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身体各部の筋肉、内蔵は全て筋膜に包まれています。ウェットスーツのように、全身に張り付いているのが筋膜です。もっとわかりやすく言うと、全身タイツのように身体に張り付いています。
筋膜を具体的に説明していくと5つに別れています。表層の上から順に浅筋膜、深筋膜、筋外膜、筋周膜、筋内膜によって層ができています。身体の全身の組織は、筋膜による網目状の膜で覆われています。通常の筋膜は、弾力性が程よくみられています。
柔らかい組織であるために癒着や萎縮を起こしやすいです。

筋膜の役割

筋膜は網目の形状で結ばれており、全身に張りめぐらされています。
この全身の筋膜がヒトの身体に対しどんな役割を担っているのかを説明します。

身体の姿勢保持

身体を支えている物体は、一般的に考えると骨格を考えてしまうと思います。
しかし、人体解剖で骨を取り出して、骨組みのみで人体構造を積み上げてみるとバラバラになってしまいます。
身体の骨だけでもちょっとした微妙な角度、向きを精密に組み立てなければならないため、骨格のみの場合は不可能に等しいでしょう。
これは、骨そのもので身体を支えているわけではないからです。
骨組みで土台ができていますが、全身の筋膜は引っ張り合い絶妙な張力を常に持続して支持しているからです。
筋膜では、「テンセグリティ構造」という考え方があります。
テンセグリティ構造とは、全体に存在する張力が等しいバランスでとれていることを指します。この構造は、地球に存在するあらゆるものに応用されていて、黄金比率と呼ばれています。人体の筋膜、筋肉だけでなく建物やキャンプで使うテントにも応用されています。
テントの場合、骨組みとなる鉄棒を組み立てその上に布をかけています。布をかけている際には、ある程度引っ張ってテンションをかけるためテンセグリティ構造とほぼ同じ状態を構成しやすくなります。
この全身にある筋膜の一部が歪んだ場合、歪みを保ちながらの全体のバランスを保とうとします。
歪みがある状態で筋膜が身体の姿勢保持を行うと、代償して補う部分がでてくるため身体に不調を抱えやすくなります。

各組織の保護

筋膜は身体の組織の構造を包んでいます。包むだけでなく身体支持としての役割をとても担っています。身体の構造では、たくさんの筋肉と軟部組織を筋膜により結びつけています。そのため、筋肉を一つ一つ分断することは難しく、筋膜によって筋肉は全てつながっています。
これらの筋肉を生活で痛めることなく行えるのは、可動している筋膜がそれぞれの組織を保護しているからです。
筋膜は筋肉のみではなく、身体に張り巡らされていることで血液・リンパ液・脳脊髄液を滞ることなく循環するための補助も担っています。
肩こりや腰痛などの不調は主に筋膜によるものが多いです。
そういった不調をそのままにしておくと、筋膜に保護されている部分の筋肉・骨・内蔵の機能が低下していきます。
組織の保護だけでなく、各組織の機能も保護しているため、身体の不調は筋膜へ密接に関係しています。
そのため、身体の各部位で起こっている筋膜の癒着を剥がすことができれば、より効果的に組織保護を行うことができてきます。

力の伝達

筋膜は、全身に張り巡らされていて筋肉、関節、骨をまとっています。
そのため、身体に加わった力を局所から全身に伝達させることができます。
例えるならば、五重塔です。
五重塔は、地震のような大きな衝撃が加わっても倒れることがないです。
実際に、大きな震災で倒れたという実例が少ないためエビデンスがあると考えられます。
五重塔は、衝撃が加わった際に全身に伝達しながら支えようとする仕組みを作っています。そのため、大きな衝撃を小さく受け止られるようになっています。
筋膜もこのようなつながりがあります。筋膜にはつながりのラインがあって各各に名前が存在しています。
さらに、筋膜と経絡は密接に関係していて、筋膜のラインには経絡が深く関わっていることも理解しやすくなります。
筋膜の力の伝達機能を理解していれば、スポーツに応用することができます。
野球で言えば、バッティングです。
バッティングをする時に、体幹の捻りを支点にバットを振る場合と振らない場合では筋膜からの力の伝達性が変わってしまいます。
つまり、筋肉は単独で動いているのではなく全ての筋肉のつながりの連動で一つ一つの筋肉が動いていることになります。

筋膜のライン

筋膜のラインのことを別名「アナトミートレイン」と呼ばれています。
アナトミートレインとは、つながりの中の一部に不調があれば、連動して不調でてしまうラインのことを指します。
例えば大腿四頭筋の筋肉がなんらかの原因で固定されて動きにくくなった場合、大腿四頭筋に関連するラインに不調を抱えやすくなります。

身体にある筋膜のラインは12本確認されています。
① スーパーフィシャルフロントライン
② スーパーフィシャルバックライン
③ ラテラルライン(各2本)
④ スパイラルライン
⑤ スーパーフィシャルフロントアームライン
⑥ ディープフロントアームライン
⑦ スーパーフィシャルバックアームライン
⑧ ディープバックアームライン
⑨ フロントファンクショナルライン
⑩ バックファンクショナルライン
⑪ ディープフロントライン

その中でも、腰痛に関連する筋膜のラインは、「スーパーフィシャルバックライン」と「ディープフロントライン」と「ラテラルライン」と言われています。
男性はスーパーフィシャルバックラインで、女性はディープフロントライン又ラテラルラインの不調で腰痛になりやすいと言われています。

筋膜リリース

筋膜リリースとは、筋膜の萎縮・癒着している状態をできる限り正常に戻していくことです。筋膜は萎縮・癒着によりねじれてしまうので、正しい方向に戻していきます。

筋膜のリリースのやり方

身体の硬い部分、伸び切らない部分を深呼吸しながらストレッチで伸ばしていくことがオススメです。
無理なく痛みのない範囲で少しずつ伸ばしていくことで筋膜をリリースすることができます。
フォームローラーを使用すると、より効果的に筋膜リリースをしていくことができます。

筋膜と腰痛

腰痛には様々な種類があります。その中で、脊椎の骨組みなどの構造的に問題なく起こる腰痛を「筋・筋膜性腰痛症」と呼びます。

筋筋膜性腰痛症

この腰痛症は、椎間板ヘルニア脊柱菅狭窄症のように画像での診断が困難です。原因は、長時間の負荷やストレスが身体にかかった際に起こると言われています。
特に、スポーツで起こることが多いです。
身体へ激しい捻りや衝撃が加わることにより起こりやすいです。
急性的に起こる「ぎっくり腰」も筋筋膜性腰痛症に含まれています。
筋筋膜性腰痛もアナトミートレインのラインの不調と関連があります。

まとめ

筋膜は全身に存在し、筋肉・関節・軟部組織・内蔵とあらゆる組織に存在しています。
アナトミートレインの考え方によって、腰痛に関連する筋肉ラインに不調があればより腰痛を発生しやすい原因となっています。
筋筋膜性腰痛はアナトミートレインのライン上の筋肉の不調そのものです。筋肉の不調が起こっていると筋膜の歪み、癒着が起こりやすくなり腰痛になりやすくなります。
そのため、筋膜リリースを行うことで腰痛の症状を緩和することができます。詳細が気になる方は、整形外科を受診して、医師や理学療法士に相談しましょう。

・書籍のアナトミートレインと
・テンセグリティーヨガhttps://www.tensegrity-yoga.com/about
・テンセグリティ-構造の安定性に関する研究http://zhang.aistructure.net/doc/Students/2016Okano.pdf

著者情報

西園寺デヴィット
西園寺デヴィット

保有資格

理学療法士

経歴

療養病院と総合病院の経験を経て、急性期~回復期~生活期と幅広いリハビリの経験をしています。

症例経験も整形・中枢・呼吸循環・内部疾患と多岐に経験しています。
得意な分野は整形疾患です。

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