長時間座っているときや前に屈んで腰を曲げたときに腰痛が出現!日常生活でこのように困っている方も多いのではないでしょうか?このような長時間の座位姿勢や前に屈む動作で出現する腰痛は、椎間板性腰痛が疑われます。
椎間板性腰痛とは何か?今回は病態や対処方法などをご紹介させて頂きます。このような腰痛に困っている方は是非チェックしてみて下さい。
目次
椎間板とは
椎間板というのは髄核と線維輪でできており、椎間板の内側にある「髄核」はゼリー状の物質です。
髄核は、背骨のクッションとしての役割があり、この役割のおかげで身体を曲げたり、ねじったり、圧縮したりという動作が可能になります。
外側の層は「線維輪」と言います。この丈夫な層は、椎間板の上と下の椎骨に連結されています。
この層は繊維でできており、大きな圧力に耐えられるように構成され、外に漏れないように内層を封じ込めています。
線維輪は、15層から20層までの線維組織で形成されています。
層の中の繊維の方向は交互に配列され、それによって線維輪の安定性と強度が維持されています。
この2つの部位が連動し、背骨が耐えなければならない力を均等に分散させ、椎骨沿いに通る脊髄神経が挟まれない、そして背骨の痛みがないように椎骨同士が擦れ合わないよう衝撃を吸収する役割があります。
椎間板性腰痛の特徴とは
椎間板性腰椎症の特徴としては、①長時間の座位姿勢や②前に屈んで腰を曲げた際に出現することが多いと報告されています。
この腰痛症として受診される患者様はデスクワーク等で座る時間が長い方や、前に屈んで重い物を持ち上げる作業の多い職種の方が多く受診されています。またこの腰痛の方が痛む部位として示すのは腰の真ん中付近であることが多いのも特徴です。
椎間板性腰痛とは
椎間板性腰痛とは、椎間板を構成する線維輪や髄核、神経終末などが刺激されて生じる腰痛をいう。炎症が波及することで神経系が刺激され痛みが増強していく。
例としては、屈み動作時の腰を曲げる動きでは椎間板への圧縮応力が増し、椎間板にストレスが加わる。この際には股関節の柔軟性が低下していることが多くみられ、屈み動作の際に股関節の可動する割合が減ることで腰の動きの割合が増し、これを繰り返すことによって椎間板への負担が増加する。
よって理学療法を行う際には腰部だけのリハビリだけでなく、股関節等の隣接関節等の機能も複合的に評価し治療をすすめていくことが重要となる。先ずは整形外科医の診断を受け、理学療法士によるリハビリテーションを受けることをおすすめします。
椎間板性腰痛によってぎっくり腰が起こることもある
日常動作だと、くしゃみ、咳、前屈、腰を丸める、朝方起きた時に椎間板に突発的に負担がかかりぎっくり腰として痛みが現れます。
筋肉に柔軟性がある方は腰痛のリスクは低いですが、元々腰痛持ちであったり、運動習慣のない方は筋肉が硬く瞬間的な衝撃に耐え切れず腰痛がおこるリスクは高くなります。
椎間板性腰痛の診断について
先ずは医師による問診や身体検査、レントゲンやMRI等の画像診断が行われます。これによって椎間板性腰痛と診断が下った後に、理学療法士へリハビリテーションのオーダーが出されます。
椎間板性腰痛の治療と理学療法について
炎症が強くみられるケースでは抗炎症薬等の薬物療法や椎間板ブロック注射などが適応となることもある。場合によっては手術が適応となるケースもあるが、基本的には保存療法が選択され、理学療法士によるリハビリテーションが行われる。理学療法の内容としては主に
① 体幹筋群の安定性向上
② 股関節の柔軟性向上
③ 姿勢・動作の学習
などを目的に徒手療法や運動療法、自宅でのホームエクササイズ指導を行っていきます。これらによって椎間板にかかるストレスを軽減させ腰痛を改善させます。治療期間については病態や症状によって個人差がみられる。症状出現後早期に受診された場合や、症状が軽度であった場合は完治が早い傾向にあります。完治が遅れるケースとしては
① 炎症が強い
② 症状発症から受診までの期間が長い
③ リハビリにあまり行かない
④ 自宅でのセルフケアを行わない
が挙げられます。①の炎症が強い場合には、炎症の緩和までにはどうしても安静期間が必要となります。不安な場合は現状について医師、理学療法士に確認をしてみると良いでしょう。
②の症状発症から受診までの期間が長いケースでは、炎症期間が長期化したことで炎症部の周囲組織に癒着(くっつく)が生じてしまうことや、痛みをかばうことで周辺の関節等への2次的な障害が発生している可能性が高いです。
症状が出現した場合は早期に整形外科を受診するようにしましょう。
次に③のリハビリにあまり行かないについては、保存療法では理学療法を受けることが重要となります。症状や炎症が強い急性期では可能であれば毎日通院しても良いでしょう。
症状の軽減に合わせて週に2~3回、週に1回など、徐々に間隔を空けていくと良いでしょう。医師や理学療法士に相談し通院の間隔を決めていきましょう。
最後に④自宅でセルフケアを行わないについてですが、特に治療開始の初期段階においては通院時のリハビリだけでは治療効果の持続性が保たれ難いことが多いです。
治療効果をより持続させるには自宅でのセルフケアがとても重要となってきます。1日に2~3回を目標に自宅でセルフケアを行うように心掛けましょう。
椎間板性腰痛の自宅でできるセルフケアの方法について
椎間板性腰痛の自宅で行うセルフケアの目的は以下の機能を高めることです。これらの機能を高めることで椎間板にかかるストレスを軽減させ腰痛を改善します。
① 体幹筋群の安定性向上
② 股関節の柔軟性向上
③ 座位姿勢と前に屈む動作の改善
体幹筋群の安定性向上
先ず体幹筋群の安定性向上についてですが、椎間板内圧の減少には体幹筋群の中でも多裂筋という腰の後面にある深層筋を賦活化させることが重要とされています。以下に多裂筋のトレーニングをご紹介します。
① 椅子に座り、腕を上げて両手を前に伸ばします(腕が水平になるように)
② この姿勢から前方に体重を移動する(腕を水平に保ったまま前方にリーチしていく)
③ この際に少しおへそを前に突き出し、わずかに腰を反らした状態をキープします
④ 可能な位置まで体重を移動させ5秒キープ
⑤ 開始姿勢に戻ります
この運動を10回×2セット行いましょう。腰の後面の筋肉をトレーニングしていることをイメージしながら行いましょう。
股関節の柔軟性向上
次に股関節の可動性についてご紹介します。股関節の可動性としてターゲットとなる筋肉はハムストリングスといわれる腿の裏にある筋肉です。この筋肉が骨盤を引っ張ることで骨盤が前に倒れず椎間板への負担が増加してしまいます。以下の方法でストレッチを行いましょう。
① 足を延ばした長座位姿勢で座ります
② 両膝を曲げ、両手で足首を握り、手を離さないように固定します
③ 手で足首を握ったままの位置をキープし、膝をゆっくりと伸ばしていきます
④ 痛気持ちいい程よい伸張感で止めて30秒キープします(膝は曲がっていてもOK)
⑤ 開始肢位に戻る
このストレッチを30秒×4セット行いましょう。腿の裏が伸びていることをイメージしながら行いましょう。
座位姿勢と前に屈む動作の改善
最後に座位姿勢と前に屈む動作の改善の方法をご紹介します。
座位姿勢の改善方法
①椅子に座る
② おへそを前方に突き出しながら骨盤を起こし、みぞおちを持ち上げるように背筋を伸ばす
③ そこから少しおへそを後方に引くように骨盤を軽度後方に倒す
④ 骨盤は起き過ぎず倒れ過ぎずに垂直を意識し、上半身はリラックスする
この姿勢を意識して座るようにしましょう。この姿勢が苦しくなるような場合はおへそを突き出して伸びをする動作から、おへそを後方に引いて腰を丸める動作を10回~20回行い骨盤から背骨を可動させ、循環を改善させましょう。
また座位姿勢の注意点としては20分以上同じ姿勢とならないように心掛け、上記の運動や立ち上がって腰を動かす動作などを行い腰部の循環改善を行いましょう。
前に屈む動作の改善方法
前に屈む動作で良くない動作は、骨盤が後方に移動することなく腰だけを丸めて屈んでしまう動作です。練習としては
① 前に屈む動作の際に骨盤を後方に移動させる(お尻を後ろに引くイメージ)
② 腰が丸まり過ぎていないことに注意する
この動作は体幹の安定性の運動とハムストリングスのストレッチを行った後に行うと良いでしょう。腰痛や腰の疲労感に注意し行って下さい。
どのような医療機関を受診するべきか
日常生活において椎間板性腰痛が疑われた場合は先ずは整形外科を受診しましょう。整形外科を受診する際には、理学療法士が在籍するリハビリテーション科がある病院を探してみて下さい。現在の腰痛治療では、理学療法士によるリハビリテーションの介入が推奨されています。
理学療法士の在籍する整形外科を探すことで、徒手療法や運動療法を行ってもらい、自宅でのセルフケアを教えてもらいましょう。薬や電気治療のみの病院に行かれている方は、これを機にもう一度病院探しを行ってみてはいかがでしょうか?
まとめ
今回は椎間板性腰痛についての病態や対処方法についてお伝えさせて頂きました。椎間板性腰痛で受診される方は多いのが現状です。
先ずは病態を理解し、医師の診断を受けて理学療法を行っていくことが重要となります。この記事を読んで自分も該当するという方は早めに整形外科を受診をしましょう。
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1)松村 将司,三木 貴弘(2020年9月3日刊行)『適切な判断を導くための整形外科徒手検査法』メジカルビュー社
2)成田 崇矢(2019年2月3日刊行)『脊柱理学療法マネジメント』メジカルビュー社
3)整形外科リハビリテーション学会(2014年3月14日刊行)『整形外科運動療法ナビゲーション』メジカルビュー社