腰痛の原因には整形外科の疾患によるものと内科の疾患によるものがありますが、腰痛や食欲不振がある場合は膵臓の病気が疑われます。膵臓とは後腹膜器官であり、腹腔より背中側に存在します。そのため、膵臓の病気では腰痛が出現することがあるのです。
今回は、腰痛や食欲不振などの症状が出現する膵臓がんについて解説していきます。ご自身の腰痛の原因を知るためにも、膵臓がんの可能性がないかチェックしてみましょう。
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目次
膵臓とは
膵臓は約20cmほどの細長い形をした臓器で、胃の後ろ側に位置しています。右側の太い部分は頭部、左側の細い部分は尾部、真ん中は体部といいます。頭部は十二指腸に囲まれており、尾部は脾臓と隣接しています。
主な役割は、消化を助ける膵液を産生して分泌することと、血糖値の調整をするホルモン(インスリン、グルカゴンなど)を産生して分泌することです。前者は外分泌機能、後者は内分泌機能と呼ばれます。
膵臓がんとは
膵臓がんは、膵管(膵臓全体にみられる網の目のような細長い管)にある細胞から発生することが多いです。膵臓にできる腫瘍としては、他に膵管内乳頭粘液性腫瘍や神経内分泌腫瘍などがありますが、これらは膵臓がんとは異なるとされています。
膵臓がんによる腰痛は、がん細胞が腰背部の神経に湿潤することで起こります。進行性であるため、基本的に改善することはありません。背部痛や腰痛だけでなく、みぞおちの痛みも出現します。
膵臓がんの原因
膵臓がんの原因は明らかになっていませんが、糖尿病や慢性膵炎、多量の飲酒、喫煙、肥満、食生活などがリスクとなることがわかっています。また、血縁関係者の中に膵臓がんの患者がいるとリスクが高まるとされています。
生活習慣の改善をして、これらのリスクファクターを減らすよう努めることが大切です。
膵臓がんの症状
膵臓がんは症状が出にくく、自覚症状がほとんどないため早期発見は難しいとされています。気づいたときにはかなり進行していることが多いのです。進行すると、腹痛や腹部膨満感、食欲不振、体重減少、黄疸、背部痛・腰痛などの症状が出現します。
また、膵臓は血糖値の調節をするホルモンの産生・分泌を行うことから、糖尿病の発症や急激な悪化がみられることがあり、これらが膵臓がんの発見につながることもあります。
膵臓がんの検査
膵臓がんでは以下の検査を行い、診断します。膵臓がんの有無だけでなく、進行度や転移がないかも調べていきます。
血液検査
膵臓がんによって膵管が狭窄してしまうと、膵臓から分泌される消化酵素(アミラーゼ、エスタラーゼ1など)が血中に漏れ出します。血液検査では、これらを測定することで膵臓の機能を調べることができます。また、腫瘍マーカー検査も行います。膵臓がんでは、CA19-9やSPan-1、CEAなどが代表的な腫瘍マーカーです。ただし、これらの数値はある程度進行してからでないと異常値を示さないため、早期の診断にはあまり役立たないとされています。
腹部超音波検査
腹部超音波検査は腹部エコー検査とも呼ばれ、体外から臓器の状態を観察します。膵臓の中の腫瘤の有無や、膵管の拡張の有無などを調べることができます。侵襲度が低く繰り返し行うことのできる検査ですが、腸管内のガスや皮下脂肪の影響を受けて、観察する範囲が限られてしまう可能性があります。
CT検査、MRI検査
腹部のCT検査やMRI検査では、病変の有無や大きさ、位置、他の臓器への浸潤や転移の有無を調べることができます。また、造影剤を使用することで、さらに詳細な情報を知ることもできます。
超音波内視鏡検査(EUS)
プローブと呼ばれる超音波を発する装置が先端についた内視鏡を胃内に挿入し、胃壁にエコーをあてることで胃の後ろ側にある膵臓を観察します。通常の腹部超音波検査では体外からプローブをあてるため、より膵臓に近い位置からプローブをあてることのできるこの検査は、解像度の高い画像を得ることができ、正確に診断できるとされています。
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)
内視鏡で胆管と膵管の造影を行う検査です。内視鏡を十二指腸まで挿入し、その先端から胆管と膵管にカテーテルを入れて撮影します。胆管や膵管の狭窄や閉塞などを映し出すことができます。同時に胆汁や膵液を採取したり、病変部の組織などを採取して検査することもあります。
膵臓がんの治療
治療としては、手術療法と化学療法の2つが挙げられます。ステージ1・2の比較的早期では手術療法を、ステージ3・4の進行したがんでは化学療法を行います。
また、補助療法として放射線療法を行う場合もあります。
手術療法
膵頭部にできたがんに対しては膵頭十二指腸切除術、膵体部や膵尾部にできたがんに対しては膵体尾部切除術を行います。また、がんが大きい場合には膵臓の全摘出術が必要となることもあります。
膵頭十二指腸切除術
膵頭部だけでなく、十二指腸や胆管、胆のうを切除する手術です。残った膵臓と小腸をつなぎ合わせるため、膵液は小腸へと流れ込むようになります。
膵体尾部切除術
膵体部や膵尾部だけでなく、脾臓も切除します。膵頭部が残っているので、膵液は十二指腸へと流れます。そのため、膵頭十二指腸切除術と比較すると侵襲が少ないとされています。
膵全摘術
膵臓と十二指腸、脾臓、そして胃の一部も切除します。膵臓をすべて切除することで血糖値の調整をする機能も失われるため、インスリン注射が必要となります。
化学療法
がんを手術で取り除くことができない場合には、化学療法が選択されます。化学療法は、がんの進行や再発、転移を防ぐ目的で行われます。抗がん剤の副作用として、吐き気や嘔吐、口内炎、脱毛などがみられます。
放射線療法
放射線療法は、がんの進行を止める目的で行われます。高エネルギーのX線を照射する外部照射が一般的で、最近では外来通院で行うこともあります。また、治療の効果を高めるため、患者さんの全身状態がよければ化学療法と併用することもあります。
おわりに
腰痛と食欲不振という症状から考えられる、膵臓がんについて説明しました。腰痛があるとまず骨の異常を疑うことが多いと思いますが、内科の病気が隠れていることもあります。整形外科の痛みは動くときの痛みや消炎鎮痛薬が効く痛みが多いです。安静時や動作時に激しく長時間続く背中や腰の痛みであったり、消炎鎮痛薬の効かない痛みには注意しましょう。少しでもおかしいなと思ったら、我慢をせずに受診するようにしましょう。
【参考】
一般社団法人 日本肝胆膵外科学会
http://www.jshbps.jp/modules/public/index.php?content_id=14
国立がん研究センター 東病院
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/hepatobiliary_and_pancreatic_surgery/050/3/20171102124510.html
医療法人社団 鴻鵠会 恵比寿クリニック
https://ebisu.clinic.or.jp/internalmedicinechild/1zhhl0xeag7lev45h4vx7z/