腰痛は日本人の国民病といっても過言ではないほど身近なお悩みですが、一口に腰痛といっても、痛みの程度がさまざまなら、痛みの出る動作もいろいろです。
もし、顔を洗う動作で腰痛が出る場合、もしかしたら前屈障害型腰痛を発症しているのかもしれません。そこで、前屈障害型腰痛の原因や、顔を洗う動作で腰痛が出る場合の対処法について紹介したいと思います。
目次
前屈障害型腰痛とは
顔を洗う動作で腰痛が出る場合の対処法についてご紹介する前に、そもそも前屈障害型腰痛とは何なのかについて知っておきましょう。
前かがみの姿勢で痛みが出るタイプの腰痛
前屈障害型腰痛は読んで字のごとく、前屈したとき(前かがみの姿勢になったとき)に痛みが出るタイプの腰痛です。日本人の多くがこのタイプの腰痛を持っており、腰痛全体のおよそ40%が前屈障害型腰痛というデータもあります。
前屈障害型腰痛が起こるメカニズム
前屈障害型腰痛は、腰の骨(腰椎)と骨の間にある椎間板に異常が生じ、前かがみの姿勢になったときに圧迫が起こるため、痛みが出ると説明されています。そのため、マッサージなどをおこなっても改善は難しいとされています。
前屈障害型腰痛がある際はこんな姿勢に要注意
前かがみの姿勢になったときに痛みが出るという特徴がある前屈障害型腰痛ですが、そのような腰痛がある場合、次のような姿勢をなるべくとらないように気を付けましょう。
顔を洗う動作
人間の背骨はわずかに弯曲したS字構造となっていますが、姿勢が前傾することによって、腰への負担が倍加するとされています。
顔を洗うときにも、体重の10分の1ほどの重さがあるという頭を支えるため、腰への負担が増加することとなります。そのため、なるべく顔を洗うような動作は避けるようにしましょう。
草むしりをする姿勢
前屈障害型腰痛がみられる場合、長時間に渡って草むしりをするような姿勢をとることも避けましょう。腰を曲げた状態で固まってしまい、伸ばそうとしてぎっくり腰を発症するケースが後を絶ちません。
掃除機をかける姿勢
掃除機をかけていると、ついつい上半身を丸めてしまい、腰痛を誘発してしまいがちです。掃除機をかけるときには膝を軽く曲げ、上半身が丸くならないよう意識しましょう。
車の運転
長時間に渡って車を運転していると、次第に背中が丸くなり、顔の位置が前へスライドしてしまいます。その結果、前屈障害型腰痛を発症するリスクが増します。
車を運転するときにはなるべく背筋をまっすぐ伸ばし、疲れてきたら休憩をはさむようにしましょう。また、背中と座席の間にクッションなどを挟み、背中が丸くならないようにすることもおすすめです。
台所仕事
料理や皿洗いなどをしていると、知らないうちに前傾姿勢になっていることが少なくありません。炊事をする際には、なるべく背筋を伸ばすよう意識しましょう。
顔を洗う動作で腰痛が出る原因
腰痛にはいろいろなタイプがありますが、顔を洗う動作で腰痛が出る場合、次のような原因が考えられます。
骨盤の後傾
腰痛持ちの方に多くみられるのが、骨盤の後傾(後ろの傾くこと)です。骨盤が後傾すると、臀部(お尻)やハムストリングス(太ももの裏にある大きな筋肉群)に引っ張られ、結果として腰痛を起こしやすくなります。
骨盤が後傾する原因としては、デスクワークなど長時間の同一姿勢、姿勢を支える筋肉の衰え、パソコンやスマートフォンの見過ぎ、ソファに座るなど日常的な座り方などがあげられます。
身体の前面にある筋肉の衰え
人間が前傾姿勢をとるとき、腹筋や太ももの前面の筋肉など、身体の前側にある筋肉で姿勢を支えるものです。
ところが、これらの筋肉が衰えると、前傾姿勢をとったときに身体を支えることができなくなり、結果として腰への負担を増してしまうわけです。
筋膜の緊張
最近になってよく聞かれるようになった筋膜という言葉ですが、実は、筋肉だけを覆っているわけでなく、骨や神経、血管、内臓など身体に存在する多くの組織を覆っています。
骨盤が後傾すると、前屈障害型腰痛のリスクが高くなるということでしたが、筋膜の緊張も骨盤の後傾を助長することが分かっています。
例えば、シャツの裾を後ろに引っ張られると、身体の重心が後ろへ移動すると思います。その際に、バランスをとるために骨盤を後ろに傾けるわけです。
筋膜という観点で考えた場合、お尻の筋肉や、太ももの裏側の印肉が硬くなることで、骨盤が後ろへと引っ張られ、前屈障害型腰痛の発症リスクを増すのです。
顔を洗う動作で腰痛が出るのは椎間板が原因?
先ほど、顔を洗う動作で腰痛が出るような前屈障害型腰痛は、椎間板に何らかの異常があり、前屈動作で椎間板が圧迫されることで、腰痛を発症すると説明されていました。
ただ、日本腰痛学会と日本整形外科学会が策定する最新版の『腰痛診療ガイドライン』によると、椎間板ヘルニアが原因となる腰痛は全体の7%に過ぎないとされています。
実際、レントゲンやMRI検査をおこない、椎間板ヘルニアが疑われる人であっても、何ら腰痛の悩みを抱えていないケースが多々あります。
そこで注目されるのが、レントゲンやMRIではみることのない筋膜の緊張、および全身のバランスというわけなのです。
顔を洗う動作で腰痛が出る場合の対処法
顔を洗う動作で腰痛が出る場合、痛みを誘発するような動作はなるべく避けた方が無難です。そのため、次のようなことに気を付けましょう。
顔の洗い方を工夫する
人間の身体の構造上、前傾姿勢をとると腰への負担を増すことは避けられません。そのために腹筋や太ももの筋肉で身体を支え、腰へかかる負担を減らすわけです。
ところが、腹筋や太ももの筋肉が衰えると、上半身を支えることができなくなり、腰痛のリスクが増すわけです。
ということは、腹筋や太ももの筋肉の代わりになるものを用意すればよいわけです。といっても、それほど難しいことではありません。
顔を洗うときに、ちょっとした踏み台を身体の前に置き、片足をその上にのせて前傾姿勢をとってみましょう。そうすると、台にのせた方の足が踏ん張りやすくなり、腰への負荷を減らすことができます。
治療や施術を受ける
腰痛の多くは非特異的腰痛といって、病的なものではありません。そのため、適切な治療や施術を受けることによって改善が期待できます。一人で痛みに悩んでいるよりは、専門家にみてもらうことをおすすめします。
顔を洗う動作での腰痛を予防する方法
腰痛に限ったことではありませんが、不調は出ないに越したことはありません。いったん腰痛が治まっても、同じような生活をしていれば、また同じ症状に見舞われないとも限りません。そこで、前屈障害型腰痛の予防法をご紹介します。
ストレッチ
腰痛の多くは筋肉や筋膜の緊張によってもたらされるため、普段からストレッチやヨガ、ピラティス、筋膜リリースなどの腰痛を改善する体操をおこない、全身の筋肉を柔軟に保っておきましょう。
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入浴習慣を見直す
腰痛持ちの方の多くが、日常的に入浴をシャワーだけで済ませている傾向にあります。しっかりと湯船に浸かり、疲れを蓄積しないよう心がけましょう。
適度に身体を動かす
筋力の低下も前屈障害型腰痛の発症リスクを高めるので、普段から適度に身体を動かし、筋力の低下を予防しましょう。
まとめ
顔を洗う動作で腰痛が出る場合、前屈障害型腰痛を発症している可能性があります。とはいうものの、その多くは病的なものではなく、日常の生活習慣に起因するものです。
そのため、普段から筋肉を柔軟に保つべくストレッチやヨガなどをおこない、適度に身体を動かすことで、筋力の低下を予防することが重要です。
腰痛は日本人の国民病といえるほど身近なものですが、発症すると時間およびコストが必要となります。なるべく腰痛を発症しないよう、予防に取り組みましょう。
参照
腰痛の原因と解消法を詳しく解説!|たけだ整体院・整骨院
腰痛を予防するために|東近江市湖東リハビリステーション
腰痛診療ガイドライン2019改訂第2版|日本整形外科学会、日本腰痛学会