目次
頸椎ヘルニアとは
首の骨は、専門用語で頸椎と呼ばれています。この頸椎は全部で7個の骨で構成されています。
頸椎と頸椎の間には、椎間板と呼ばれるやわらかいゲル状の組織(髄核)があります。
椎間板が、骨と骨との衝撃をやわらげるクッションの役割を担っています。
椎間板は頸椎にとって、衝撃を緩衝するという点で非常に大切です。
しかし、椎間板はゲル状であるため、周囲に漏れ出ることがあります。
頸椎の近くには脊髄と呼ばれる非常に大きな神経が通っており、漏れ出た椎間板が神経を圧迫することで、首の痛みや肩の痛みが出現します。
進行すると手足の痺れや、手足が動かなくなる恐ろしい事態に陥ることがあります。
さらに排尿障害や排便障害といった症状が出現し、日常生活に支障をきたします。
ヘルニアが発症しやすい場所は、第5頸椎と第6頸椎の間、第6頸椎と第7頸椎の間、第4頸椎と第5頸椎の間となっています。
(参考:頚椎椎間板ヘルニア|日本整形外科学会)
頸椎ヘルニアの症状
頸椎ヘルニアの症状は、頸椎症状、神経根症状、脊髄症状と呼ばれる3つの症状があります。
頸椎症状
後頭部や首から肩甲骨・背中の凝りや不快感、痛み等が出現します。
また、痛みやしびれから首を動かすことが難しくなることもあります。
首を後ろに反ることで症状が強くなり、安静にすることで軽快します。
せきやくしゃみをすることで、痛みが出現することも少なくないようです。
神経根症状
脊髄から枝分かれした神経が髄核によって圧迫されることで起こる症状です。
右腕や右手、左腕や左手のどちらか片方に痛みやしびれ、感覚が分からなくなるといった症状が出現します。
これらの症状は頸椎症状と同様に首を後ろに反ることで増悪する特徴があります。
脊髄症状
脊髄そのものが髄核によって圧迫されることで起こる症状です。
触っている物の感覚が分からなくなったり、手のひら全体にしびれが出ることが多いです。
さらに、体や足にまで及ぶこともあります。
具体的には字を書くことができない、着替えをすることができない、食事をする際の箸を操作することができないといった症状が出現します。
また、足の症状として力が入らず階段を降りる時に手すりが必要、走れない、ジャンプができないといった症状が特徴的です。
さらに、尿や便が出る感覚がわからなくなり、失敗してしまうことが多くなる症状も出現することがあります。
頸椎ヘルニアの原因
詳細な原因は不明ですが、一般的に加齢による変化に基づき起こるものとされています。
30~50歳代の男性に多いとされており、交通事故などの何らかの外力が加わることで発症することもあります。
また、遺伝的要因、喫煙等も原因の1つとされています。
さらに加齢が進むと髄核が枯れることで、自然と症状が軽快することもあるといわれています。
頸椎ヘルニアの診断
頸椎ヘルニアの診断では、症状を診ます。
首を後ろに反った時に首の痛みが出たり、手に力が入らなかったり、腕や手の感覚が鈍くなっている等の症状を認める場合には、画像診断に移ります。
画像診断では、首のレントゲンやMRIが用いられます。
首の神経が圧迫されている場所と腕や手の症状が出現する場所は相関があるため、一致していれば頸椎ヘルニアと診断されます。
また、ヘルニアは症状が出現しないことも少なくないため、かならず神経の圧迫されている場所と症状が出現している場所の同定が必要です。
頸椎ヘルニアの治療
頸椎椎間板ヘルニアは、時間経過に伴い自然退縮することもあるため、まず安静や薬物療法、物理療法などの保存療法が行われます。
排尿や排便などの感覚が分からない場合や、足に力が入らないといった脊髄症状が出現している場合には、早急に手術が検討されます。
(参考:頚椎椎間板ヘルニア|日本脊髄外科学会)
保存療法
頸部の安静を保つためには、首の骨が後ろに反ることを避けるために、ポリエチレン製のなどの頸椎カラーと呼ばれる首を固定する装具を着用します。また、マッサージやストレッチなどの理学療法や、電気治療などの物理療法も処方されます。
薬物療法
鎮痛剤や筋弛緩薬を用いることにより、痛みの軽減を図る方法です。
物理療法
主に首の牽引を行います。
首を軽い力で上方に牽引することにより、頸椎と頸椎の間隔が広がることで、痛みやしびれを軽減させる方法です。
また、痛みが出ている場所に電気を当てて痛みを軽減させる方法もあります。
神経根ブロックなどのブロック注射
髄核が飛び出て神経を圧迫している場所に、直接局所麻酔剤やステロイド剤を注入します。
また、痛みが出ている場所に麻酔を注入することも可能です。
これにより、痛みが出ている場所の痛みを軽減させることができます。
痛みにより力が入ることで血行が悪くなったり、筋肉が痛くなることがあります。
痛みが軽減することにより、二次的な痛みの予防にもなります。
麻酔の効果は通常1週間程度持続します。
麻酔が効いている間に飛び出た髄核が元の位置に戻ることもあり、有効な手段であると思われます。
手術療法
レーザー治療
レーザー治療は飛び出た髄核を元の位置に戻す手術ではなく、飛び出た髄核にレーザーを照射して枯らしてしまう方法です。
上述した保存療法で効果が十分に得られない時に行う方法の1つとなっています。
この治療は別名PLDD(Percutaneous Laser Disc Decompression)と呼ばれています。
以前は頸椎ヘルニアの治療には約1カ月程度のリハビリテーション期間が必要でしたが、この治療では局所麻酔で実施でき、1-2時間と手軽に実施できるのがメリットです。
しかし、全ての頸椎ヘルニアに実施できるわけではなく、重度の頸椎ヘルニアには実施できないというデメリットもあります。
先進医療となっているため、保険適応外であることもデメリットとしてあげられます。
病院によっても異なりますが、1部位につき約20万円程度の費用がかかることを覚えておきましょう。
前方固定術
髄核が飛び出て神経を圧迫している場所の椎間板を取り除くことや、骨を削ることにより除圧を図る手術です。
もちろん椎間板が無くなれば、頸椎と頸椎は骨が擦れるため痛みが出現します。
そのため、椎間板の代わりに人工のクッションを入れ込み、頸椎と頸椎の衝突を緩和します。
この手術は、脊髄症状が出現するような重症の頸椎ヘルニアに有効です。
前方固定術は保険適応となるため、手術費用が安く抑えられるのはメリットと言えるでしょう。
反対に創口が比較的大きく見た目にも分かることから、美容的観点からはデメリットと言えるでしょう。
椎間孔拡大術
この手術は内視鏡下で行われるため、上述した前方固定術よりも手術による創が小さく、創はおよそ1cm程度であるため目立ちにくいです。
内視鏡を挿入して椎間孔と呼ばれる神経が通る道を広げ、神経を圧迫している髄核を取り除く手術です。
この治療は主に神経根症状が出現している場合に適した手術です。
重症度でいうと中等度~重度の頸椎ヘルニアに適していると言えるでしょう。
この手術は、首の前面または後面から行います。
首の前方から行うことは稀であり、ほとんどの場合は首の後面から行います。
脊髄症状が出現している場合は、対象外となるため注意しておきましょう。
治療成績も良く、創も小さく済むため、非常にメリットの多い治療となります。
しかし、内視鏡による椎間孔拡大術は保険適応外となるため、病院によっても異なりますが費用が約100万円程度掛かることがデメリットと言えるでしょう。
まとめ
頸椎ヘルニアは首の痛みだけではなく、様々な症状が出現します。
症状が進行してしまってからでは、治療の幅が狭くなってしまいます。
できるだけ手術は行わずに治したいと思う方が多いのではないでしょうか。
そのためには、早期に診断を受けることが重要です。
首の痛みや手に力が入らない、しびれる等の症状がある場合には、早めに医療機関を受診して保存療法から始めることをお勧めします。
症状が進行している場合には、頸椎ヘルニアの状態に合った治療をお医者さんと一緒に考えましょう。
腰痛に関して知識が少ない場合でも、正しい運動療法などのアプローチができるようになったり、問診・診断が行えたり、医療現場で活躍している先生に相談できるようになる取り組みです。
具体的には、先生方が医療現場において普段行っている問診・診断の方法を、オンライン経由でチャット形式で簡単に答えるだけで自動で問診、病態別リスク評価を行い、個人に合わせた指導や運動を提供させて頂きます。
もしも今、腰痛や身体の不調に悩まされている場合には、一度お試しすることをおすすめします。