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日本の腰痛人口は2800万人ともいわれていますが、中には腰痛にともなって、腹痛がみられることもあります。その場合、どのような疾患の疑いがあるのでしょうか。

また、腰痛にともなって腹痛がある場合、どの診療科を受診すればよいのでしょう。今回の記事では、腰痛と腹痛との関係や、危険な腹痛の見分け方について解説します。

腰痛にともなう危険な腹痛の見分け方


日本人のおよそ5人に1人が何らかの腰痛を持っているとされますが、腰痛にともなって腹痛がある場合、病院でみてもらった方が良いケースもあります。

急激な激しい痛みがみられる場合

なんの予兆もなく、突然のように激しい腹痛が腰痛にともなって現れた場合、内科系の疾患を発症している可能性があります。このような場合は、速やかに医療機関を受診することがおすすめです。

腹痛が中々収まらないとき

腰痛にともなって、数日間にわたって腹痛が続く場合や、周期的に痛みが増すような場合も、医療機関でみてもらうことをおすすめします。

出血がみられる場合

腰痛にともなって腹痛があり、さらに肛門や女性器からの出血もみられるような場合、腸疾患や婦人科系の疾患を発症している可能性があります。それぞれ消化器内科や婦人科の受診をおすすめします。

腰痛にともなって腹痛があるときに考えられる疾患

腰痛 腹痛

腰痛にともなって腹痛がみられるような場合、お腹の痛む場所によって疑われる疾患を特定できる可能性もあります。ただし、以下にあげる例はあくまでも目安です。

該当する場所に腹痛があるからといって、必ずその疾患を発症しているとは限りません。ただ、該当する場所に腹痛があり、腰痛もともなう場合、自己判断で放置することは避けた方が無難といえます。

右下腹部が痛む場合

腰痛にともなって右下腹部が痛む場合、急性虫垂炎(いわゆる盲腸のことです)や、卵巣腫瘍を発症している可能性があります。

虫垂炎を発症している場合、時間の経過とともに腹痛の程度が増す傾向にあります。卵巣嚢腫を発症している場合、激痛がみられるほか、吐き気や嘔吐、発熱をともなうケースもあります。

下腹部が痛む場合

おへその下周辺の下腹部が痛む場合、潰瘍性大腸炎や急性腸炎、大腸腫瘍、膀胱炎などを発症している可能性があります。

潰瘍性大腸炎を発症している場合、激しい痛みのほかに血便が出たり、発熱をともなったりすることもあります。膀胱炎の場合、排尿時に痛みが出たり、血尿が出たりすることもあります。痛み方は鈍痛であることが多いようです。

左下腹部が痛む場合

虫垂炎とは反対に、左の下腹部に腹痛がある場合、卵巣嚢腫や子宮内膜症、潰瘍性大腸炎を発症している可能性があります。子宮内膜症を発症している場合、腹痛以外にも月経痛や便秘がみられることもあります。

右上腹部が痛む場合

おへその右上あたりに痛みがある場合、急性胆嚢炎や胆石症、十二指腸潰瘍などを発症している可能性があります。

急性胆嚢炎や胆石症の特徴としてあげられるのが、激しい痛みに襲われるということです。また、吐き気や嘔吐、黄疸(おうだん)がみられることもあります。

上腹部が痛む場合

おへそから鳩尾(みぞおち)にかけての上腹部が痛む場合、胃潰瘍や急性(慢性)胃炎、胃がん、狭心症、心筋梗塞、急性(慢性)膵炎などを発症している可能性があります。

胃潰瘍を発症している場合には食後の倦怠感や不快感、胃もたれなどがみられますが、胃潰瘍や胃がんの場合、吐血や下血、血便、腹水といった重い症状もみられます。

急性膵炎を発症した場合、上腹部の痛みのほか、吐き気や嘔吐などの症状もみられます。また、痛みが左肩から左腕にまで及ぶこともあります。

腹部全体が痛む場合

腹部全体が痛むような場合、腸閉塞や腹膜炎を発症している可能性があります。腸閉塞の場合は激しい痛みのほか、意識障害や頻脈がみられることもあります。

腹膜炎を発症している場合、チアノーゼ(酸欠)や腹部の圧痛、意識の混濁がみられることもあります。いずれにせよ、速やかに医療機関を受診することが重要です。

病気以外の腰痛で腹痛がみられることもある


ここまで、腰痛にともなって腹痛がある場合に疑われる疾患をご紹介しましたが、実は、病気以外でも腰痛にともなって腹痛がみられることもあります。自己判断は禁物ですが、参考にしてみてください。

腰痛の際に病気以外で腹痛がみられることもある

何らかの病気にともなって腹痛が現れる場合、その多くは激痛となって現れます。また、じわじわとした痛みが続き、周期的に痛みが増すといった特徴もあります。

病気以外の時には、腰痛にともなってみられる腹痛は痛みの程度がそれほどでもなく、どちらかというと違和感や重圧感である傾向にあります。

腰痛にともなって腹痛が現れる原因

腰痛にともなって腹痛が現れる主な原因としては、大腰筋の筋緊張があげられます。大腰筋は腰の骨と股関節をお腹側で結ぶ大きな筋肉で、この筋肉が硬くなることで、腰痛にともなっておへその左右に緊張感や違和感、重圧感を産むケースがあります。

大腰筋が硬くなる原因


大腰筋は体幹を支えたり、足を高く上げたりする際に使われる筋肉ですが、この筋肉が硬くなることで腰痛やおへそまわりの違和感につながることがあります。では、なぜ大腰筋が硬くなるのでしょう。

長時間の同一姿勢

大腰筋に限ったことではありませんが、筋肉が硬くなる原因はたったの2つしかありません。1つは筋肉を使いすぎること、もう1つは筋肉を使わなさすぎることです。

前者の代表例が筋肉痛ですが、筋肉痛は2、3日もすれば改善するケースがほとんどです。後者の例は、デスクワークなどで長時間にわたって同じ姿勢をしていることです。

同じ姿勢をしていると深い部分の筋肉が硬くなるため、筋肉痛のように早期に回復しません。これが慢性腰痛の原因となるのです。

冷え

水が冷えると固まるように、私たちの筋肉も冷えることによって緊張が生じます。特に冷たいものを好んで飲むなどしていると、大腰筋の緊張を招きやすくなります。

また、婦人科系疾患を持っている方に、腹部の冷えがみられる傾向もあります。腰痛と腹痛が同時に現れるのは冷えが原因となっているのかもしれません。

大腰筋の緊張を緩和し腰痛や腹痛を改善する方法


病気が疑われる腰痛や腹痛に関しては病院でみてもらうことが欠かせませんが、大腰筋の緊張にともなう腰痛や腹部の違和感であれば、自分で対処できる可能性もあります。

ストレッチ

ストレッチやヨガ、ピラティスなどによって大腰筋の緊張を緩和することで、腰痛や腹部の違和感を改善できる可能性があります。

ただし、ストレッチなどで痛みが増す場合は無理をしないようにしましょう。あくまでもストレッチやヨガ、ピラティスは大腰筋の緊張にともなう腰痛や腹部の違和感の予防法であって、痛みを改善する効果はそれほど期待できません。

お風呂で温める

腰痛にともなって腹部の違和感があるときには、お風呂にゆっくりと浸かるなどして、お腹をしっかりと温めましょう。身体が温まると副交感神経が優位になり、身体の回復力を高めることも期待できます。

まとめ

腰痛にともなって激しい腹痛がある場合、何らかの疾患を発症している可能性があります。そのようなときには、なるべく早く病院を受診し、原因を突き止めることが重要です。

ただ、デスクワークなどをおこなっていると、腰痛にともなって腹部に違和感がみられることも珍しくありません。

お腹を温めることで腰痛や腹部の違和感が解消するようであれば、それは大腰筋の緊張が原因かもしれません。普段から大腰筋を緩め、腰痛や腹痛を予防してくださいね。

参照:腹痛-気になるからだの危険信号 痛み-|日本成人病予防協会
参照:子宮筋腫と女性のからだ|誠心鍼療室

【参考文献】
・標準婦人科学第4版 岡井 崇 / 綾部 琢哉 医学書院
・標準泌尿器科学第9版 赤座 英之 医学書院

著者情報

腰痛メディア編集部
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