朝起きたときに腰痛があってなかなか動けない。そんな人も多いのではないでしょうか?
起床時の腰痛には様々な原因が考えられ、病院を受診される腰痛症の人も多く訴えられる症状です。今回は原因と対策について紹介させて頂きます。朝起きると腰が痛いという人は是非チェックしてみて下さい。
目次
朝起きるときの腰痛の特徴と原因について
起床時の腰痛の特徴としては
①起きてから30分~1時間以内で落ち着く腰痛
②起きてからずっと痛む腰痛
の2つに分けられます。
起きてから30分~1時間以内で落ち着く腰痛について
朝起きてから30分~1時間以内で落ち着く腰痛は、筋筋膜性腰痛や筋肉内の循環不良の痛みが考えられます。筋筋膜性腰痛に関しては就寝時の不動により筋膜の滑走性が低下し、これによって起床時の動作で痛みが出現している可能性があります。
また筋肉の循環不良に関しても就寝時の不動により筋肉を動かさないことや、筋肉が寝具に長時間圧迫されたことなどにより血流が低下し起床時の腰痛が発生します。
これらは身体の柔軟性が低下したことによる身体的な要因と、布団やマットレスなどの寝具の影響による環境的な要因から誘発されます。どちらの影響なのかを判断する必要性があることと、どちらにしても適度な寝返りを行える状態を作り出すことが重要となります。
起きあがるときだけ…は「異常なし」の場合が多い
起きあがるときだけ腰に痛みを感じる場合は、ほとんど「レントゲンでの異常はなし」と診断されることが多いようです。
「異常がないのに腰が痛むなんておかしい」と感じてしまいますが、考え方を変えると「重篤な症状ではない」ということになりますよね。
その点においては安心できますが、やはり根本から腰痛を改善させたいと感じる人がほとんどでしょう。
起きた後もずっと痛む腰痛について
起きた後も変化なく腰痛が続く場合は炎症症状が強く出現していることが考えられます。炎症症状が強い場合はじっとしていても動いても痛いのが特徴です。このケースでは生活や仕事においてもかなり支障がでている場合が多く、早期に整形外科に受診することをおすすめします。
朝起きるときの腰痛の対策について
起床してから1日中続く腰痛は強い炎症が起きている可能性が考えられます。この場合は自宅でのケアでは対処できないケースが多く、先ずは医師の診断を受ける必要性があるため整形外科を受診しましょう。
今回は起床後30分~1時間以内で改善する腰痛に関しての対策をメインにお伝えします。この腰痛に関しては「特徴と原因」の項目でお伝えしたように「筋筋膜性」と「筋肉内の循環不良」の2つの影響が関連する腰痛の可能性が高いです。また起床時の腰痛は「身体的な要因」と「環境的な要因」とに原因が分かれるためこれについて詳細に説明します。
起床時の腰痛に関連した「身体的な要因」と「環境的な要因」とは
身体的な要因について
身体的な要因の影響としては
・背骨~股関節の柔軟性低下
・筋筋膜の滑走性低下と筋肉の循環不良
環境的な要因について
環境的な要因としては寝具の影響が考えられ
・枕
・マットレス
・布団
これらの「身体的要因」と「環境的要因」により一定の姿勢でしか寝られず、寝返りができない状態を作ってしまいます。
この一定の姿勢でしか寝られず寝返りができない身体となると、寝具と接地している身体の部位が圧迫され血行不良を生じます。
また一晩での寝返りは20~30回が理想とされており、寝返りで身体を動かすことで筋肉内の血流が増加します。寝相が良すぎることが血行不良を招くこととなりますので、適度に寝返りができる身体を作ることが重要となります。
対策としては以下の通りです。
①背骨~股関節の柔軟性を高める
②筋筋膜の滑走性と筋循環を高める
③寝具との相性をチェックする
①②に関しては下記の「セルフケアの方法」でお伝えします。③の寝具との相性に関しては実際に枕やマットレスの上で寝転んでみて「寝返りやすいのか」をチェックしてみると良いでしょう。
「良い寝具」の選択に関しては個人個人の身体の機能により違いがあるため、この記事で明確にお伝えすることは難しいです。よって良い寝具の評価として「寝返りやすさ」を用いることが有効で、寝返りやすいということは身体に寝具が合っているといえます。
左右への寝返りをチェックしスムーズに行えるものがあなたにとって最適な寝具の可能性が高いです。可能な環境であれば購入前に一度チェックをするようにしましょう。
朝起きるときの腰痛に対してのセルフケアについて
起床時の腰痛は背骨から骨盤の可動性を高めることが重要となってきます。これらの柔軟性を高めることで寝具に身体が適応しやすくなり、色々な姿勢で寝ることができるようになり寝返りの回数が増えてくるといった変化が現れやすくなってきます。以下に背骨~骨盤の可動性を高め、起床時の腰痛に効果的な運動を紹介します。
ストレッチポールを用いた運動
ストレッチポールという身体をほぐす道具を使用することをおすすめします。ストレッチポールは非常に有名なケアに用いられる商品で、医療機関やスポーツチーム、一般の方まで様々な場所で使用されています。
ストレッチポールの使用方法は色々とありますが、今回のように就寝時の背骨~骨盤の柔軟性を高めることにも効果的です。
使用方法としては
①ストレッチポールの上に頭から骨盤までを乗せ仰向けで寝る
②ここから両手を少し左右に開いておき(手のひらを上)、両膝を曲げた姿勢をとる
③ゆっくりとお腹を膨らまして凹ます腹式呼吸を行う(10回程度)
④身体を左右にゆっくりと揺らしポール上で背中をほぐす(30秒程度)
⑤最後に両手をバンザイし背伸びをするように身体を伸ばす(10回程度)
この3種類の運動を繰り返しながら5分~10分程度ストレッチポール上で身体をほぐしましょう。リラックスし脱力した状態で行うように心掛けましょう。
四つ這いでの背骨~骨盤をほぐす運動
①四つ這いになる(両手が肩の真下、両膝が股関節の真下にくるように)
②背中を丸めながらおへそを覗き込むように頭を下げていく
③背中を反らしながら前方を見ながら頭を起こしていく
②③の各姿勢を5秒程度キープすることを交互に繰り返し背骨~骨盤を可動させながら柔軟性を高めます。呼吸は止めず力まずにリラックスして行いましょう。
仰向けで腰~骨盤を回旋させほぐす運動
①仰向けに寝て両手を頭の下に入れ、両膝を曲げる
②この姿勢から両膝を左右に倒しながら腰の回旋運動を行う
左右に倒した状態で5秒程度キープします。呼吸は止めず力まないようにリラックスして行いましょう。
姿勢を改善する!
起きあがるときや横になるときだけ腰が痛む場合は、姿勢改善を意識してみてください。原因不明の腰痛の場合、腰周辺の筋肉が緊張していることも少なくありません。では、なぜ筋肉が緊張してしまうのでしょうか?
それは、姿勢が悪いことによって「一部の筋肉に負担がかかってしまうから」です。例えば、いつも右重心で生活していると、どうしても右側ばかりに負担がかかってしまいますよね。すると右側の筋肉が過度に緊張してしまい、腰痛を引き起こしてしまうケースもあります。
原因不明の腰痛が治らない場合は、まずは姿勢改善から始めてみましょう。姿勢が改善されると全身の血流も改善されやすくなるため、腰痛改善につながりやすくなりますよ。
「骨盤周り」を重点的に行おう
姿勢を矯正する際に意識してほしいのが「骨盤矯正」です。骨盤は身体の中心に位置している骨です。
骨盤が大きく歪んでしまうと全身が歪んでしまい、血流悪化や筋肉のコリに直結してしまいやすくなるので注意が必要です。まずは骨盤周りをしっかりと整え、全身の歪みを矯正するように意識するといいでしょう。
ストレス発散する!
原因不明の腰痛が3ヶ月異常続いている場合「慢性腰痛」と診断されることもあり、ストレスが原因になっているケースも少なくありません。長期間ストレスを感じる生活を続けていると、痛みを抑える働きが低下して、腰痛を感じやすくなってしまうことがわかっています。
ストレスが徐々に少なくなれば、通常通り「痛みを抑える働き」が稼働され始めるため、腰痛緩和につながることもあります。また、ストレスが自律神経のバランスを乱してしまうため、血行不良にもつながってしまいやすいので注意しましょう。
動作は「ゆっくり」が基本
起きあがるときや横になるときに腰が痛い場合は、とにかく「ゆっくりとした動作」を心がけることが大切です。起きあがるときや横になるときは、いったん両手を床やベッドについてからゆっくりと起きあがってみてください。
起きあがるときに痛みを感じやすい人は、起きあがる前に横たわったままの状態で「身体を揺らす」「腰周辺をマッサージする」などを取り入れ、腰周辺の血流促進をしてみるのもおすすめです。
「横向きの姿勢」で起きあがる
起きあがるときに痛みを感じる人は、必ず横向きの姿勢になってから起きあがりましょう。真っ直ぐに起きあがろうとしてしまうと腰周辺の大きな筋肉が必要になってくるため、より筋肉にかかる負担が大きくなってしまいます。
ベッドから起きあがる際は、必ず「横向きになってから」起きあがるように意識してくださいね。
自宅でセルフケアを行うタイミング
起床時の痛みを改善するためのセルフケアを行うタイミングは①就寝前と②起床直後です。理由としては就寝前にほぐれた状態を作っておくことで身体的要因の柔軟性低下や循環不良を解消します。これによって環境的因子の寝具への適応もみられやすくなる可能性が高く、就寝前にも身体のケアを行いましょう。
起床直後に行う理由としても筋肉の循環を改善させ、硬くなっている関節をほぐすことが目的です。起床後は寝具との圧迫や不動による循環不良や筋筋膜の滑走性低下が原因の腰痛を生じやすいため、起床直後に身体をほぐしてから活動するように心掛けましょう。
まとめ
今回は、朝起きたときの腰痛に関して原因と対策をお伝えさせて頂きました。「身体的な要因」の身体の柔軟性や安定性と「環境的な要因」の寝具の改善を行い、適度な寝返りが可能な状態を作ることで起床時の腰痛を改善できる可能性が高まります。
また今回紹介した運動を定期的に行うことで身体のケアを継続していきましょう。そして、腰痛の症状が強く生活に支障が出ている人は早期に整形外科を受診しましょう。
今回の記事で自分自身の腰痛が気になった方は「自動問診」「腰痛ドクターアプリ」を活用してみてはいかがでしょうか。
1)松村 将司,三木 貴弘(2020年9月3日刊行)『適切な判断を導くための整形外科徒手検査法』メジカルビュー社
2)成田 崇矢(2019年2月3日刊行)『脊柱理学療法マネジメント』メジカルビュー社
3)整形外科リハビリテーション学会(2014年3月14日刊行)『整形外科運動療法ナビゲーション』メジカルビュー社