がみられたらそのままにせず、しっかりと原因を調べることをおすすめします。

何科を受診すればいいの??

この記事を読んだ方の中には、「私の腰痛はもしかしたら他の病気かもしれない…」と不安に思う方もいるかもしれません。
その疾患によって、受診すべき科目は異なります。しかし、原因がはっきりとわからない時点で判断することは難しいでしょう。
腰痛がある場合にはまず整形外科を受診し、脊椎などに問題がないか診断してもらうことも大切です。
腹痛があったり吐き気や嘔吐、発熱など別の症状が強くみられる場合には、整形外科ではなく内科などへ受診するといいでしょう。
いずれにしても、どのような症状がいつ頃からあるのかを問診や診察できちんと伝えるようにしましょう。

まとめ

腰痛にはさまざまな原因があります。腹痛や吐き気なども同時に生じている場合には、消化器や泌尿器、婦人科などのトラブルの可能性もあります。
また、腰痛の際に内服した鎮痛薬が原因で胃腸を悪くしてしまうこともあります。
痛みがあっても、落ち着くと「大丈夫かも」と思ってしまうこともあるでしょう。しかし、繰り返す腰痛や長引く腰痛には何かしらの原因があるはずです。
中には早急に治療を開始した方がいい疾患もあるため、少しでも異変を感じたら必ず受診しましょう。
ただの腰痛だから…と思わず、ぜひ一度しっかりと原因を探っていってください。そしてつらい腰痛やその他の症状とも上手に付き合っていきましょう。

【参考】

日本整形外科学会,腰椎の症状一覧
日本成人病予防協会,腹痛 -気になるからだの危険信号 痛み-
医療法人 良花会 整形外科 とくはらクリニック,腰の痛み

著者情報

腰痛メディア編集部
腰痛メディア編集部

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