ゴルフは腰痛になりやすいスポーツの代表的なものですが、最初に何故腰痛になりやすいのか説明します。
目次
ゴルフで腰痛が起こる原因
頸椎、胸椎、腰椎、仙椎、尾骨からなる脊椎は生理的湾曲と呼ばれるS字になっています。この湾曲により、バランス良く歩くことができたり、頭の重さを支えています。
脊椎の中で、腰椎の椎体が一番大きいのですが、これは腰椎にかかる負荷が一番大きいためです。腰椎には常時大きな負荷がかかっています。
話をゴルフに戻しますが、ゴルフのアドレスでは前傾の姿勢を取ります。腰を曲げて屈む姿勢は日常生活でもよくありますが、腰の負担が大きい動作です。(前傾姿勢になることで生理的湾曲が崩れ、曲げたところに負荷が集中することになります。)
前傾の姿勢から、体を半分捻るのがバックスイングです。負担がかかっているところに捻るためさらに腰への負担が増します。また無理に捻ることにより、首や肩を痛めることもあります。
前傾姿勢で腰痛になる場合、パッティングが最も多いように思います。パターは基本的にゴルフクラブの中で一番短いため、アドレスでより前傾が深くなります。またアドレスに入る前に、傾斜を読むため何度も立ったり屈んだりして、その動作でも腰へ負担がかかっています。
スイングの最後はフィニッシュですが、今度は脊椎を反ることになります。前傾と同じですが、生理的湾曲が崩れ、一点に負荷が集中します。また速い動作で行われるためより負荷が大きくなります。
最近のクラブを使っている場合、極端に反らせるフィニッシュになるスイングをすると上手く打てません。なので極端に反るフィニッシュになるスイングをする人は減りました。
しかし、まだ体のできていないジュニアゴルファー(小学生ぐらい)ではしばしば極端に反るフィニッシュが見受けられます。これは、ジュニアゴルファーは力がないので飛ばそうとするとどうしても体を大きく動かさないといけないこと、あと体が柔らかく、反ってしまいがちになることがあげられます。子供と言えど、腰を痛めてしまうとその後一生尾を引く可能性もあります。そのようなスイングをしている場合、修正が必要です。子供だから大丈夫ではありません。
そもそもゴルフのスイングは、アドレスで上体を傾けて、右に捻ってから左にねじってボールを打ちます。それもずっと同じ方向に回しているので、同じ筋肉ばかりを使っていることになります。
そうすると右利きの場合は、右側の全体の筋肉が伸びて左側が縮むので、バランスが崩れ、骨盤や背骨が歪み、腰痛の原因を引き起こすことになります。
体の負担が少ないスイングとは
まず、力まないこと。力が入ると筋肉が収縮し体が固くなります。そうなると可動域が狭まり、捻転は浅くなり、スイングが小さくなり、飛ばなくなります。するとますます力んでしまい悪循環に陥ります。
下半身は力を入れても大丈夫です。でも上半身、腕も肩も背中も緩め、バックスイングを取ります。緩めるとバックスイングもスムーズに引けます。
色々なスイングタイプの人がいます、どれが悪いとは言いません。人それぞれスムーズに体が動く動作の仕方がありますから。
でも共通なことは力まないことです。
ゴルフ中にいつ痛いのか痛くなるのかで、原因が異なります。
ラウンド前から痛い場合は、慢性腰痛か練習のやり過ぎが考えられます。
前半のラウンド中に痛くなる場合は、ストレッチなどを行っておらず、体の動きが悪いのにフルスイングをすると腰痛が発症します。また、長時間の運転をしてゴルフ場に来た場合、緊張で体が硬くなっていたり腰に疲労が溜まっているので、しっかりストレッチをしてください。
中盤から後半にかけて痛くなる場合は、疲労の蓄積が考えられます。スイングや起伏が激しい所を歩くなどラウンド後半には疲労が溜まってきます。
起伏の激しい所では、股関節の可動性が必要です。可動性が低い人は股関節がよく動かないので、腰部にストレスをかけて歩くことになります。それが腰痛の原因になっている可能性もあり、そのような人は、股関節の可動性を高めることが必要です。
ラウンドが終わってから痛くなる場合は、1日の疲労の蓄積が問題となるので、原因を追求しなければなりません。猫背や肥満、日頃の運動不足など、様々な原因が考えられます。
Q.テイクバックのときに痛い人とフィニッシュのときに痛い人、原因に違いはありますか?
テイクバックもフィニッシュも急に痛くなった場合は、椎間関節性腰痛が疑われます。ぎっくり腰の原因の1つとされる腰痛で、捻る、反るといった動作が原因で起こることがあります。
どちらか一方の動作で痛いときは、筋膜性腰痛が疑われます。腰の筋肉痛です。普段からの疲労や無理な動きにより起こる場合があります。
Q.スイングは下を向くのですが、前屈時の痛みの原因は何ですか?
前屈という動作自体が腰に負担をかけています。さらに前傾の角度が深いほど負担は大きくなるので痛みが発生しやすくなります。また体幹の筋力が不足している場合、前傾を維持するために腰を反ってしまいがちです。これではさらに腰への負担を強めてしまいます。
Q.それによって膝を曲げなければいけないということですか?
ゴルフのスイングでは、スムーズな体重移動が重要ですが、そのためには肩幅ぐらい足を開き、膝を軽く曲げることが重要です。そうすることで、右から左に体重移動ができ上半身もしっかり捻ることができます。膝を真っ直ぐ伸ばしたままでは、このような動作を上手くすることはできません。
Q.右側だけが痛いんですが?
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症で、右側を支配している神経だけ圧迫されている場合。もしくは右の仙腸関節の痛みが考えられます。仙腸関節を痛めると一般的な腰痛に似た痛みの他に、仙腸関節部分(腰の付け根のまだ少し下辺り)や臀部、鼠径部、大腿に痛みが出ることがあります。これは、左右対称の痛みではなく痛めた側だけに出ます。
ゴルフのスイングでは、テイクバックのときに無理に捻り過ぎると股関節の可動域を超えて、仙腸関節にストレスが加わります。また腰椎が回旋した力も、仙腸関節を介して足に伝わります。
身体の真ん中にある骨盤・仙腸関節には大きな負荷がかかっています。
ゴルフで腰痛にならないための予防法4つ
1. 正しいスイングを身に付ける
2. いつもの反対向きでスイングする
3. ウェストのストレッチ
4. 股関節のストレッチ
負担の掛からない正しいスイングを身に付けたり、いつもの反対向きでスイングをしたりすると、腰痛軽減につながりやすくなります。
ウェストや股関節をストレッチすると、プレーの質向上やケガ防止になるため一石二鳥。
それぞれ解説していきます。
正しいスイングを身に付ける
ポイント
• タライに入った水をまくイメージで振る
• 腕はムチのようにしならせる
力任せに腕でスイングしたり、腰が引けたりすると腰痛になりやすくなります。
正しいスイングとは腕ではなく、上半身の回転をうまく使ったスイングのこと。
タライに入っている水をまくようにスイングすると、腕もムチのようにしなり、上半身をしっかり回転させることができます。
上半身をしっかり回転できるスイングを習得するおすすめの方法は、肩にクラブを回すことです。
肩にクラブを回すと、肩甲骨が寄って背筋がスッと伸びるため、肩のラインも真っ直ぐに。
負担の少ないスイングになるだけでなく、股関節もしっかり使えて腰への負担がグッと減って一石二鳥です。
いつもの反対向きでスイングする
ポイント
• 反対向きでスイングするなら練習時がおすすめ
• ルーティンにすると継続しやすい
いつも同じ方向を向いてスイングすると、左右の筋肉バランスが崩れやすく、片側の腰へ負担が増えて腰痛を起こしやすいです。
本番で行うとスコアに悪影響が出てしまうので、練習するときはいつもの反対向きでスイングしてみましょう。
左右の筋肉バランスが整いやすくなっておすすめです。
練習前にやる時間がない!と言う場合は、ショットを打つ前に軽く素振り程度に行うといいでしょう。
やってみてしっくり来た場合は、スイング時のルーティンにすると無理なく継続できますよ。
ウェストのストレッチ
メリット
• 上半身がしっかり回転しやすくなる
• スイングの切れが増す
ウェスト周りが硬いと上半身がうまく回転しないため、腰が疲れやすく腰痛の原因に。
下半身から伝わるパワーも逃げてしまい、スイングスピードが落ちてしまいます。
ウェストのストレッチをすることで上半身がしっかり回転して、切れのいいスイングを手に入れることが可能です。
ウェストのストレッチ手順
1. スタンスは肩幅よりやや広めで立つ
2. ゴルフクラブを横に倒して両手で持つ
3. 腕を伸ばしておへその高さにする
4. 左右に軽くねじって柔軟性チェック
5. ねじりやすい側からねじる
6. 10~15秒キープ
7. 反対側も同様に行う
8. 2~3セット繰り返す
ゴルフクラブを横にして持つときは肩幅を目安にしましょう。
ウェストが気持ちいいと感じる強さで行うのがポイント。
はじめに左右差チェックすると、ご自分の柔軟性やストレッチでの可動域の変化を実感しやすくなるのでおすすめです。
股関節のストレッチ
メリット
• 下半身のパワーがしっかりスイングに乗る
• 骨盤が立って姿勢が良くなる
股関節が硬いと、下半身のパワーを上半身に伝えにくいだけでなく、腰が下がって丸まるので腰痛の原因に。
股関節をストレッチすることで、下半身のパワーがスイングに乗って飛距離が稼ぎやすくなります。
骨盤も立って姿勢が良くなり、腰痛予防にも効果てきめん。
ホールを回る前のウォーミングアップにどうぞ。
股関節のストレッチ手順
1. 両足を肩幅より広めに開く
2. つま先はやや外に開く
3. 膝を緩めてしゃがんでいく
4. 股関節から上体を折り曲げる
5. 両手で膝を押して外に開く
6. 10~20秒キープ
股関節から上体を倒すときは、おじぎの角度(20度~30度)を目安にしましょう。
両手で膝をしっかり押すと、ストレッチの強さがアップしますが、気持ちよく感じるポイントでストレッチを行うように心がけてください。
物足りない場合は数セット行っていただいても構いません。