目次
腰痛を引き起こしやすい鞄の種類と持ち方
鞄の種類や持ち方によっては、腰痛を引き起こす原因となってしまうのをご存じでしょうか。
リュックは荷物が重いと脊椎の歪みを引き起こす原因に
リュックは背筋が伸びて、姿勢がよくなり腰痛予防によいのでは?と思われる方が多いのではないでしょうか。
実は、リュックは体が反り気味になり、不自然な姿勢になってしまいます。ノートパソコンなど重い荷物を背負う場合は荷物の重みで上半身が後ろに引っ張られて、背筋や腰が反ってしまい、背筋がゆがんだり、頸椎を傷めてしまったりする原因になるのです。
ショルダーバッグなど肩にかけるタイプの鞄は体が持ち手の反対側に傾きやすい
ショルダーバッグを片方の肩にかけると、バッグを落とさないように体が反対側に傾きます。まっすぐにしているつもりでも、ショルダーバッグが重ければ重いほど、体はショルダーバッグの重みを支えるために体が反対側に傾けなければならなくなるのです。
腰痛を引き起こしやすくなる要因
それでは、鞄の持ち方によって腰痛を引き起こしやすくなる要因について解説します。
鞄の重みに対しバランスをとり体が傾くため背筋が歪む
鞄を持つ時には、鞄を落とさないように反対側に体を傾けるものです。
体を傾けることにより、脊椎に対し、一定の方向に継続的な力がかかります。そのため、同じ方向に継続的な力がかかると、背筋が歪む原因となり、歪みにより脊椎(背骨)を傷めてしまい、腰痛を引き起こしやすくなるわけです。
鞄に入れた荷物の重さだけでなくバッグの揺れが体に大きな負担をかける
鞄のベルトが緩めで鞄が大きく前後左右に揺れる状態になっていると、振り子の原理で実際の荷物の重さ以上に体に負担がかかり、脊椎(背骨)を傷める原因となります。
腰痛を予防する鞄の持ち方
それでは、腰痛を予防する鞄の持ち方について解説します。
バッグが体に密着するようにベルトを調整する
ショルダーバッグもリュックも、ベルトが長くなるとバッグの振り幅が大きくなります。
振り幅が大きくなると、振り子の原理で体にかかる重さも増してしまい、体への負担も大きくなってしまうのです。
逆に言えば、ベルトを短くしてバッグが体に密着するように調整すると体にかかる重さが増えません。
ベルトは短めにしてバッグを体に密着するように調整しましょう。
体の重心に近いところにバッグがくるように調整する
人間の体の重心は、「身体重心位置(しんたいじゅうしんいち)」と呼ばれ、骨盤内にあります。立っている姿勢の成人の場合は、おへその少し下にあり、歩行時は上下に約4~5cm、左右に約3cmの範囲で移動すると言われています。
重心を意識することにより、体が安定し、転びにくくなったり、一部の筋肉だけで体重や荷物の重さを支えるのではなく体全体で重みを受けることができるようになるため筋肉を傷めにくくなったりします。
また、重いものは特に、体の重心に近いところにバッグがくるようにすると安定してバッグを持つことが可能です。
体の重心とは、おへそから指3本分くらい下の場所です。
このあたりにバッグがくるように調整しましょう。
重い荷物を持つときにはキャリーバッグを利用する
パソコンや本など重い荷物を持ち歩く場合は、キャリーバッグが最も腰への負担が少なくなりますので、おすすめです。
バッグの種類別、腰痛予防に最適な鞄の持ち方
とはいえ、バッグの種類によっても、具体的な注意点が異なります。
バッグの種類別の腰痛予防に最適な鞄の持ち方について解説しましょう。
ショルダーバッグ
ショルダーバッグは、バッグ本体が体の重心あたりにくるようにベルトの長さを調整しましょう。
ショルダーバッグを体の前側にくるように持つと、体が前に倒れないようにするために背筋が強く緊張していまいますので、ショルダーバッグは体の横側か腰側に置くようにするとよいでしょう。
バッグを揺らすと体への負担が増えてしまいますので、前側に持って歩く場合は、なるべく手を添えてバッグを揺らさないようにするのもひとつです。
ビジネスバッグ
ビジネスバッグもショルダーバッグと同じように、ベルトの長さを調整し、バッグが体の重心あたりの位置で体に密着するようにしましょう。
肩に掛ける時は、バッグが前後に揺れないように、バッグを肩にかけている側の手でバッグを押さえるとなおよいです。
手に持つ時は、肘を後ろ側に軽く引くようにして持つと負担が少なくなります。
手に持つ場合は、特に重い荷物を入れるのは避けましょう。
どうしても重い荷物を入れなければならない場合は、なるべく肩に掛けるようにしましょう。
リュック
リュックは、背筋を伸ばす効果があります。
しかし、荷物が重すぎると背筋が後ろに反りすぎてしまい、脊椎(背骨)の歪みを引き起こす原因となりますので注意が必要です。
ベルトの長さはリュックが体に密着するように調整すると体への負担が軽くなります。
ベルトが捻れたり、ベルトが長く肩口があいてリュック自体が背中から離れて腰に近い方へずれてしまったり、リュックが歩くたびに大きく揺れてしまったりすると体への負担を増やしてしまいます。
特に、ベルトが長くリュックの位置が低くなると、体が後ろに反りやすくなり、腰へ負担が大きくなりますので、リュック本体が背中に密着するような高さで調整するのがよいです。
電車内では、リュックを前に抱えるようにして持つのがマナーとなります。
リュックを背中に背負ったままで動くと混雑した電車内で気づかないうちに他人にリュックがぶつかってしまうことが多いためです。
トートバッグ
トートバッグでも、ショルダーバッグなどと同様に、体がトートバッグの重さを支えバランスをとるために左右へ傾きやすくなります。
左右の肩が地面に対して水平になっているか、意識するとよいでしょう。
肩に力が入ってしまう場合には、トートバッグの持ち手が短すぎる、または肩から滑り落ちやすい素材の持ち手であることが多いものです。
自分の体に合った持ち手の長さのトートバッグを選ぶようにすると体への負担を減らすことができます。
トートバッグでは持ち手の長さを調整できないことが多いため、選ぶときには実際に肩にかけてみて、余計な力を入れずに持つことができるかチェックするとよいでしょう。
キャリーバッグ
キャリーバッグは、体の横に置いて引くのが体への負担が少なくなります。
キャリーバッグを引くときには、背筋を伸ばしましょう。
体を前にかがめたり、左右に傾いたりしていないか、姿勢に注意が必要です。
姿勢が悪い状態で引いていると、脊椎(背骨)の歪みにつながります。
持ち手を長くして後ろに引く場合は、左右どちらかに力がかかりますので、可能であれば、左右交互に持つようにするとバランスがとりやすいため、おすすめです。
腰痛予防におすすめの体操
腹筋
①仰向けになる
②両手で膝を抱える
③息を吐きながら、へそを覗き込む。そのまま10~15秒キープ。
休憩を挟みながら、3セット繰り返す。
脊柱起立筋
①四つ這いになる。
②息を吐きながら、背中を丸める。そのまま5秒キープ。
③続いておへそ突き出すようにして、腰を反る。同じく5秒キープ。
②③を交互に3回ずつ繰り返す。
大殿筋
①膝を曲げて、仰向けになる
②お尻から腰まで持ち上げる。そのまま10秒キープ。
休憩を挟みながら、3回繰り返す。
鞄の持ち方に気をつけて腰痛予防
鞄は、毎日の生活において欠かせない生活必需品です。
特に、通勤や移動が多い方にとっては、鞄の持ち方に気をつけるだけで劇的に腰痛が改善することもあるくらい腰痛予防のためには重要な対処法となります。
鞄に入れる荷物を減らしつつ、鞄の持ち方にも気をつければ、手軽に腰痛の改善や腰痛の予防が可能です。また、筋トレやストレッチなどの運動を行うことで、姿勢保持能力を高めることも有効的です。
しかし、鞄の持ち方を工夫しても腰痛が改善しない場合には、体の姿勢を悪くしている要因があれば改善し、それでも改善しない場合は、一度は整形外科を受診して他の病気が隠れていないかチェックする方がよいでしょう。
参考文献
川上俊文、図解 腰痛学級 第5版、医学書院、2011
参考
日本整形外科学会