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「腰痛で立ち座りがつらい」、「歩くのもやっと…」
そんな時は思い切って杖を使ってみてはどうでしょう?
お年寄りが使っているイメージがあるので、杖を使うことに抵抗がある方もおられるかもしれませんが、腰への負担を減らすことで痛みが治まり、早く普段の生活に戻れる場合もあります。
また、痛みが強いからといって過度に安静にし過ぎると、筋力が落ちて、かえって症状を悪化させる場合もあります。
痛みが激しいときだけ期間限定で使うもよし、腰への負担を減らすために定期的に使うもよし。
今回は、腰が痛いときに杖を使うことでどのような効果があるのか、杖の選び方や使い方を症状別にご紹介します。

杖を使うとどうして腰痛が楽になる?

体重を杖に分散することで腰への負担が減る

背骨(脊椎)は、椎骨とよばれる小さな骨が連結したもので、前方は「椎間板」、後方は「椎間関節」で繋がっています。
この椎間板や椎間関節。
どのような姿勢でも常に負荷(体重)がかかっており、加齢や繰り返す圧迫負荷で痛みを生じるようになってしまいます。
椎間板や椎間関節が傷んで腰の痛みが出ている場合、かかる体重を杖に預け、分散させることで痛みが軽くなります。

杖を使って支持面を広げ、立位姿勢や歩行を安定させる

腰痛があるときは、痛みをかばっておかしな姿勢になったり、体幹が安定しなかったりして、転倒のリスクが増します。
杖を突いて支持面(体重を支えている面積)を広げると、バランスをとりやすく体が安定します。

痛みが出ない楽な姿勢を保ちやすくする

腰痛の原因によっては、「前かがみで痛みが強い場合」、「腰を反らしたときに痛み強い場合」、「左右どちらかに傾くと痛みが強い場合」など、姿勢によって痛みが変わることがあります。
杖の長さや突く位置を調整することで楽な姿勢を保ちやすくします。
姿勢を保つ体幹筋(腹筋や背筋)が原因で痛みがでている場合は、体幹筋をサポートする役割もあります。

腰痛の方にオススメな杖の種類と特徴

実際に腰痛のある方が使用されている杖をいくつかご紹介します。

一本杖

最も一般的で、街で目にする機会も多いのが一本杖ではないでしょうか。
一番の特徴は手軽さ!!
介護用品店やホームセンター、病院の売店などで販売していますが、最近は100円均一でも見かけます。
杖に体重をしっかりかけて支えとして使うという感じではなく、「転ばぬ先の杖」程度に予防的に使われたり、姿勢保持を助ける程度に使用されたりすることが多いです。
現在の杖はデザインもさまざまで、折り畳みになっているものもあり、急な腰痛に備えて常にバッグに忍ばせている人もいます。

多点杖

足先が3~6点に分かれている杖です。
一本杖よりも支持面が大きいため、安定していて、手を離しても自立します。
杖に、ある程度の体重をかけて歩きたい、行動範囲も比較的広い場合にオススメです。
屋外で使っている方もおられますが、足先が別れているので、平坦地でなければ歩きにくいです。
介護保険を利用し、レンタルできます。

ロフストランド杖

一本の脚と体重を支えるグリップ、手から肘までの腕支えを備えた杖です。
腕支えがあるので手をグリップから離しても倒れることはありません。
一本杖と松葉杖の中間といった立ち位置です。
手のひらと腕支えの広い面で体重を受けるので、比較的しっかりと体重を支えることができます。
両手に1本ずつ持てば、左右均等に、両腕にかなりの体重をかけることが可能です。
介護保険を利用し、レンタルできます。

サイドケイン

多点杖よりもさらに支持面が大きく安定しています。
安定感は増しますが、その分、杖そのものの重量が重くなるため扱いづらい場合も。
主に屋内の限られた場所で使用します。
左右どちらかの特定の部位が痛む場合に、痛みがない方に思いっきり体重をかけられる点がメリットです。
これも介護保険を利用し、レンタルできます。

番外編 歩行器

杖と比較した場合の歩行器のメリットは、左右均等に体重をかけやすいことです。
車輪が付いているものといないもの、屋内用と屋外用、座って休むことができる座面の付いたもの、荷物を運ぶことができるもの、比較的小型で軽量なものからしっかりと体重を支えられるものまで、さまざまな種類があります。
介護保険を利用し、レンタルすることもできます。

症状別の杖の使い方

まず、杖の基本的な使い方です。

杖の長さの目安

杖の先を同じ側の足先前方20㎝におき、肘を30~40度自然に曲げた位置。

杖を使ったときの歩き方

杖を利き手または痛みのない側の手で持ちます。
2動作:1.杖と反対の足を同時に出します 2.もう一方の足を出します
3動作:1.杖を前に出します 2.杖と反対の足を出します 3.もう一方の足を出します
通常、2動作ですが、杖にしっかりと体重をかけて歩くほうが安定する場合は3動作です。

前かがみ姿勢で痛みがある場合

腰椎椎間板症、椎間板ヘルニア、腰背部の筋肉や靭帯由来の痛みは、前かがみ姿勢で痛みが強くなることが多いです。
前かがみ姿勢で痛みがある場合は、杖を少し長めに調節し、体幹をまっすぐに保ちましょう。
杖は効き手に持ちます。
・腰椎椎間板症
椎間板が圧迫負荷を受け、加齢とともに柔軟性がなくなり、潰れて椎間板自体に痛みが出ている状態です。

・椎間板ヘルニア
潰れた椎間板が神経を刺激して痛みやしびれを発生させている状態です。

👉椎間板ヘルニアの症状。痛みが出る部位・特徴は?

腰を反らしたときに痛みがある場合

腰部脊柱管狭窄症や椎間関節に問題がある場合は、腰を反らした姿勢で痛みが強くなることが多いです。
腰を反らした姿勢で痛みがある場合は、杖を少し短めに調節し、前かがみ姿勢をとりましょう。
杖は効き手に持ちます。

・腰部脊柱管狭窄症
背骨(椎骨)が連なってできたトンネル状の空間のことを「脊柱管」といい、神経の束(脊髄)が通っています。
脊柱管が加齢とともに狭まり、脊髄を圧迫し、痛みやしびれが出ている状態が腰部脊柱管狭窄症です。
腰部脊柱管狭窄症は歩くことにより症状が強くなり、座って前かがみ姿勢をとることで楽になる特徴があります。

左右どちらかに体を傾けると痛みがある場合

左右のどちらかに体を傾けると痛みがある場合は、痛みがない側の手に杖を持ち、体を傾けることで、痛みが軽くなることが多いです。
椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症でも、症状が両側に出る場合と、片側に出る場合があります。

例えば、「前かがみ姿勢で右側に体を傾けると痛みがある場合」は、杖をやや長めに調節し、左手に持つようにします。
痛みの程度や杖を使う場所によって、杖の種類や歩き方(2動作か3動作)を変えればいいですね。
腰痛とのお付き合いが長くなりそうな場合はご自身で気に入る杖を購入してもいいですし、一時的であればレンタルすることもできます。
レンタルの場合は、症状が変わったときに杖を変更することも可能です。
ご自身の痛みや生活スタイルに合った杖の選び方、使い方が重要ですね!

まとめ

この記事をまとめると、
・杖を使うことで「体重が杖に分散される」、「支持面が広くなり立ち座り歩きが安定する」「姿勢が保ちやすくなる」ので腰痛が楽になる。
・杖には一本杖、多点杖、ロフストランド杖、サイドケインなどの種類があり、歩行器も有効。
・「前かがみ姿勢で腰が痛むとき」「後ろに反らしたときに腰が痛むとき」「左右どちらかに体を傾けると腰が痛むとき」など、痛むタイミングや強さによって杖の種類や使い方を変える。

一口に杖といっても、その種類や使い方を知らなければ十分な効果が期待できない場合もあります。
ご自身の腰痛や生活スタイルに合った杖を選んでいただき、痛みと付き合いながら、普段の生活が送れますようにお祈りしています。腰痛体操などのストレッチと筋トレを同時に行いましょう。

参考文献

・冨士武史、河村廣幸、小柳麿毅、淵岡聡『整形外科疾患の理学療法』金原出版株式会社 p46~80
日本基準寝具株式会社|福祉用具カタログ

著者情報

腰痛メディア編集部
腰痛メディア編集部

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