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くしゃみや咳を行うことで腰痛を引き起こす理由

くしゃみや咳を行うことでぎっくり腰になるなど、強い腰痛を引き起こしてしまったというケースは意外と多いものです。

ヨーロッパでは、「魔女の一撃」というほどです。まさに「一撃」という表現のとおり、くしゃみや咳を行うその瞬間にズキンと腰に激痛が走ります。

くしゃみや咳は日常的によくあることですが、一大事になってしまうわけですので、注意が必要です。
なぜ、くしゃみや咳を行うと腰痛になってしまうのか、その理由について解説します。

そもそも腰痛とは何?

まず、腰痛の原因についてお話しします。腰痛は男性では1位、女性では肩こりの次に訴えが多い症状で、その数は年々増加している状況です

腰は、腰椎と呼ばれている5つの骨が並べられて構成されています。腰痛の原因としてはさまざまなものがあります。

腰痛の約85%は神経症状や重い基礎疾患などがなく、レントゲンやMRIなどの画像検査では見つけることができない非特異的腰痛と呼ばれます。運動不足によって腰を支えてくれる筋肉が弱ってしまったときや、長時間猫背や中腰の姿勢を続けて腰や背中の筋肉が緊張しているときに起こります。また、冬の寒さによって筋肉が硬直するときも神経が刺激されて痛みが起こってしまいます。

腰痛のうち原因がわかるものはおよそ15%程度となっています。よくいわれるものとして、転んだり高いところから落ちたときに腰が直接圧迫されて圧迫骨折や、お尻から足にかけての強い痛み・痺れがあり神経が圧迫されて起こる椎間板ヘルニアなど、さらに腰部脊柱管狭窄症や骨粗鬆症などがあります。

そのほかにはストレスに対する不安や不眠、生活習慣病などがあげられます。気付けばいつの間にか猫背になっていたり、座るときに足を組んでいたり片足に重心をかけて立っていたりすると体に歪みが生じ腰痛の原因となります。基本的に短期間で軽くなりますが休養が十分に取れなかったり、ストレス因子などがあると長期化することもあります。

急激な腹圧がかかり椎間板へ圧力がかかる

くしゃみや咳を行うと急激に腹圧がかかります。

腹圧が瞬間的に高まることで背中側にある腰の筋肉や靭帯、椎間板などに強い衝撃を与えてしまい、筋肉や靭帯の断裂や椎間板ヘルニアを引き起こす原因にもなるのです。

くしゃみや咳を行うときに急激に腰を曲げる動作が腰への衝撃を高める

くしゃみや咳を行うとき、急激に体を「くの字」にするように前屈みになりませんか。

実は、この姿勢は最も腰にダメージを与えやすい姿勢なのです。
前かがみの姿勢は、通常のときでさえ、腰に与える負担が.倍程度に高まると言われています。

急に前屈みになり、さらにそこへ強い腹圧がかかることにより、腰の筋肉や靭帯、椎間板などがダメージを受けやすくなってしまうというわけです。

くしゃみや咳を行うことで起こる可能性のある急性腰痛と治療法

それでは、くしゃみや咳を行うことで起こる可能性のある急性腰痛とその治療法について解説します。

ぎっくり腰(腰椎捻挫)の症状と治療法

ぎっくり腰とは俗称です。正式には、「腰痛捻挫」や「急性腰痛症」などと呼ばれます。

足首の捻挫と同じように、椎間関節の捻挫が原因です。
ぎっくり腰では、足の痛みはなく、激痛のわりにはX線検査などでは異常がありません。
症状としては、「ある動作をした時に急激な強い腰の痛み」を感じてから激しい腰痛のため動けなくなる、といったことが多いでしょう。

治療としては、足首の捻挫と同じように、まずは安静にすること、筋肉や靭帯の損傷が考えられるため、消炎鎮痛剤の内服や湿布薬の貼付などが挙げられます。

痛みが激しいときには、ブロック療法を行うこともありますが、ブロック療法を行えば即座に痛みは半分以下に軽減し、動けるようになります。
特別な治療は必要なく、対症療法のみで%の人が週間程度で回復します。

ぎっくり腰になってしまったら

むやみに動こうとはせず、まずは一番楽な姿勢をとりましょう。その状態でゆっくりと深呼吸をしていくと段々と筋肉の緊張もほぐれて楽になることがあります。自然軽快をすることがほとんどなので、自然治癒を妨げないことが大切です。無理をせず安静にしましょう。

体勢としては横になって背中を曲げる姿勢が楽な姿勢だといわれています。また、腰部をアイスノンや湿布などで冷やしてあげるのも効果的だといわれています。

ただし、冷やしすぎると皮膚に対する刺激が強すぎて増悪する可能性もあるため、適度に冷やすことが大事です。痛みが強い場合、痛み止めを内服することも一つの手です。

そして安静は必要ですが、4日以上の安静は回復が遅くなるともいわれています。個人差はありますが、痛みが大体引いたら普段通りに活動することで回復が早まるようです。ストレッチをして気持ちがいい、体が楽になるのであればしても構わないでしょう。

しかし、ストレッチをして痛みを感じたり、ストレッチ後に痛みがひどくなる場合は控えた方がいいと思われます。

また、マッサージは筋肉の緊張や循環障害、関節の動きの悪さからくる痛みをとるためにすることが多いです。骨や神経などに対する痛みはマッサージなどによる刺激で症状が悪化する場合もあります。

痛みがある場合は無理をせずに病院で適切な判断を受けることが必要になります。自分自身に起きている病態を正しく知ることが腰痛を治す第一歩です。

ぎっくり腰の治療

医療機関を受診すると、まず問診が行われ麻痺の程度を見られます。皮膚の感覚や下肢の筋力、腱の反応などもチェックされます。

必要に応じて行われるのはX線やCT、MRIなどの画像検査です。採血検査や下肢の血流の流れを見るTBIが行われる場合もあります。

ぎっくり腰を含めた腰痛では、薬物療法や理学療法、神経ブロック療法などで治療が行われます。改善が見られなければ手術も選択肢に入ります。

薬物療法では次のような薬が使われます。

● ロキソニン
● ボルタレン
● ミオナール
● テルネリン
● デパス
● トリプタノール
● パキシル
● トラマール
● トラムセット など

理学療法では温熱療法、電気療法、牽引療法、コルセットを使用した治療などがおこなわれます。

痛みが伝わることを遮断する神経ブロック療法がおこなわれる場合もあります。

ぎっくり腰の予防法

ぎっくり腰を経験すると、1年で約4分の1の患者さんが再発してしまうといいます。ぎっくり腰にならないよう再発予防を心がけることが大切です。そのためには普段から腰の筋肉を柔らかくしておくことが必要です。腹筋や背筋が弱くなってしまうと重たいものを持ち上げたときに背骨が曲がってしまって腰にかかる負担も増してしまいます。

日頃からストレッチなどで筋肉、靭帯、関節などの柔軟性を維持することで腹筋、背筋をバランス良く保ち、背骨をサポートしておくことが大切です。日頃で気をつける行動としては、床の物を拾うときには腰を曲げるのではなく膝を曲げて腰を落として拾うなど、前かがみをするような無理な姿勢をとらないことも大切です。

また、寝るときは硬めのマットレスがいいといわれています。仰向けで寝るとき時は膝を軽く曲げて、膝の下のスペースにクッションを挟むことで腰にかかる圧を下げることができます。横向きで膝を軽く曲げるのも良い姿勢だといえます。

そして適度な運動をし、肥満を防ぎましょう。肥満の人は体重がある分、体を支える役割を担う腰には負担がかかってしまいます。

さらに、お腹に脂肪がついている状態になると重心が前にずれてしまい、反り腰になってしまいます。反り腰は腰や背中の筋肉が常に緊張した状態であり負担が大きくなります。この緊張状態が続いてしまうことで筋肉が硬直し、血流が低下して腰痛につながります。また、生活する上でストレスを軽減することも大切です。

腰椎椎間板ヘルニアの症状と治療法

くしゃみや咳を行うことで起こりうる腰痛の原因として、「腰椎椎間板ヘルニア」というものもあります。

積み木のように積み重なった腰椎の間にあるクッションの役割をするものが「椎間板」といいます。
腰椎椎間板ヘルニアという病気では、この椎間板に亀裂が入り、その中に閉じ込められていた髄核といわれる内容物が外側に飛び出してしまい、背骨(脊椎)に沿って走っている神経(脊髄)を圧迫してしまいます。

神経が圧迫されるため、その神経がつかさどっている場所に痛みや痺れ、麻痺などの症状が起こるわけです。

主な症状は、腰痛と足の痛みです。足には、痛み以外にしびれ、感覚障害、筋力低下などの症状が現れます。踵歩き、または、つま先歩きができなくなるのも特徴です。

テスト(ラセーグ徴候)では、仰向けに横になった姿勢で足を持ち上げようとすると痛みが出現します。

治療としては、安静と消炎鎮痛剤の投与が行われます。
酷いときは、腰から硬膜外といわれる場所にステロイド剤を注射することもあります。
日常生活では、腰にコルセットをつけて腰を保護することが多いです。

多くの場合は~週間で痛みが改善しますが、慢性化したり、再び痛みが出現したりすることもあります。

その時には、再度消炎鎮痛剤の内服をするなどして対症療法を行うことで改善することが多いものです。

腰痛や足の痛みが続いたり、何回も再発を繰り返してしまったりする場合には、手術が必要になることもあります。
仕事が制限されたり、日常生活にまで支障が出ているケースは手術を検討することが多いです。軽症の場合は、対症療法で様子を見ます。

くしゃみや咳を行うことによる腰痛を予防する方法

くしゃみや咳を行うことにより、ぎっくり腰や椎間板ヘルニアなどを引き起こし強い腰痛がおこることがあるということについて解説してきました。
そうはいっても、くしゃみや咳は出てしまうものです。

特に、花粉症の人などは、頻繁にくしゃみや咳がでてしまう時期があります。
くしゃみや咳を行うことによる腰痛を予防する方法について解説していきましょう。

くしゃみや咳を行うときに膝を曲げ衝撃を吸収する

くしゃみや咳を行うとき、急激に腹圧が高まることが腰へ衝撃を与える一因となっています。
ですので、この衝撃を別の形で吸収するために、くしゃみや咳を行うときに膝を曲げることが効果的であると言われています。

ポイントは、くしゃみや咳で体を前かがみに勢いよく倒すのではなく、そのタイミングに合わせて膝を曲げるのです。そうすると、体を前かがみにしなくても、くしゃみや咳で発生した腹圧のエネルギーを発散することができます。

本当にそうなのかと疑問に思う人もいらっしゃるかもしれませんが、一度やってみると感覚がわかると思います。

壁や椅子などに手をついて前屈みにならないようにしてからくしゃみや咳を行う

くしゃみや咳を行うときに、前かがみの姿勢になることが腰へのダメージを大きくします。
くしゃみや咳を行う前に、壁や机、自分の膝などに両手を当てて体が前かがみにならないようにするというわけです。

できるだけ座った姿勢で行うことが望ましいですが、立っている状態のときは、近くの壁や物に両手をついてくしゃみや咳を行うとよいでしょう。

他の人から見て不自然に感じられたとしても、そのためにぎっくり腰になったり、腰椎椎間板ヘルニアになったりして苦しむのは自分です。
思い切って試してみましょう。やってみると、それほど不自然ではないことが多いものです。

くしゃみや咳の頻度を減らす対処を行う

そもそも、くしゃみや咳が頻繁に出てしまう状況を改善することが大切です。
くしゃみや咳が頻繁に出ている状況である場合、腰を傷める可能性も高まります。

花粉症の人は、抗アレルギー剤などを内服して症状を緩和させることができますし、喘息や風邪の人も内科や呼吸器科で診察を受け、症状を緩和する薬をもらいましょう。

ぎっくり腰などの腰痛になってもくしゃみや咳が続いている場合、そのたびに激痛が走ることになります。早めにもともとの原因を改善するよう治療を受けましょう。

軽いぎっくり腰でも油断は禁物!?ひどいぎっくり腰を引き起こすこともある

ひどいぎっくり腰では、激しい腰痛が突然現れます。

それに対し、軽いぎっくり腰が起こることもあります。軽いぎっくり腰では、ギクッと軽い衝撃を感じるものの、その後に激痛とはならず、軽い腰痛が残るくらいで歩行や日常生活の動作は問題なくできるのです。前兆のような症状で終わることもあります。

ギクッとしそうになった、腰が抜けそうになったなどという感覚です。その後も軽い痛みもなく、腰に違和感を感じる程度のケースがあります。

しかし、この段階で、さらに腰に負担をかけるような動きをすると、ひどいぎっくり腰を招いてしまうことがありますので、注意が必要です。

軽いぎっくり腰の症状は、ひどいぎっくり腰が起きる前兆としてとらえることもできます。

くしゃみや咳を行うときには衝撃を減らすための姿勢の工夫をしましょう

くしゃみや咳を行うときに強い腰痛を引き起こす理由とその予防法について解説してきました。
くしゃみや咳を行うときに、油断していると非常に危険です。

くしゃみや咳を行うときに起こるぎっくり腰などの腰痛は、壁や机に両手をついて急に前かがみにならないようにすることや膝を曲げて衝撃を吸収することなど簡単にできる対処で予防できます。

ぎっくり腰や腰椎椎間板ヘルニアになってしまうと、安静にするために仕事を休まなければならなくなったり、症状が再発したりと苦労が絶えません。
苦しい思いをしないためにも、日々の動作に気を付けて予防していきましょう。

参考文献
川上俊文、図解 腰痛学級 第版、医学書院、

著者情報

腰痛メディア編集部
腰痛メディア編集部

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