腰痛の起こりやすさ自体は、男女間に大きな有意差がありませんが、女性に特有の腰痛はいくつかあります。
女性特有の腰痛について、原因や対処法を知っていると、楽に乗り切れるようになり、いざというときにも困りません。
今回は女性に特徴的に起こる腰痛についてまとめました。
目次
生理にともなう腰痛の原因は?
女性の性周期にはホルモンの影響が深く関係しています。
エストロゲン→プロゲステロンと分泌され、排卵や子宮内膜の増殖がおこりますが、妊娠が成立しなければ、やがて生理が始まります。
この生理中に分泌されるホルモンに「プロスタグランジン」というホルモンがあります。これが生理にともなう腰痛の原因と考えられています。
プロスタグランジンってなに?
プロスタグランジンは早産や流産の一要因とされていますが、作用は子宮の収縮を促します。
子宮が収縮することで子宮内膜を脱落させ、生理がおこります。この子宮が収縮する動きが、生理痛や腰痛の原因と考えられえています。
プロスタグランジンの分泌量には、個人差があるといわれていて、分泌量が多い人ほど生理痛や腰痛が重くなるといわれています。
年齢の上昇や、妊娠・出産を契機に生理痛や腰痛が落ちつく方もいますが、これはホルモンの分泌量が安定してきた、子宮頚管(しきゅうけいかん)が成熟してきたなどの理由があるといえるでしょう。
生理の時に生じる腰痛の対処法
痛みがつらい時には、無理せず休んだり、鎮痛薬を飲んだりして対応します。生理痛には温めることがとくに有効です。
骨盤内の血流が悪くなると、子宮内膜が脱落しにくくなり、より多くのプロスタグランジンが分泌します。
生理痛や腰痛が悪化しますので、衣服を調整し、カイロを使用するなどして下腹部から腰回りを保温しましょう。
ただし、着込みすぎたり、きつめのガードルを着用したりすると、かえって血流が悪くなり、痛みのが悪化する原因です。
生理の時は締め付けの少ない、ゆったりした衣服を着用するとよいでしょう。
また、生理の時は腰痛があっても、湿布はあまり使用しないでください。湿布の種類により変わりますが、冷却成分や、抗炎症成分が含有されている種類のものもあります。
原因に対し、適切な処置にならないこともあり、場合によっては症状が悪化します。また、この時期はエストロゲンが低下し、肌も敏感になっています。
湿布負けしやすい時期でもありますので、肌着の上からカイロや湯たんぽを使用するとよいでしょう。
生理にともなう腰痛。自分でできる対処法で限界を感じたときは
温めても、薬を飲んでもダメ。全然症状が改善せず、毎月日常生活や仕事にも支障が出るといったこともあるでしょう。
この場合には、単純な腰痛や生理痛ではなく、子宮筋腫や子宮内膜症などの疾患が隠れていることもあります。
生理は基本的には毎月起こるものなので、産婦人科を受診し、疾患の有無を確認してもらうことをおすすめします。
そうした疾患がなくても、ピルを内服することで生理痛や腰痛などの症状はずいぶんと和らぎます。
さらに、生理周期を把握しやすくなります。生理痛そのものだけではく、腰痛や気分の落ち込み、イライラなどの自律神経失調症の症状が和らぐこともあります。
妊娠にともなう腰痛の原因は?
妊娠中はだんだんと大きくなっていく胎児の居場所を作るために、妊娠3カ月ころから関節や靭帯をゆるめる作用を持つ「リラキシン」というホルモンが分泌されます。
関節によって結ばれている骨が不安定になり、妊娠によって増えた子宮の重量をおしりや腰の筋肉で支えることになります。その重量が加わり、腰痛が起こりやすくなります。
妊娠にともない生じる腰痛の対処法
普段の生理痛や腰痛であれば、自宅にある鎮痛薬を使用しても構いませんが、妊娠中安易な内服薬の使用は避けましょう。
多くの場合、妊娠中でも使用できるアセトアミノフェン系統の鎮痛剤は、使用してもよいとされています。
腰痛の症状がつらい時は主治医に相談し、妊娠中でも内服できる鎮痛薬を処方してもらうようにしましょう。
妊娠週数に応じ、おなかは大きく前にせり出してきます。そのバランスをとるために、立ったり歩いたりするときは、体が後方へ傾きがちです。
脊椎の関節に、姿勢による圧迫と重量分の負荷がかかります。さらに背筋の筋肉疲労も蓄積されます。血流も悪くなり、疲労物質もたまりやすくなります。
妊娠中に腰痛があるときは、無理をせずときどき横になることで症状が軽くなるケースがほとんどです。時間を見つけて横になり、休憩するとよいでしょう。
このときに、足元を高くして寝ると腰の筋肉の緊張が取れやすくなります。妊娠中に起こりやすい足のむくみも取れる姿勢ですので、こまめに休むとよいでしょう。
また、腹帯や、妊娠中の腰痛対策用のプロテクターやベルトを使用するのもおすすめです。
大きなおなかに干渉しないように設計されています、着用することで、緩んでいる関節や骨盤を支え、固定することで痛みが軽くなることもあります。
産後に生じる腰痛の原因
出産後でも、腰痛が尾を引くこともあります。妊娠出産によって緩んだ骨盤は、すぐに元には戻りません。中には妊娠中よりも症状が悪化したという人もいます。
この原因として、妊娠出産でゆるんだ骨盤や関節がすぐには戻らないこと。妊娠にともない増大した腹壁(腹筋)により、体幹を背筋で支えているという実態があります。
出産後の子育ては腰にかかる負担が多いもの。おむつを替えるときは前かがみになりがちです。授乳中もそうでしょう。赤ちゃんの抱っこも関節や腰に負担がかかります。
しかも妊娠中の時のように自分のペースで休めるわけではありません。育児は完全に子どものペースです。
寝不足やストレスがたまることで、交感神経が有意になり、疲労物質もたまりがちです。腰痛改善のためにやれることも少なくなります。
産後に生じる腰痛の対処法
産褥(さんじょく)ベルトやウエストニッパーを使用し、ゆがんでいる骨盤を支えてあげるとよいでしょう。
子宮復古の状況にともない使用を検討します。ベルトやウエストニッパー使用の良し悪しを、産婦人科の医師に確認しましょう。
産褥体操であれば産後早期からおこなえます。おすすめなのは「膣トレ」です。産後の会陰切開の傷が痛まなければ開始できます。体幹トレーニングや腰痛体操、ストレッチと並行しながら、負担の無い範囲で行っていきましょう。
骨盤周りの筋肉も一緒に鍛えられるので、おすすめです。お子さんの寝かしつけや授乳しながらでもできるので、1日10回3セットを目安に行うとよいでしょう。
膣トレの方法
・おへそ周りに力を入れて、肛門にギュッと力を入れます。
・そのままエレベーターが膣の中を上昇していくイメージで、「1階、2階、3階……」7階まで上昇します。
・その後息を吐きながら力をゆるめます
立っているとき、座っているとき、寝ているときいつでもいいので、1日最低3セットを目標にしましょう。上限はありません。何セットおこなっても大丈夫です。産後の尿もれ対策にも有効です。
最後に
女性に特有の腰痛は、あらかじめ対処のコツを知ることで、不快な症状を楽に乗り切ることもできます。原因を知れば気持ちを楽に構えることもできるでしょう。
誰でも起こりうることなので、心配しすぎずに上手にお付き合いしていけるようにしたいですね。
参考:ハートメディカルグループ
▼参考書籍
Newエッセンシャル 産科婦人科学 第3版