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腰椎椎間板ヘルニアとは

腰椎椎間板ヘルニアは腰痛や膝下~足裏にかけての痺れなどが主な症状で20~40歳に多く発症し、男女比は2~3:1で男性に多い疾患となっています。
また不良姿勢での動作や作業、くしゃみ、喫煙などでヘルニアが起こりやすくなるとされています。

人の体は脳から脊髄といった神経を介して体に対して指令を送っています。
また、痛い、熱い、冷たいなど体から得た様々な情報を脳に送ることも同じく脊髄を介して行われています。
その脊髄を保護している骨が脊椎と言われ、一般的に背骨と呼ばれている部分にあたります。
人間の脊椎は椎骨という骨がいくつも積み木の様に重なって構成されています。
頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個、仙椎4個で計33個の骨を順番に上から構成されています。

これらの椎骨と椎骨の間には椎間板と呼ばれるクッションの役割を担っている軟部組織が存在し上下の椎骨をつないでくれています。

椎間板は繊維輪と呼ばれるコラーゲン組織で構成されており、中心には髄核と呼ばれる組織が存在しています。

この椎間板は正常では上下の椎骨を支えるための弾性を有しています。
しかし、加齢や運動時のストレスなど様々な要因によって変性が起こるとされています。
これによって弾性が低下することがあります。

腰椎椎間板ヘルニアでは弾性が低下した椎間板の中にある髄核が繊維輪突き破って外に脱出してしまう状態を指します。

そして繊維輪の外へと脱出した髄核が脊髄を圧迫してしまうため痺れや痛みを誘発してしまうということです。

椎間板ヘルニアを分かりやすくするために、アンパンをイメージしていただけると良いかと思います。
椎体と椎体の間にはアンパンがありアンパンがクッションの役割を担っています。
椎間板ヘルニアでは、そのアンパンの中に存在するあんこがパンの外に飛び出してしまい神経に触れてしまうため痺れや痛みを発生させてしまうことになります。

腰椎椎間板ヘルニアによる痛みとは

腰椎椎間板ヘルニアではこのような状態が腰椎において発生する疾患となります。
多くの方が最初に気づく時は、腰の痛みや足の痺れ、力の入りにくさなどを自覚した時かと思われます。

また、腰椎椎間板ヘルニアでは腰を丸めることで、椎間板の前方がつぶれ後方が膨らみます。
すると脊髄をより圧迫してしまうため痛みが強くなります。

前かがみの姿勢をとる、椅子に座る、腰を捻るといった動作で痛みが強くなり、立っているときに痛みが軽快することも特徴として挙げられます。

このような症状が発症した方が総合病院や整形外科に受診し、医師による診断を受けることになるかと思われます。

椎間板ヘルニアの診断基準とは

診断ではMRI、X線撮影、CTスキャンなどが主流になってきます。
個人の整形外科等ではMRIを導入していない場合も多くありますが、その際は紹介状を作成し近隣の総合病院で撮影することも少なくないことが現状です。

医師による診断を受けたのち、腰椎椎間板ヘルニアの診断が出た場合、多くは保存療法となります。
腰椎椎間板ヘルニアの80%程が自然経過で軽快していくとされています。

椎間板ヘルニアの治療、改善策について

まずは病院、整形外科等で処方される腰椎コルセットを着用し椎間板への負担を減らしていき経過を見ていきます。

この時、痛みが強い場合や医師の判断によってブロック注射という鎮痛を目的とした治療が行われたりもします。
内服薬を処方される場合は消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、ビタミンB剤などが主流になっています。

保存療法の内容としてはこのような安静になりますが、ただ薬を飲んで寝ていれば問題なく治っていくというわけではありません。

ここで登場するのがリハビリになります。
リハビリでは体の状態や施設環境によって差はありますが電気治療などの物理療法と理学療法士による運動器リハビリテーションのどちらか、もしくはその両方を行います。

なぜ安静にすれば治るもので運動を行うかと思う方もいるかと思いますが、人間の体は日々変化しています。
スポーツ選手のように多くの運動を行えばそれに必要な筋力が運動の負荷に合わせて増えていきますし、その動作や生活に必要な関節の可動域等が得られていきます。

しかし逆に寝ているだけで体を動かさなければ筋肉量は減りますし、関節やそれらの動きを構成する筋肉は硬くなっていきます。

これではヘルニアが治っても体の状態は問題が残ってしまいます。このような状況にならないためにもリハビリを行い体の状態を悪化さず、問題を残さないことが大切になるということです。

腰椎椎間板ヘルニアによって感じる腰の痛みの原因は100%が椎間板によるものではないことが多いです。
ヘルニアがあることで発生している痛みが存在していれば、その痛みをかばいながら動いてしまい、運動量が減っていることで筋肉に問題が起きているといった二次的な痛みが発生していることも多々あります。

痛いから動かない。動かないからさらに痛くなる。といった悪循環になることも考えられます。

しかし、少しでも痛みをリハビリで改善することが出来れば、体も動きやすくなり、動かすことで筋力も維持できるため、悪循環を止め、より良いサイクルになることも期待できます。

ここまで読んで頂きましたが、注意していただきたいことはただ動けば良いということではありません。
専門の知識や技術をもった理学療法士の方のもとで、症状のレベルをチェックしながら、やってはいけないことに注意し、リハビリを行うことが大切になります。

これらの保存療法を行い2~3ヶ月ほど経過を見ていきますが、それでも改善しない場合には手術も考慮していきます。

手術も様々な方法があり日々進化していくため、医師によっても行う術式は変わってくるものです。その場合は医師と相談し納得したうえで治療を行うことが良いでしょう。

何気なく腰痛と思っていても椎間板ヘルニアの可能性もあります。
座っていると腰が痛いと感じた場合や足が痺れるといった症状がある場合に椎間板ヘルニアが疑われます。

自己判断をせず近隣の医師のもとへ受診することが大切になります。自分の痛みを軽視せず、しっかりと向き合い適切な処置をしていけると良いと思います。

椎間板ヘルニアにおける保存治療と手術治療とは

腰部椎間板ヘルニアと診断されたときの治療手段として、保存治療と手術治療に分かれます。
レントゲンやMRIなどの画像所見も重要な観点ですが、腰の痛みの程度や足の痺れの程度によって手術を選択することもあります。

では、腰部椎間板ヘルニアにおける保存治療と手術治療に関して説明します。

まず、ヘルニアにおける保存治療についてです。

腰部椎間板ヘルニアの診断には、腰部痛や足の痺れなどの自覚症状だけでは判断できません。
必ずレントゲンやMRIなどの画像所見を取り、椎間板の変性や脱出の程度を確認します。

椎間板が軽く変性した程度ならば、経過を見ていく中で症状が緩和されることがあります。これは、椎間板の組織が修復し、もとに戻ろうとすることがあるからです。
椎間板の中にある髄核と呼ばれるものが、後方に脱出し、神経を軽く圧迫しても同様です。経過を見ることで症状が緩和するのであれば、手術治療となることは少ないでしょう。

では保存治療となり、行える治療方法に関して説明していきます。

まずは、神経ブロックです。これは腰部の神経に対する局所麻酔やステロイド薬による注射を行うことによって、腰の痛みや痺れ症状を緩和してくれます。こちらの注射は看護師ではなく、医師が行うので安心です。

次に薬による治療です。抗ステロイド薬による消炎鎮痛薬や、全身の筋肉の緊張を和らげヘルニアの負担を軽減してくれる筋弛緩剤が中心です。また神経障害性疼痛に特化したリリカなどの治療薬も処方される場合があります。
ヘルニアによる周辺組織への炎症が続くと、痛みが続き、経過をみても症状が緩和されないことがあります。
薬に抵抗がある方も見えると思いますが、薬は必要な時期には頼ってもいいと考えています。
炎症を早く抑え、腰部の緊張を取り除くことが、ヘルニアの悪化を避けることにも繋がります。
長期間薬に頼りすぎないように、医師と方針を確認しながら薬での治療を進めていくことが大切です。
最後にリハビリによる治療です。医療機関でのリハビリ治療は理学療法士や作業療法士が医師の指示の下で治療を進めます。
リハビリでは腰のヘルニアの状態に注意しながら負担をかけないように配慮しながら行います。
まずなぜヘルニアになったのかなどの問診から、姿勢や動作の評価など詳しい状態確認を行います。
その上で個別にあった治療手段をリハビリ職員が選択しますので、安心して行うことができます。
医師とも密に連携を図っている環境での評価や治療ですので、患者様と医師、リハビリ職員が密に連絡を取りながら治療していくことができます。
主な治療内容としては、足りていない箇所の筋力訓練や、関節可動域の確保、正しい動作の確保などです。

続いて腰部椎間板ヘルニアの手術治療に関して説明します。

腰部椎間板ヘルニアにおいて、始めから手術治療となることは稀です。
腰や足にかけての強い痛みや痺れによって、日常生活や仕事に支障が出ている場合は手術治療も考慮されます。

また、レントゲンやMRIなどの画像所見から、重度のヘルニアで神経を過度に圧迫していると判断された場合には、手術が検討されます。
この判断基準は、整形外科医師によっても違いますし、何より患者様自身やご家族の意思が重要です。

腰部のヘルニアによって、尿や便が出にくいなどの症状が現れたときには手術療法の適応となります。

椎間板の変性や脱出が重度でも症状があまりない方もいますし、保存治療にて経過を見ることで症状が緩和されることも少なくありません。
レントゲンやMRIを定期的に取り、ヘルニアの程度に変化がないか確認していくことも大切です。
画像所見の変化、自覚症状の変化、日常生活での影響の程度、これらを医師と相談しながら、今後の方針を定めていくことが重要です。

では手術となった際にどんな手術になるのか説明します。

まず、変性や脱出した椎間板を切除する「椎間板後方切除術」です。
背中側からメスを入れ、腰の痛みや足の痺れに影響のある部分の椎間板を切除します。

続いて、「椎間固定術」です。この方法は椎間板の前後にある腰椎を固定することで、ヘルニアとなった椎間板が動くことを少なくしヘルニアによる症状を減少させるものです。

主にこの2種類が用いられていますが、医学は日進月歩であり、新たな選択肢があることもあります。
自身にあった手術方法を主治医と話し合い、適切な方法を選択していくことになります。

手術による成果は、必ずしも症状の緩和が約束されているものではありません。腰を含めた脊柱の手術は、痺れ症状が残ることも多いです。
手術後の成果についても医師としっかりと相談しておきましょう。

手術をしたあとは、経過に合わせてリハビリ治療をして、早期に自宅や仕事復帰できるように関節を動かすことや運動をします。

医師としっかりと相談しながら、今後の方針を決めていくことが大切です。
早期に仕事やスポーツ復帰したいと焦らずに、経過に合わせて運動を進めていくことで、ヘルニアの症状が落ち着いてくることもあります。
不良姿勢は腰のヘルニアに負担をかけて症状を悪化させることがあります。
普段の姿勢や動作で腰部のヘルニアに負担をかけないように注意しながら、生活していくようにしましょう。

椎間板ヘルニアに有効なウォーキングとは

腰痛や足の痺れの原因となる椎間板ヘルニアは、椎間板が後方や外側に変性することや、脱出することで、腰の神経を圧迫し、症状が現れます。
実は、椎間板が前方に脱出した際は、神経を圧迫することがないので、自覚症状として得られにくく、気づかないこともあります。

基本的にヘルニアによる腰の痛みや痺れ症状が起き始めた急性期の頃は、安静が必要です。椎間板の組織が損傷していますので、激しい運動や仕事は避けることが必要です。

しかし、安静にしてばかりいると、身体の関節は硬くなり、筋力も低下してしまいます。
そのため、日常生活程度は腰に負担をかけないように行っていくことが大切です。

また、ウォーキングなどの全身運動は、身体の関節を多く使い、筋力を保つのに適しています。また、全身を使うことで、腰への負担を分散させ、椎間板に対する負担も少ないのが特徴です。
では、腰部のヘルニアになった際にどういった点に気をつけてウォーキングを取り入れると良いか説明します。

👉腰痛改善のためにウォーキングを始めようと思っている方必見!安全にウォーキングを行うための方法を解説

椎間板ヘルニアになった際のウォーキングの注意点

まず、椎間板が後方に脱出しやすい姿勢として、腰を丸めた姿勢があります。
腰を丸めることで、腰の前側は圧迫されるため、椎間板のように柔らかい組織は後方に移動しやすくなります。
そのため、身体を丸めた状態でウォーキングなどの動作を行うと、椎間板に負担をかけて組織の修復が遅れます。
また、椎間板が後方に脱出しやすくなりますので、腰の神経を圧迫し、足の痺れや痛みが出やすくなりますので、ウォーキングを続けることが難しいでしょう。

ですから、腰を丸めてウォーキングをしない点に気をつけて、少しお尻を後方に引っ張るようなイメージでウォーキングをしてみましょう。

骨盤がやや前傾して、胸が起きている状態を作り、身体が上方に伸び上がるように大きくウォーキングをします。
手は前後に振っても構いません。手をふることで、手足の協調性が高まり、腰の安定性もましていきます。
過度に腰を捻らないように注意しましょう。
ウォーキング動作の注意点は以上です。

次に腰部のヘルニアに注意しながらウォーキングをする際に気をつけることです。
ウォーキングの着地の際に、足の痺れ症状が強く生じてしまうことがあります。
この状態では、正しいウォーキングができません。痛みや痺れをこらえながら運動することは辛いですし、身体をかばってしまうので止めておきましょう。

腰部椎間板ヘルニアの程度によっては、ウォーキング姿勢を気をつけてもしびれ症状が持続して運動できないことも多いです。
まずは、整形外科の医師と、しっかりとヘルニアの程度を確認することが大切です。医師もこの程度ならウォーキングは大丈夫など、適切に説明してくれます。

身体の筋力が低下していると、ウォーキングの疲労とともに姿勢が変化し、腰の痛みやヘルニアが出現することがあります。
ウォーキングをする際には、少しずつ運動時間と身体の疲労感を調整し、疲れた際には休息を取るようにしましょう。一気に運動を再開してしまうとヘルニアを悪化させる可能性があります。

ウォーキングは全身運動の一つですが、プールでの水中歩行の方が、浮力が生じ体重による負荷もかかりにくく、椎間板ヘルニアに対する負荷もかかりにくいです。
ウォーキングが辛い場合は、水中歩行も試してみると良いでしょう。

腰部椎間板ヘルニアにおけるランニングについて

腰椎椎間板ヘルニアにおけるランニングは、開始時期が重要です。

ランニングは着地時の衝撃が強く、腰に対する負荷もかかりやすいです。
ですから、まずはウォーキングから始めてみて、行けそうだと感じたら、ジョギング、ランニングと、少しずつ運動の負荷量を上げていくようにしましょう。

ウォーキングでも腰痛が出現したり、足に痺れが出現する場合は、プールでの水中歩行から初めてみるのもいいでしょう。体重が浮力によって緩和され、腰に対する負担も軽減します。

では、腰部のヘルニアにおけるランニング動作姿勢について説明します。

腰部椎間板ヘルニアに注意したランニング姿勢とは

腰痛を抱えている場合、骨盤を前傾するのが怖く感じることがあります。つい腰を丸めてランニングをしやすいのですが、腰椎椎間板ヘルニアに対してはとてもいい姿勢とは言えません。

まず骨盤を前傾姿勢にして、お腹を前に出すようなイメージでランニングしてみます。この状態ですと、腰椎は丸まることがないので、腰椎椎間板ヘルニアの方にとって負担は少なくなります。
この状態でも腰痛が出現するのであれば、ランニングはまだ適していない時期と言えます。
無理をして運動を続けるよりも、ウォーキング程度に変えて、運動負荷量を調整することが大切です。

腰を丸めた状態でのランニング動作時の着地は、腰部のヘルニアが、後方に移動しやすく、ヘルニアを悪化させる恐れがあるので、避ける必要があります。

腰を丸めた姿勢でランニングする方の特徴として、大腿部の後ろにあるハムストリングスという筋肉が硬い方が多いです。
ハムストリングスが硬いと、ランニング時に、骨盤を後傾する方向に引っ張りやすく、腰を丸めた姿勢となりやすいです。
ランニングの前後で、全身のストレッチに加えてハムストリングスを伸ばすことが重要です。

もう一点、注意したいのが、ランニング動作が身体に対して足が先行してしまうことです。
重心が後方に残った状態でランニングをすると、骨盤が後傾しやすいです。これは、足が先行することで、ハムストリングスが伸張されることで起こります。

ランニングをする際には、骨盤がやや前傾を保って、着地足に体幹が上に乗るようなイメージで着いていくと良いでしょう。
また、痛める前のランニングと現在のランニング動作が大きく変化していないか、監督やよく一緒に走る方がいれば、見てもらうといいです。
意外と自身が思っているよりも、腰をかばうようなランニングになっていることがあります。

早期にランニングしたいと考えている方ほど、腰部のヘルニアを安易に扱ってしまう傾向にあります。
必ずヘルニアの症状が緩和する時期や、組織が修復する2週間から3週間程度は安静期間を設けることも重要です。

腰部椎間板ヘルニア時のスクワット動作について

腰痛や足の痺れを伴う腰部椎間板ヘルニアでは、椎間板が後方や外方に変性することや、脱出することで症状が現れています。
ですから、動作をするときには、椎間板に負担をかけないような動き方を意識することが大切です。

スクワット動作ですが、足の筋力を保ちながら、腹部や腰部の体幹も少なからず働きますので、腰部のヘルニアの方にもいい運動になります。

しかし、正しいスクワット動作を知っておかないと、腰部の椎間板に負担をかけて、足の痺れ症状が増悪することや、腰を痛めてしまう原因になります。

では正しいスクワット動作について説明します。

知っておくべきスクワット動作の基本姿勢

まず、立位の状態から肩幅程度に足を広げます。つま先の向きは外向きではなく、正面に向くようにしましょう。

次に、後方にお尻を引くようにして骨盤を前傾していきます。お尻を後方に引いていくと自然と膝も曲がってきますので、そのまま膝を曲げて下に下がっていきます。

この際に、膝の関節が大きく前後に動いていないか確認します。膝が前方に出ていってしまう時は、お尻がうまく後方に引けてないからです。
膝を曲げていきますが、膝関節はできる限り一定の位置で動くように意識しましょう。

次に目線ですが、やや前方を見つめるようにしましょう。
足元を見すぎてしまうと、重たい頭部が前方に倒れてしまうことで、腰を丸めやすくなってしまいます。
やや前方を見つめることで、首の後方の筋肉も働きますので、体幹をまっすぐ保ってスクワット動作を行うことができます。
疲れてきたときには、目線が足元に向かいがちですので、注意が必要です。

膝を曲げた姿勢をとったら、もう一点確認してほしいことがあります。
膝下の下腿と骨盤を含めた体幹が平行になっているかどうかです。
骨盤が前傾しているのに対し、腰が反りすぎると椎間板に負担をかけてしまう恐れがあります。
骨盤の前傾に対し、体幹はまっすぐ保つのを意識してスクワットを行うようにしましょう。

膝を曲げた姿勢から戻る際は、ゆっくり戻るようにして、足で早く戻ってしまうと腰に負担がかかります。最初の立位の姿勢に丁寧に戻ることを意識しましょう。

ゆっくり行うと、10回のスクワットでも疲労を感じる方も多いと思います。
疲労が蓄積したままスクワットを行うと、正しいスクワット動作が行えず、椎間板に負担をかけてしまう原因になります。
無理をせず、疲労を感じたら適度に休息を取るようにしましょう。

次に腰部のヘルニアにおけるスクワット動作で行ってはいけないことを説明します。

腰部椎間板ヘルニア時のスクワットの注意点

立位の状態から膝だけを曲げるようなスクワット動作は絶対に避けましょう。
スクワットというと、どうしても膝の曲げ伸ばしのイメージがありますが、そうではありません。
立位から膝だけを曲げてしまうと、必ず骨盤は後継し、腰を丸めてしまいます。

このスクワット動作では、椎間板が後方に脱出しやすく、腰の痛みや足の痺れ症状が悪化する恐れがあります。
必ず、お尻を引くようにしゃがみ始めて、骨盤を前傾することが大切です。
この点だけは必ず守ってスクワット動作を行いましょう。

身体のことを考えて行い始めたスクワット動作で、更に腰を悪化させることがないように、正しいスクワット動作で無理なく行えると良いですね。

腰部椎間板ヘルニアの座ると痛い特徴

腰椎椎間板ヘルニアの診断を受けた場合、腰の痛みや足の痺れを伴うことがあります。

立っている姿勢や座っている姿勢で、腰痛や足の痺れが出現する方もいますし、歩行や階段昇降時などの動作で上記のような症状が出現する方もいます。

ヘルニア時の座る姿勢によって、腰痛や足の痺れが出現する原因や対策について説明します。

腰椎椎間板ヘルニアにおける座ると症状が出現する原因と対策

まず、簡単に腰椎椎間板ヘルニアの病態を説明します。
腰椎は5つ積み木のように重なって存在していますが、その間には椎間板と呼ばれるクッションがあります。
このクッションである椎間板が変性することや、髄核と呼ばれる椎間板内の組織が脱出することで、腰の神経を圧迫し、腰痛や足の痺れが出現します。

椎間板ヘルニアでも変性の仕方や、髄核の脱出の仕方によっては、腰痛にならないこともありますし、足の痺れ症状も起きないこともあります。
多くは、背中の方向に椎間板が脱出し、神経の通り道である脊柱管を狭めてしまうことで症状が出現します。

ですから、椎間板が後方にある神経を圧迫する方向に極力移動しないような座り方を心がけることが重要です。
基本的に腰を丸めるような姿勢を取ることで、椎間板は後方に移動し、腰の神経を圧迫しやすくなりますので、このような姿勢にならないように注意しましょう。

椅子に腰掛けて座る時は、深く腰掛けて背筋を伸ばして座ることが大切です。
椅子の高さが低いと、膝や股関節を深く曲げる必要があり、骨盤が後傾しやすくなります。骨盤が後傾すると、腰は丸まりやすくなりますので、40cm程度の高さは保つようにしましょう。

反対に椅子の高さが高い場合、足底が浮いてしまうことがあります。足の裏が床面から離れて座ることで、お尻と大腿の裏側だけで身体を支えることになるため、腰部の筋肉は過度に働きます。
椎間板ヘルニアの場合には、正しく座ることが大切ですが、過剰な腰部の筋肉の収縮は必要ありません。
足の裏が付く椅子の高さで座るようにしましょう。

腰椎椎間板ヘルニアの座り姿勢として、注意しなくてはならないのは床に座っているときです。
特に座椅子で足を投げ出して座る姿勢や、あぐら座位姿勢には注意が必要です。

足を投げ出して座る姿勢は、大腿の裏側にあるハムストリングスを引っ張ります。ハムストリングスを伸張すると、骨盤が後傾し腰を丸める姿勢となります。
身体を起こして座ろうと思っても、筋肉が硬いと行えない方もいます。
ですから、椎間板ヘルニアで座椅子に座ることで、腰痛や足の痺れを強く感じてしまう原因となるので注意ましょう。

また、あぐら座位は股関節を外側に開く可動域が必要です。股関節が硬い人があぐら座位を取ると、骨盤が後傾しやすく、腰が丸まります。
あぐら座位で、骨盤を垂直に立てるように座るのが苦痛の場合は、無理に床に座る必要はないでしょう。

どうしても床で座る生活が日常生活で必要な場合は、正座が腰には良いでしょう。
正座の姿勢は、骨盤を立てて座りやすいため、背筋を伸ばして良好な姿勢を保ちやすいです。

同じ姿勢が長時間続くことは、腰部の筋肉を緊張させて、椎間板ヘルニアを悪化させ腰痛の要因になります。
30分に一度は姿勢を変えて、軽めのストレッチや歩行を行って、緊張状態をリセットすることを意識するといいでしょう。

腰部椎間板ヘルニアになった際には、車の運転姿勢にも注意

腰部椎間板ヘルニアの方は、運転中に腰痛が出現することや、足の痺れが出現することが少なくありません。

腰部椎間板ヘルニアは、腰を丸めた姿勢や骨盤が後継することで、ヘルニアが後方に編成することや、脱出することで神経を圧迫します。

運転が長時間になるほど、重力がかかっていますので、腰は座面に押し付けられ、腰への負担は強く生じています。

普段から乗り慣れている方ほど、運転時の姿勢が悪く、ヘルニアの腰を悪化させるような状態で運転してしまっていることが多いです。

運転時の悪い姿勢と良い姿勢に関して説明します。

腰部椎間板ヘルニア時の良い運転姿勢と悪い運転姿勢

まず、シートに浅く座った状態で、背もたれに持たれていないでしょうか。骨盤とバックレストの間に空間が生じると、骨盤が後傾してしまいます。
骨盤が後傾した状態で、背もたれであるバックレストに持たれると、腰は丸まった姿勢と取り、ヘルニアが悪化する可能性があります。

また、シートの位置が低すぎることや、バックレストが後方に倒れすぎていることによって、視界が悪くなります。
この状態では、前方を覗き込むように身体全体に力が入りやすく、ヘルニア時の腰に負担がかかりやすくなります。

運転席の位置が遠すぎることで、アクセルやブレーキを踏む際に、足を伸ばさなくてはならないのは正しく座れていません。この状態ですと、ハンドルと身体との距離も遠くなり、腕を突っ張るような状態になり、過剰に力が必要です。
足を投げ出したような運転席の位置では、太ももの後方にあるハムストリングスを伸張し、骨盤が後継し腰を丸めやすくなり負担が生じます。

では、ヘルニアの腰に優しい正しい運転姿勢について説明します。

まず座面の深くに座り、バックレストとの間に空間を作らないようにしましょう。
バックレストと骨盤の間に空間を作らないことで、骨盤をバックレストと平行に、座面に対して垂直に立てることができます。

バックレストに持たれてリラックスできる姿勢を取ることが大切ですが、この際に腰は丸めないように、背筋を伸ばしましょう。
運転時に腰が丸まった姿勢がヘルニアの方には非常に良くないことを意識しましょう。

運転席の位置は、バックレストに持たれた状態でハンドルを持ち、軽く肘が曲がる姿勢です。
この位置であれば、膝は曲がった状態で、アクセルとブレーキを踏むことができるでしょう。
膝が曲がった状態で、アクセルやブレーキ操作をすることで、ハムストリングスを伸張することがなくなり、骨盤が後傾することが少なくできます。

また、シートの高さを十分な視野が確保できるように調整することで、リラックスした姿勢で運転することができます。
過度に緊張するような姿勢は、腰周りの筋肉を緊張させ、ヘルニアを悪化させることがあるので、注意が必要です、

正しい運転姿勢を理解して頂きましたが、いかがでしたでしょうか。
正しい運転姿勢を保持していても、長時間の運転となり疲労が生じると、自然と楽なように悪い運転姿勢に変わってしまうことがあります。
1時間に1度は休息を取り、外に出て背伸びをすることや軽く歩行をして姿勢を変えることが大切です。
長時間の運転は、目も疲れますし、身体もこわばり筋肉も緊張状態になりやすいことを知っておきましょう。

腰部椎間板ヘルニアは寝れないほど痛みや痺れを伴うことがある

腰椎椎間板ヘルニアによって、強い腰痛や足の痺れが出現することで夜寝ることができず辛い思いをしている方も多いです。

特に重たい荷物を持ったときや、過度のスポーツなどで急性に発生した腰椎椎間板ヘルニアの場合は、強い腰痛や足の痺れが出現しやすい傾向にあります。

急性のヘルニアの場合は、腰部に炎症症状が起きている場合もありますし、椎間板の組織が損傷することで腰の神経を圧迫し、痛みや痺れを感じやすいです。

痛みを伴うことで、腰部の筋肉を中心に身体の筋肉も過緊張となりやすく、腰部に対する負担も大きくなります。
寝ているときに、過度に力が入りすぎていると、姿勢を変えにくく、寝れない原因となります。

腰椎椎間板ヘルニアは、腰のクッションである椎間板が変性することや髄核と呼ばれる中身が脱出することによって、腰の痛みや足の痺れを引き起こします。
腰のクッションである椎間板が破綻することで、腰部に対する緩衝材が減少するわけですから、腰の負担も大きくなります。

では、腰椎椎間板ヘルニアによって寝れない場合、どうすれば良いのか説明します。

ヘルニアによって寝れない場合の対処法とは

まず、腰部椎間板ヘルニアで寝れない場合、薬物療法が用いられます。
炎症が起きている期間には消炎鎮痛薬を用いますし、腰部の筋緊張が高い場合には、筋弛緩剤にて緊張をとる薬が用いられます。

特に、急性のヘルニアの場合には、強い腰部痛や足の痺れを伴うことがありますので、こういった消炎鎮痛薬や筋弛緩剤は必要な時期があります。

夜、腰痛が強く出現したり、足の痺れが強く寝れないときには、薬によるコントロールも必要です。

腰痛の程度や足の痺れの経過を見て、医師と相談しながら少しずつ薬から離れていくことが大切です。
痛みが強かった時期を乗り越えても、腰に対する不安や怖さから、薬に頼りすぎてしまう方も少なくありません。
長期間の薬の使用によって、効き目が薄くなってしまうことや、内臓に負担をかけてしまうこともあるので、注意が必要です。

また、ヘルニアによって炎症が強い時期には、コルセットなどを巻いて、腰に負担をかけないようにすることも重要です。
炎症が起きているときには、必ず安静期間が必要です。コルセットを巻くことによって、腰の筋肉の過緊張が緩和され、腰痛が減少することもあります。
急性のヘルニアの場合や、夜寝ている時の姿勢によって腰痛や痺れが強いときには、コルセットを巻いて寝ることも1つの方法でしょう。
腰が圧迫されて余計に寝にくい場合もありますので、1つの手段として試してみてください。

1ヶ月薬によるコントロールや安静にしていても、ヘルニアによって日常生活への支障や、寝れない状態が続く場合には、医師と経過について相談しましょう。

ヘルニアの程度や日常生活への影響が強い場合には、経過を見る保存療法ではなく、手術が必要と判断されることもあります。

手術はあくまで医師が必要に応じて提案する一手段です。ヘルニアによってどの程度日常生活や寝れない状況、仕事、スポーツなどに影響が出ているかは本人が一番理解しています。
医師と相談しながら、本当に手術をすべきなのか判断し、ご家族ともよく話し合ってから決めていくようにしましょう。

参考:日本整形外科学会

著者情報

金岡 恒治(かねおか・こうじ)MD,PhD
金岡 恒治(かねおか・こうじ)MD,PhD

早稲田大学スポーツ科学学術院教授

日本整形外科学会専門医・脊椎脊髄病医

日本スポーツ協会認定スポーツドクター

日本水泳連盟理事・医事委員長 ほか

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