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腰痛になった時に鍼灸院を受診した経験はありますか?行ったことがないという方が大半ではないでしょうか。鍼灸治療を今まで一度も受けたことのない人口は全国民の70~80%とも言われています。多くの方が鍼灸院に行ったことがないというのが実状です。

腰痛の症状に悩まされている時に鍼灸治療を考えたことがある方は意外に多くいます。鍼灸院を受診することをためらう理由には何があるのでしょうか。理由として、「興味はあるけれどなんだか入りづらい」「実際にどんな治療をしてもらえるのかがわからなくて不安」「費用が高そう」などがあります。
そこで、実際に鍼灸院がどんなところでどんな治療をしてもらえるのかを詳しくご紹介したいと思います。

鍼灸院で治療を受ける前に

鍼灸治療を受ける前に基本的なことを知っておくと、ニーズに合った鍼灸治療を受けることができます。ここでは、鍼灸治療が受けられる施設・安全性・費用などについてお伝えします。

鍼灸治療が受けられる施設

鍼灸治療が受けられる施設として、鍼灸院・鍼灸整骨院・大学病院等があります。それぞれ特徴を見ていきましょう。

 鍼灸院

しっかりと鍼灸治療が受けられます。個人経営や小規模な場合も多く、アットホームな雰囲気な反面、初めてでは入りづらいことも。最近は美容鍼の流行で、大型でサロンのような鍼灸院も増えてきています。

鍼灸整骨院

鍼灸院と整骨院が併用された施設です。初めてでも入りやすい雰囲気で店舗数も多いので一番身近な施設と言えます。ただし、鍼灸治療をメインに行っていないところもあるため、しっかり鍼灸治療を受けたいと受診した方には物足りなかったという声もききます。事前にどんな治療をしてもらえるのか尋ねておく方がよさそうです。

大学病院など

病院でも鍼灸治療が受けられるところがあります。「東洋医学科」「鍼灸外来」などの名称で専門科として設けられています。西洋医学やリハビリテーション分野との連携も取りやすく、医師の指示で鍼灸治療を進められる場合もあります。大学病院などは、受診の際には紹介状が必要だったりと必要な手順を踏む必要があります。

鍼灸治療を受けられる施設は色々ありますが、鍼灸院や鍼灸整骨院が一番身近にある施設です。昔よりも入りやすい店構えのところが増えてきた印象で、初めてでも入りやすくなったと感じます。一人一人と向き合ってしっかり治療するために予約制にしているところが多いので、初めて受診する際には、まず電話等で問い合わせてみるのがおすすめです。

鍼灸治療の安全性

安全面は特に気になるポイントではないでしょうか。鍼灸治療は、「はり師」「きゅう師」という国家資格を持った者が行います。彼らは人間の身体の構造や東洋医療の分野に精通しており、鍼を刺しても身体に危険が及ばないように安全に手技を行います。

物品等に関しても、鍼は滅菌されたものを用い、その都度廃棄するディスポーザブル鍼です。感染防止策も十分に取られています。

鍼灸治療の費用

費用がわからないと心配ですよね。鍼灸治療は高いというイメージもあり、鍼灸治療を躊躇する要因になっています。鍼灸治療は実費治療と保険治療に分けられます。

実費治療

施設ごとに決定されるため費用に差があります。地域性もあります。また、特化した技術を用いるところでは、費用も高く設定されていることもあります。事前に問い合わせておくと安心です。

保険治療

腰痛による鍼灸治療では健康保険が適応されます。保険治療の場合には、その腰痛を診てもらっている「医師の同意書もしくは診断書」が必要となります。保険証と同意書もしくは診断書を持参し保険適応の施設に受診すれば、負担割合分の費用で治療が受けられます。

腰痛に対する鍼灸治療の効果と実際

実際にどんな治療をしてもらえるのか、効果はどうなのか、気になるところだと思います。国民の70~80%が未体験な鍼灸治療、病院には行ったことあっても鍼灸院には行ったことない人がほとんどです。直接体験談もなかなか聞けません。ここでは、特に知りたい有効性や治療についてお伝えします。

鍼灸治療の有効性

効果については一様に言えませんが、WHO(世界保健機構)により、「腰痛は鍼灸治療の適応である」と認められています。日本では神経痛、リウマチ、五十肩などと並び腰痛も保険適応疾患とされています。このようなことからも、腰痛に鍼灸治療は有効性が期待できると考えられます。

どんなタイプの腰痛なら治療できるのか

ぎっくり腰になって鍼灸治療に行ったという例が多く見受けられます。しかし、その他様々な腰痛の治療にも鍼灸治療は期待できます。鍼灸治療には「鍼麻酔」といわれるような痛みを緩和させる技があります。また、緊張してしまった筋肉を緩めるにも大いに効果を発揮します。多くの腰痛は筋緊張性によるものなので、鍼灸治療は効果に期待が持てます。器質的(骨折やヘルニアなど)な原因だとそれを即座に回復させることは無理ですが、それに付随して生じた筋緊張などによる症状を軽減させることができます。

腰痛に対する鍼灸治療の一例

実際にどんな治療をされるのかイメージできると鍼灸院などにも行ってみやすくなるのではないでしょうか。治療の一例を紹介します。

まず、問診や診察を受けます。問診の中で腰痛の原因や要因が見つかる場合も多くあります。既往歴や治療中の疾患・服薬中の薬などもあれば聞かれるので、答えられるように準備しておくと安心です。術衣に着替え、鍼や灸を受けます。施術はベッドでゆっくりと横になり行います。腰だけでなく、足や腕、頭部など様々な部分の経穴(ツボ)も使います。

鍼は髪の毛よりも細い太さなので、ほとんど痛みを感じずに行うことができます。初めは緊張もありますが、慣れると心地よい刺激に眠ってしまう人もいるそうです。治療後は通常の日常生活を行えます。人によってはけだるいような軽い倦怠感を感じる人もいますが、ほとんどいつもと変わりません。

簡単に一連の流れをご紹介しましたが、鍼灸治療には様々な方法があります。鍼灸師によって用いる治療方法は様々なので受けてみないとわからないところもあります。返せば、1度合わなかったとしても、他の鍼灸院で効果が実感できたという場合も良くあります。

鍼灸治療後に腰痛が悪化?|瞑眩とは

鍼灸を受けると腰痛が楽になる効果とは反対に、体調が悪化したように感じることもあります。なぜ、体調が悪化するのか気になりますよね。ここでは、体調が悪化したように感じる理由と瞑眩(めんげん)を避けるための対策についてお伝えします。

鍼灸治療後に起こる瞑眩とは

瞑眩とは、好転反応ともいわれる鍼施術後の体の反応です。たとえば、以下のようなものがあります。

• だるくなる
• 眠くなる
• 気分が悪くなる
• 筋肉痛になる
• 内出血する

以上の反応は、体が回復する際に起こる反応だと考えられています。とはいえ、人によっては強く出てしまうことがあるため注意が必要です。

そこで、次に瞑眩を強く出さないために気を付けるポイントをお伝えします。

瞑眩を避けるために、気を付けたいポイントを解説

まず大切なのは、体内に鍼を刺したり、熱いお灸で施術を受けたりする場合、瞑眩を100%防げないことです。そのため、鍼灸治療を受ける日は、なるべくゆっくりできる日を選ぶといいでしょう。

また、瞑眩が強く出てしまう理由として、鍼灸に不慣れな人が、強い刺激の鍼や灸を受けてしまうことが考えられます。鍼灸師が熟練であれば、経験から刺激量を調整してくれますが、時には施術担当の鍼灸師が熟練ではないことも。

対策は、事前に鍼灸が初めてであることを伝え、はじめての鍼灸で緊張して不安であることを言い添えると、相手の鍼灸師も加減をしてくれることでしょう。

瞑眩が強く出てしまうと、鍼灸に対して恐怖心を抱く原因にもなります。あなたの腰痛に鍼灸が効果的だった場合、効果があるのに鍼灸を受けられないのはとても残念なことですよね。瞑眩を理解して利用すると、鍼灸もあなたの腰痛を楽にするのに、きっと役立つことでしょう。

鍼灸院はどこでもよいわけではない

鍼灸院

町のさまざまな場所で運営されている鍼灸院ですが、どこに行ってもいいかと問われれば、以下のような理由から決してそうだとは言えません。

鍼灸師の数自体は多い

鍼灸院で施術を行う「鍼灸師」は、専門学校で技術を学び、国家資格を取得しています。しかし、「鍼灸師」という資格自体が存在しないということは、あまり知られていないようです。

実は、鍼灸の学校で取得できるのは、「はり師」と「きゅう師」というふたつの国家資格です。これら二つの資格を取得しなければ施術は行えません。

しかし、その資格試験の合格率は、2020年2019年ともに70パーセントを超えており、比較的低いとされた2018年度でも55パーセントを超えています。合格者も毎年2,000〜3,000人ほどと、数自体は決して少ないというわけではありません。

試験の合格率が高く、毎年これだけの人数が鍼灸師となっているということは、それだけスキルの差も生じやすいとも言えるでしょう。(決してすべての鍼灸師のスキルが低いと主張しているわけではありません)

鍼灸師にも専門分野がある

また、一口に「鍼灸」といってもその内容はひとつではありません。鍼に灸、そして按摩等、施術方法は多岐に渡ります。そうした手法のいずれを得意としているかは、鍼灸師によって異なるでしょう。

それに加えて、専門分野の問題もあります。美容関係の知識経験が豊富なのか、あるいはスポーツでのケガに強いのか、これも実にさまざま。すべての鍼灸師がオールマイティになんでも対応できるというわけではないのです。

モラルの低い鍼灸師に注意

また、注意すべきはモラルの低い鍼灸師の存在です。前述したはり師やきゅう師等の国家資格を有していないにも関わらず、あたかもそうであるかのように錯覚させる事業者も少なからずいるようです。

それに加えて、施術と称してわいせつな行為を働く、怪しげな治療で高額の請求を行う等して摘発を受けたといった事例も過去に報じられています。このような信頼できない施設への通院は避けるべきでしょう。

正しい鍼灸院の選び方(ネット編)

それでは、信頼できる鍼灸院はどのようにして探せばよいのでしょうか。この記事では、「ネット上」と「実際の訪問」ふたつのケースにおける選び方を紹介していきます。

HPが見やすく、わかりやすいか

まず着目すべきはHPです。今やHPというのは店の看板に等しいもの。これを見るだけでも、その施設のレベルを判断する材料のひとつになるでしょう。

HP内のレイアウトが複雑でなく、鍼灸に関する内容がわかりやすく解説されている施設は、それだけ患者のことを考えていると言えます。「ちゃんと自分たちの治療のよさを理解してもらいたい」と思っているからこそ、HPづくりにも力を入れていると考えることができるのです。

自分の悩みにあった分野をフォローしているか

鍼灸師にも得意分野、専門分野があるということはすでに説明しました。だとすれば、利用する側もそれを念頭に置いたうえで施設を選ばなければなりません。

鍼での施術をとくに受けたいのであれば、鍼に強みを持つ施設を選びましょう。スポーツが起因で発生した腰痛であれば、いわゆる「スポーツ鍼灸」とも言うべき施設を検索し、相性のよい治療院を見つけるべきです。

余計な治療をすすめる文章がない

ひとつ注意しておきたいのは、HP内のレイアウトのみならず、そこで解説されている内容について。よくよく読んでみると、何やら鍼灸とはあまり関係のなさそうなことが書かれていたりはしないでしょうか。聞き覚えのない、どこか怪しげな治療法が妙に推されてはいないでしょうか。

もしそうなら、訪問した際にもそういった治療を受けさせられるかもしれません。その際、高額な料金を請求されるおそれもあります。

口コミのチェックの仕方

ネットで鍼灸院を選ぶ際には、口コミが役立ってくれます。過去にそこを利用したユーザーの意見を参考にすることができ、判断材料のひとつとなってくれるでしょう。

しかし、口コミのすべてを鵜呑みにしてはいけません。個人的な恨みをぶつけていたり、施設の関係者が書いていたりもするからです。
あまりにも感情的、ないしは過剰に褒めているような口コミは、少しだけ疑ってみましょう。逆に信用できるのは、内部の風景から施術の内容まで詳細に説明してくれているようなものです。

正しい鍼灸院の選び方(リアル編)

さて、次は施設を訪問した際によく見ておきたいポイントについてです。ここで何か引っかかるようなことがあるのなら、別のところに切り替えるというのも悪くありません。

ちゃんと話を聞いてくれるか

よい鍼灸師かどうか見極めるポイントのひとつが、ヒアリング力の高さです。自分がどのような悩みを抱えているか、ちゃんと聴いてくれるでしょうか。話していてモヤモヤしたものが残らないでしょうか。

ちゃんとこちらの話を聞かず、さっさと何かしらの施術を行おうとするようであれば、少し注意した方がよいかもしれません。治療自体よりも、とりあえず数多く患者を入れることばかりを考えている可能性があります。

高圧的でないか

また、鍼灸師の態度もよくチェックしておきましょう。いわゆる「上から目線」とでも言うべき、終始こちらを見下したような態度の鍼灸師は、あまりおすすめできません。無理矢理求めていない施術を押し付けられるようなことも考えられますし、何より不快です。

定期的に通うのであれば、患者に対して真摯に向かい合ってくれる鍼灸師が一番。仕事というわけでもないのですから、相性が悪いと感じた鍼灸師のいる施設へ無理に通う必要はありません。

物を強引に売りつけられない

鍼灸院で主に行われているのは、はりやお灸等の施術です。中にはサプリメントや寝具を販売しているようなところもありますが、それはあくまでも二次的なものであって、患者が買わなければならないといったようなことはありません。

ただ販売しているだけならよいのですが、中にはやや強引に商品を買うよう迫ってくる鍼灸院もあるようです。いくら脅しめいたらことを言われようが、そのような商品を購入する必要はありませんし、信用の観点から見てもそうしたことをする鍼灸院は通うべきではありません。

衛生観念がしっかりしているか

鍼灸院は、人々の健康に深く関わる施設です。だからこそ、衛生管理には気を遣って当然と言えます。ましてや感染症の危険性が大きく取り沙汰されている昨今、清潔さに無頓着であるというのは致命的です。

信頼性の高い鍼灸院は、衛生観念もしっかりしています。ですので、診察室や待合室が散らかっていないか、至るところにホコリやゴミが溜まっていないかを確認してみれば、その施設の意識をある程度把握することができるでしょう。

まとめ

鍼灸院は、国家資格を持った鍼灸師が鍼とお灸を用いて治療を行う施設です。そして腰痛は、WHO(世界保健機構)でも鍼灸治療が有効と認められていたり、日本の健康保険でも保険適応疾患にも指定されています。このように、鍼灸治療には効果が期待できるにもかかわらず、多くの方が鍼灸院への通院ためらっている現状があります。

わからないことや不安が解消されれば、安心して鍼灸院での治療を選択肢の一つとして考えられるのではないでしょうか。腰痛緩和・改善のための方法の選択肢が増えるということは素晴らしいですよね。興味のある方は是非一度鍼灸院で話だけでも聞いてみてください。

参考文献
矢野忠, 坂井友実, 安野富美子, 鍋田智之. 我が国における鍼灸療法の受療状況に関する調査 年間受療率と受療関連要因(受けてみたいと思う要因)について. 医道の日本 2015; 74(8): 209-219.

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腰痛メディア編集部
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