スマホが生活の必需品となる近代では、1日中スマホを見て過ごしてしまう人も少なくありません。人はスマホを見るとき気づかない間についつい姿勢が悪くなりがちです。同じ姿勢のままで長時間スマホを見ることは腰痛の原因となってしまいます。
今回はスマホを見る姿勢とそのリスクに焦点を当てて、腰痛の予防、対策方法を紹介したいと思います。
目次
以外と長い?スマホを見る時間は1日平均3〜4時間
MMD研究所による2019年のスマートフォン利用者実態調査(※1)では、メールやLINEなどのやりとりだけでなく、InstagramやYoutubeなどのSNSサイト視聴時間を含めると、男女ともに1日3〜4時間スマホを見ていると回答している人の割合が一番多いです。
驚くべきことに10代女性では1日10時間以上スマホを見ていると回答している人の割合が全体の1割にもなっていて、特に若者を中心にスマホを見る時間が長いことがわかっています。
インターネットの普及やスマホアプリの発展により、年々スマホを持つ年代幅も広くなり、今後はさらにスマホヘビーユーザーが増えていくと予想されます。
スマホを見るときの姿勢とリスクーあなたのスマホを見ているときの姿勢は?
スマホを見るときは、自然と体がリラックスできる姿勢になっていることが多いです。例えば通勤時間の電車の中なら立ったままの姿勢でスマホを見たり、休憩中なら椅子に座った姿勢、家にいるときなら寝転がってスマホを見るという人も少なくないでしょう。スマホを見ることが日常生活の中で習慣の一つになっている人が多く、自宅など落ち着ける場所ではよりスマホを見ることに熱中してしまう人が多いでしょう。
スマホに夢中になると顔は自然とスマホに近くなり、それに伴い首が前にでてきます。背骨は本来自然にSカーブを描いており、体重をバランスよく分散させるようにできていますが、首が前に出たポジションになることで、その負担を背中、腰の関節で補うようになります。そのため姿勢が崩れると肩こりや腰痛が起こりやすくなるのです。
長時間のスマホが腰痛につながる理由
一見無関係そうなスマホと腰痛。なぜ、このふたつがつながるのでしょうか。その理由は、主に長時間スマホを楽しむ際の姿勢にあるのです。
姿勢が悪くなりがち
皆さんはスマホを見る際、どのような姿勢をとっているでしょうか。ひょっとすると、前屈みになったり、ゴロンと寝転んだ状態になったりしていないでしょうか。だとすれば、腰にとっては決してよい状況ではありません。
いわゆる「猫背」や「反り腰」といった、腰に負担を与える姿勢を気づかないままとってしまっているのです。横になってスマホを見ているのも同様で、背中から腰だけでなく、首や腕にもよくない力がかかってしまいます。
頭の重心が悪くなってしまう
「スマホ首」ないしは「ストレートネック」というものを聞いたことがあるでしょうか。目の前のスマホを長時間見ている内に、首の骨である頸椎が変形してしまった状態です。
本来首の骨というものはゆるやかに婉曲しているのですが、スマホ首になるとこれが真っ直ぐになってしまいます。それによって頭部の重心ないしは身体のバランスが崩れ、腰痛等の原因となってしまうのです。
通勤時の「立ちスマホ」も注意
日常生活での座りながら、寝転がりながらの状態のみならず、通勤電車やバスでの「立ちスマホ」も十分な腰痛原因となり得ます。なぜならば、「前かがみ」の姿勢にとてもなりやすい環境だからです。
電車やバスの中では画面を人に見られないようにするため、自然とスマホの位置を鳩尾から少し上のあたりにまで下げる場合が多いです。これが知らず知らずのうちに猫背を作ってしまい、腰への負担となってしまうのです。通勤時間が長い人ほど注意しなければならないポイントと言えるでしょう。
長時間同じ姿勢でいることのリスク
リラックスした姿勢でいるときは、あまり筋肉を使わずに姿勢を保持している場合がほとんどです。筋肉を使わずに姿勢を保持すると、関節に負担がかかります。また、血行が悪くなり、冷えの原因となります。体が冷えるとさらに血行が悪くなる悪循環を起こしてしまいます。
負担がかかった関節にはそのストレスが痛みとなって現れます。この痛みが一時的なものであれば問題ないのですが、何度も何度も同じ箇所にストレスが加わると、痛みが起こりやすい、または再発しやすい状態になってしまいます。スマホを見ることが習慣的になっている人は注意が必要なのです。
立ったままスマホを見る習慣がある人の問題点
立ったままスマホを見る習慣がある人は、上記でも挙げたようにまず首の位置に要注意です。スマホに夢中になってしまうと、顔がスマホに近づいていってしまうため、首は前に落ち込み、背中は丸まり、猫背になりがちです。首が前に落ち込むと自然と肩も前側に丸くなりやすいです。背中がまるまると、腰も丸まり、腹筋や背筋などの姿勢保持筋を使いにくい姿勢となります。
この姿勢は背骨全体に負担をかけやすい姿勢となり、肩こりや腰痛の原因となります。さらに、体重を左右どちらかの足にかけて立つ癖のある人はより注意が必要です。姿勢保持筋が働きにくい姿勢で左右非対照な姿勢になると、背骨だけでなく、骨盤にも負担がかかります。
立った姿勢を改善するには
スマホを見るときの不良姿勢は頭の位置から始まるので、まずは頭の位置からチェックしてみましょう。まっすぐ立った姿勢を横から見たとき、耳の穴と肩の位置が床から垂直に一直線上になっているのが理想的です。
また、肩の位置と股関節、足の外くるぶしが一直線上になることもチェックポイントです。わかりにくい場合は、背中を壁につけて立ってみるといいでしょう。
頭の後ろ、お尻、かかとが壁につく姿勢が理想的です。胸は少し前に出すといいですが、腰は反りすぎないようにしましょう。背中を壁につけたままスマホを10分みてみると、普段どれくらい筋肉を使わずに関節に負担をかけてスマホを見ているか実感できますよ。
座ったままスマホを見る習慣がある人の問題点
座った姿勢でも立った姿勢と同じように、首が前に落ち込んで不良姿勢となる人が多いです。机がある場合は手やひじを机について、目線を落としてスマホをみる人がほとんどなので、長時間スマホを見ることで背中はどんどん丸まっていきます。さらに椅子に座る場合、背中を腰掛けにもたれさせて座ることで、骨盤が後ろに傾くためさら背中は丸まりやすくなります。
また、足を組むと骨盤は傾き、骨盤の傾きに合わせて背骨も湾曲します。そのままの姿勢で長時間いると骨盤、背骨に負担がかかり、これもまた肩こりや腰痛の原因となります。
座った姿勢を改善するには
立った姿勢と同じように、まずは頭が前に落ち込まないように気をつけましょう。横から見て、耳の穴と肩の位置、股関節の位置が一直線上になるのが理想的な座った姿勢です。また背もたれにはもたれず腰は反りすぎない程度にまっすぐになるように心がけましょう。さらに足は組まずに、足の裏は床につけましょう。
座った姿勢はスマホを見ていなくても腰への負担となり腰痛の原因となります。理想は1時間に1回程度、立つ、または歩くことです。わずか数歩歩いたり足踏みするだけでも姿勢を変えることで腰への負担は軽減されます。
また、スマホに限らず仕事でパソコンを使い長時間座った姿勢でいることが多い人は、姿勢保持用のクッションなどを活用してみるのもいいかもしれません。クッションで骨盤の傾きや座面にかかる負担を軽減することで、座る姿勢が奇麗になるだけでなく、腰痛の予防、改善にもなります。
寝ながらスマホを見る習慣がある人の問題点
うつ伏せでひじを立てた状態や、横向きで寝た状態でスマホを見る人も少なくないでしょう。うつ伏せでひじを立てて体を起こす姿勢は、腰が反った姿勢となります。短時間であればストレッチにもなる姿勢なのですが、この姿勢のまま長時間いるとかえって腰への負担となってしまいます。
また、横向きで寝た姿勢でもやはり首は前に落ち込みやすくなるので、立ったり座ったりしているときと同じように体は丸まりやすくなります。さらに横になっていて楽なので、長時間そのままの姿勢でいることができてしまいます。
寝ながらスマホを見る人は
寝ながらスマホは楽な姿勢なので長時間同じ姿勢になりがちですが、定期的に寝返りをうったり姿勢を変えることで腰への負担は軽減します。クッションを足の間に挟んだり、枕を高くして頭を少し高くしてみるなど、クッションを使って姿勢をコロコロ変えてみるのもいいでしょう。
腰痛だけじゃない、長時間スマホのさまざまな悪影響
長時間のスマホ操作がもたらすのは、腰痛だけではありません。そのほかにも、さまざまな症状発生のきっかけとなる可能性があります。現在、これらの症状の兆候が見られるのであれば、真剣に姿勢を見直した方がよいでしょう。
目への疲労蓄積と視力低下
スマホを見ている状態が長時間続くと、目への疲労が蓄積します。小さな画面で楽しい動画や文章に集中することでまばたきの回数が減少し、眼球が厳しい状況に晒されるからです。
これによって、ドライアイや視力低下に陥りやすくなります。また、たとえば寝転がりながら首を傾けて横目になるような姿勢でスマホを見続けることは、斜視の原因ともなるのです。
肩こり
腰痛と同様、肩こりも身体のバランスが深く関係している症状です。スマホを毎日ずっと見続けることによって首の骨が変形すれば、腰同様に方も悪影響を受けます。
腰痛と肩こりを同時期に併発するというのは、決して楽なものではありません。肩のしんどさと腰の痛み、両方と付き合い続けなければならないのですから。
指や腕の痛み
スマホを操作する際は、指を使います。スマホを使っている時間が長ければ長いほど、その運動時間も比例して増加するでしょう。それに加えて、腕もずっとスマホを支え続けることとなります。
そうした行為が習慣づくと、腰のみならず手を痛める原因になります。腱鞘炎やばね指等が発生すれば、スマホを操ること自体が苦痛になりかねません。
スマホによる腰痛を解決するには
スマホを見る時間は決める
「スマホを見てもいい時間」と「スマホを見ない時間」を決めましょう。
例えば、「通勤時間は使ってもいい」「お風呂に入る時はスマホを持っていかない」などメリハリをつけます。スマホを使わない時間は、機内モードにするか電源オフにして、スマホからの情報をシャットアウトするのがおすすめです。
「スマホは目覚まし時計の代わりに使う」という方は、目覚まし時計を用意しましょう。スマホの電源を切って、枕元に置かないようにすれば、就職前にスマホを触ることもありません。
いきなりスマホを触らない生活はストレスになるので、少しずつ始めるのがポイントです。
適度な運動をする
適度な運動は、腰痛予防に効果的です。
例えば、1時間に1度はスマホを置いて、その場で立ち上がるだけでも構いません。まずは、運動する習慣を作っていきましょう。慣れてきたら、腰の筋肉をつける腰痛予防の体操に取り組みます。
「でも、腰痛予防の運動って何をしたらいいのか分からない」という方は、「腰痛予防ドクターアプリ」を使ってみましょう。
「腰痛予防ドクターアプリ」は、腰痛の専門医が監修したアプリで、あなたの腰痛症状に合わせた運動を提案してくれます。使い方も簡単で、10分もあれば、登録と質問への回答も完了するでしょう。
適度な運動をして、腰の筋力をつけることが、腰痛予防には大切です。
さいごに
スマホを見る時間が増えれば増えるほど、姿勢は崩れやすく、腰痛にもなりやすいといえます。スマホを見る動作は毎日習慣的に行う動作なので、スマホを見るときに少し姿勢に意識を向けるだけで腰痛を予防することができます。
一度生活習慣からくる腰痛になってしまうと、痛みを抱えて生活することになるので、年齢に関わらず腰痛がないときから意識的に予防に努めることが大切です。
参考文献
※1
2019年版:スマートフォン利用者実態調査