腰痛をがんと結びつけて考える人は少ないものです。「これってがんの症状?」と不安になるような体調の変化があったとき、腰痛もがんと関係あるのではないかと考えてネットで情報を探すことが多いでしょう。特に女性がなりやすいがんは、腰痛を伴うことが多いもの。ここでは女性向けに、腰痛を起こすがんの症状と受診や心構えについてお伝えします。
目次
女性のがん
女性にとってのがんは、女性ならではの悩みや問題をはらんでおり次のような特徴があります。
・生涯がんになるリスクは男性のほうが女性に比べて1.3倍と多いのにもかかわらず※1、50歳前半までは女性のほうが男性に比べてがんになるリスクは約2倍も高い※2
・女性特有のがんでは女性機能を喪失する可能性
・子宮や乳房摘出、人工肛門、傷跡、抗がん剤副作用の脱毛によるボディイメージの変化
・セクシャリティ、またはアイデンティティのゆらぎ
・子どもを持つ機会を断たれる可能性
・治療や予後がパートナーや家族へ大きな影響を与える
・リンパ浮腫や更年期症状など治療後も続く心身の負担
女性ががんを意識したとき「がんではないか?」という不安だけでなく、女性の喪失にかかわる恐怖も大きくのしかかり、精神的ダメージは計り知れないものです。不安をやわらげるために、まず腰痛以外のがんの症状、適切な対応や心構えを知る必要性があります。
👉腰痛と腹痛が同時に起こるのはがん?女性特有の病気の可能性や腰痛と下痢・便秘の関係も解説 |
腰痛を起こす女性特有のがんの症状
骨盤の中にある子宮、卵巣、膣にがんができて進行してくると、下腹部や腰に違和感や痛みがでやすくなります。
がんの症状を調べても、専門的な用語だとピンとこない場合があるもの。ここでは、実際患者さんが使う言葉で表現していきます。
腰痛に加え、以下の症状があれば婦人科を受診しましょう。
子宮頸がん
自覚しやすい症状として、生理日以外での出血や生理の出血量の変化、性交時痛があげられます。
生理期間以外で、生理終わり頃のような薄茶色のおりものや血が混ざったおりものが下着に付き気づくことが多いですが、日頃から生理が不規則だと気づきにくくなるかもしれません。ちょうど排卵日付近で出血し、排卵時出血と間違い見過ごされることもあります。 おりものがライナーの変えが必要なくらい増える、匂いがきつくなる、うみがでるなどの変化もみられます。
生理の時出血量が多くなり、生理用品を変える回数が増えた、昼でも夜用のナプキンが必要になった、レバーのような塊がでてくるといった、生理の変化もあります。
性交時には、痛みや出血、下腹部の重さや鈍痛など、今までとは違う変化を感じることも。
こうした異変もホルモンバランスの崩れともとれるため、様子をみていくことになり、気づかないままにがんが進行し、腰の重だるさや痛みがでて初めて子宮がんを疑うケースもあるのです。
子宮体がん
40半ば以上に多く、更年期のような生理周期の乱れや出血量の変化などがあります。
おりものは、無臭でさらさらではあるもののライナーで追いつかないくらい量が増えたり、茶褐色や赤い血が混じったりとさまざまです。
出血も生理時期以外の生理のような出血がおきたり、生理期間中でもズボンにまでしみるほどの出血があったり、レバー状の塊が複数でたりと、個人差があります。普段とは明らかに違う量の出血には注意しましょう。
進行してくると下腹部痛や腰痛が現れます。
卵巣がん
卵巣がんは初期の自覚症状がほぼないと言えます。
代表的な症状は、腫瘍が大きくなることで現れる、おなかの張りや中年太りと間違うような腹囲の増大です。同時に周囲の臓器を圧迫し、トイレが近くなる、排尿や排便時に痛みを伴うことがあります。
進行すると腹水がたまり、息苦しさや食欲の低下がでてはじめて気づく場合も。このとき腰のコリや張り、痛みを感じることもあります。
腰痛を起こす女性に多いがんの症状
女性生殖器以外のがんでも腰痛を伴うことがあります。以下の症状がみられる場合は内科・消化器内科を受診しましょう。
大腸がん
女性のがんで死亡率がもっとも高いのは大腸がんで、女性は特に初期症状に注意を払っておきたいものです。 主な自覚症状としては、血便・粘血便、細い便、残便感など便に関するものがほとんどのため、日々の便の観察は欠かせません。
初期は血便も肉眼ではわかりにくく、気づいてもペーパーにほんの少し赤茶色の便がつくだけで、不正出血と間違え婦人科を受診して問題ないと言われることがあります。
便がすっきりでない、便意をもよおしてトイレにいっても便がでないことが増え、腫瘍が直腸付近に及ぶと便が細くなります。直腸がんが肛門付近にできると、人工肛門を余儀なくされることがあり、女性にとっては精神的な苦痛が大きいものです。
自治体では、40歳以上から便潜血検査が受けられます。早期に発見できれば、腹腔鏡の手術で体の負担も傷跡も小さくすむため、毎年検査を受けるようにしましょう。
膵臓がん
膵臓がんが女性のがんで死亡率3位と高いことは、実はあまり知られていません。初期の自覚症状がほぼないうえに、膵臓はレントゲンで検査できず早期発見が難しいがんです。
膵臓がんを発見するきっかけは主に、腹痛、黄疸、背中から腰にかけての痛みといった上位3つの症状です。急激な痛みは膵炎の可能性がありますが、膵臓がんはみぞおちの痛みや、胃からおなかにかけての重苦しさが特徴的です。
もちろんそれに限らず、下腹部痛と腰痛を訴えただけの症例もあります。膵臓がんの早期発見のためには、腰痛がある場合膵臓がんの有無を疑うという検討報告もされています※3
血液・骨のがん
悪性リンパ腫も初期症状がわかりにくい血液のがんです。リンパ節が腫れたり免疫低下の症状で疑われることが多いのですが、腰痛以外の症状がなかった例も見受けられます※4
多発性骨髄腫も腰痛が現れ、痛みが長引き治療してもやわらぐどころか悪化するうえ、範囲が広がる特徴があります。
骨肉腫や脊髄腫瘍など骨のがんも腰痛と密接な関係がありますが、血液のがんとともに希少がんと呼ばれ、生涯がん死亡率は1%未満となっています※2
がんの転移
その他、乳がん、肺がん、胃がんをはじめ、もともとがんの既往があり、がんが転移した場合に腰痛が現れることは多いものです。また、原発がんに気づかぬまま過ごしていて、腰痛を発端に複数箇所のがん転移が発覚する症例もあります。
がんで有名な症状は、食欲低下や痩せですが、風邪や帯状疱疹、カンジタなどの免疫が低下した際にかかりやすい病気を繰り返す兆候もあります。
がんが気になったときの対処法
がんかもしれないと思うとき、受診することすら相当怖いものです。しかし先延ばしにしてよくなることはありません。がんではない場合1日も早く安心できるよう、信頼できる医療機関を速やかに受診しましょう。
がん相談支援センターは電話やメールで無料相談ができます※5
医療機関だけでなく、患者団体を利用することで※6病院や治療の情報交換や支え合いができ、勇気をもらえることになるでしょう。また、ネット上でもコミュニティが複数存在するので※7、身近な人に相談できない場合は利用も考えるのも一案です。
悩んだときはひどく孤独を感じやすいもの。1人で抱え込まないためにも励みとなる他者の存在が必要です。
また、日頃からホームドクターを持つ、定期的にレディースクリニックでチェックを受けるなど、困った時に相談できるクリニックや病院を用意しておくと心強いものです。初期は自覚がないがんも多いため、会社や自治体のがん検診は毎年かかさず受けておきましょう※8
👉生理の時に腰が痛い!対処方法を教えて!~女性特有の腰痛とは?その原因と対処法まとめ~ |
まとめ
腰痛はがんの症状のひとつです。腰痛に伴いがんの症状がある場合、速やかに病院を受診しましょう。また、女性がかかりやすいがんの症状を覚えて日頃から健康チェックしておくことで、早期発見につながり心身の侵襲も最小限ですみます。
がん?と思うときの心身の負担は大きいものです。悪い情報ばかりが目について、何も手につかなくなることもあるでしょう。悩みの解決の糸口となるかもしれない機関もあると心に留めておいてくださいね。
今は2人に1人ががんにかかる時代。しかも多くのがん患者女性たちは社会に復帰して、自分らしい人生を歩んでいることをどうか忘れないでいてほしいのです。
【参考リンク】
※1知っておきたいがんの基礎知識 国立がん研究センター がん情報サービス
※2最新がん統計 国立がん研究センター がん情報サービス
※3膵臓がんの早期発見について 日本未病システム学会雑誌2004
※4腰痛で発症し,腸腰筋に著明な浸潤を認めたB-cell lymphomaの1例
※5がん相談支援センターを探す:[がん情報サービス] (ganjoho.jp)
※6楽患ねっと(NPO法人)―患者さんの声を生かし、患者中心の医療の実現を目指す― (rakkan.net)
※6がん患者団体支援機構 (canps.jp)
※75years 日本最大級のがん経験者コミュニティ
※8各自治体のがん検診窓口
【参考文献】
医学書院 一般社団法人 日本がん看護学会
女性性を支えるがん看護