「椎間板ヘルニアの症状。痛みが出る部位・特徴は?」
椎間板ヘルニアの痛みにはどんな特徴があるのか、痛みはどれぐらい続くのか、気になりますよね。この記事では椎間板ヘルニアで痛みが出る場所や痛みが続く期間、ぶり返すことはあるのかなど、椎間板ヘルニアの「痛み」について、気になることをまとめました。
目次
椎間板ヘルニアで痛みが出る場所
椎間板ヘルニアを発症すると、まず腰に痛みが出ます。症状が進行するにつれて下肢に痛みが広がり、おしりやふともも、ふくらはぎや足先に痛みやしびれを感じるようになります。
下肢の痛みやしびれは、多くの場合、右足か左足のどちらかにだけあらわれます。椎間板ヘルニアは、椎間板からはみだした髄核が神経を圧迫することで起こります。このとき髄核が左右どちらかの神経だけを圧迫することが多いため、片側の足だけに症状が出るのです。
さらに症状が進むと、神経麻痺や筋力低下が起こり、足に力が入りにくくなります。日常生活ではつまずきやすくなる、足先を細かく動かせず靴がはきにくい、足指をふんばれないためスリッパが脱げやすい、といったことが起こります。
腰の痛みだけでなく、こうした下肢の症状を感じたら、椎間板ヘルニアの可能性があるといえます。
椎間板ヘルニアの痛みを例えると
椎間板ヘルニアで下肢に出る痛みは、「ピリピリ」「チクチク」といった言葉でよく例えられます。
「ふとももの皮膚がピリピリ痛い」
「ふくらはぎが針で刺されたように、チクチク痛む」
下肢に出る痛みは、髄核が神経を圧迫することによって起こる神経性の痛みです。このため、けがをしたときの痛みと比べ、とらえどころのない痛みを感じます。チクチクと針に刺されるような痛みが続いたり、しびれるように痛んだりするなど、カンにさわるような痛みです。程度によっては、「ビリビリ」「ジンジン」などとも言い表されます。
急性期の椎間板ヘルニアでは、ある日突然、急激な腰の痛みが出ることもあります。ギックリ腰のような強い痛みで、起き上がれなくなったり、まっすぐに立ったりすることが難しくなります。時間がたつにつれて下肢のしびれが出てくるかどうかが、ギックリ腰と椎間板ヘルニアを区別するひとつの目安といえるでしょう。
ちなみに椎間板ヘルニアが起こる仕組みは、よく、大福やおまんじゅうに例えられます。あんこが入ったおまんじゅうを強く押すと、皮が破れて中身のあんこが飛び出しますよね。この皮にあたるのが椎間板の「線維輪」、あんこが「髄核」と呼ばれる部分です。ふだんは線維輪に包まれている髄核が、何らかのきっかけで外へ飛び出して起こるのが椎間板ヘルニアです。
椎間板ヘルニアの痛みはいつまで続く?
椎間板ヘルニアの痛みが続く期間には個人差があり、1週間を待たずにおさまり始める場合もあれば、1ヵ月以上続く場合もあります。しかし多くの場合には、2~3週間程度が目安であると言われています。これは、椎間板ヘルニアが自然治癒する見込みがあるかどうか、見きわめる目安でもあります。
椎間板から飛び出した髄核は、時間がたてば自然に吸収されることが多く、椎間板ヘルニアの治療は、痛みをおさえて安静にすることが中心です。しかし3週間が経過しても痛みがおさまらない場合には、手術で飛び出した髄核を取り除くこととなります。
排泄障害など重い神経症状があらわれた場合には、3週間が過ぎなくても緊急手術が必要です。痛みとともにしびれなどの神経症状が出ていないか、特に尿や便が出づらい・逆に尿漏れするといったことがないか、チェックを怠らないようにしてください。
また痛みがおさまった後も、神経が圧迫された影響がすぐに消えるわけではありません。足先をさわっても感触がはっきりしない、筋力が低下して足に力が入らない、といった症状は、数ヵ月にわたって続くことがあります。
特に神経が麻痺してしまうと、元に戻るのに時間がかかります。安静にしていれば治るからと、我慢をし過ぎるのは禁物です。強い痛みやしびれを感じたら、早めに医師の診断を受けてください。
椎間板ヘルニアの痛みはぶり返しも
椎間板ヘルニアの痛みが治まったら、もう二度とぶり返してほしくないですよね。しかし、薬や手術で椎間板ヘルニアの症状がなくなっても、1年~数年後に症状がぶり返してしまう可能性も、ゼロではありません。
手術後1年で1%、5年で5%~15%程度の患者さんが、椎間板ヘルニアを再発していると言われています。同じ椎間板にヘルニアが再発するだけでなく、手術したのとは別の椎間板にヘルニアが生じることもあります。例えば、第5腰椎のヘルニアを手術で取り除いた後、今度は第4腰椎にヘルニアが起こるような場合です。
腰椎椎間板ヘルニアは、日常生活で中腰になったり、重いものを持ったりする機会が多い人ほど発症しやすいと言われています。椎間板ヘルニアをぶり返さないためには、腰に負担をかけないよう、生活スタイルを見直すことが理想です。運送業など、どうしても重いものを持たざるを得ない方は、無理な姿勢で重いものを運んでいないか、歪んだ姿勢で立っていないかなど、腰にかかる負担を軽減するようこころがけてみてください。手術後にしっかりリハビリをすることも大切です。痛みがなくなり、しっかり立てるようになると、ついリハビリをさぼってしまいがちになります。自己判断でリハビリをやめずに、しっかり体を支える筋肉をつけていきましょう。
また、治療中に痛みがぶり返すこともあります。薬や注射で一旦は痛みがおさまったけれど、薬が切れると痛み出す、というものです。椎間板ヘルニアの薬は痛みをおさえるためのもので、ヘルニアそのものを小さくするものではありません。どうしても痛みがぶり返してしまい、日常生活への支障が大きいようであれば、手術したほうがよい場合もあります。しばらく薬を飲み続けても症状が変わらない場合には、医師に相談してください。
椎間板ヘルニアの痛みを和らげる方法
椎間板ヘルニアの痛みを和らげる方法として、病院では薬を投与するほか、腰の牽引や、電気刺激を与える電気治療が行われています。
自宅でできる方法として効果が期待されるのは、ストレッチです。あお向けに寝転がってひざを抱え、ゆっくり左右にひねりを加えるなどのやり方があります。
もっとも、強い痛みやしびれがある場合にストレッチは禁物です。そもそもストレッチをするための体勢をとることさえ、つらい場合が多いのです。そんな状態で無理に体を動かせば、さらに痛みが強くなってしまいます。
症状が軽くても、ストレッチで体を動かすことで、痛みが増強されないとは言いきれません。間違ったストレッチのやり方で、かえって腰に負担をかけてしまう危険もあります。有酸素運動も体力の向上や、循環改善、自律神経失調症などに効果的となるため、症状が落ち着いてきたら取り入れてみましょう。ストレッチを行う場合には、整形外科の医師に相談しておくことをおすすめします。
まとめ
椎間板ヘルニアは腰の痛みに加え、おしりやふともも、ふくらはぎなど、下肢の広い範囲に痛みやしびれが出ることが特徴です。強い腰の痛みは2~3週間程度でおさまることが多く、次第に日常生活に復帰できますが、痛みがおさまらない場合には手術が行われます。
下肢のピリピリしたしびれは、痛みがおさまった後も続く場合があります。神経症状を長引かせないためにも、痛みやしびれを感じたときは、早めに医師を受診しましょう。後遺症が残ってしまう場合もあるので、決して我慢し過ぎないようにしてください。
ヘルニアは、一旦おさまった後にもぶり返すことがあります。腰に負担をかけていないか、ぜひ一度、日常生活を見直してみてください。
参考:日本整形外科学会