アスリートに見られる怪我の一つに、「棘突起(きょくとっき)間インピンジメント障害」というものがあります。背中を反らす動作で腰痛が出るのが特徴で、発症頻度は高くありませんが、体操選手など、腰を大きく伸展させることがよくある人には比較的多いです。
今回はそんな棘突起間インピンジメント障害について詳しく解説します。よくある椎間関節性腰痛や仙腸関節性腰痛との違いや、棘突起間インピンジメント障害の腰痛を改善する方法も紹介するので、参考にしてください。
目次
棘突起間インピンジメント障害の特徴を紹介
棘突起間インピンジメント障害は、脊椎の後方にある棘突起に炎症が起こって腰痛を生じさせる怪我です。体を伸展させたときに痛みが生じます。
棘突起は手で触れられる背骨のボコボコした部分
手で背中を触ると、背骨の部分にボコボコした出っ張りを感じるはずですが、それが棘突起です。脊椎(背骨)は24個の椎骨とその下の仙骨・尾骨が連なって構成されており、一番上の第一頚椎を除き、第二頚椎から仙椎までには、全て後方に棘突起がついています。
ちなみに脊椎の前方にある椎体は、間にクッション材である椎間板を挟んで連結されていて、体に前屈みの負担がかかると椎間板への圧力が強くなることから、椎間板性腰痛や椎間板ヘルニアになることが多いです。一方で後方にある棘突起や椎間関節は、棘間靭帯やそれ以外の靭帯でくっついていて、体を伸展させる際にこれらに負荷がかかりすぎると、棘突起間インピンジメント障害や椎間関節性腰痛などを生じます。
また脊椎の前方と後方の間には脊髄が通った脊柱管があり、加齢やヘルニアなどの要因でこれが狭くなって神経が圧迫されると、脊柱管狭窄症が起こります。
体を真っ直ぐに反らすと痛みが生じる
棘突起間インピンジメント障害では、体を伸展させる動作で棘突起同士がぶつかり、それを繰り返すことで炎症が起こって痛みが生じます。症状の特徴は、体を真っ直ぐ反らせたときだけ痛みを感じることです。伸展以外の動作や斜め後ろへの伸展によっては、症状が出ません。
原因はスポーツなどで体を反らす動作を反復することにあり、例えば、体操やテニス、バレー、サッカーなどで起こる可能性が考えられます。またゴルフや野球などのスイングでも棘突起を痛めることがあります。
伸展で起こる腰痛の中では発症頻度が低い
伸展によって腰痛が起こる怪我は、棘突起間インピンジメント障害以外にも色々あります。椎間関節性腰痛や仙腸関節性腰痛、椎間板性腰痛、椎弓の疲労骨折、筋肉痛などが挙げられ、それらを含めると棘突起間インピンジメント障害は最も発症頻度が低いです。「体を反らすと腰が痛い」という症状であれば、普通は椎間関節性腰痛を疑います。
椎間関節性腰痛との違いを解説
体を伸展させると痛むという点で、椎間関節性腰痛と棘突起間インピンジメント障害はよく似ています。患部にブロック注射を施すことで、疼痛が軽減することも同じです。しかし、椎間関節と棘突起は異なる部位であるため、両者は違います。
腰痛の病態を評価する際には、痛みを誘発させるテストをすることがありますが、その一つにケンプテストというのもがあります。患者を立たせた、もしくは座らせた状態で後ろに立ち、体を斜め方向に伸展させて痛みを見る方法です。これは主に椎間板ヘルニアの圧迫位置を知るために用いられますが、椎間関節性腰痛であれば、斜め後ろに倒したときに痛みが出ます。つまりケンプテストは陽性です。
一方で棘突起間インピンジメント障害では、斜め後ろの伸展では痛みは出ず、真っ直ぐ後ろに反らせたときのみ痛みを生じます。また棘突起間インピンジメント障害では、棘突起から1横指以内の部分に痛みが出ますが、椎間関節性腰痛では棘突起から1横指以上で痛みを伴います。要するに椎間関節性腰痛では、棘突起間インピンジメント障害よりも外側が痛むということです。
仙腸関節性腰痛との違いを解説
仙腸関節とは、骨盤を構成する仙骨と腸骨をつなぐ関節であり、この部分が原因となって起こる腰痛を仙腸関節性腰痛と呼びます。腰やお尻、足に痛み・しびれなどが起きますが、これは腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症とよく似た症状です。
棘突起間インピンジメント障害と比較すると、痛みの出る部位や痛みの出方などが全く異なります。棘突起間インピンジメント障害では、体を真っ直ぐ伸展させたときに痛みを生じるのみで、下肢のしびれなどを伴うことはありません。また仰向けで寝ると痛んだり、痛みで長時間座っていられなかったりするのは、棘突起間インピンジメント障害にはない仙腸関節性腰痛の症状です。
ちなみに仙腸関節はほとんど動かないため、レントゲンや MRIでは仙腸関節性腰痛を見つけられず、診断には自分で痛み部分を指さすワンフィンガーテストなどの方法が用いられます。
棘突起間インピンジメント障害による腰痛の改善方法
「体を真っ直ぐ反らすと痛い」という棘突起間インピンジメント障害に見られる腰痛を改善するためには、以下のような方法を実践するのがおすすめです。
安静にする
急性の腰痛が出現し、身動きが取れない場合には「安静」にすることが大切です。その次にアイシング(冷却)を行います。筋肉を冷やすことで腰痛が緩和するためです。
しかし、いつまでも安静にしているのがいいというわけではありません。長期間の安静や筋力の低下、柔軟性の低下にも繋がります。そのため、身動きが取れる程度に腰痛が軽減した場合には、軽いストレッチなどから始めることが推奨されています。
腹筋を鍛える・胸椎や胸郭などの可動性を高める
腹筋が弱いと反り腰気味になって、背骨の後方に負担がかかるので、棘突起間インピンジメント障害の方にとってはよくありません。また今は症状がなくても、腹筋が弱いことが原因で、将来棘突起間インピンジメント障害になってしまう可能性もあります。よって腹筋を鍛えて、棘突起に余計なダメージを与えないような体を作りましょう。
また胸椎や胸郭、股関節などの可動性が低いと、後屈したときに背中や筋肉を痛めやすいため、ストレッチでそれらの動きを良くすることも重要です。
その他にもあらゆるアプローチを行う
腰痛が強い場合には、消炎鎮痛剤や湿布などの外用薬を使用することも腰痛を軽減させるには効果的です。他にも電気治療や低周波、超音波、マッサージ、カイロプラクティックなど様々な治療法がありますが、まずは医師と相談し、原疾患に適応した治療やリハビリを行うことが重要です。
スポーツ選手や日常からスポーツを行う方の場合、腰を守るためにも腰用のベルトを着用し、腰への負担を軽減させるように努めることも重要です。腰用のベルトを着用することでプレーの際も負担を軽減するだけではなく安定も図れます。
「腰痛ドクターアプリ」の運動療法もおすすめ
体を伸展させると生じる腰痛を根本から改善したい方は、「腰痛ドクターアプリ」をお試しください。これはオンライン上で専門的な腰痛の診断をしてもらえるサービスで、スマホで自動問診を受けるだけで腰の痛みの状態や危険度が分かります。さらにはそれぞれの腰痛を改善するための運動療法も動画で紹介されるため、棘突起間インピンジメント障害の腰痛に合ったトレーニング方法を知ることも可能です。
教えてもらえる運動療法は、1日60秒程度で簡単に実践できるものなので、自宅で気軽に腰痛のケアがしたい方に適しています。またそもそも伸展で痛む腰痛が棘突起間インピンジメント障害によるものなのか、それとも椎間関節性腰痛などの他の要因によるものなのかを知れることも有意義です。
ちなみに「腰痛ドクターアプリ」には、腰痛の病態評価に明るく、棘突起間インピンジメント障害にも詳しい金岡恒治先生が監修に携わっていることから、棘突起間インピンジメント障害である方には特におすすめできます。
専門家の問診を受けて病態をはっきりさせた方が良い
体を反らすと腰が痛い原因としては、棘突起間インピンジメント障害だけでなく、椎間関節性腰痛や仙腸関節性腰痛、椎弓の疲労骨折など、様々な原因が考えられます。腰痛を根本から解消するには、まずは原因をはっきりさせることが重要なので、専門家の問診を受けるのが望ましいです。なかなか病院に行く暇がないという方は、「腰痛ドクターアプリ」の自動問診をお試しください。
参考URL
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金岡恒治(2020), 「慢性腰痛の運動療法―腰痛の病態を機能的に評価して,最適な運動介入方法を提示する方法―」, <https://www.jmedj.co.jp/files/premium_blog/cbpe/cbpe_sample.pdf>, 2021/03/10
YO-TSU MEDIA(2021), 「金岡先生が語る。アスリートが引き起こしやすい腰痛とは?」, < https://yotsu-doctor.zenplace.co.jp/media/disease_symptom_list/1663/>, 2021/03/10
YO-TSU MEDIA(2021), 「棘突起間インピンジ障害とは」, < https://yotsu-doctor.zenplace.co.jp/media/disease_symptom_list/532/>, 2021/03/10
note, 「臨床スポーツ医学 ①椎間関節性腰痛」, < https://note.com/mamireru/n/n12ea4741d061>, 2021/03/10
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