突然、お腹にズキズキとする激痛が走る「急性虫垂炎(盲腸)」。年齢、性別を問わず幅広い年代でみられる身近な病気です。
急にお腹が痛くなると焦ってしまいますよね。
事前に盲腸について知っていると、突然お腹が痛くなっても落ち着いて病院に受診できることでしょう。
また、内臓疾患から腰痛が起こることもあります。腰痛と盲腸、関係のないように感じますが、実は盲腸のかくれ症状のひとつとして右側の腰痛があります。
今回は、急性虫垂炎(盲腸)の症状、原因、治療、予防法について詳しく解説していきます。
腰痛と盲腸の関係についても話していきますので、“もしかして自分の腰痛って内臓疾患から来ているかも!”と心当たりがある方はぜひ読んでみてください。
目次
急性虫垂炎(盲腸)とは
一般的に盲腸と呼ばれている急性虫垂炎は、大腸の入り口にある盲腸に垂れ下がっている虫垂(虫垂突起)が、糞石(ふんせき)などが原因で閉塞(へいそく)し、炎症を起こした病気です。
虫垂は右下腹部にあるため、炎症を起こして神経が刺激されると、みぞおちやへそ周辺の痛みや吐き気などの前兆症状が現れます。
お腹に急な激しい痛みをもたらす病気を急性腹症といい、急性虫垂炎は急性腹症の中で最も多い病気です。
急性虫垂炎(盲腸)の症状
盲腸のサインかも!盲腸の前兆
・みぞおちが痛い、おへそ周りがズキズキする
・発熱
・食欲低下
・吐き気、嘔吐
・下痢
・右側の腰痛
すぐに病院を受診すべき注意が必要な症状
・みぞおちあたりの痛みが右下腹部に移動した
・腹部に我慢できない激痛がある
・何時間も経過したのに腹痛が治まらない
・血圧が急激に低下して意識障害がある
幼児や高齢者の場合、症状に気づきにくい
症状を正確に訴えられない場合、病気の発見が遅れ、治療が遅れるケースがあります。
急性虫垂炎(盲腸)は発見が遅れることで容体が悪化するケースがあるため、ご家族の方の注意が必要です。
例えば、食欲の低下や吐き気・嘔吐がみられている場合や、痛みのため腹筋の力が抜けず背中を丸めた姿勢になっている場合など、前兆症状がある場合は、念のため病院を受診することをおすすめします。
右下腹部につるような痛みが現れることも
虫垂炎は右下腹部に釣るような痛みが現れることもあります。我慢できる痛みだからと言って、放置しないように注意してください。
他にも、子宮内膜症である可能性も考えられます。子宮内膜症は20代~30代の女性の多く発症し、以下のような症状が現れます。
・腹痛
・排便通
・性交痛
・月経痛が重い
・どんどん月経痛が重くなる
当てはまることが多い場合は、婦人科で診てもらうことをおすすめします。
盲腸と腰痛の関係
腹痛を伴うのが急性虫垂炎(盲腸)ですが、虫垂の先端が背中側にくっついている場合は、歩いた際に腰痛を伴うことがあります。
腹痛と一緒に右の腰だけおもだるい、内臓を刺激されたような鈍痛がする場合は、盲腸が関連している腰痛が疑われます。場所が違うからと言って、盲腸ではないと決めてしまわないように注意してください。
急性虫垂炎(盲腸)の原因
急性虫垂炎は虫垂に急な炎症が起こることによって起こる病気です。
はっきりとした原因はわかっていませんが、虫垂の入り口が「消化管の内容物が固まってできた糞石(ふんせき)」や「リンパの組織」、「腫瘍などの細胞」などの異物が原因でふさがることで、細菌が繁殖して炎症が起こるとされています。
膿がたまり、炎症で腫れ上がることで痛みが生じるといわれています。
日頃の生活習慣が盲腸を誘発する原因に
・体力や免疫力の低下
・食べ過ぎ・飲みすぎ(暴飲暴食)
・不規則な生活やストレス過多
・腸内環境の悪化や便秘
・過労
・胃腸炎
・食物繊維の摂取不足
盲腸になりやすい人
急性虫垂炎(盲腸)は幅広い年代で発症する病気です。
特に10代前半から20代くらいまでの比較的若い世代で多くみられますが、年齢や性別に関係なくどのような人にも起こりえる病気です。
病院を受診するときの目安は?何科に受診したらいいの?
病院を受診するときの目安
自然に治ることがほぼないといわれている急性虫垂炎(盲腸)。
急性虫垂炎(盲腸)発症後、時間が経過すると重症化するケースが多いです。
発見が遅れて急性虫垂炎(盲腸)が進行すると、虫垂にたまった膿が破裂し、腹腔内に流れ出て、腹膜炎などの深刻な合併症を起こす可能性があります。
発症から24時間前後で命にかかわるような深刻な症状になる可能性もあるため、いつもと違う様子なら腹痛と思い込んで痛みを我慢せずにすぐに病院を受診することをおすすめします。
以下の症状がみられている場合は、早めに病院に行くようにしてください。
・発熱と腹痛がある
・腹痛と吐き気、嘔吐が続く
・食事がとれないほどの痛みがある
・みぞおちや右下腹部に鈍痛が続く
・歩くと右下腹部に痛みが響く
・みぞおちの痛みが右下腹部に移動した
受診するのは何科?
急性虫垂炎(盲腸)の症状がある場合は、消化器内科・消化器外科の受診をおすすめします。
▶症状から探せる、病気がわかる、ドクターが見つかる|ドクターズ・ファイル
夜間や早朝など病院が空いていない場合は、夜間救急を利用するのをおすすめします。
お住いの地域によっては、夜間救急や救急車を利用する前に相談できる窓口があります。自分の住んでいる地域は、救急電話相談を行っている地域か事前に確認しておきましょう。
▶サービス提供機関の情報(救急・夜間診療情報)
▶救急安心センター事業(#7119)をもっと詳しく|総務省消防庁
急性虫垂炎(盲腸)の検査・治療法
検査方法
急性虫垂炎を疑っている場合、病院では主に以下の検査が行われます。
・お腹の触診
痛みの場所や筋肉の状態を触って確認します。
・血液検査
血中の炎症反応を示す値(CRP値)を確認します。急性虫垂炎では、炎症による値が上昇します。
・腹部CT検査
お腹を輪切りに確認できる検査です。お腹の中の状態を調べます。
・腹部エコー(超音波検査)
超音波で腹部の状態を確認する検査です。虫垂の状態を確認するのに用いられます。
治療方法
これらの検査により、痛みの種類や程度、炎症の度合いを把握し、他疾患との鑑別をした上で、薬物治療(保存治療)か手術療法(外科的治療)か治療の方向性が判断されます。
① 薬物療法
早期発見し炎症が軽い場合、抗生剤を用いた薬物療法で治療を行います。しかし根本的な治療にはならず、再発の可能性もある治療です。そのため、経過観察として行われ定期的な診察が必要です。
② 手術療法
手術療法には、状況や進行度に応じて3つの手術方法があります。
手術を行えば、炎症を起こしている虫垂を元から切除するため、急性虫垂炎(盲腸)の再発するリスクがありません。一方で最新の研究では、虫垂切除後、3年半の間に大腸がんのリスクが2.1倍になるという研究も出ています。
急性虫垂炎(盲腸)は重症化すると命にかかわる深刻な症状になる可能性もありますので、医師と相談して最適な治療を決定しましょう。
~虫垂切除術~
最も一般的な手術療法が「虫垂切除術」です。4㎝程度お腹を切開し、虫垂だけを切り取ります。非常に手術の傷が小さくて済むため、術後の回復も早いです。
~腹腔鏡下虫垂切除術~
こちらの方法は、腹腔鏡を用い切除する方法です。1㎝程度の穴をお腹に数ヵ所開けて行うため、さらに手術による傷が少なく済みます。
~開腹による腹膜炎手術~
発見が遅れて進行すると、虫垂以外に炎症が広がり腹膜炎を併発することも。このような場合は虫垂を切除するだけでなく、お腹の中を洗いきれいにする手術が行われます。それが、腹膜炎手術です。
急性虫垂炎(盲腸)を予防するためには
ある実験では、食物繊維を多くとると急性虫垂炎を起こしにくいというデータがあります。
糞石(ふんせき)のような消化物の固まりは、便秘でできやすいので、便秘を予防することが大切だといわれています。
日頃から海藻類や野菜など食物繊維が豊富な食材を取り入れるようにしてみましょう。
脂質の取りすぎにも注意し、バランスのよい食事を心がけて、腸内環境を整えましょう。
免疫力の低下は急性虫垂炎(盲腸)の原因のひとつであるため、睡眠不足や疲れをためないことも大切です。ストレスは腸内環境の悪化や免疫力の低下につながるため、ストレスをため込まない生活を心がけよう。
参考にしたサイト