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腰痛を引き起こす重大な病気の一つに、「転移性脊椎腫瘍」という疾患があります。脊椎にがんが転移するこの病気は、完治が難しく、死に至る病となることも珍しくありません。そのため、できるだけ早くに発見し、専門的な治療を開始することが大切です。

今回はそんな転移性脊椎腫瘍について、症状や治療法、なりやすい人の特徴などを解説します。生存率を高めるためにするべき心がけも併せて紹介するので、参考にしてください。

転移性脊椎腫瘍の特徴

転移性脊椎腫瘍は、脊椎に悪性腫瘍が転移することによって、腰痛や足のしびれなどを引き起こす疾患です。

ほとんどが「がん」の転移である

脊椎に転移する悪性腫瘍は、大半が「がん」です。中でも肺がんと乳がん、前立腺がんの頻度が高く、女性の場合は乳がんからの転移が約8割、男性の場合は肺がんと前立腺がんからの転移が約7割であると言われることもあります。腎がんや甲状腺がん、肝がん、子宮がんが転移するケースも一定数見られます。

がんで死亡する患者の3割程度には骨転移があり、転移する場所は脊椎、とくに腰椎が一番多いです。そのため、腰痛を発症する病気の中では、極めて危険度が高い疾患だと言えます。腰椎への骨転移が発見されたときには、すでにかなりがんが進行していることも多く、早期発見の心がけが重要です。

ひどい腰痛を訴える患者が多い

転移性脊椎腫瘍を抱える患者の多くは、ひどい腰痛を訴えます。その特徴は、安静時や夜間にも強い痛みがあること、痛みが次第に強くなっていくこと、(ブロック注射が効かないというような)治療への抵抗性があることなどです。腫瘍やそれが招いた骨折による骨片が神経を刺激すると、しびれや麻痺を伴うこともあります。

また腫瘍によって骨の破壊が進むと、背骨が体の支柱としての役割を果たさなくなってしまうというケースも存在します。さらに発熱や倦怠感、食欲の低下などの全身症状が見られることも多いです。

治療は放射線や化学療法、手術などが臨機応変になされる

転移性脊椎腫瘍の治療法には、放射線治療や抗がん剤治療を含む化学療法、手術療法などが用いられますが、どの治療を選択するかは、がんの原発巣や病状などによります。脊椎の破壊がかなり進行した場合は、体を支える人工的な柱を立てる整形外科的な手術が行われることもあります。

腫瘍を摘出するための手術がなされることもありますが、それは患者の体に大きな負担を与えるので、手術適応は余命が3〜6ヶ月以上ないと厳しいです。そのため、手術で腫瘍を摘出し、この病気が治るというケースはそう多くありません。しかし、最近は「腫瘍脊椎全摘術」という方法が発展してきており、今後手術による治療がもっと普及する可能性はあります。

転移性脊椎腫瘍になりやすい人の条件

がんが40歳以上に多いことを踏まえると、転移性脊椎腫瘍は中高年がかかりやすい病気だと考えられます。とくにがんの既往歴がある方は、がん再発のリスクがあるため、気をつけましょう。「がんが完治した」と安心せずに、定期的に治療を受けた医師に診てもらうのがおすすめです。

なお、30代以下にも転移性脊椎腫瘍の症例は一定数見られます。そのため、若いからといって油断せずに、疑わしい症状がある場合は早急に医療機関にかかりましょう。若者の発症確率は低いものの、40歳以上よりも予後が良くないケースが多いです。よって早期発見・早期治療がより重要だと言えます。

転移性脊椎腫瘍の生存率を高めるための心がけ

転移性脊椎腫瘍は、命を落とすことも珍しくない危険な病気ですが、残念ながらそれほどレアケースではありません。がんの骨転移は年間で10万人以上いると言われているため、誰にでもかかる可能性がある病気です。そのため、罹患した場合に少しでも生存率を高められるように、早期発見ができるような心がけをしておくことが大切だと言えます。

安静時痛や夜間痛、全身症状があればすぐに受診する

転移性脊椎腫瘍に伴う腰痛の特徴は、安静時や夜間寝ているときにも痛むこと、発熱や食欲不振などの全身症状があることです。また次第に痛みが強くなったり、ブロック注射が効かないなど強い治療抵抗性を見せたりすることもあります。

こうした症状が見られた場合は、早急に医療機関受診して検査を受けましょう。もちろん転移性脊椎腫瘍ではない他の病気、例えば、内臓疾患や感染症などでそのような症状が出ている可能性もありますが、いずれにせよ早期発見・早期治療をするのに越したことはありません。

がんの既往歴に関わらず、定期的にがん検診を受ける

がんの既往歴がある人はもちろん、そうでない方も定期的にがん検診を受けるようにしましょう。女性は乳がん、男性は前立腺がんが転移して転移性脊椎腫瘍になるケースが多いので、これらを早期発見して治療することが、骨転移の予防につながります。

転移性脊椎腫瘍では、発見されたときにはもう手遅れという場合も珍しくないため、がんが進行する前に専門的な治療を受けることが非常に大切です。

X線やCTだけでなく、MRIを撮ってもらう

腰痛やがんの検査では、X線(レントゲン)やCTがよく用いられますが、それらでは転移性脊椎腫瘍を早期に発見することが難しいので、必ずMRIの検査も受けるようにしてください。MRIの精度は90%以上と言われることもあり、早期に骨転移を発見するにはMRIでの検査が欠かせません。

しかし、MRIでも転移性脊椎腫瘍であるかの判断が難しいケースもあります。例えば、溶骨性の腫瘍によって起こる骨折は、骨粗鬆症による圧迫骨折とよく似ています。そのような場合は、検査で悪性腫瘍が見逃されることもありますが、転移性脊椎腫瘍の疑いがきちんと晴れるまで(症状が改善されるまで)は、粘り強く検査を受け続けることが重要です。

検査をしても悪いところが見つからない、治療をしても一向によくならないというような理由で通院をやめてしまう方もいますが、そうような人に限って後から骨転移が見つかり、その直後に亡くなってしまうというケースがよくあります。

がん治療にはしっかりした病院を選ぶ

転移性脊椎腫瘍の治療には、抗がん剤治療や化学療法などが多く選択されますが、そうした治療がしっかり行える病院は限られています。がんが再発・転移した場合は、初めに治療を受けた病院でそのまま治療を受けるのが基本なので、その病院に治療環境が整っていなければ、転移性脊椎腫瘍に対する最善の治療ができません。

そのため、例えば、乳がんや前立腺がんが早期で発見され、その時には骨転移が見られないというような場合も、将来的な再発・転移のリスクを考えて、治療環境の整った病院を選びましょう。

転移性脊椎腫瘍に現れやすい症状

腰痛

転移性脊椎腫瘍の患者さんが訴える症状の中で最も多いのは腰痛です。骨にがんが転移しても骨自体が痛むことはほとんどありません。しかし、腫瘍が骨の外にまで生じると骨膜や周囲の神経に影響を与えて痛みを感じます。

また、脊椎が脆くなると背中を支えられなくなり腰に大きな負担がかかります。これらが転移性脊椎腫瘍によって腰痛が起こるメカニズムです。

背中や首の痛み

脊椎が脆くなって痛むのは腰だけではありません。脊椎は首から尾骨までと非常に長いため、脊椎がもろくなったことでその範囲すべてに痛みを感じることがあります。腰痛だけでなく、背中や首の痛みが長引いている人も注意が必要です。

病的骨折

転移性脊椎腫瘍によって脊椎が脆くなると、体重や動作の負荷に耐え切れず骨折しやすくなります。特に運動をしたわけではなく、日常生活で骨折することも珍しくありません。これを病的骨折と呼びます。

手足の麻痺

骨の周りには多くの神経が通っています。腫瘍によって脊髄神経が圧迫されることで、対応した場所に神経障害が生じることがあります。具体的には手足の麻痺です。脊椎の中を走る脊髄に破損が生じた場合、足が麻痺して歩行困難になるケースもあります。

筋力低下

腫瘍によって脊髄神経が圧迫されると、手足に力が入らなくなる筋力低下がみられることがあります。手足に力が入らず物を落としてしまう、以前と比べて重い物を持てなくなったなどの異変を感じたら要注意です。

膀胱直腸障害

脊椎が圧迫または破損したことにより、排尿・排泄に関わる筋肉や神経の機能が低下することがあります。その結果、失禁や便秘などの障害が起こります。膀胱直腸障害のみで転移性脊椎腫瘍を疑うのは難しいかもしれませんが、腰や背中の痛みと同時に現れたら注意が必要です。

一般的な腰痛との見分け方

痛みがだんだん強くなる

腰痛を感じると、「年齢のせい」「疲労のせい」と考える人が多いでしょう。ついそのまま放置しがちですが、痛みがだんだん強くなる場合は注意が必要です。転移性脊椎腫瘍の場合、腫瘍が大きくなることで脊椎神経を圧迫して痛みがだんだん強くなります。

一方、加齢による腰痛は急激に痛みが強くなることは少なく、いつも同じくらいの痛みを感じます。また、運動や動作による腰痛は数日経てば改善することがほとんどです。

安静にしていても腰痛が収まらない

一般的な腰痛は、安静にしている時は痛みが治まる傾向にあります。楽な姿勢を見つけて休んでいれば、その時は痛みを感じにくいでしょう。しかし、転移性脊椎腫瘍による腰痛は腫瘍が脊椎神経を圧迫して起こるため、いくら安静にしていても姿勢を変えても腰痛が収まりにくいです。

夜間に痛む

転移性脊椎腫瘍による腰痛のもう1つの特徴は、夜間に感じる腰痛です。先ほど解説したように、一般的な腰痛は安静時や就寝中には楽になります。しかし、転移性脊椎腫瘍による腰痛は、夜間の就寝中でも強い痛みを感じます。

転移性脊椎腫瘍は腰痛全体の1%未満

今回は転移性脊椎腫瘍という病気を解説してきましたが、腰痛全体のうち、がんなどの重大な病気が引き起こす腰の痛みは1%程度だと言われています。そのため、今抱えている腰痛が転移性脊椎腫瘍である確率は、1%もありません。

もちろん検査などを余念なくすることは大切です。しかし、腰痛になったからといって、即座にがんを疑う必要はありません。

「腰痛ドクターアプリ」で腰の状態を調べてみよう

自分の腰痛の状態や危険度を知りたい方は、「腰痛ドクターアプリ」というオンラインサービスを使ってみてください。このサービスでは、腰痛治療のスペシャリストが監修したオンラインシステムで、専門的な診断を受けることができます。すぐに医療機関にかかるべき痛みなのか、はたまた全く問題のない痛みなのかが知れるので、がんなどの重大な病気でないかが心配な方にもおすすめです。

早期発見・早期治療のための心がけが大切!

転移性脊椎腫瘍をはじめとする腰痛を伴う大きな病気に対しては、早期発見・早期治療が肝心です。放っておいたら転移して命取りになるがんも、初期段階で見つけて治療すれば、その後10年、20年と生存できる可能性もあります。また腰痛全体でみると、転移性脊椎腫瘍である確率はかなり低いです。自分の腰痛の原因を今すぐ知りたいという方は「腰痛ドクターアプリ」も使ってみてください。

参考URL
脊椎手術.com, 「第9回 転移性脊椎腫瘍」, <https://www.sekitsui.com/specialist/sp009-html/>, 2021/03/02
公益社団法人 日本整形外科学会, 「転移性脊椎腫瘍」, <https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spinal_neoplasm.html>, 2021/03/02
日本ペインクリニック学会誌(2016), 「診断が遅れた悪性腫瘍の多発性脊椎転移による難治性腰痛の2症例」, <https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspc1994/13/2/13_2_122/_pdf>, 2021/03/02
医療法人 とよた整形外科クリニック(2020), 「代表的疾患とその診断と治療-その4悪性腫瘍について-」, <https://www.toyotaorthopedicclinic.jp/report/3172>, 2021/03/02

著者情報

腰痛メディア編集部
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